転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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一時間ほど早いですが、あけましておめでとうございます!
残り話数もけっこう少ないですが、今年もよろしくお願いします!


光vs凶星③

聖女の身体から溢れ出す魔力の質は、先程までとは全く異なっていた。

 

「虹色の魔力光……?」

 

虹色の魔力光――『カイゼル・ファルベ』と呼ばれるそれは、私が知る限り現代ではヴィヴィオしか持っていない魔力であり、聖王の血筋の証明にもなる独特の魔力だ。

例えどれだけ多くのリンカーコアを取り込もうと、どれ程の訓練を熟そうと後天的に手に入る事のない魔力。

彼女の全身から噴き出す虹色の魔力もそれなのかと一瞬思ったが、ヴィヴィオの纏う鮮やかな虹と異なり、聖女のそれはどこか黒みを帯びたような……澱んだ虹色だ。

そこから感じた魔力の波動もまた、私の知るカイゼル・ファルベと全く異質の物だった。

 

魔力の流れは一人の物なのに、そこから全く別の人間の魔力波動を何十人分も感じるのだ。

これが聖女の本来の魔力なのかとも思ったが、以前はやてから聞いた事がある話では聖女の魔力はグラデーションにはなっておらずマーブル状と言う事だった。

それが今はまるで元々一つだったように馴染んでいる……聖女が言う『完成』がこれを指しているのだとすれば……!

 

――嫌な予感がする……!

 

「――ッ、ディバインバスター!」

≪Divine Buster!≫

 

自分の直感を信じ、早期決着を狙った私のディバインバスターだったが……

 

「≪Chaos Buster≫!」

「なっ……!?」

 

それは聖女の放った砲撃魔法により、相殺される事となった。

 

――さっきまでと比べて、明らかに魔法の威力が強くなってる……!

 

リンカーコアを回収したのが原因だろう、砲撃越しに感じた魔法の威力、性質共に完全に別物だった。

だけど――

 

≪天使の力に適応していないリンカーコアがいくら増えても、扱える天使の力に変化はない筈なんだけどな……何か分かった? レイジングハート。≫

≪多分だが……天使の力を使って、全く波長の違う魔力を強引に共鳴させているんだとおもう。≫

≪共鳴?≫

≪フェイトとアリシアがよくやってるアレだ。魔力の相性が良い魔導士達が息を合わせ、魔力を同調させる事が出来れば本来の魔法よりも高い性能を発揮する。≫

 

レイジングハートの説明を受けて、聖女が起こしたであろう現象を理解する。

つまり聖女は天使の力の"使用者の意思で自在に変化させられる性質"を使い、練度も性質もバラバラだった有象無象の魔力を束ねたのだろう。

 

そんな私達の推測を裏付けるように、聖女が砲撃を放った自身の手を見つめながら満足気に呟いた。

 

「天使の力による魔力の融合……想定通りではありますが、期待以上の成果ですね。」

 

これは拙い状況だ。

せっかく朱莉ちゃんのおかげで得られた優位性が、早くも崩されかかっている。

天使からの協力を得られた私の最大の武器は、天使の力と魔力の親和性が聖女よりも高い事だった……そして聖女はそれを、天使の力で無数の魔力同士の親和性を高める事で、疑似的に再現しようとしている。

 

≪なのはちゃん、決着を急いで!≫

――朱莉ちゃん!?

 

唐突に念話を繋げて来たのは、私に天使の力を与えてくれた天野朱莉だった。

彼女は心の内の焦りを隠す余裕もないのか、私の返答も待たずに続ける。

 

≪聖女はさっき受けたダメージを修復する為に天使の力の大部分を割いてる! だから今の砲撃だって本調子じゃない! だけど、修復が終わってしまったら――!≫

≪! 聖女の力はもっと強くなる……!?≫

≪間違いなく……だから――!≫

 

「――ッ! レイジングハート!」

≪Axel fin.≫

 

朱莉の返答の続きを待たず、アクセルフィンで距離を詰めつつレイジングハートを構える。

 

「ディバインシューター!」

≪Divine Shooter.≫

 

距離を詰めつつ攻撃するべく、アクセルシューターではなくディバインシューターによる牽制を放つ。

 

「≪Loyal zapper≫」

 

一方で聖女もまた私の狙いに気付いたのだろう、黒虹色の誘導弾を無数に飛ばしつつ距離を取るように飛翔した。

恐らくは回復までの時間を稼ぐつもりなのだろう。回復に回している天使の力を攻撃に使えるようになれば、彼女の勝利は揺るがないから……!

 

「く――ッ!」

 

やむなく聖女の誘導弾をディバインシューターで迎撃しながら距離を詰め、追加のディバインシューターを精製しようとした瞬間――

 

「≪Chaos Buster≫!」

 

さっきも聖女が使用した砲撃魔法が再び放たれた。

凄まじい速度で迫る高密度の魔力に対して私は敢えて正面から撃ち合わず、僅かに位置を調整し……

 

「レイジングハート!」

≪Round Shield.≫

 

天使の力を編み込んだ魔法の盾で砲撃を受け流す。そして――!

