転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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今回は原作5話の導入辺りです。
まだなのはは温泉に到着しません。


いざ温泉

お茶会から数日が経過した。

あれから俺達は訓練とジュエルシード捜索で忙しい日々を送っている。

原因はテレビに取り上げられてしまったジュエルシードだ。ネットの書き込みや噂等から『ジュエルシードが魔法の源であり、手にすれば魔法を使う事が出来るようになる』と言うデマが飛び交っている事が分かった。

どうやら俺達が使っていたデバイスと同じような物と捉えられている様で、子供を中心に探している者が多い。魔法を隠した人海戦術で捜索するのも限界があり、何時被害が出てしまうか分からない状況だ。

 

…その状況で俺達は温泉旅館に向かっている。

別にサボっている訳ではない。寧ろ旅館付近にあるはずのジュエルシードを取りに行くのも目的の一つだ。

原作で高町家が向かった温泉旅館『山の宿』は飛翔魔法を使っても簡単に往復できる距離には無く、この機を逃せば捜索のしようがないのだ。

 

「えっと…次は右に曲がるみたい。」

「右か、ありがとう桃子。」

「えぇ、どういたしまして!」

 

両親は角を曲がる度にこの調子だ。いつも見る光景だが、仲睦まじくて実に良い事だな。

 

「なのはのご両親って、ホント仲良いわよねー」

「なんて言うか…ずっと恋人同士!って感じがするよねー」

「あはは…」

 

ずっと新婚気分な両親だが、原因はきっと士郎さんが数年前まで意識不明の重体だった事が大きいのだろう。

桃子さんは転生者だが士郎さんに向ける感情に嘘は無いみたいだし、一緒に居られなかった時間を取り戻そうとしているのかもしれない。

 

そんな感じでしばらく会話していたが、目的の旅館までは結構な距離があるらしく会話の種も尽きてくる。

会話が途切れて少しの時間が経過した頃、アリサが話を切り出した。

 

「ねぇ、なのは。噂で聞いたんだけどさ…」

「噂?」

「テレビに出てた青い宝石を手に入れたら魔法が使えるようになる…って。」

「…うん。」

 

近頃学校でもよく聞く噂だ。特にうちのクラスには例の映像に出ていた銀髪オッドアイが大勢いるからか、放課の時間になると廊下から後輩の子達のこちらを窺う視線を感じる事もある。

そういう時は会議も念話で行わなければならないので、こちらも結構気にかけているのだ。

 

「多分誰かが流したデマなんだろうけど…先輩や後輩の子達の中にも何人か探している子が居るみたい。」

「そう、なんだ…」

 

後輩だけでなく先輩までもか。…先輩とは言っても中身は純粋な小学生、当然と言えば当然なのかもしれない。

だがジュエルシードの正体を知っているアリサがわざわざ教えてくれたと言う事は、きっと事態は思っているよりも拙い方向に向かっているのだろう。

 

「周辺の地図まで持ち出して、探したところはマーキング…子供とは思えない計画性まで発揮してる子達も居たわ。」

 

話を聞く限り予想以上にヤバそうだ。だが、子供の足で探せる範囲は俺達がサーチャーまで飛ばして探し尽くしたはず…きっと大丈夫だ。希望的観測でしかないが、アリサにそう説明した。

 

「…そう。魔法で探しても見つからないのなら、もうあの辺りには残ってないのかもね。

 …海鳴市には海もあるし、沈んでいるのかも知れないわ。」

「アリサちゃん…?」

 

具体的なヒントをくれるアリサに、何かを確認するように尋ねるすずか。おそらく「話して良いの?」と言ったニュアンスを含んだ問いに、アリサは何やら目で合図しすずかも納得した様に小さく頷く。

アリサは原作の流れよりも子供たちの安全を優先したいのだろう…それに関しては俺も同意見だ。

今までは『海のジュエルシード回収』から『決闘』を経て、『プレシアの次元魔法から時の庭園の座標を取得』と言う原作の流れを重視した為放置していた。しかし、あのフェイトならむしろ一人で海のジュエルシードを全部封印する事も出来てしまうかもしれない。

海のジュエルシード…原作よりだいぶ早いが、もう回収してしまうべきなのか?

