転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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未来を巡る戦い⑥

「――という様に、敵の戦力は当初の予定通り分散されている。奴等の戦闘能力はこちらの想定を超えており、奮戦中の部隊も旗色は悪いが、それでも我々が加勢すれば十分に巻き返せる範囲だ。」

 

機動六課・銀盾混成部隊とHE教団がぶつかり合うその遥か上空に待機中の時空間航行艦船アースラの作戦室に、クロノの声が響く。

彼の部隊は戦闘中の機動六課達に加勢すべく準備を整え、今まさに作戦の最終確認を行っていた。

 

クロノはテーブルの中央に投影されたホログラムの幾つかの箇所を指し示しながら順番に部隊を振り分けていき――

 

「斉藤と紅蓮の二人はシャマルの防衛に加勢してくれ。彼女一人でも対処は出来ているが、彼女の場合全体的な回復とサポートを兼任している。そちらに集中できるよう、彼女に向かう敵は君達二人で対処するんだ。」

「「了解!」」

「……これで全員に指示は行き渡ったな。では早速――」

「くっ、クロノ君! 緊急事態だよ!」

 

いざ出撃といった段階で、それに待ったをかけるように作戦室にエイミィが駆け込んできた。

 

 

 

「――所属不明の航空部隊!?」

「そう! いつの間にか現れて、いまも現場に接近中!」

 

慌てた様子のエイミィに連れられてアースラのブリッジへやってきたクロノは、カタカタとパネルを叩くエイミィから予想外の報告を受けていた。

 

――管理局からの増援部隊か? そんな連絡は受けていないが……

 

接近中の部隊の正体について思考を巡らせていると、エイミィから声がかかった。

 

「良し、これで……! モニターに映像出すよ!」

「! ああ、頼む。」

 

映し出される部隊次第では、更に作戦の変更を余儀なくされるだろう。

それが良い方向へ転ぶ物であればいいが……そんな期待と不安の入り混じった空気の中、正面の大型モニターにそれは表示された。

 

「なっ……!? アレはまさか……!」

「クロノ君、これって……ッ! クロノ君、未確認のアドレスから通信!」

「何!?」

 

モニターに映し出された姿に驚いたのも束の間。

まるで測ったかのようなタイミングで鳴り出したコール音に、恐る恐ると言った様子でエイミィが応答すると、相手の姿が手元のモニターに表示された。

 

『やぁ、アースラの諸君――』

「やはり、貴方の差し金か……! 一体、何が目的だ!?」

 

 

 


 

 

 

目の前で繰り広げられる格闘戦に集中し、オプティックハイドで身を隠したまま俺は思考を巡らせる。

 

「そら、足元が隙だらけだぜぇ!」

「ぐ……! まだ、まだぁ!!」

 

スバルの脚に蹴りが入れられた。バランスが崩されそうになりつつも、懸命に敵に立ち向かうスバルの姿がここからは良く見える。

それでも俺は加勢に動きたい思いを堪え、只管に考える。

 

俺もダガーモードのクロスミラージュを扱う為に近接戦闘の技術も幼い頃から鍛えていたが、それでもやはり近接戦闘一筋に鍛えて来たスバルには敵わない。

そして悔しいが、レナード()の格闘の技術はそのスバルよりも更に上だ。

それはつまり、俺があの中に入る事が出来ない事をそのまま示している。

 

「そこ!」

「誘ってんのよォ!」

「――ぅぐっ!?」

 

現にレナードはスバルとヴィヴィオを同時に相手にしても、まだ余裕があるらしい。

あの状況では射撃魔法で援護してもまるで意味を成さないだろう。俺の位置がバレるだけではない、射撃魔法がスバルやヴィヴィオに当たるように誘導される危険性さえあった。

 

――頼む、エリオ……! 早く合図を……!

