転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ちょっとプロットを弄ったので変な所あるかもです。


なのはvsリオン

フェイトの戦闘がもうそろそろ終わると言う頃、なのはの勝負もまた決着を迎えようとしていた。

 

つい先ほどまで魔法の応酬が続いていた空域には、今は不気味な静寂が広がっている。

そこに浮遊するなのはと敵の少女は互いに魔力を高めながらも、にらみ合う様に向かい合ったまま動かない。

 

しかし、遠目に見れば膠着状態と捉えてもおかしくないその状況は、その実決して互角と呼べるものではなかった。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

向かい合う少女の内の片方は既に消耗を隠す事も出来ず、荒い呼吸は収まる気配もない。

苦し気に敵を見つめる目の片方も閉じかかっており、その額には汗がにじんでいる。

 

「……」

 

そして対峙するもう一方の少女は息を切らす事も無く悠然と佇んでおり、その眼はしっかりと敵の少女を見据えている。

例え魔法を扱えない一般人にも、この勝負の行く末は一目瞭然と言えた。

 

数分前になのはの元へ駆けつけたリオン達は、先程まで行われていた激しい戦闘により最初は10体だった生死体を4体まで減らしており、更にその4体も残っている魔力はギリギリだ。

もはやなのはの援護をする事もままならないリオン達が緊張の面持ちで見守る中、決着をつけるべく少女は余裕をもって杖の先端を向けた。

 

「――ここまで、みたいだね。」

「くっ……まさか、これほどとは……! やはり、聖女様の懸念は正しかったか……!」

 

そう、敵の少女を一方的に追い詰めていたのは、高町なのはの方だった。

『リオン』の身体を使っている少女には常に聖女から魔力の供給がされているにもかかわらず、その圧倒的な魔力と魔法によりこの状況を成立させていた。

 

既に構えたレイジングハートの穂先には収束した魔力の輝きが灯っており、今の少女にはその砲撃を躱しきる事は不可能だ。何故ならば――

 

「レイジングハート。」

≪Yes, my master. ――Asteroid Breaker.≫

 

今なのはが構築している魔法は、彼女自身があらゆる敵を想定して開発してきた魔法の一つであるアステロイドブレイカー……最速秒間1秒というハイペースで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

チャージに時間こそ使うが、一度構築を終えてしまえば術式に込めた魔力を消費しきるまで、好きなだけ砲撃を放てると言う絶対的なアドバンテージを得られる。

 

そして、そのチャージの時間を稼ぐ為に6体の生死体を犠牲としたリオンは、そんななのはに警告の意味を込めて念話を繋ぐ。

 

≪油断するなよ、高町教導官。既に伝えた通り、私の持つ魔法の中には――≫

≪……はい、わかってます。彼女にはそれしか残されていない事も……その結果、リオンちゃんの身体も無事では済まない事も。≫

≪ならば良い。あの身体の事は気にするな。……十分メンテナンスで修復可能なのだからな。≫

 

リオンがそう伝えた直後、まるでそれが合図だったかのように周囲の気温が急激に上昇する。

少女を見れば、その全身から噴き出した魔力の炎が彼女の周囲に渦巻いている。

 

それはまるで、人間のサイズにまで縮小された太陽の様な姿だった。

 

≪……『オーバーロード状態』だ! 来るぞ!≫

「『Vortex Flare Overload Shift』!」

 

リオンの警告と同時、敵の少女が唱えたのは炎熱の空間攻撃魔法――炎の渦が形作る巨大な球体状の破壊空間が、連続的に複数展開された。

 

「アステロイドブレイカー!」

≪fire!≫

 

そして無数に生み出された空間攻撃の術式に対し、なのはのアステロイドブレイカーが連続して放たれる。

 

≪fire!≫

 

砲撃と空間攻撃が干渉する毎に、大規模な魔力爆発が引き起こされる。

 

≪fire!≫

 

莫大な熱量を伴う風が撒き散らされ、なのはの髪が靡く。

 

≪fire!≫

 

そんな姿も直ぐに魔力爆発で生じた煙に包まれ、互いに互いの姿が見えなくなる。

 

≪fire!≫

 

それでも攻防は続く。互いに互いを魔力感知で知覚できる射程に収めていたが故に、空間攻撃と砲撃はぶつかり合う。

 

≪fire!≫

 

もう何度目かの爆発。それにより生み出された熱風を浴び、リオンの首筋に汗が伝う。

それは通り抜けた風の熱さからではなく、その瞬間に思い出した"ある常識"と、脳裏に過った不安からだった。

 

――このままでは拙い……!