 

「…うん、今度皆にも話してみるね。」

 

一応今度の作戦会議で話してみるか?正直皆がOKを出すかは分からない。だが、一般人がジュエルシードが海に沈んでいる可能性に気付く前に行動するべきだと思う。

 

魔法の事がバレた一件から捜索を徹底した甲斐あって、銀髪オッドアイ達がジュエルシードを新たに2個見つけてくれている。

おかげで今俺が保持するジュエルシードは6個。フェイトの持っているジュエルシードは最低でも5個…そして海底に6個。

そうなると地上に残っているジュエルシードは4個。そしてそのうちの1個はこれから向かう旅館の近くにあるはずなので、在処が分からないのは3個…

この3個の内の1個でも一般人の手に渡ればアウトだ。今ジュエルシードを探している人間の心にある願いは『魔法が使いたい』となっている筈。ただでさえあんな大木を生み出すエネルギーに、よりにもよって『魔法の力』なんか願えばどんな被害を生むか分かったもんじゃない。

…いざとなれば、協力する必要があるのかもしれないな。

 

 

 


 

 

 

封時結界を張ってからそろそろ体感で三時間か。時間を切り離してるから現実時間で…大体数十分ってところだろう。

…少しのど乾いたな。

 

「神宮寺、飲み物取ってくれね?」

「ん?あぁ、良いけど…コーラ?スポドリ?」

「スポドリで。」

「はいよ。」

「サンキュー」

 

のどを潤しつつ周りを見回す。まさに純和風と言った趣の一室は、これぞ旅館!と言うイメージそのままでなかなか落ち着ける空間だ。

前世ではあまり縁が無かったが、たまにはこういう場所も良いかもな。…()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お、それって今週号?」

「あぁ、途中でコンビニ寄った時に買ってきた。」

「後で読ましてくんね?」

「オッケー」

「…気の所為かも知れないけどさ、この新連載の『魔砲戦記』って…」

「…まぁ、時事ネタと言えばそうなのかもなぁ…」

 

「おまっ、結局三体とも『コンシン』じゃねぇか!」

「『神魂』と『ジュウシン』の組み合わせが強いからなぁ…」

「『ジュウシン』は終盤に一体しか手に入らねぇだろ!?」

「…もう一台の本体とカセット、そして通信ケーブル。まだ説明が必要か?」

「お前…これ発売日2日前だぞ?」

「寝てない。」

「馬鹿か!?」

 

―パァン、パァン、パァン、パァン…

 

 

 

現実の光景は、この時代なら逆に非日常であるはずの純和風と言うインパクトを消し飛ばすカオスに塗れていた。

銀髪オッドアイ達が自由に過ごしている一方、その頭上では人数分の銀色の玉が縦横無尽に跳ね回り、破裂音を立てながらスーパーボールのようにぶつかり合っている。

何をやっているのかと問われれば『訓練』だと答える他無い。『魔力の制御』で銀色の魔力球を操作し、『魔力の感知』をして他の魔力球にぶつけつつ趣味に集中し『マルチタスク』を同時に鍛えている。それは間違いないのだが…

 

「えっ、嘘だろ『最終回』!?」

「あぁ…『爆連』終わるのか。面白かったんだけどなぁ…」

 

片や週刊誌の内容に一喜一憂し、

 

「なぁ、今度本体とカセットとケーブル貸してくんね?」

「良いけど2日な?」

「寝るなと!?」

 

片やゲームの話題で盛り上がっている。

そして頭上ではぶつかり合う銀の玉が6つ…

 

やっているのは確かに訓練だし、趣味に興じているのもより効果的にマルチタスクを使用する為なんだが…何と言うか、色々台無しな光景だ。

 

「神谷、お前も別の事やりながらじゃないと訓練にならんぞ?」

「一応これでも封時結界の維持も…神宮寺お前、さっきから何やってんだ…?」

「何って…まぁ、柔軟?みたいな事してるだけだけど…」

「…暇なら言えよ。トランプやるか?」

「…やる。」

 

…言い出しておいてなんだけど、二人で出来るトランプって何があるかな…ポーカー?

