内容は変わってないので読み返す必要はないです。
「クアットロ……」
そう自己紹介した彼女は、その特有の髪型や話し方、ダテ眼鏡等の装飾品に至るまでアニメで見たソレと
だからこそ思う。
――本当にコイツが味方なのか?
と。
「あらぁ、どうやら疑われているようですわね?」
「そりゃ突然現れた奴に味方だって言われて、直ぐ信じるって奴の方が少ねぇだろ。」
「それもそうですわね。……まぁ、無理に信じて貰わなくても結構ですわ。私達はお父様の指示に従うだけですので。」
そう言って彼女達は二手に分かれた。
ノーヴェは追っ手の少女達に向き直り、そしてクアットロは――
「ちょ、ちょっと! あんた一体、何する気よ!?」
「ご心配なく、ちょっと
レナードを閉じ込めている幻影のドームの方へと飛翔すると、片手をドームの方へ翳し……
「
「なっ……!」
『シルバーカーテン』……クアットロのISの名だ。
産みの親であるジェイル・スカリエッティが転生者である以上、その名がつけられていると言う事はその効果も同じだろう。
その機能は『電子を操る』能力。
精密機械の誤作動やクラッキングから、果ては俺の得意とする魔法のような幻影さえも作りだし、操る事も出来る非常に応用の幅が広い能力だ。
そして、今使ったのはその幻影を生み出す機能。その対象は……俺の作り出した幻影のドーム!
――幻影に別の幻影を重ねて何を……まさか! 逆に実際の光景の幻影を重ねて、俺の幻影を中和する気か!?
慌ててスバルの幻影の中に仕込んだサーチャーが拾う、ドーム内部の光景に集中する。
嫌な予想が当たっていれば、今あのドームの中では……!
『ぐっ、コイツも偽物か……!』
『そこだッ!』
『こっちも!』
幻影のスバルを殴った事で発生した魔力爆発を即座に防ぎ、ダメージを最小限に抑えたレナード。
彼女は戦闘が長引くにつれて、この不利な状況にも対応して来ていた。
しかしそれでも爆発の衝撃に怯んだ僅かな隙を突くように、左右から挟み撃ちをかけるスバルとヴィヴィオ。
『……見切ったぜ! お前が本物だッ!』
『っ!』
その瞬間、今の怯みが嘘だったかのように滑らかな動きで攻撃を躱すレナード。
そしてカウンターの手刀が向かう先は……幻影ではない、本物のスバルだった。
――拙い! 幻影のヴィヴィオを割り込ませるか!? いや駄目だ、間に合う位置じゃない! スバルッ!!
その瞬間、巻き上がった土埃がレナードとスバルの間に自然な流れで割り込み……スバルの姿がブレた。
『何っ!?』
レナードの手刀が空を切り、込められていた魔力の多さを物語る烈風が土埃を吹き飛ばす。
――あ、危なかった……! あの一撃がスバルに直撃していたら……!
まさに九死に一生といったやり取りに思わず胸をなでおろし、スバルに念話を繋ぎ謝罪する。
≪ごめん、スバル! あたしの幻影操作が甘かったみたい! 今度はあんなピンチにはさせないから!≫
≪え……何言ってるのティア? ピンチって何の事?≫
≪へ?≫
どうにも会話が嚙み合わない。
そうしている間にもスバルとヴィヴィオはレナードに向かって行き……
『隙あり!』
『これでっ……!』
『っく、さっきは間違ったみてぇだが……今度こそは両方とも本物だろう!』
そう言って今度は回避すらせず、完全にタイミングを合わせたカウンターを放つレナード。
その対象となったスバルもヴィヴィオも本物だ。少なくとも俺はそう見えたし、俺が操作する幻影では絶対にない……しかし――
『ど……どうなってんだ、コイツぁ……!?』
土埃が巻き上がるとその両方の姿がブレ、消失する。
――あの二人の動き……俺から見ても本物に見えた。俺が操作していないからだけじゃなく、動きや気配そのものが真に迫っていた……!
振るう拳によって生まれる空気の流れや、呼吸のリズムすら再現する程の高精度な幻影……そんな物を作れるとしたら、それは……!