 

レナードに対抗するには、奴が知らないこちらの手札を切るしかない。

そしてそれはただ切るだけではダメだ。

状況を整え、時を待ち、絶好の機会を作ってからでないといけない。

だから俺は待っているのだ。只管に。親友達が傷ついているのを見ながらも。

 

――だから動くな俺……! 今はまだだ、全部が無駄になる!

 

俺の作戦を信じてくれたから、今二人がアイツを抑えている。その結果受けた傷に報いる為にも、俺は動く訳には行かない。

二人を信じて、動かない……今は、まだ……!

 

≪ティアナさん! 目標地点に付きました!≫

≪! エリオ! 待ってたわ!≫

 

断腸の思いで待った甲斐があった。

今、エリオはキャロと共にフリードに跨り、俺の指示した目標地点……土煙の隙間からも見える、今にも崩落しそうなオフィスビルの壁面に辿り着いた!

 

≪スバル、ヴィヴィオ! エリオ達の準備が整ったわ!≫

≪! 了解、ティア!≫

≪私達はいつでも大丈夫です。≫

 

二人に確認をとった後、俺は念話でエリオに合図を送った。

次の瞬間、エリオに指示したビルの一部が大きな音を立てて崩落。

落下した巨大な瓦礫が巻き起こした多量の土煙が、まるで津波のようにスバル達を飲み込んだ。

 

「むぅっ……!?」

 

流石のレナードも突然の土煙には対応できず、身構える事しか出来ない。

 

――今!

 

すかさず待機状態にしていた幻影魔法を機動。砂煙の幻影を、本物の砂煙に重ねる形で生み出した。

俺の視点では通過した土煙の津波から不自然にドーム状の土煙が現れたように見えるが、中から見ればそれが幻影である事に気付くのは難しい筈だ。

 

――そして追加!

 

続けてフェイクシルエットの魔法で30人のスバルとヴィヴィオを造り出し、砂煙のドームに突入させる。

幻影の中に視覚と聴覚を共有させるサーチャーを埋め込んでいる為、これで内部の状況も分かるようになった。

 

「ぬぅっ!? これはまた面妖な……!」

 

複数人のスバルとヴィヴィオの幻影を確認したレナードが、奇妙な物を見るような表情で呟く。

どうやら幻影魔法をよく知らないのだろう、先程までは見られなかった動揺っぷりだ。

 

「くらえぇっ!」

「こっちも!」

 

先程までと同様に、スバルとヴィヴィオが挟み撃ちを仕掛けた。

スバルは跳躍してレナードの上方から体重を乗せた蹴りを、ヴィヴィオは地を這うような低姿勢で接近し、至近距離からの蹴り上げを狙う。

 

「ぬるいッ!」

 

だがその挟み撃ちに対して、レナードは地に叩きつけた足から伝うバインドでヴィヴィオを、空中で咄嗟の身動きが効かないスバルには魔力を込めた拳を放つ。

しかし……

 

「紛い物か……ぐぅっ!」

 

そのどちらもが空振りに終わる。いや、それだけではない。

バインドと拳の魔力がそれぞれの幻影に埋め込んだクロスファイアーシュートと反応し、中規模の魔力爆発を引き起こした。

俺が知る限りでは初めてのダメージらしいダメージが入り、挟み込むように発生した爆発の影響でたたらを踏むレナード。

 

「隙ありっ!」

《Revolver Cannon.》

「"紫電一閃"!」

「ぬっ! くぁ……っ!?」

 

背後から迫るスバルと、正面から飛び掛かるヴィヴィオ。

咄嗟に腕でガードしたスバルの拳が本物である事を認識し、ならばとヴィヴィオに対して蹴りを放ったレナードだったが、残念な事にヴィヴィオの方は幻影だ。

幻影に突っ込んだ足にクロスファイアーシュートが命中し、踏ん張りがきかない姿勢であった為にバランスを崩す。

そしてそれだけの隙があれば――

 

「はあぁっ!」

《Revolver Shoot.》

「ぐぉっ!?」

 

スバルのリボルバーシュートによって空中へと身を投げ出されたレナードに対して、スバルとヴィヴィオは更なる追撃を仕掛けた。

 

「ディバインバスター!」

《Divine Buster.》

「プラズマスマッシャー!」

「ぐあぁっ!!」

 

挟み込むように放たれた二つの砲撃。

奇しくもなのはさんとフェイトからそれぞれ学んだ砲撃によるダメージは、聖女からの補助魔法を受けたレナードにも少なくないダメージを与えたらしい。

 

――これならいける!