 

≪Divine Buster Extension!≫

 

カートリッジ2つを使用して放つ、超長距離用の収束砲撃をカウンターに撃ち込む。

 

「――ッ!」

 

通常のディバインバスターを威力、速度共に遥かに上回る一撃だ。

聖女は即座に自身の砲撃の制御を切り身を翻すが、流石に咄嗟の事で体勢を僅かに崩している!

チャンスとばかりに飛翔魔法の速度を上げるが、やはり接近だけは許さないつもりなのか、聖女は速度特化の直射弾をマシンガンもかくやとばかりに大量に連射してきた。

 

――回避するには速いし、受け流すには射線がばらけ過ぎてる……防ぐしかない!

「レイジングハート!」

≪Protection.≫

 

仕方なく接近を諦め、障壁で防ぐ。

いくら魔力の共鳴によって威力を上げていても、単純な直射弾だ。この程度の攻撃であればいくらでも耐えられる。

しかし、それこそが聖女の狙いだろう。このまま時間を稼がれてはたまらない。

 

――抜け出すか、それとも直射弾ごと砲撃で……

≪なのは!≫

「――ッ!」

 

レイジングハートが呼びかけてくれたおかげで、私の周囲5か所に発生した聖女の術式に早々に気が付く事が出来た。

 

――これは……遠隔発動の拘束術式!

「レイジングハート!」

≪Axel fin!≫

 

即座に障壁を解除し、加速した飛翔魔法でその場から離れる。

私を取り囲むように配置されていた魔法陣から現れたのは、さっきの戦闘でも聖女が使用していた鎖状のバインドだ。

だが前回のように砲撃で一斉に破壊されないようにだろう。その軌道はバラバラで中々思うように誘導できない。

 

「――ブラスタービット!」

≪対処をお願い、レイジングハート!≫

≪ああ、こっちは任せろ!≫

 

展開した4基のビットの制御をレイジングハートに預け、私は聖女へと杖の先端を向ける。

 

――レストリクトロック!

 

無音での術式構築と発動。

普通の相手であればレストリクトロックの範囲の広さも相まって拘束可能だろうが、聖女は先程レストリクトロックの式の解を即座に割り出して解除した実績がある。

未来視の防御で不意打ちが出来ない以上、さっき同様に対処されるだろう。だが、聖女の注意が少しでもバインドの対処に向けば、その分彼女自身が発動したバインドの制御は甘くなるはずだ。

 

「!?」

 

だが、聖女が選んだのは短距離間の転送魔法による、レストリクトロックの効果範囲からの離脱だった。

そしてこちらへと向けられた右手には、禍々しく輝く集束砲撃の魔力がチャージされている。

 

――拙い!

≪対処完了だ、なのは!≫

≪ナイスタイミング、レイジングハート!≫

「カートリッジ、ロード!」

≪Load Cartridge.≫

 

カートリッジが再び2発分ロードされ、レイジングハートの先端に魔力が集う。

 

「ディバインバスター!」

≪Divine Buster Extension!≫

「≪Chaos Buster Over Light≫」

 

ほぼ同時に放たれた二つの収束砲撃。

それは私と聖女の丁度中間で衝突し――世界が揺れた。

 

 

 


 

 

 

「――ッ、次元震だと!?」

「拙い! 今、リオンは魔法が使えぬ!」

「クロノ提督!」

「分かっています!」

 

なのはと聖女の戦いは、地上でリオン達――最高評議会達から話を伺っていた俺にも見えていた。

あの二人の戦いに介入すればなのはの足手纏いになるだろうと考え静観に徹していたが、如何やら俺にもまだ大仕事が残っていたらしい。

 

即座に魔力を練り上げ、母から教わった通りに空間に作用させると、程なくして次元震は抑えられた。

迅速な対応が出来た為だろう、俺からは次元断層の発生は確認できていないが万が一と言う事はある。

 

「――エイミィ、今の次元震の影響だが……」

『既に調べてるよー! ……うん、クロノ君の対処が早かったおかげで次元断層等の二次災害は無いね! 流石クロノ君!』

 

エイミィからの報せにホッと胸を撫で下ろすが、直ぐに安心するのはまだ早いと意識を切り替える。

何せ今戦っているのはあのなのはと、それと同等クラスの力を発揮している聖女だ。

これからも戦闘が続く限り何度だって次元震は起きるだろうし、その震度だって今のが最大とも限らない。

俺が抑えきれない規模の次元震が発生する可能性もある。

 

――魔力が高くても、ノウハウが無ければ次元震を抑える事は出来ない……だったら!

 

「エイミィ、プレシア博士に連絡を。それと、間に合うかは分からないが――」

 

それが出来る者の手を、可能な限り借りるしかない!




次元震の抑え方に関しては原作に詳しい描写が無かったと思うので、想像で補っています。(こちらの記憶違いで、実は描写があった場合は指摘していただければありがたいです)

なお、クロノ君の懸念通り放置すればこれからも次元震は起きる模様。
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