サブタイトルを変更しました
「――遠き地にて、闇に沈め!」
≪≪≪Diabolic Emission.≫≫≫
2人のリインフォース達との同時詠唱で行使されるのは、私が比較的使い慣れた広域殲滅魔法『デアボリック・エミッション』。
指定した範囲を攻撃可能なこの魔法は、主に多数の敵を一度に倒す為に使われるものだが、私の誘導弾よりも高速で動き回る相手に対しても比較的有効と言える。
そんな魔法を同時に3発、それも位置をそれぞれズラして発動する事で命中率を上げ、例え当たらなくとも敵の機動やペースを乱す事が期待できる。
――筈だった。
「く……っ! これでも当たらんのか!?」
敵の軌道を予測し先回りするように発動したにも関わらず、同時に発生した3つの巨大な力場の位置を瞬時に把握、安全に回避できる中から更に反撃に最適なルートを見抜いて一気に接近してくる。
「っ! ――
≪Panzerschild.≫
歯の隙間から勢いよく空気を吐き出した様な声と同時に放たれたクリームちゃんの拳を私の張った障壁が受け止め、重い衝撃が伝わる。
≪今や!≫
≪Bloody Dagger!≫
≪Frigid Dagger!≫
動いている相手に当てられないのなら、動きが完全に止まる一瞬――攻撃の瞬間にカウンターを狙うと言うのは定石だ。
それも使用した魔法は多数の短剣状の魔力刃で敵を包囲するブラッディダガーと、それをリインフォースⅡが独自にアレンジしたフリジットダガー。
総数60を超える短剣群に一瞬で包囲されれば、流石のクリームちゃんでも動きを封じられるだろう。
そう考えた刹那――
≪ッ! はやて、
「な――ッ!?」
リインフォースの声に従って背後に目を向ければ、そこには拳に雷を集めて振りかぶるクリームちゃんの姿。
彼女が生前持っていたと言う
――んなアホな……!
この眼で見た光景が信じられない。だって、ブラッディダガーとフリジットダガーの包囲は破られていないのだ。
転送術式の気配も無かったし、そもそもそんな術式を構築できるような時間なんて与えたつもりもない。
――まさか、私が攻撃を受け止めたと認識した時には既に……!?
信じがたい現実に停止しそうになる思考を無理やり動かし、ギリギリのところで防御用の魔法を構築、発動させる。
≪Panzerhindernis.≫
咄嗟に張ったバリアタイプの障壁が彼女の攻撃を受け止めた次の瞬間、私は障壁越しにそれを見た。
――速い……! もう、視界から消えた!
衝撃が障壁を揺らし、彼女の拳が纏っていた雷が障壁に罅を入れたその瞬間、既に彼女の姿はそこになく……
――これは、以前なのはちゃんに聞いた事がある……
振り返った背後、先程よりも激しい放電現象を起こした右足を今まさに叩き込まんとするクリームちゃんの姿は、
――"10年前のフェイトちゃん"と……!
ジュエルシード事件の際になのはちゃんと戦った、かつてのフェイトちゃんを私に幻視させた。
「くっ……! 想定よりも少し手間取ったな!」
神宮寺を取り囲んでいた少女達は、俺達が相手していたのと同じように神場の魔法で即座に無力化が出来たものの、問題は皇が相手していた管理局に入り込んでいたスパイの方だった。
正式な訓練を積んでいなかったらしい銀髪オッドアイ達は割と早い段階で何とかなったんだが、アイツだけは少々都合が違ったらしい。
どうやら元々は真っ当な管理局員だったのだろう、俺達よりも長い間訓練を積んでいた事もあり、捕らえるまでに時間がかかってしまった。
「急ぐぞ! 早くはやてとフェイトの加勢に――!」
神宮寺と皇に訳を説明し、急いではやて達の元へ飛翔し始めたその瞬間……俺達の背後から多数の少女達が俺達を追い抜いて、はやてとフェイトの方へと別れて向かって行った。
「お、おい! 拙いぞ! 今のって……!」
「あの数……まさかプリズナーボクスから抜け出したのか!?」
その姿は間違いなく、俺達が戦っていた敵の少女達の物だった。
――あかん! もう障壁は持たん!