「これで信じていただけましたか?」
「――っ! クアットロ……!」
まさかシルバーカーテンの生み出す幻影がこれ程とは思わなかったが、彼女の言葉を信じるならば……いや、信じる他ないだろう。
これ程の幻術が扱えるのなら、こちらを欺くつもりならばどうとでもなるだろうし……何より欺かれていたとしても、悔しいが、それを見破る事は俺には出来そうもない。
「……何ですの? この手は。」
「うん、少なくともここにいるアンタは幻影じゃなさそうね。」
「……貴女がとことん私を信用していない事だけは分かりましたわ。」
俺がクアットロの肩に手を置き、実体である事を確かめると、彼女は呆れたように溜息を吐いた。
「――で、あたしはどうすれば良い訳?」
「あら、意外と素直ですのね?」
「悔しいけど、あんたの幻影の方が精度が上……だったらそっちに合わせた方が効率的じゃない。」
そう言ってクアットロの方を見ると、彼女はフッと笑いこう言った。
「分かりましたわ。では貴女にも見せてあげましょう……私の"劇場"を!」
最初は折角助けに来たのに露骨に疑いの目を向けて来るなんて、何て失礼な小娘かと思った。
勿論ノーヴェが言うように、まだ会って間もない相手を易々と信用するのは愚かな事。
しかし、彼女の向けて来る眼はそれ以上の疑心を持っていた。
――仇敵でも見るような眼で見て来るなんて……私、彼女に何かしたかしら?
とは言え、彼女から信用されるかどうかなんて事は私達の目的に関係無い。
丁度幻影の魔法で敵を捕らえている様だったので、少しばかり手を貸してやろうと内部の様子を確認して……思わず目を見張った。
土埃のドームが幻影である事は一目瞭然だったが、その内部には更に数十人の幻影が本物と連携して上手い事敵の抵抗を封じていたのだ。
――これ程の幻影の操作を個人の魔法で……この小娘、ただ物じゃないようね……
恐らくはマルチタスクの殆どをこの幻影に集中させる事で、この状況を維持しているのだろう。
幻影の少女達は本物の人間の様な動きで敵を翻弄し、その内部には魔力弾を仕込むと言う二重構造。
――戦闘に特化した幻影の使い方……このような物もあるのね。
これまで荒事に無縁だった私には無い発想。
手助けするつもりが、まさか彼女に手本を見せて貰う事になるとは思わなかった。
――でも……結局そこが
彼女の操作する幻影は確かに人間そっくりの動きをしている。
本物の少女達の動きや攻め方の癖をある程度模倣しているし、短時間であれば敵を完全に騙せるだろう。
しかし、操作しているのはあくまでも一人。
模倣した癖とは別に
だから私は、彼女から得た発想を基に一つ敵の眼を眩ませる仕掛けとして、彼女達の幻影を土埃の中に忍ばせる。
そしてついでに土埃の幻影を追加で重ねておく。
――初めて見た彼女達の動きの癖を私は知らない……だからこそ、彼女達の癖を完全に模倣する事は出来ない。
だけど、それならそれでやりようはある。
彼女が操作する幻影の一人、オッドアイの少女の動きに合わせるように青い髪の少女の幻影を操作する。
本物が動こうとしていたが、私の操作する幻影が割り込んだ事で様子見に切り替えたようだ。
私が操作する少女の幻影が振るう拳に合わせて、土埃の幻影を動かす事で空気の流れを表現。
加えて呼吸の音や肺の僅かな動きに至るまで完全に再現された幻影を、敵は完全に本物と信じ込んだ。
――VRゲームクリエイターの表現力を侮って貰っては困りますわ!
人間には到底出せない処理速度から生み出される幻影は、実物と見分けがつかない。
それが例え本物と違う癖を持っていたとしても、
「これで信じていただけましたか?」
「――っ! クアットロ……!」
幻影に仕込んだサーチャーで内部の様子を窺っていたであろう少女に尋ねると、先程よりは幾分かマシな目でこちらを見てきた。
――格の違いを見せつけられた、悔しげな表情……良いですわね……!
ゾクゾクとした感覚が背を奔る。
正直、自分でもちょっとアレな趣味とは思うが、持って生まれた嗜好と言う物はどうにもできないのだ。例えお父様に引かれる事があったとしても、これだけは絶対に……
「……何ですの? この手は。」
「うん、少なくともここにいるアンタは幻影じゃなさそうね。」
「……貴女がとことん私を信用していない事だけは分かりましたわ。」
肩に置かれた手の意味を問い、そう返された事で折角の余韻が冷めた。
呆れるほどに疑り深い少女の様子に溜息を吐いていると、思わぬ提案が彼女の方から投げかけられた。
「――で、あたしはどうすれば良い訳?」
「あら、意外と素直ですのね?」
「悔しいけど、あんたの幻影の方が精度が上……だったらそっちに合わせた方が効率的じゃない。」
そう言って私を見る彼女の眼は、こちらを完全に信用した訳ではなかったが……
――味方を守る為ならば信用しきれない私の幻影でさえも利用し、
そんな挑戦的な目を向けられるのも、悪くないと初めて思った。
笑みが自然に零れ、私は彼女の挑戦を受ける意味でも全力を出す事を決めた。
「分かりましたわ。では貴女にも見せてあげましょう……私の"劇場"を!」
レナード戦の決着まで書くつもりでしたがダメでした……
多分次回でレナード戦は終わります。