 

このままでは、なのはは負ける可能性が高い。

『リオン』の身体を使う敵にではない、その先に待つ聖女との戦いで()()()()()()()が出ると言う確信があったのだ。

 

――私しかいない……今の敵に対して、()()()なく戦えるのは……!

 

()()()()()なのはに、これ以上あの敵と戦わせる訳には行かない。そう考えたリオンは、少女を射程に収める為に接近を試みるが……

 

――ダメだ。これ以上近付けば、今の身体が持たん。

 

直ぐにそれ自体が不可能である事を察して躊躇する。

試しにと伸ばした手には、火傷の様な痣が赤く浮かび上がっていた。

 

――近付くだけでこれ程の魔力ダメージを受けるか……私もオーバーロードを使えれば良いのだが、アレはあの特別性の疑似リンカーコアがあればこそ。この身体では……

 

手の平から視線を戻した先には、膨大な魔力と余波が荒れ狂う嵐の様な戦場。

時空管理局発足前の無法の戦場と比べてもなお苛烈なその光景は、まさに地獄の窯が開いた様な地獄絵図と言えた。

 

――やはり歯痒いな……若い者が戦っているのに、私が何の力にもなれんと言うのは……

 

握りしめた拳から、火傷特有のひりつく様な痛みを感じたその瞬間……リオンはその懐かしい無力感に、遠い昔の事を思い出した。

 

――そうだ。思い返せば、我等の暴走の原因も最初はこんな歯痒さからだったか。

 

自身の肉体を捨て最高評議会となった彼等とて、なにも最初から後ろ暗い事をしていた訳ではない。

自らを寿命と言う死から遠ざけたのだって、純粋に次元世界の平和と安寧を守ると言う使命感からだった。

 

だが人気のない無機質な空間で、部下から上がって来る報告……とりわけ、管理局員や無辜の民の被害報告に目を通す度に、彼等は今の様な無力感に苛まれた。

 

『また被害が出た』『どうすれば犠牲を減らせる』『人手が足りない』『我等が戦えれば』『技術が足りない』『力が足りない』……いくら議論を交わしても、現場に反映されるのは極一部だ。

最高評議会の意思を時空管理局に伝える役割の者はそれなりに居たが、最高評議会の存在を広める訳にも行かないと言う事情等から表向きの役職以上の強権を振るわせる事も出来ない。

永年に渡り累積していく数々の無力感が、彼等を少しずつ変えていった。

 

『人手が足りない事は許されぬ』『技術で劣る事も許されぬ』『力の不足も許されぬ』

『平和の為には手段を選んでいられぬ』『例え禁忌に触れようとも』『人の道から外れようとも』『全てを満たす為にアルハザードの叡智を使おう』

 

そう言った歪みの果てに生みだされた一人の男が、皮肉にも彼等を再び"人"に戻したのだ。

 

リオンは思い出す。

初めてジェイルスカリエッティが彼女達に歯向かった時の事を。

彼女達が再び、"人"に戻る切っ掛けとなった日の事を。

 

――ジェイル・スカリエッティ……あの時生まれたのがお前で良かった。

 

リオンは今動かしている身体の胸部に取り付けられた機材に軽く触れると、決意を固める。

 

――オーバーロードには特別性の疑似リンカーコアが必要だ。……だがそれは、あくまでも安全に使用する場合に限る。残り4体の生死体の疑似リンカーコアの共鳴により出力は確保可能……そして、処理の一部を()()()()()()()()()短時間だが奴と同等の力を発揮できるだろう。

 

そうすれば増幅した魔力で身を守りながら余波の嵐を突き抜けて、『リオン』に大きな隙を作れる。そうすれば、高町なのはが確実に余力を残して勝利できる。

 

――私が生き残る確率は、5%あれば良い方か……十分だ。

 

そして疑似リンカーコアの共鳴の為にリオンは4体の生死体を集めようとして、その内の1体が視界にそれを捉えた。

 

「む、あれは……」

 

 

 


 

 

 

眼を閉じた状態で魔力探知を働かせ、空間攻撃の予兆を知覚次第にアステロイドブレイカーを放つ。

そんな単調な繰り返しを、一体どれ程繰り返しただろう。

 

