転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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未来を巡る戦い⑪

「……ふぅ、後味悪いな……」

「だな……」

 

魔力ダメージで気絶し、空中にバインドで拘束された少女達を見て口々に漏らす。

絵面だけ見たら、無理やり戦わされる少女を一方的にタコ殴りにしている様なものだからな……正直俺も最悪の気分だった。

 

「……で、この子?達はどうする?」

「一応無力化はしたけど、このまま放置する訳にもいかないよな……」

 

いくら気分が悪くとも、彼女達の処遇は決めなければならない。

一応こういう時は一所に集めて拘束するってのがセオリーではあるんだが……

 

「なぁ、神場。お前の造ったさっきの魔法って、効果時間はどれくらいだ?」

「んー……多分、あと10分かそこらだろうな。それが切れれば魔力のパスも復活すると思う。」

「10分か……パスが戻ったら、補助魔法もまたかかると思うか?」

「どうなんだろうな……魔力のパスが維持だけに使われてたんなら、一応は解除されたんだし、またかけなおさないといけないってのが普通だとは思うけど。」

 

こう言う事情があるから、下手な場所に集めておくのも危険なんだよな……

そんなこんなで話し合っていると、銀盾の仲間がまた一人合流してきた。

 

「おぉ! 俺が駆けつける前に終わったか。」

「神尾じゃねぇか! お前、さっきまで1対1に持ち込まれてたけど、アレはどうなったんだ?」

「ああ、それなんだけどな――」

 

 

 

神尾から伝えられた情報に、俺達は俄かに色めき立った。

 

「ナンバーズが味方!?」

「トーレに助けられた!?」

 

俺達も周囲の戦闘に関しては一応の注意は払っていたが、そんな状況になっていたとは流石に把握し切れていなかった。

 

改めて周囲を見てみれば、確かにナンバーズのものらしき戦闘の光景もちらほらと確認できる。

 

「あのブーメランのような武器は、セッテの『スローターアームズ』か!」

 

ピンク色の長髪が目立つ彼女は、飛ばした2本の刀剣のようなブーメラン……『ブーメランブレード』を自由自在に操作し、もう2本のブーメランブレードを文字通り刀のように扱い、多対一の状況もものともしない奮戦ぶりを見せていた。

 

その様子を遠巻きに見ている銀盾の仲間達は、きっと彼女に助けられたのだろう。

彼等の心境的には、自分も助けに入りたいがブーメランの飛び交う空間に飛び込む勇気はない……と言ったところだろうか。

 

他にもエアライナーの上を滑走するノーヴェや、それについて行くように飛翔するクアットロ。

更に少し遠くではチンクのIS『ランブルデトネイター』のものらしき爆発も確認出来たのだが……

 

「……なんか、チンクの背、でかくね?」

「あ、それ俺も思った。」

 

そう呟きながら全員が目を凝らす先では、()()()()()がグレーのロングコートと銀の長髪を爆風に靡かせていた。

確かに女性のロングコートと銀の長髪はチンクの特徴と一致しているが、俺達の知っているチンクはもっと小柄……更に言ってしまえば、女児のような体格だ。あんなスレンダーなモデル体型では断じてない。断じてないのだ。

 

「ねー。やっぱりあのチンク姉って違和感あるよね?」

「だよなぁ……って、ぅええ!? セイン……あれ、『白騎士』……?」

「え、えぇ……声はセインなのに、見た目ゴッツイ……」

 

背後から聞こえた人懐っこい声に驚きつつも振り返ると、その声に反してそこに居たのはごつい全身鎧に身を包み、大剣を背負った騎士の姿。

いや、より具体的に言えばジェイルコーポレーションより発売され、俺もプレイしたVR対戦ゲーム、『魔装空戦 VR』のキャラクター『白騎士』が浮かんでいた。

 

「あ、その反応。君が父様の言ってたあたし達の事を知ってる人かー。」

「ちょっと待って、声と見た目が違い過ぎて脳がバグる……!」

「あはは! これぐらいでバグるなんて、人間って不便だね!」

 

そう言ってコロコロと笑う白騎士(セイン)に、俺達は頭を抱える。

 

――くそ、脳がバグるって大変なんだぞ!? 最高評議会なら全身バグってるわ!