さっき拳の一撃を受けた際、私の障壁には既に大きな罅が入っている。
そんなところに蹴りを……それも先程よりも明らかに多い魔力を流されては、障壁が砕けるだけでは先ず済まない。
「くっ――!」
≪Panzergeist.≫
フィールドタイプの障壁を身に纏い、念の為に腕で頭部をガードする。
そうして衝撃に備える事、数秒――
「どう言うつもりだ?」
突然聞こえたクリームちゃんの声。
――な……なんや? これは、一体何が……
いつまでも攻撃が来ない事も含めて疑問に思い、腕のガードを下げてみれば、そこには意外な光景が広がっていた。
「……お前達、聖女様に逆らうつもりか!」
そこには、私を守るように立ちはだかった十数人の少女の背中と、彼女達に対して怒りを露わにするクリームちゃんの姿だった。
――彼女達は間違いなく、聖女の……仲間割れか……?
私を守っているのは、聖女の手によってリンカーコアを埋め込まれた生死体の少女達で間違いない。
だが、彼女達は聖女の命令には絶対服従だ。反旗を翻せば間違いなく人格を弄られ、忠実な下僕に作り変えられてしまう。
――だと言うのに、何故……?
私のそんな疑問は、クリームちゃんの問いに対する彼女達の返答によって氷解した。
「「「「「「「逆らうも何も、私は一度とて奴の軍門に下った覚えはないが?」」」」」」」
「何だと……?」
「「「「「「「それと……」」」」」」」
彼女達は全く同じ返答を同時に言い放ち、そして全く同じ構えを取りながら続けた。
「「「「「「「いい加減、その身体を
「なっ……! そうか、貴様等……いや、貴様は――」
私と同様、彼女達の正体に気付いたクリームちゃん……いや、敵の少女は全身に雷を纏い、憤怒と共に叫ぶ。
「――クリーム!」
「「「「「「「その名で呼ぶな!!」」」」」」」
……えぇ、可愛い名前やん。クリームって。
「――どうやら、間一髪って所ですわね。」
地上に作られたプリズナーボクスの檻の中にて、上空に飛び立った少女達を眺めながらクアットロは胸をなでおろす。
そんな彼女の下へゴツイ鎧を纏った白騎士……セインが降り立ち、その手に抱えていた少女達を地面に下ろしながら言った。
「お疲れ、クア姉! あ、これ、最後の追加分ね!」
傍にはヴィータの姿もあり、セインが地面に下ろした少女達を見ると、
「これで最後か……よっ、と。」
彼女達の中から次々にリンカーコアを摘出、隣のオットーの持つケースへと入れていく。
それを確認したクアットロは、
「お疲れって……そう言う言葉は全部終わってから言って下さらない?」
と先程のセインの言葉にツッコミを入れつつ、手に持っていた小さな端末を少女達の胸元……心臓付近の位置に取り付けていく。
そして、ジェイル・フォンを取り出すと通話先に向けて合図を送った。
「こちらの準備は整いましたわ。」
『ありがとう、我が愛娘達よ。では……これで最後だ。』
通話先から微かにカタカタとパネルを叩く音が聞こえ……やがて、『ッターーン!』と一際大きなタイプ音が聞こえたかと思うと、傍らで寝ていた少女達の身体が一斉にビクンと跳ね上がり……同時に立ち上がった。
「……お身体の調子はどうですの?」
「「「「「「……うむ、問題無いようだ。これならば戦闘も可能だろう。」」」」」」
クアットロの問いかけに、少女達は軽くストレッチするように身体を動かしながらそう答える。
「そうですか。他のお二方にも説明いたしましたが、今の貴女が使っている身体は貴女達の為に作られた特別性ではありません。貴女が今まで使っていた『リオン』さんと同じ感覚で戦う事は――」
「「「「「「勿論承知の上だ。忠告はありがたいが、事態は一刻を争うからな……済まないが、早速向かうとしよう。」」」」」」
そう言って少女達が一斉にその場に居たチンクに向けて片手を差し出すと、チンクは彼女達全員の手をしばらく握り、やがて離した。
「そうですか。……武運を祈りますわ。」
「「「「「「ああ、我等自身の失態を挽回する機会をくれた事も含めて感謝する!」」」」」」
そんなやり取りを最後に、少女達……最高評議会議長は『リオン』を取り戻す為に飛翔していった。
ヴィータと敵将の一人の戦闘はカットとなりました。
ヴィータの魔法って殆どグラーフ・アイゼンありきなので、あの将からすると相性最悪なんですよね……ヴィータの魔法をラーニング出来てもアイゼンが無いと使えない問題。
ちなみに補足として、クリームの今の速さは
今のフェイト>クリーム≧10年前のフェイト
って感じです。