転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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2023/09/02 -追記-
サブタイトルを変更しました


はやてとクリームの戦い②

私の眼前数十m先で少女達が戦っている。

一人は全身に纏った雷の魔力で身体のスペックを引き上げ、高速戦闘をこなす少女……クリームちゃんの身体を使っている敵の少女だ。

そして彼女に対抗するのは10人程の少女達……敵が使っていた生死体の少女を何らかの方法で操作している、本物のクリームちゃん達だ。

彼女達はその数的有利を活かして敵の少女を私から引き離し、遠距離主体の攻撃で敵の少女を何とか食い止めていると言った状況だった。

 

クリームちゃん達から告げられたタイミングを逃すまいと、夜天の書とシュベルトクロイツを構えながらその戦闘を見ていた私の背後から、突然声がかけられた。

 

「はやて!」

「! 皆……そうか、もうそっちの方は片付いたんやな。」

「あ、ああ。まだ全部って訳じゃないとは思うが、粗方な。ところで、これは……どういう状況なんだ?」

 

背後からの声に振り向くと、そこには私を助けようと駆けつけてくれたのだろう銀盾の皆が居た。

彼らの顔には一様に戸惑いの表情が浮かんでおり、先程まで敵対していた筈の少女が私を庇っている現状を上手く整理できていないようだ。

とは言えそれも仕方のない事。かくいう私だって、今しがたの彼女達のやり取りで漸く状況を理解できた所なのだ。

普段であればしっかりと情報を共有するところだが、私はなるべく戦闘から目を離す訳には行かない。直ぐに視線を戻し、そのまま話を続ける。

 

「説明して欲しいって気持ちはわかるけど、状況が状況や。先ずは()()()()の援護に入ってやってくれへんか? 詳しい事は戦いながら念話で伝えるわ。」

「……わかった! 取りあえずは味方なんだな?」

 

神谷君から最後の確認とばかりに投げかけられた問いに私が首肯で返すと、神谷君は「よし」と一言告げてクリームちゃん達の元へ飛翔する。

他の銀盾達もそれぞれ思うところはあるようだったが、神谷君に続いて戦場へと向かって行く。

と、その途中で見かけた皇君に、私は声をかける。

 

「あ、皇君!」

「え? 俺か?」

「クリームちゃんの身体は特別性で、()()()()()()()()()って話や。魔法剣の属性は電気以外で頼むわ。」

「はぁっ!? なんだその滅茶苦茶な性質!?」

 

唐突に齎された情報に、皇君が眼を見開く。

彼女の戦い方に必須だから生前の特異体質を再現したと言う話だったけど、実際滅茶苦茶なレアスキルだ。

電気の魔法が一切効かないと言うその性質のせいで、彼女の相手をフェイトちゃんに任せられなくなったのだから。

 

「……ッ! そうか、それでフェイトが()()()なのか! しょうがねぇ……『魔法剣』:バインド型、『属性指定』:氷結!」

 

直ぐにその辺りの事情を察したのだろう、皇君は両手に持っていた電気属性の魔法剣を解除し、新たに氷結属性の魔法剣を生成すると再び戦場へ向けて飛び出した。

 

 

 


 

 

 

≪――なるほど、つまり今のクリームの身体を操作しているのが敵で、敵だったあの少女達を今操作しているのが本物のクリームって事か。≫

≪そう言う事や。方法については私も聞かされてへんけど、クリームちゃん達は、クリームちゃんの身体を自分達の手で取り戻す為にそうしてるって言うとった。≫

≪そう言う事だったのか。≫

≪まるで将棋だな。≫

 

はやてからの念話で状況の確認を済ませつつ、俺達はクリームの姿をした敵に対して絶え間ない攻撃を浴びせ続けている。

と言うのも、敵の速度が俺達の思っていたよりも速く、ペースを握られれば間違いなく各個撃破されるだろう事が明らかだからだ。

幸か不幸か、アイツは聖女からはやての相手をするように指示を受けていたのだろう、なのはやフェイトの方へ向かう気配はないようだ。

 

≪とは言え、注意はしておくべきだがな。≫

≪分かってる。どの道、この包囲を抜けられたらはやてが危ないんだ。気を抜くなんて出来る訳もねぇ。≫

≪……神宮寺を呼び戻すか? 10年前にフェイトを一度追い詰めたアイツなら、高速戦闘の相手も何とか出来るかも……≫

≪いや、向こうの状況も決して良いとは言えない。やはり、ここは俺達で相手するしかないだろう。≫

 

神宮寺は今、フェイトの方に救援に行っている。

フェイトが相手しているバルトの姿をした敵は、大量の誘導弾でフェイトを追い詰める戦闘スタイルだ。その操作制度も高く、氷結の属性まで付いていてはいくら圧倒的な速度を持つフェイトでも、いつ落とされてもおかしくない。王の財宝によって一度に多数の魔力弾を射出出来る神宮寺が、敵の誘導弾を消す等の補助をしてようやく攻撃に転じれるのだ。