 

内心で悪態を吐きながらも、気を取り直して神尾がセインに尋ねた。

 

「と、ところでセインは何でそんな格好に……? まさか生まれつきじゃないよな……?」

 

チンクの見た目が違う辺り、もう何も信じられない……そんな疑心暗鬼に陥った問いかけに、セインは答えた。

 

「ん? いやいやまさか! この『白騎士』は『アバター』って言って、父様が作ってくれた戦闘用の身体だよ。元々戦えるトーレ姉とかノーヴェとかは自分の身体を再現して貰ってるんだけど、あたしって元々そんなに戦闘力無いからさ、代わりにゲームで使い慣れたキャラを再現して貰ったんだー。」

「な、成程……? スカさんもう何でもありだな……」

 

と、その説明に納得しかけたところで、俺ははたと気付いてしまう。

 

「……あれ? でもその感じだと何でチンクは……」

「触れないであげるのも、優しさなんだ。」

「あっはい。」

 

肩にポンポンと置かれたごつい手の感触に、嬉しいような残念なような複雑な心境に陥っていると、やがてセインは気付いたように拘束された少女に目を遣った。

 

「あ、君達だけでこの子達倒せたんだ! へぇ~、凄いね!? どうやったの?」

 

そう言ってテンション高めに顔を近づけてくるセイン。

 

――くっ、見た目が白騎士でなかったなら……!

 

そこはかとなく残念な気持ちを押し殺しつつ説明すると、

 

「へぇ~、そんな魔法が……! でも時間制限があるんだね。んじゃあ、あたしが運んでオットーの『プリズナーボクス』に入れとこうか? 他のとこに集めるよりも安全だよ。」

 

そんな提案を申し出て来た。

 

「良いのか? そんな雑用みたいなこと頼んでも。」

「良いって良いって、この白騎士さんに任せなさいな!」

 

結構ノリノリだな……ロールプレイとか全然気にしてなさそうだけど。

 

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうか。」

「だな。」

「良し来た!」

 

セインのISなら結界解除の手間も無いし、その方が良さそうだと考えたのだろう。

俺達が頼むと、セインは意気揚々と少女達を米俵のように担ぎ、翔けだした。

 

「やったー! これでスコアが稼げるぞー!」

 

……どうやら、ナンバーズの誰かと競争でもしているのだろう。俺達が無力化した少女達はセインのポイントになったらしい。

 

「俺達は……他の交戦中の銀盾に合流するか?」

「まぁ、これだけいれば余程ヤバいやつじゃない限り、何とかなるだろ。」

「って言っても、なぁ……」

 

先程周囲を見回した際にも気づいていたが、既に多くの銀盾仲間はナンバーズ達の加勢により助けられている。

残っているのは彼女達が加勢の必要が無いと判断したか、加勢に入れない程の激戦を繰り広げているところだけだ。

 

「……っていうか、こうしてみると白騎士以外にもゲームのキャラ結構いるな……」

「あれもナンバーズなのか? いや、でも他のナンバーズって結構戦闘要員多いよな……?」

「なんか、あの『マリッタ』動かしてるの、ナンバーズじゃない気がするんだよなぁ……めちゃくちゃRP上手いし。」

 

ノリノリな魔法少女マリッタの戦いをチラ見しつつ、一番の激戦区へと目を遣れば、そこで戦っているのは案の定。

 

「なのは達は……ああ、リオン達と交戦中か……」

「エイミィからの通信で聞いては居たけど、マジに取られちまったんだな……」

 

見る限りではなのはvsリオン、フェイトvsバルト、はやてvsクリームって感じか。

なのはvsリオンは超火力砲撃vs広範囲炎熱空間攻撃のオンパレードって感じだ。とても近付けたもんじゃない。あの周辺だけ明らかに人がいないしな……

 

フェイトvsバルトは超高速戦闘を得意とするフェイトに対し、バルトは誘導制御型の射撃魔法が得意の様だ。ただしバルトの放つ誘導弾の弾幕がえげつない。神宮寺が残弾を考えずに大盤振る舞いした時と同じくらいか……

更に言うとバルトが放つ全ての射撃魔法に凍結の性質が加わっているらしく、一つでも触れてしまえば動きは鈍り、忽ち氷像が出来上がるだろう。

当然ながら割って入るのは自殺行為だ。

 

はやてvsクリームは、若干はやてが押され気味のようにも見える。

と言うのも、クリームの速度が普通に速い。雷を纏った高速機動と、打撃技中心の近接戦闘は10年前のフェイトに似た戦い方だ。

はやても空間攻撃を始めとした多彩な魔法でやり合ってはいるが、防御を障壁に頼らざるを得ない現状、障壁が破られるより早くクリームを倒さなければ拙いだろう。

 

「行けるとしたら……ギリギリ、はやてのとこか……?」

「いや、寧ろはやての魔法に当たりそうだな。相手に速度がある分、空間攻撃(デアボリック・エミッション)の頻度が高い。」

「それに行けるかどうかで判断している場合でもなさそうだ。障壁で攻撃を受けているはやては勿論だが、フェイトも少し間違えば一気に落とされかねない……」

「たしかにな……だが、二人同時に助けに入るなら、こっちも人手がもう少し欲しい。差しあたっては……」

 

そう言って神谷が視線を向けたのは、神宮寺と皇だった。

 