 

そう確信を得たその瞬間だった。

 

≪ティアナさん、後ろ!≫

 

「――え。」

 

突然キャロから念話でそう告げられ、振り返ると――

 

「チッ、バレたか……だがもう遅ぇ!」

 

いつの間にか俺の背後に近付いていた敵が4人、一斉に飛び掛かって来た。

 

――なっ、こいつら何処から!? ……いや、あの時の追っ手だ! 全員は倒しきれていなかったのか!

 

ウイングロードの上から落とし、包囲した大量のクロスファイアーシュートでの一斉砲火からのギオ・エルガ……当たり所が良かったのか、或いは味方を盾にして直撃を避けたのだろう。ここにいる4人は、それを耐えてここまで近付いて来たのだ。

 

――迂闊だった! 聖女からの補助魔法を受けて強化されているんだから、耐える可能性があるのは当然だったのに……!

 

30人分のフェイクシルエットの生成と操作に集中する為、オプティックハイドを切ったのも早計だった。

レナードを幻影のドームに閉じ込めたから不要だと思っていたが、多少無理をしてでも維持すべきだったのだ。

 

――フェイクシルエットの操作を切る事は出来ない! もう少しでレナードを倒せるんだから!

 

危機的状況で加速する思考で瞬時に判断する。

敵の脅威度で考えれば、こいつ等はレナードよりも遥か格下。倒す優先度は当然レナード>>>>こいつ等だ。

だが……

 

――相対的に弱いってだけで、俺からしたら1対4はキツイぞ……こいつ等!

 

体感だが、聖女の補助魔法によって、こいつらの魔導士ランクはAA相当にまで高められている。

1対1ならば勝てるだろう。2対1程度ならば十分やり合える……だが、4人は流石に厳しい。

しかもこっちはマルチタスクで幻影の操作もしているのだ。片手落ちどころではないハンデも背負っている。

 

……とは言え、諦める理由にはならない。俺がここで倒されれば、フェイクシルエットも土煙の幻影も解除されてしまう。

 

――くそ、やれるだけやってやる!

 

ダガーモードのクロスミラージュを構え、応戦しようと脚に力を込めたその瞬間……スローな視界の隅に見慣れない物を捉えた。

 

 

 

――アレは……ウイングロード? いや、()()()()……まさか!

 

襲い掛かる敵よりも更に早くこちらに接近し、俺と敵の間にまるで壁のように割り込んだ()()()()()()()()()……

 

「なんっ……おぶぅ!」

 

それに反応できず、顔面からぶつかる少女に対して、

 

「オラァっ!」

「ぐはぁっ!!」

 

マッハキャリバーによく似たローラーブーツによる飛び蹴りが容赦なく浴びせられ、敵の一人は沈黙した。

そして俺の目の前に降り立った少女に対し、若干の警戒を残しつつも尋ねる。

 

「あ……アンタは……?」

「あたしはノーヴェだ。そんでこっちが――」

 

自身をノーヴェと名乗った少女がそう言って上空を見上げると、薄い土煙を裂くようにして少女がもう一人降り立った。

 

「クアットロと申します。お父様の頼みを受け、加勢に参りましたわ。」

 

その特有の甘ったるい口調でそう告げた『原作シリーズ中最も卑劣と呼ばれたラスボス(クアットロ)』は、恭しく一礼して見せたのだった。

 

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