転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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前話3話分のサブタイトルを変更しました。
(今何話目だっけ……?)って毎回確認するのが面倒だったので……


フェイトとバルトの戦い①

時は遡り、数十分前――

 

戦闘空域を覆い尽くさんばかりの誘導弾群に包囲されているフェイトは、迫る誘導弾をザンバーフォームの状態のバルディッシュで切り裂きながら、速度を活かした回避に徹しつつ反撃の隙を伺っていた。

 

「中々しぶといな……だが、もう時間の問題だろう。既にお前に逃げ場はないのだから。」

 

そんなフェイトの様子を見ながら、バルトの姿の敵は()()()()()()()()()()()()()()絶えず誘導弾を精製し続けている。

フェイトがいくら切り払っても、周囲の誘導弾の数が減らないのはこの為だった。

 

そして、彼女が言う通り、既にフェイトに対して全方位から誘導弾が向かっており、回避する隙間さえ見当たらない。

 

「くっ……! 姉さん!」

 

苦い表情でフェイトは彼女の姉であるアリシアに呼びかける。

 

<また!? 大丈夫なの、フェイト……これでもう――>

<でも、やるしかないから……!>

<……そうだよね、分かった! いつでも良いよ!>

<ありがとう!>

 

そして、全方位から向かって来る誘導弾の壁の一角へとその左腕を向け、手の先に激しい雷光が迸る。

 

「プラズマスマッシャー!」

≪Plasma Smasher.≫

<プラズマスマッシャー!>

 

電気の性質を帯びた砲撃はアリシアの魔力と混ざり合い、拡散する砲撃へと変化する。

放たれた一撃は広範囲の誘導弾を消し飛ばし、フェイトの前に道を拓いた。

だが――

 

「ふぅ……ふぅ……!」

<フェイト……やっぱり魔力が、もう……!>

「大丈夫……! まだ、やれる……!」

 

包囲を抜けたフェイトは、僅かではあるが息が上がっていた。

確かに彼女の言う様に、まだ少しの間は戦えるだろう。しかし息が上がっていると言う事は、即ち魔力の底が見えたと言う事だ。様子を窺っていたバルトの表情に、冷酷な笑みが滲む。

 

「フッ……時空管理局の執務官と言えど、この程度か。存外、大した事は無いな。」

 

勝ち誇ったような挑発の言葉には乗らず、あくまでも反撃の好機を窺い続けるフェイト。その姿が気に食わなかったのだろう、敵のバルトは今度こそ確実に仕留めるべく誘導弾の軌道を制御しようとして――

 

「借り物の力でよくもまぁ、そこまで粋がれるモノだ。」

「――ッ、誰だ!」

 

その背後に回り込んだ()()()()()の声に振り返った。

 

「その身体の本来の持ち主だと言えば、わかるだろう?」

「貴様……――ふん、貴様こそ借り物の身体で何をしに来た。まさか、そんな貧弱な身体で私に戦いを挑むつもりではあるまい?」

 

少女……バルトの言葉に一瞬その表情を歪めた敵のバルトだったが、彼女の姿を見てそれが生死体の少女の物である事に気付くと一転して余裕の笑みを浮かべた。

彼女が今使っている身体では、バルト本来の実力が発揮できない事を見抜いた為だ。

そんな敵の言葉に、バルトは直射型の魔力弾を一発放った。

 

「! ……これは何のつもりだ?」

 

見るからに全力で放たれた訳ではないそれを誘導弾で打ち消し、敵のバルトはその行動の意味を問う。この距離まで近付いておいて、倒す事を目的としないこの一発にどれほどの意味があるのかと。

 

対してバルトの返答は単純な物だった。

 

「何、()()()()()()さ。今は廃れた文化だが、昔はよくこうして敵に()()を申し込んだものだ。」

「決闘、だと……?」

「おや? もしや、決闘の意味を知らないか……教えてやってもいいが――」

「下らん挑発だな。そうやって私の注意をフェイトから離し、その隙に救出でもしようと言う魂胆だろう? その手には乗らん。」

 

彼女はこうしてバルトと会話している間も、全ての誘導弾の制御を絶えず行っていた。

お前の目論見通りにはさせない……そんな声さえ聞こえてきそうな視線を受けたバルトは、感心した様な表情で答えた。

 

「おや、流石にバレたか。だが、もうそんな事はどうでも良いのだ。――既に()()()()()()()()()()()()()()()()()からね。」

「何……ッ!?」

 

少女が慌てて振り返ると、そこに広がっていた光景は先程とまるで変っていた。

 

 

 


 

 

 