とりあえず、後数十分ほど訓練したら一旦結界も解除して休憩に入ろう。

封時結界をずっと張っているのも楽では無いし、流石にやる事も無くなってきたしな…

 

 

 


 

 

 

「フェイト、この辺りで間違いないんだね?」

「そう、ジュエルシードはこの旅館の周辺にあるはず。」

 

アルフの問いにそう答える。高町家の自動車が向かう先にある温泉旅館はここくらいだった。

…このタイミングでこの場所のジュエルシードを回収するのは、まるで物語を意識している様で若干の抵抗はあった。

だがこの方法が最も効率が良いのだ。自分の知識を使って合理的に動く事もまた『自分らしく生きる』事に他ならない。俺の目的の為にも、使えるものは何だって使おうじゃないか。

 

…最近はなのは達の動きも活発になっている。一般人がジュエルシードに触れれば甚大な被害を生みかねないからだろう。俺も新たに1個ジュエルシードを封印したが、残りのジュエルシードがすべて回収された可能性もある。ここの1個は逃せない。

 

「ふぅん…ねぇフェイト。せっかく来たんだし、あたしらも温泉で疲れを癒すってのはどうだい?」

「…私は良い。ジュエルシードの捜索が先。」

「良いのかい?旅館の方にジュエルシードがあるかもしれないよ?」

「…じゃあ手分けする。アルフが旅館、私が周辺。」

「つれないねぇ…ならジュエルシードの封印後でも良いからさ!」

「あまり遅くなると、リニスが心配するから良い。」

「…はぁ、じゃああたしだけでも行ってくるよ。」

 

心底残念そうに旅館に向かうアルフ。…そう言えば最近は一緒にお風呂に入ってないからな。

妙に甘え癖のある奴だし、一緒に入りたかったのかもしれない。

そんな事を思いながら、俺は温泉旅館周辺の捜索に入るのだった。




フェイトさん的にも『確実なチャンス』は今回しか無いジュエルシード。
フェイトさんが先に旅館のジュエルシードを狙わなかった理由は、
1,場所が正確に解っている訳ではない。
2,距離が離れており、海鳴市内を優先した方が効率が良い。
3,なのは陣営も場所を知らない筈なので、優先順位が低い。
4,最悪の場合奪えば良い。
以上の4つです。

海のジュエルシードを放置している理由は、
1,海と言っても正確な場所を探すには時間が必要。
2,ジュエルシードを暴走させる必要があり、横取りされるリスクがある。
3,向こうも存在を知っているジュエルシードなので封印後に連戦になるリスクが高い。
4,最悪の場合奪えば良い。
以上の4つです。


銀髪オッドアイ達が先回りできた理由はなのはから予め行き先を聞いていたからです。
順序立てて説明すると
原作で温泉に行ったのは『連休中』→大木発生後の連休と辺りを付けてなのはに質問
→日付と行き先が判明→先回り成功(数十分程度)

そして旅館を選んだのは士郎さん。…と言う事で、今回の捜索でジュエルシードが見つかれば士郎さんが本人である証明になります。

‐1/20 追記‐
原作アニメで『旅館 山の宿』と描画されていた為、一部修正しました。

なのはさん達が旅館のジュエルシードを優先しなかった理由が『どこの旅館か分からない』→『単純に距離が離れすぎていて往復が困難』に変更されました。

特典で『原作知識』を貰ったなのはさん以外の転生者は1カットしか映っていない旅館の名前を憶えていなかったと言う事でお願いします…
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