転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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vs聖女④

「――こっちです、アリシアちゃん!」

 

身体を休ませている時にふとそんな声を耳にして振り返ると、シャマルちゃんに案内されてこちらへと飛んでくるフェイトちゃんの姿が見えた。……いや、フェイトちゃんは失神しているみたいでアリシアちゃんが今は表に出ているみたいだ。

 

――見たところ、魂にもリンカーコアにもダメージは無いみたいだ。あの子も一応、その辺の分別は出来てるって事なのかな……

 

本来なら私が彼女を止めるべきだと言うのに、結局出来たのは時間稼ぎ……全く、天使の名が泣くね。これじゃあ。

 

「朱莉ちゃん、調子はどうですか?」

「ん~? あ~シャマルちゃんかぁ、態々様子を見に来てくれたの?」

「はい……朱莉ちゃんには私の回復魔法もあまり効果が無かったので……」

「大丈夫、痛みとかはもう無いよ。ただ……戦うにはまだ力の回復を待たないとかな。」

 

手を握ったり開いたりして、力の流れを確かめる。

本来私達天使がこう言った消耗をした時には、神様にオーダーする事で即座に体も力も回復できる。

では何故それをしないのかと言うと、それをすると今天使の身体を使っている聖女まで全快してしまうからだ。

 

しかも、それをすれば今以上に天使の身体との親和性が強まり、誰にも手が付けられなくなるだろう。下手すれば、オーダーも必要とせずに強力な権能を振るえるようになってしまうかもしれない。

まだ彼女が天使の力を()()()()()()()()()()今が、唯一の好機なのだ。

だから神様には直接私が連絡して、この世界からのオーダーを暫く受けないようにして貰っているのだ。

 

――もっともその代償として、自己回復以外の回復方法を失ってしまったんだけどね。

 

この世界の回復魔法では、私達の身体的な怪我を治す事は出来ても力を回復させる事は出来ない。この世界で一般的に使われる魔力と、私達が扱う力は別物だからだ。

結果として今の私はなのはちゃん達の戦いを、こうして地上から眺める事しか出来ない。

 

「はぁ……私はもっと適当で、不真面目なつもりだったんだけどねぇ~……」

 

もどかしいなぁ……本当に。

 

 

 


 

 

 

スターダストフォールの術式で捉えた瓦礫群を周囲に漂わせ、聖女の誘導弾を封殺しつつ瓦礫を撃ち出して攻撃する。

攻防一体とも取れるこの魔法により、戦況は大きくこちらに傾いた……かと言うと、そうはならなかった。

 

「どうしました? しっかりその瓦礫を守らないと、誘導弾を防げなくなってしまいますよ?」

「くっ……!」

 

私が回避した聖女の砲撃が、背後にあった瓦礫を砕く。

あの後、聖女は直ぐに攻撃の主軸を貫通性能の高い砲撃に切り替えて来た。

瓦礫に触れても砲撃はそれを突き抜けて来るし、回避すれば私の周囲の瓦礫が幾つも破壊される。

かと言って、回避しなければ一撃で墜とされる威力がある事は間違いなく、更に障壁を突き抜けて来る為それを防ぐ方法は無い。

 

「スターダストフォール――ファイア!」

「無駄な事を……」

 

破壊されるくらいならばと積極的に攻撃してはいるが、上手く砲撃を避けて聖女の元へ到達しても、強化された拳で対応され、そのまま砲撃のカウンターが飛んでくる。

 

「ッ! ――レイジングハート!」

≪Divine Buster.≫

「それも見えています。」

 

何とか回避して砲撃を放っても、それも躱されて再びカウンターの砲撃が飛んでくる始末だ。

誘導弾よりは遥かに回避が容易とは言え、こうも立て続けに撃たれては精神を削られる。冷静な思考が残っている内に、何とか打開策を……!

 

≪なのは! 一つ分かった事がある!≫

≪レイジングハート! あの魔力の正体が分かったの!?≫

≪いや、全然!≫

≪このポンコツ……!≫

≪ありがとうございます! ……じゃなくて、あの力に関してもちょっとは分析は出来たんだが――≫

 

レイジングハートによると、聖女が使っている魔力はどうやら純粋な魔力ではない事しか分からなかったらしい。

ただ、その魔力の運用を観察している内、レイジングハートはある事に気付いたのだと言う。

 

≪――障壁と攻撃を同時に行えない?≫

≪ああ、多分な。さっきだって瓦礫を拳で砕いたり、こっちの砲撃をわざわざ回避していただろ? リオン達のアナイアレイターを防いだ障壁を使えば、そんな事する必要は無いのに。≫

≪確かに……?≫

 

そう言えばさっき聖女はフェイトちゃんに砲撃を放つ前、障壁が消えていた。

私はてっきりフェイトちゃんのサンダーレイジで感電した所為だと思っていたけど、あれは――

 

≪フェイトに砲撃を撃つ為に、障壁を自分で解除した可能性が高い。≫

≪なるほど……だったら!≫

 

それなら砲撃への対処は簡単だ!