「はぁ……はぁ……ありがとう、神宮寺……」

「あ、ああ……まぁ、俺だけの力って訳じゃないんだが……――なぁ、()()()()は俺達の味方、って事で良いのか?」

 

そう言って私の周囲を見回した神宮寺が、そこに居並ぶ少女達について私に質問してきた。

と言っても、私もこの状況に関しては何も知らない。神宮寺と協力して私を助けてくれた事は知っているけど、彼女達は元々聖女の仲間が使っていた生死体だったはずだ。

そんな私達の疑問に答えるように、少女達の一人が私達の近くへやって来て、理由を説明してくれた。

 

 

 

「――そうだったんだ、スカリエッティ博士が……」

 

リンカーコアを取り除いた生死体達に取り付けた端末を通して、最高評議会が本来使っている身体……バルトのように遠隔で操作できるように手を貸してくれたらしい。

生死体の一つ一つのスペックはリオン、バルト、クリームそれぞれには到底及ばないけど、そこは数で補うようだ。

現に今も私達の周囲ではこうして話しているバルト以外に、9人のバルトが敵の放つ大量の誘導を押し留めてくれている。

 

「成程な、確かに生死体もリオン達の身体も作ったスカリエッティなら、そう言う事も出来るか。」

「ああ、それぞれの最大魔力発揮値が低い為に決め手には欠けるが、こうして君達のサポートに徹するならば十分可能だろう。……ところでテスタロッサ執務官、魔力の調子はどうかね?」

「はい、もう大丈夫です。姉さんが回復を助けてくれているので……」

「そうか、それは何よりだ。」

<私の回復を当てにするにしたって、今回はちょっと無茶し過ぎだよフェイト!>

<ごめん、姉さん……いつもありがとう。>

 

神宮寺達が助けに来てくれてからというもの、ずっと私の魔力が回復する手伝いをしてくれた姉さんに内心で礼をする。

さっきの戦闘……正直、誘導弾に包囲されたあの状態が続いていれば危なかった。

逃げ道を塞がれ、砲撃を何度も撃つ事を強要され、じわじわと追いつめられていく閉塞感と、それに伴う焦燥感……

ただでさえなのはやはやてに比べて魔力量が少ない私にとって、やはり長期戦は避けたいところだと言うのに。

 

「ところで、あの敵……私の身体を使う敵に関してだが、今まで確認した魔法は何があった?」

「先程の誘導弾と、()()()()の二つだけです。」

「……そうか、分かった。」

 

氷結の誘導弾は確かに厄介だが、そもそもそう言う状況に追い込まれた原因は彼女の使う氷の障壁魔法の方だった。

あの魔法さえなければ、私は最初の数秒で決着をつけられただろう。

 

「まさかフェイトをたった二つの魔法で追い詰めるとは……そんなにヤバいのか? その氷の障壁って奴は。」

「いや、どちらかと言えば相性だな。氷の障壁は私の得意としていたオリジナルの防御魔法で、一撃で破壊しなければ、空気中の水分と魔素を取り込み一瞬で再生してしまうと言う性質がある。それに加えて表面から誘導弾を精製出来る上に、強度も並の魔導士が張るプロテクションの数倍はある。先程のテスタロッサ執務官のような状況に持っていかれた場合は遠距離から砲撃で撃ち抜くしかないが、誘導弾を防御に使われれば、障壁に届く頃には威力も大幅に落とされる……近接~中距離を主体に戦うテスタロッサ執務官には、やりにくい相手だっただろう。」

 

バルトの説明は、まさに先程の私の状況を的確に表していた。

私も遠距離攻撃の手段は当然持っているが、それが届く前に割り込んだ無数の誘導弾がその威力を散らしてしまう。

なのはの砲撃なら強引に撃ち抜けるだろう、はやての空間攻撃なら直接敵を狙えるだろう。ただ、私の手札では一筋縄ではいかない相手と言えた。

しかし――

 

「はい、ですが……少しだけ時間を稼いでいただければ、今度は突破できます。――必ず。」

 

既に解決策は浮かんでいた。

ただし、それには多少の時間を要するのだ。

軌道の計算と、魔力の集中に。

 

「ほう……そこまで言うのなら、君の考えを信じよう。正直、今の私の身体ではそれは厳しいからね。」

「俺は……一応倒すだけなら大丈夫だと思うが、それにはなるべくまだ温存しておきたい"切り札"を使う事になる。勿論いざとなれば遠慮なく使うが、ここはアシストに回ろう。」

「では、この後の作戦は念話で共有しよう。――敵もようやく、こちらの状況に気付いたようだからね。」

 

そう言ってバルトが指し示した先には、既に氷漬けにされた一人の少女と、苦虫を嚙み潰した様な表情の敵の姿があった。

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