展開の構想は出来てるのに、どうしていざ文章にしようとすると詰まるのか……コレガワカラナイ。
「――ぐ、ぅ……ッ!」
レイジングハートを構える腕が震える。
今まで制御した事のない規模の砲撃の反動で、今にもすっぽ抜けてしまいそうだ。
だが、この手応えはスターライトブレイカーが間違いなく聖女を捉えたと言う証明……ここが踏ん張りどころだ!
≪レイジングハート、大丈夫……!?≫
≪こっちは平気だ、そうそう壊れたりしないって。それより、なのはこそ俺をうっかり手放したりしないでくれよ? 今手を離されたら、多分俺反動でどこまでも飛んで行くぞ?≫
砲撃の反動で壊れたりしないかと案じてみれば、レイジングハートは私とは違う事を心配していたようだ。
しかし念話で伝えたように、レイジングハートは私が小学生の頃から苦楽を共にした相棒だ。秘密を共有する数少ない戦友でもある。
レイジングハート以外のデバイスを使う事なんて想像できないし、レイジングハートも私以外に使われる気は無いだろう。……少なくとも、私が魔導士を続けている内は。
≪……ふふ、大丈夫。絶対に手放したりしないよ、今までずっと一緒にやって来た相棒だからね。≫
≪今お前俺が飛んで行くの想像して笑っただろ?≫
≪ソンナコトナイヨ?≫
念話で軽口を叩きながら、ぐっと手に力を籠める。
≪……これで決めよう、レイジングハート!≫
≪おう!≫
意思を通わせ、ブレそうになる照準をピタリと合わせる。
この一撃が今の私に放てる正真正銘の全力全開……これで倒しきれなければ――
≪なのはちゃん!≫
「――ッ!!」
それは、スターライトブレイカーの放出が終わった瞬間の事だった。
余りにも大きすぎる魔力を扱った反動で動けない私の眼前に、聖女が放ったと思しき砲撃が迫っていた。
≪そんな……!≫
≪ばかな……!≫
「な、なのはちゃああぁぁぁんッ!」
完全に決まったと思った。
スターライトブレイカーの威力は、私自身も一度身に受けてよく知っている。あんなもの、直接受け止めてしまったら到底耐えられる物じゃない。
それが同時に5発……アニメではヴィヴィオに埋め込まれたロストロギアさえ砕いた程の、常軌を逸した魔法なのだ。
なのに……聖女はそれを耐え抜き、なのはちゃんが反動で動けないだろう所に砲撃を放ったのだ。
冷静な判断、正確な狙撃……それは、聖女にはスターライトブレイカーを受けてなお、十分な余裕が残っていると言う事実を示している。
そして……聖女の放った砲撃の後には、誰の姿も残っていなかった。
先程の聖女の砲撃に込められた魔力は、それまでの物よりも一際大きかった。直撃したのなら、間違いなく魔力ダメージで失神している筈だ。
例え非殺傷設定の砲撃とは言え、気絶した状態で地面に叩きつけられてしまえばなのはちゃんは……!
そんな時、
≪はやてちゃん、シャマルです! なのはちゃんは私が旅の鏡で助け出しました! 砲撃を受ける直前に間に合ったので、無事です!≫
≪はやてちゃん! ごめん、直ぐそっちに戻るから!≫
≪シャ、シャマル!? でかした! ようやってくれた! これでまだ……! ……まだ……!≫
と、シャマルとなのはちゃんからの念話が彼女の安全を教えてくれた。
胸に去来した歓喜そのままに、私は彼女達の念話に応じたものの……
≪……はやてちゃん……?≫
…………まだ……――
「シャマルの旅の鏡……成程、なかなかの機転です。ですが――」
確かになのはちゃんは助かった。それは間違いなく嬉しい報告だし、大きな心配事は一つ消えた。
だが……だから何なのだ?
「私自身、少々予想外ではありますが……あのスターライトブレイカーでさえ、今の私には脅威足りえない事が分かりました。」
そう、聖女はなのはちゃんの最大の一撃を克服してしまった。
そして私は……いや、私だけじゃない。
なのはちゃんのスターライトブレイカーを上回る一撃を放てる者を、私は知らないのだ。
「……どうやら、この場に戦意を残す者が居ない以上、なのはが無事だとしても決着はついた……と言っても良いようですね。」
聖女の静かな目が私を見ている。
私もなのはちゃんも、魔力的にはまだ戦えるが……結局は聖女の言う通りだ。既にこの時点で勝敗は――
「まだだ!」
――ッ!?
