転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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余り書く時間が取れずごちゃってしまったかも……


vs聖女②

「……全力のディバインバスター、直撃したよね? レイジングハート。」

Yes, certainly.(はい、たしかに)

 

魔力ダメージで痛む左足を煙に隠しながら、努めて平気な表情を取り繕ってレイジングハートと言葉を交わしていると、突然二人から念話が繋げられた。

 

≪なのは! 大丈夫だった!?≫

≪平気だよ、私の頑丈さはフェイトちゃんも良く知ってるでしょ?≫

≪今回ばかりは流石に肝を冷やしたで……!≫

≪心配してくれてありがとう、はやてちゃん。私は大丈夫。ここから反撃だよ、二人共!≫

≪ああ!≫

≪……うん!≫

 

私を心配してくれた二人に自分の無事を伝え、笑顔を見せる。

……二人が少しでも安心して、聖女との戦いに専念できるように。

 

≪お前の気持ちも分かるが……よく()()()()()で結構なハッタリかましたな、なのは。≫

≪あはは……フェイトちゃん達のあんな顔を見ちゃったからつい、ね。≫

 

レイジングハートはハッタリと言ったが、実のところ私はそう思ってはいない。

聖女に対して私が放った言葉……『諦めなければ対策は見つかる』と言うのは嘘ではないのだ。

あの一瞬、確かにレイジングハートはその可能性を私に教えてくれた。ただ……それを実行に移すには、()()()()()()()()()()()()と言うだけだ。

 

≪……で、足の調子はどうなんだ?≫

≪非殺傷設定は付けてくれていたみたいだから、大丈夫。……結構痛いのと、ちょっと動かないだけだよ。≫

 

レイジングハートの問いに答えながら、私は先程のやり取りを振り返る。

 

聖女の誘導弾を一塊になるように誘導し、左足で蹴るように受けると言う私の作戦は一応上手く行った。

おかげで魔力爆発の()()によって大多数の誘導弾は接触よりも前に爆発し、受けるダメージはこれでも最小限だ。取りあえず戦闘に大きな影響は出ない。

……左足周辺のバリアジャケットはズタズタに破壊されてしまったけど。

 

――さっきのレイジングハートの作戦を実行できていれば、もっとダメージは抑えられたと思うけど……

 

レイジングハートが立てた作戦を咄嗟に実行するには、ちょっと今居る位置が高すぎた。

もう少し地上に近ければ、一応目標物を射程内には入れられたと思うが……内心でそんな反省点を洗い出していると、突然ダメージを受けた左足に柔らかい光が灯り、痛みが引いたのを感じた。

 

≪Physical Heal.≫

≪……ありがと、レイジングハート。≫

≪応急処置だ。出来る事ならシャマルの回復魔法を受けたいところだが……≫

 

確かに万全を期すならシャマルの魔法が最善だ。念話で呼べば、きっと旅の鏡でここまで来てくれるだろう。

だけど、聖女との戦いの最中にそんな事をすれば、先にシャマルが狙われる可能性が高い。

実際ディバインバスターで発生した魔力爆発の中からは、いまだ健在と言った様子の聖女の魔力を感じるのだ。

軽い気持ちでこの場に呼ぶ訳にも行かない。彼女の治療を待っている仲間も、きっと多いだろうから。

今の口ぶりから考えて、それはレイジングハートにも解っている事なのだろう。

 

≪――つまりシャマルさんの回復は最終手段に、出来るだけダメージを抑えつつ戦わないと……って事だね。≫

≪それが出来れば一番なんだがな。≫

≪出来るよ。だって、レイジングハートが考えてくれたから。≫

 

いつになく弱気なレイジングハートにそう断言すると、私は今も地上からこちらの様子を見ているだろう彼女に念話を繋げた。

 

 

 

≪――って事なんだけど、お願いできる? ヴィータ。≫

≪ああ、そんぐれえならお安い御用だ。……本当にあたし達の加勢は要らないんだな?≫

≪今はね。……いざという時は、お願いするかも。≫

≪……そうか。まぁ、こっちの方は任せな。合図は……要らねぇか。≫

≪うん、お願い。≫

≪おう。≫

 

……これでいい。後は、ヴィータからの支援を待ちながら戦うだけだ。

 

≪……向こうもどうやら、今度こそお前を墜とすつもりらしい。気を付けろよ、なのは。≫

≪大丈夫。私の方を向いてくれてるのなら、狙い通りだからね。≫

 

レイジングハートの言葉通り、次の聖女の攻撃は先程の比ではないだろう。

私が見上げた先……いつの間にやら煙も晴れて露わになった聖女の周囲には、無数の砲撃魔法がこちらにその照準をピタリと合わせて漂っていた。

 

「……どうやら、お喋りは終わったようですね。」

「待っててくれたんだ。結構優しいところ、あるんだね。」

「不意打ちで貴女を墜としても、何の意味もありませんから……ね。」

 

軽口の応酬もそこそこに、聖女は早速待機状態にしていた砲撃を一斉に放ってきた。

その威力、速度共に誘導弾の比ではない。しかし――

 

――こっちの方が、避けやすい!