「神宮寺は……普通に1対多でやり合ってるな。」

「アイツの能力、そう言うのにも強いからなぁ……」

 

そもそも執務官として俺達よりも長く戦ってきた関係で、能力も相まって普通に強いからな。

今でも5対1と言う状況で一切引けを取っていない。

 

「だが、神宮寺の王の財宝は残弾を消費する。加勢に入るなら早い方が良い。」

「皇の方はどうだ?」

 

神田の声で皇の方を見ると、向こうは向こうで俺達とは少し違う状況だった。

 

「皇が戦ってるのは、少女じゃなくて他の銀髪オッドアイだな……無限に再生しない代わりに、一人当たりの戦闘力が高い。その上……」

「あの敵、管理局に入ってたスパイって奴か……」

 

それが数人がかり……皇の能力は長期戦向きだが、それでも立ち回りを間違えれば危うい。

 

「……どっちから行く?」

「神宮寺だな。」

 

俺の問いに、神谷は即決で答えた。

 

「理由は?」

「皇の方は加勢に入っても敵を倒すまでに時間がかかるが、神宮寺の方は神場の魔法で再生と強化を無効化すれば直ぐに終わりそうだからだ。」

「成程な、了解!」

 

その理由を聞いて全員が納得を示す。

そしてそれを見た神谷が、銀盾全員に念話を繋いだ。

 

≪現在交戦中でない銀盾は、一度俺の作戦に耳を貸してくれ! 他の銀盾に加勢しようと思っていた者はそのままで構わない!≫

 

そして、先程俺達が話し合った内容が共有される。

 

≪最後に改めて順序を共有するぞ。先ずは神宮寺の敵の再生と強化を無力化、即座に捕縛し、そのまま皇の加勢に向かう。そして、全員ではやての加勢に向かう! 良いな!≫

≪≪≪≪≪おう!≫≫≫≫≫

 

はやてを助ける事が出来れば、フェイトやなのはの助けにも向かえるかもしれない。

そしてなのはを助ける事が出来れば、聖女もきっと倒せる筈だ。

 

事件解決へ向かうロードマップの一歩目として、俺達は神宮寺のもとへ翔けだした。




次回ははやてさん視点になると思います。
以下、加勢に来たナンバーズ一覧。

トーレ:アバターはトーレそのままの容姿。
    滅茶苦茶強いし速い。ただフェイトより若干遅い。
    純粋に戦闘が上手く、現在はシグナムと共闘中。

チンク:なんかでかくね?(身長)
    シェルコートのAMFで攻撃を防ぎ、
    「スティンガー」とランブルデトネイターで攻撃と同時に死角を作り、
    多対一にならないよう器用に立ち回っている。
    アバターに空戦適性を付けて貰っており、空戦も可能となっている。

セイン:見た目は『魔装空戦 VR』の『白騎士』。
    アバターの容姿は全身をごつごつした鎧で覆った騎士。
    話し方とかはゲームキャラを意識してない素の状態な為、会話すると脳がバグる。
    戦い方は鎧の防御力と大剣の重量を活かした突撃が主体。
    大剣にロストロギアが組み込まれている為、一撃の威力は途轍もない。
    チンク同様アバターに空戦適性を付けて貰っている為、空戦も可能。

ノーヴェ:容姿はノーヴェそのまま。
     チンクやセイン達が空戦適性をアバターに付与して貰っているのに対し、
     ノーヴェはそれらを付与して貰っていない。
     理由は自分に合ったブレイクライナーによる戦闘に集中するため。

クアットロ:容姿はクアットロそのまま。
      アバターに空戦適性を付与して貰っており、本来よりも飛行能力が向上している。
      戦闘では主にサポートに回っているが、それは自身の劇場に囚われた敵を観察する趣味を兼ねている為。味方でも性格が良い訳ではない。

オットー:容姿はオットーそのまま。
     あまり戦闘や会話をせず、自分の役割(無力化した敵の捕縛)を淡々とこなしている。
     生み出される際にクアットロが感情を排除するプランを提案しなかった為、感情表現はアニメよりも若干豊か。

セッテ:容姿はセッテそのまま。
    刀剣のようなブーメランを投げまくる戦い方な為、ISで制御されていると分かっていても巻き込まれないか不安になる。
    4つ操作可能なブーメランブレードの内、2つを常に制御。
    残る2つを手元に確保しておき、状況に応じて近距離と中・遠距離を使い分けている。
    ブーメランブレードにロストロギアが組み込まれている為、非常に危険。

他にはセバスチャンの使い魔組がアバターで参戦しています。(設定は作ってあるけど描写が入るかは未定)
上記以外のナンバーズはジェイルコーポレーションの防衛及びジェイル・スカリエッティやアバター操縦中のナンバーズ達本体の護衛、または新作ゲームの開発監督等の理由で会社に残っています。
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