この声……
「スターライトブレイカーを防いだからって、もう誰もお前を脅かせないって決めつけるのは早すぎるんじゃないのかぁ!? えぇ、おい!?」
――えっと……確か、神楽坂君やったか?
それを勇気と呼ぶのか蛮勇と言うのか決めかねるが、聖女にそう啖呵切って登場をしたのは一人の銀髪オッドアイだった。
「俺の名は神楽坂
そして名乗りの途中で砲撃をもろに食らい、そのまま墜ちて行った。
「……」
「……」
そのあまりの呆気なさに、私だけでなく聖女も言葉を失っている。
「……今のは何ですか?」
「いや、私に聞かれても……――!?」
知らん……そう答えようとした時、周囲から迫る無数の魔力波動に気が付いた。
慌てて周囲を見回せば、そこには――!
「神楽坂がやられたようだな……」
「バカな奴だ、先走るからこうなる。」
「だが奴は俺達の中でもどちらかと言えば弱い方……戦力に大きな問題は無い。」
「そう、依然として俺達の方が数で優っている……!」
どことなくかませ犬っぽいセリフと共に救援……? に駆けつけた、『ミッドチルダの銀盾』達の姿があった。
彼等は確かに機動六課を除くミッドチルダの部隊の中では最高戦力ではあるが、それでも聖女を相手に戦うには明らかに力不足だ。
本人達もそれは理解しているのだろう、いつもの軽口の中にも僅かな緊張が見え隠れしていた。
そんな彼等をぐるりと見まわした聖女は、呆れたようにため息をつくと――
「……それで? その数の利が通用する相手だと思っているのですか? さっきのお仲間の二の舞になるだけですよ。」
「「「「……!」」」」
「これは……」
聖女の放つ魔力の威圧が、言葉と共により重くのしかかる。
私がこれまで感じた事のない重圧だ……だと言うのに、天使の力の影響なのか、そこに奇妙な神々しさすら感じてしまう。
まるで目の前にいる女性が、戦神の化身なのではないかとすら錯覚してしまう程の……
――ダメや……こんなん、勝てん……! 勝ちようがない……!
自然とそう理解させられた。
思い返せば、天使である朱莉ちゃんが彼女に勝てなかった時点で、遅かれ早かれこうなる事は自明の理だったのだ。
だって彼女達天使は、転生者同士の争いを止める為に遣わされた存在で、その為の力を神様に与えられている……絶対に揺るがない力の差が存在するのだ。
そんな事情を知らない銀盾の皆も、その魔力の量と異質さに
「くっ、なのは達はずっとこんなのとやり合ってたのか……!」
「こ、こんなに恐い魔力は初めてだな……おい。」
「……逃げるなんて言うなよ?」
「へっ……ここまで来て、そんなカッコ悪い真似出来るかよ!」
その全員が気合を入れ直して聖女に向かい合った。
そして、その内の一人……神尾君がこう言ったのだ。
「例えどんだけ強かろうと、聖女だろうが悪魔だろうが犯罪者を前にやる事は変わらねぇ! ……そうだろ、はやて!」
「!」
――『私達のする事は変わらん……例え、
ああ、そうだ。
他ならぬ私自身も、天使を相手にすると理解した時にそう言ったじゃないか。
「……ああ、そうやな。ありがとう、神尾君。――おかげで目ェ覚めたわ。」
『何抜け駆けしてんだてめぇ!』『そんなつもりは……』等と、仲間とじゃれている彼に私の感謝が聞こえたかは分からない。
だけど……どうやら私はその言葉を口にして、今更ながらに本当の意味で覚悟が出来たようだ。
<リイン、ツヴァイ……情けない所見せてもうたな。>
<いえ、信じていましたから。>
<ですです! はやてがこんな所で折れる訳がないのです!>
――皆、ありがとう。
「いくで、皆……こっからも正念場や!!」
「「「「「「「「「「応ッ!」」」」」」」」」」