彼女が使用した、リオンちゃんの魔法『オーバーロード』。

一定時間魔力総量を大幅に底上げし、魔法構築のプロセスをすっ飛ばして即座に発動できると言う、強化魔法の終着点とさえ言える魔法だ。

 

ただしその代償は非常に重く、生前は魔法の使用後は使った魔法の種類や消費した魔力量にも関わるが、最低でも数日間は魔法が使えないと言う重い代償を払う能力だったらしい。

だが、『リオン』の身体ではその代償は更に重い。

 

と言うのも『リオン』の身体に組み込まれている疑似リンカーコアが、そのあまりの出力に耐えられないからだ。

ただでさえ時間制限のあった魔法なのにその時間は更に縮まり、代償も『疑似リンカーコアの溶融により魔法の使用が不可能となる』と言う更に重いものに。

 

これまでその魔法を使ってこなかったところを見るに、彼女もそのリスクは承知の上だったのだろう。

それをここに来て使った理由は……

 

≪まーた敵をやけくその特攻状態にしたのか……≫

≪もっと他に良い表現あったよね?≫

 

いつからだったか、私と対峙した次元犯罪者は死に物狂いで特攻を仕掛けてくるようになったっけ。

原因は知らない。普通に仕事していたらいつの間にかそうなっていた。

 

まぁ、今はそんな事どうでもいい。

肝心なのは彼女のその破れかぶれが、ある一つの成果を上げてしまう可能性があると言う事だ。

 

≪……大丈夫か、なのは? その()()()……≫

≪まだ、大丈夫。……だけど、ちょっと想定外だったかな。≫

 

そう、少女が放つ空間攻撃は全てが炎熱の術式だ。

即座に撃ち抜いているとはいえ一瞬発動したそれによって気温は上昇し、バリアジャケットと言う防護服を纏った状態でも、体感でサウナもかくやと言った高温になっている。

当然だが汗をかけば水分が失われ、体力も減らされて行く。

熱中症になる前には決着が付きそうなペースだが、それでもこの攻防が終わった時、私のコンディションが万全であると言う保証は無い。

……この後にまだ聖女との戦いが待っているにも関わらず。

 

≪確か、地上に停めてある車両には水分補給用の飲料水が……≫

≪飲んですぐ体力が回復する訳じゃないし、取りに行く時間も無いと思う。それに、未来を視る事が出来るって言う聖女がそれを見逃してくれるとも限らないよ。≫

 

だからこそ、なるべく早く敵の本体を撃ち抜く必要があるのだが……中々どうして隙が見当たらない。

少しずつ私が押しているのは魔力感知で分かるけど、彼女もまた予想以上の粘りを見せていた。

 

≪またリオンちゃんが隙を作ってくれれば嬉しいんだけど……≫

≪今回は厳しいだろうな。確かに生身ではないからこの高温は問題にならないだろうが、多分周辺に来ただけで、空間攻撃と砲撃の余波で墜とされるぞ。≫

≪だよね……≫

 

その時だった。

 

≪なのは! ここは私が……ッ!≫

≪その声は――!≫

 

唐突に外部から繋げられた念話。

無茶だと思っていた思わぬ救援の声が、私に最後の勇気をくれた。

 

そして、私は彼女の動きを邪魔しない為に、ほんの一瞬だけアステロイドブレイカーの発射を遅らせる。

()()ならば、その一瞬で十分だと知っているから。

 

「勝っ……「ライオットブレード!」づッ!」

≪――fire!≫

「ぁ……ッ!!」

 

耳を澄ませば、雷のような音に紛れて微かに聞こえた少女の悲鳴。

その瞬間には既に放たれていたアステロイドブレイカーが、一瞬で戦場を縦断したフェイトの雷の尾の先端を掠めて少女に直撃、決着の時を告げた。

 




ここから最後までは殆どなのはさん視点での進行になる予定です。

ちなみにフェイトさんがした事は余波と余波の間の一瞬で戦闘空域を縦断し、すれ違いざまに敵のリオンを斬り付けただけです。真・ソニックフォームで。

なのはさんだけ1話で決着してますが、フェイトとはやてが戦っている間の戦闘を削っているだけなので実際の戦闘は一番長いです。
有効打は一切与えられなかったけど、なのはさん相手に時間を稼いだ敵のリオンも本当は普通に強いんです……
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