よって、神宮寺を頼る事は出来ない。それに――

 

≪それに、神宮寺に頼ってばっかじゃ、『ミッドチルダの銀盾』なんて呼んでくれてる皆に顔向けできねぇだろ!≫

≪Short acceleration.≫

 

念話で全員にそう伝えるのと同時に、強化魔法を発動。一瞬だけブーストした超速度で以て敵の少女に接敵し、両手の魔法剣を振り抜く。

 

「――っ!」

「ちっ、やっぱり反応速度も段違いって訳か……!」

 

死角からタイミングをズラして放った二刀は、真横に振るわれた一太刀目を躱され、二の太刀の切り上げをシールドタイプの障壁で受け止められる。

氷結の魔力が障壁を凍らせ始めたと同時に、込められていたバインドの術式が少女に殺到するが、それも一瞬で見切られて距離を取られた。

……が、追撃として両手の魔法剣を投擲し、即座に生成した魔法剣『氷結:砲撃』で再び斬りかかると、それを防いだ障壁が軋むような音を発する。

 

そして先程までこちらに目もくれなかったクリームが、初めて敵意を滲ませた眼で俺を睨んだ。

 

「貴様……! 良いだろう、そんなに相手をして欲しいと言うのなら先ずは――」

「私を忘れて貰っては困るな!」

 

それを好機と捉えたのだろう、本物のクリーム達が周囲から一斉に魔力を込めた殴打や蹴撃を浴びせようと迫る。しかし――

 

「貴様は後回しだ! その身体では、大した力も出せまい!」

「ぐっ……!」

 

数の利をいくら活かしても、本来のクリームの速度を手にした敵にはかすりもしない。

そしてその一瞬で、奴は俺の背後に回り込んでいた。

 

「しまっ――!」

 

咄嗟に振り返った俺の視界に映ったのは、今まさに放たれようとしている彼女の脚に膨大な雷が集まっているところだった。

 

「これで……!? ――チィッ!」

 

こちらに雷を纏った蹴りが命中するその一瞬前に、彼女は突如として上空へと飛翔する。

その背後から、速度を重視した直射弾が無数に現れ――

 

「グワーッ!」

「す、皇ィーーー!」

 

俺に命中した。

 

≪悪い! 皇! お前を狙った訳じゃ――≫

≪謝罪はいいって、助かった! サンキューな、神尾!≫

≪……ああ!≫

 

実際、さっきの蹴りを受けていたらこの程度のダメージでは済まなかっただろう。

10年前のフェイトとの戦いで身を以て知っているが、電気の性質を帯びた攻撃を受けると魔力の流れが阻害されて少しの間魔法の発動が不安定になる。

加えてあの少女の攻撃手段が格闘と言う、連撃に適した戦い方をする以上、一発でも喰らえば立て続けに攻撃を浴びせられる事は目に見えている。

 

≪それに、今ので光明が見えたからな……!≫

≪光明? ……何のことだ?≫

≪アイツの弱点も、フェイトと同じ……って事だ。≫

 

もろに直撃した俺が致命的なダメージを負っていないように、先程神尾が放った魔力弾の威力はそれ程大きくはない。

込められた魔力も同様で、それはアイツも感知していた筈だ。

だが、奴はそんな魔力弾も()()()()()()

俺は胸中に抱いた確信を伝えるべく、声を張り上げる。

 

「皆ァ! 多分誰しも元々考えていた事だと思うが……今の動きで確信に変わった! 耐久力と速度は両立し得ない! アイツもその例に漏れず、速度特化の紙防御型だ! 当てれば倒せるぞ!」

 

そう、フェイトが速度を引き上げる為に装甲を削ったように、アイツも同様の代償を払ってあの速度を出していると考えるのが自然だ。

その証拠に、俺の言葉を聞いたアイツの表情が苦々しく歪む。

まさに『こんなに早く露見するとは思わなかった』とでも言いたげに。

 

「なるほど、当てれば良いんだな! ……どうやって!?」

 

……まぁ、10年前と同じく、結局それが最大の課題な訳なんだが。

 

 

 

≪――それについては、私が力になれそうだ。≫

 

そう俺達に声をかけて来たのは、あの身体の本来の持ち主であるクリームだった。

 

≪彼奴が使う魔法は私が使う魔法と同じだ。それに、戦闘の運び方も似通っている。……どうやら、何らかの方法で私の戦い方か記憶の一部を、直接リンカーコアにインプットされたようだな。≫

≪なるほどな……≫

 

彼女の言いたい事は分かる。

確かにクリーム本来の戦い方をコピーされたと言う事は脅威ではあるが、逆に言えばクリームには奴の手札が全て透けて見えていると言う事だ。そこに付け入る隙があると言う事なのだろう。

 

≪だから私がここぞと言うところで奴の動きを阻害する。お前達はその隙に奴を捉えるのだ。今私が使っている身体を無力化した魔法でな。後ははやてが止めを刺せるだろう。≫

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