 

砲撃の軌道修正は、誘導弾のそれよりも遥かに困難だ。

決して不可能ではないが、回避された時咄嗟に追撃するのは難しい。

 

≪Axel Fin.≫

 

1つ、2つ、3つと最小限の動きで回避しつつ、こちらも適宜ディバインシューターやショートバスターで反撃を繰り返す。

さっきの一瞬、私のディバインバスターに対して聖女は障壁を張って身を守った。

それは聖女は私の魔法に対して自由に干渉が可能と言う事であり、同時に私の魔法が聖女に通用すると言う事だ。

彼女の攻撃の頻度を減らす為にも、回避と反撃……そのどちらも失敗する訳には行かない。

 

そして聖女の注意が私に向いていると言う事は、他の二人にとっては攻撃のチャンス以外の何物でもない。

当然フェイトちゃんとはやてちゃんは、聖女にそれぞれ攻撃を見舞っている――のだが……

 

「――ミストルティン!」

 

はやてのミストルティンは聖女が見るからに片手間で張った障壁さえ石化させる事は出来ず、

 

「――ライオットザンバー・ランページ!」

 

二刀に増えたバルディッシュの片方の制御権をアリシアに譲渡する事で、死角を無くしつつ予測不能な高速戦闘を熟すフェイト()の乱撃も、聖女の未来視で見切られている。

 

二本のバルディッシュの斬撃とフェイトの射撃魔法、はやての砲撃や空間攻撃の嵐に余裕で対処しながら私に砲撃まで放って来る辺り、聖女は本格的に人間の処理能力を超えている。

 

≪これって、やっぱり聖女の本体がユニゾンデバイスだからなのかな?≫

≪多分そうだろうな。俺も転生でデバイスになった人間だから分かるが、思考速度や演算速度が人間の時に比べて比べ物にならない程速いんだよ。それに未来視の予知能力も併用しているだろうから、多分何人で同時に攻撃しても手玉に取られるぞ。≫

 

もしやと思ってレイジングハートに確認した私の直感は、どうやら正しかったようだ。

そもそも私達のような普通の魔導士と聖女では、判断速度の時点で違う。

私を含む魔導士の殆どは、術式構築のプロセスを任せたりと言ったサポートにデバイスの処理速度を活用している。

しかし当然の話だが、状況を把握して使用する魔法を選び、対象を選択するのは使用者である魔導士本人だ。その選定には当然、デバイスの処理速度を活かす事は出来ない。

 

しかし、聖女は違う。

彼女は人間の意志を持つデバイスだ。彼女自身が魔導士であり、デバイスである……この事実が示す魔導士との差は、あまりにも大きい。

 

≪このままじゃ、攻めきれないまま消耗するだけ……って事だよね、レイジングハート。≫

≪その可能性は高いが……一応、対処法が無い訳じゃない。≫

≪聞かせてくれる?≫

 

一見このどうしようもない差をどう埋めるのか……レイジングハートの答えは、至極当然なものだった。

そしてそれは、私にもちょっと無視できないリスクがある対処法だった。

だけど――

 

「レイジングハート、お願いね。」

 

私は迷うことなくその作戦に乗った。

確かにそれであればこの状況を崩す切っ掛けになるだろうと、確信が得られたから。

 

私の要請を受けて、レイジングハートがその形態を変えていく。

アクセルモードと呼ばれる普段の形態から、先端に槍の穂先を備えたようなより攻撃的なフォルムへと。

それは闇の書事件の時にカートリッジシステムと一緒にレイジングハートに組み込まれたフルドライブ……『エクセリオンモード』と呼ばれる形態をより進化させた、『エクシードモード』と呼ばれる更にもう一つ上のフルドライブモード。だが……

 

「――リミットブレイク」

 

今求められているのは更に限界を超える為に搭載された形態であるリミットブレイク……『ブラスターモード』と呼ばれる私達の切り札たるこの形態だ。

外見的にはエクシードモードからそれ程の変化は無いが、この形態には他にはない特徴的な機能がある。

 

The change to "Blaster M(「ブラスターモード」へ)ode" has been completed.(の変更が完了しました。)

「うん……懐かしいね、この感覚。ここしばらく、この機能を使う事も無かったっけ……」

 

私の周囲に漂う4基の()()()がそれだ。

『ブラスタービット』というこの小さな端末は、その全てから射撃・砲撃を可能としている。

そして、これこそが聖女に対抗できる可能性が最も高い機能だ。

何故ならば……これらは私と()()()()()()()()だけが操作できる、遠隔操作機なのだから。

 

「――よし、ここからは()()()()()()……レイジングハート!」

≪All right, my master.≫

 

聖女の強さの一端は、デバイスになった転生者である事だった。

だがそれは、聖女()()の強みではない。

デバイスになった転生者は、私の傍にもずっといたのだから。




エクセリオンモード「本編に登場しないまま終わったのですが……」
エクシードモード「一瞬で出番終了したのですが……」

一応エクセリオンモードもエクシードモードも描写されてないだけで、本編の外で使った事はあると言う設定です。
ちなみに地獄の訓練ではほぼ常にエクシードモードでした。

以下フェイトさんの補足
・ライオットザンバー・ランページ
バルディッシュのリミットブレイクフォームにより派生する形態の一つであり、アリシアの存在が無ければ生まれなかった(原作にはない)形態。
片刃の刀剣形態のバルディッシュが2本になるのは原作にも登場した『ライオットザンバー・スティンガー』と同じだが、その片方の制御をアリシアに完全譲渡している。
アリシアに制御を譲渡した方のバルディッシュはフェイトに追従するように浮遊している為、フェイトの片手が空いており、斬撃と同時に射撃魔法を組み合わせる事も可能となっている。
遠近ともに隙が無く、魔力探知に長けたアリシアが直接的なサポートも可能な為、攻防一体の高速戦闘を可能にしている。
なお、バルディッシュのリミットブレイクである上にアリシアの負担が重くなる為、フェイトはリミッターの有無にかかわらず余程の事が無い限りはこの形態を使わない。
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