その為には少しだけチャージの時間が必要だけど、

 

≪だからはやてちゃん、少しの間だけ聖女に障壁を張らせられる攻撃をお願い!≫

≪急に念話繋いだと思ったら、結構な無茶言うなぁ……分かった! 私もこのまま見ているだけって訳にも行かんしな、眼にもの見せてやるで! ただ、こっちも結構危なっかしい魔法やから、出来るだけアシストしてや?≫

≪うん!≫

 

私がそう伝えると、はやてちゃんは快く了承してくれた。

その後少しして、その時は訪れた。

 

「来よ、白銀の風! 天より注ぐ矢羽となれ!」

Hræsvelgr(フレースヴェルグ).≫

≪Hræsvelgr.≫

≪Hræsvelgr.≫

「――ッ!!?」

 

はやての詠唱が響き、その眼前に現れたのは計15のミッド型魔法陣。

その全てが強力な砲撃を放つ砲門だ。

未来の光景を見たのだろう。聖女がこちらへの砲撃を中断し障壁を構えると、間もなくして莫大な魔力を乗せた砲撃が立て続けに放たれ始めた。

 

「レイジングハート!」

≪All right, my master.≫

 

聖女の攻撃が止んでいる今の内に術式の構築を開始する。

扱う魔力は普段使っているよりも遥かに多く、今にも溢れて暴走しそうだ。

回避しながらでは出来ない、繊細な魔力操作。

 

「はあ"あ"あぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」

「くっ、鬱陶しい……!」

 

はやての魔法、フレースヴェルグは彼女が持つ数多の魔法の中でも特に代償が大きい。

私のアクセルシューターと同じく発動中は移動が出来ず、防御も出来ない完全な無防備。

加えて魔力も体力もごっそりと持って行く為に長くは持たず、発動後も隙が大きいピーキーな魔法だ。

しかしその分、その威力と制圧力は群を抜いている。

聖女が攻撃を中断してまで防御に回ったところを見るに、回避するルートが存在せず、そして防御する必要があると判断する威力だったのだろう。

 

「はぁ……ッ! はぁ……ッ!」

 

やがて、フレースヴェルグの光が消え、そこにははやての砲撃を防ぎ切った聖女が以前無傷で浮遊していた。

 

「どうやら打ち止めの様ですね、八神はやて。不意打ちのつもりだったのでしょうが、私は数秒程度未来が見える事を忘れていましたか? 無駄に魔力を使いましたね。」

「はぁ……はぁ……! ――ははっ……! 本当に無駄やったか、未来でも見てみたらどうや?」

「何を……――ッ!!」

 

聖女がこちらに気付いたようだが、もう遅い。

既に術式は完成し、集束された魔力は恒星の如き輝きとなって目の前に現れている。

 

「まさか……ッ!」

「全力、全開!」

≪Starlight Breaker!≫

 

次の瞬間、全てのブラスタービットを含む5つの砲門から放たれた砲撃が、聖女を飲み込んだ。

 

 

 


 

 

 

衝撃が空から地上まで伝わり、地表を覆っていた土埃が一斉に掻き消える。

それと同時にビリビリとした振動が地面を伝わり、私の身体を揺らした。

 

「うわぁッ!!?」

「くっ、これは……スターライトブレイカーの余波か……!?」

 

腰を下ろして休んでいた私とは違って、周囲の警戒のために立っていた子達……全身鎧の騎士さんとシグナムちゃんは少しよろけてしまった。

 

――いやぁ、まさか一人の魔法で次元震寸前まで行くなんてね……

 

土煙が消えて頭上に広がった空の色を、なのはちゃんの放つ極大の砲撃が染め上げている。

ピンクの空なんてなかなか見れるもんじゃないね。ただ――

 

「これ、もう勝ったんじゃないか?」

「スターライトブレイカーx5なんて喰らって生きてたら、もうそいつ生物の枠超えてるよ。」

「お前、アレも一応非殺傷設定だって事忘れてない?」

 

周囲の銀髪オッドアイくん達が勝利の予感に浮足立っているところ悪いんだけど……

 

「……まだ、終わってないね~……」

「――え?」

 

そう……まだ終わっていない。

転生者の魔法で勝てる程度の力しかないのなら、転生者同士の諍いを止める役割はこなせないのだから。

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