転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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光vs凶星⑤

≪――ホント!? はやてちゃん!≫

 

聖女との交戦を続けていた私の元に伝えられたのは、はやてちゃんからの吉報だった。

レイジングハートの予想通り、現在この戦闘空域を覆っている結界に細工する事で聖女の転送魔法に対抗できるのだと言う。

 

≪ああ! ただ、結界の術式に細工する為にはリインフォースが結界の制御を奪い取らんとあかん。それに関しては現在も並行して作業中や。≫

 

はやてちゃんが言うには、結界に細工する事に関してはエイミィさんやクロノ君からも許可が下りたらしいが、元々結界の制御を他者に譲渡するような機能は存在せず、闇の書事件の時同様にリインフォースが力ずくで制御を奪い取らないといけないようだ。

 

≪まぁ、前回とは違って今回は同意の上や。通常のセキュリティ以上の抵抗もされてへんみたいやし、そっちに関しては問題無く進む筈や。≫

≪うん! あ、それと……≫

≪分かっとる、聖女の動きを止める方法やろ? そっちに関しても何とかなりそうや。実はな――≫

 

聞けば、聖女がバインドを無力化している絡繰りは未来視にあったらしく、銀盾の皆が一斉に介入する事でそれを妨害できるのだとか。

そう言えば、朱莉ちゃんもそんな事を言っていた。銀盾の皆に聖女の攻撃が中々当たらないのも、聖女の動きが鈍って見えたのも多数の転生者を相手にしているからだと。

 

そして結界と銀盾――二つの対処法とソレを用いた作戦が私に伝えられ、私はそれを了承した。

 

≪分かった、それで行こう。時間は私が稼ぐから。≫

≪……ゴメンな、なのはちゃんにはずっと背負わせてばっかりや。≫

≪ううん、そんなことないよ。≫

 

確かにタイミングは私に委ねられた。

報告された銀盾の皆の魔力残量からしても、ぶっつけ本番の一回きりの勝負になる……だけどはやてちゃんが言う程、私はずっと背負わされたとは考えていない。

 

≪聖女と戦っている時、フェイトちゃんが助けてくれた。私が戦線を離脱した後は神宮寺君が聖女の注意を引き付けてくれた。ヴォルケンリッターや銀盾の皆が時間を稼いでくれた。朱莉ちゃんが聖女に勝つ為の力をくれた。そしてはやてちゃんも、何度だって私が戦う為の作戦を考えてくれた。≫

 

そう、私達はそうしてずっと一緒にやって来たんだ。

小学生だった時から、それぞれが出来る事をやって支え合って来た。

だから、聖女と一対一で戦っている時も……

 

≪――私達は皆で戦ってるんだって、ずっと心強かったよ。≫

≪なのはちゃん……うん! 結界の制御を掌握したら、また念話するな!≫

≪うん、ありがと!≫

 

はやてちゃんとの念話が終わり、聖女との戦闘に全神経を尖らせる。

あれから聖女の攻撃は激しくなる一方だ。恐らくは聖女の身体の回復が進んでいる為だろう。

だけど、レイジングハートだって負けていない。

無数のアクセルシューターを常に追加しながら、絶えず私へと向かう攻撃を捌き、時には私の攻撃をアシストしてくれている。

 

「――っ! いい加減に、諦めたらどうですか!? このまま続けても、お互い無駄に疲弊するだけで、貴女が敗北する未来には変わらない!」

「無駄なんて無いよ。未来だって変えられる……! だって今まで諦めなかった一分一秒に、ここまで貴女の前に立った皆に……その全部に意味があったから!」

 

だから今私は貴女(聖女)の目の前に立っている! こうして言葉を交わせる距離にまで……!

はやてちゃんの言葉を聞いた時、一つ考えついた事があった。

もしも聖女がバインドを一瞬で解除したのが未来視による物だとするならば、或いは通用するかもしれない強力な一手!

 

「≪Loyal zapper≫!」

≪-Burst-≫

 

距離を取りながら苦し紛れのように放たれた誘導弾は、即座にレイジングハートが操るアクセルシューターが巻き起こす魔力爆発で迎撃され、私と聖女を含む広範囲に煙幕が撒かれる。

だけど、私が聖女の位置を魔力感知で把握しているように、聖女もまた私の動きを把握している筈だ。

 

「カートリッジ、ロード!」

≪Load Cartridge.≫

 

そこでもう一つ本命の前に仕掛けておく。

発生した爆発が治まるよりも早くロードされた大口径カートリッジ4発分の魔力が、各ブラスタービットの先端に集う。

魔力の反応でこちらの動きを感知する以上、ブラスタービットの放つ魔力は私の魔法の動きを隠してくれる。

そして――

 

――『バレルショット』!

 

私が構えたレイジングハートの先端から、渦巻く風のような魔法が放たれた。

この魔法はアニメでも使用された魔法であり、当然聖女もその効果は知っている事だろう。

だが『視覚が封じられ』、『強力な反応が4つある』状態で、この距離から放たれた魔法だ。

私が転生者である以上、聖女の未来視も完全には働かない。その上で更に未来視と言う『視覚』に映りにくい不可視の魔法……これならきっと!

 

「――くっ、これは……!」

 

――捕らえた!

 

微かに聞こえた聖女の声、そして魔力感知からも聖女がバレルショットのバインドに拘束された様子が確認できた。

 

「レイジングハート!」

≪Excellion Buster Cross Fire!≫

「!」

 

上下左右へ展開されたブラスタービットから、聖女へ向けて4つの高威力の砲撃が放たれた。

 

「くっ……! ならば!」

「――っ! 転送魔法……!」

 

至近距離からの砲撃を躱す事は出来ず、一時は障壁で身を守った聖女だったが、その障壁も早々に軋み始めると即座に短距離転送魔法で窮地を脱する。

……いや、窮地を脱しただけではない。この魔力の動きは――!

 

「ショートバスター!」

「! 流石に気付きますか……!」

 

一瞬で体の向きを反転させ、背後から迫っていた聖女へとショートバスターによるカウンターを見舞う。

しかし私への奇襲の為だろうか、左手に集めていた魔力を用いてショートバスターを迎撃した聖女は、続けて右手に集めていた魔力から砲撃を放ってきた。

 

「お返しです、≪Chaos Buster≫!」

「……ッ! プロテクション!」

 

この至近距離からの砲撃を回避できるほどの速度は、私には無い。

ブラスタービットはエクセリオンバスターを放った直後であり、その際にアクセルシューターの制御を切ってしまっている。

仕方なく黒虹色の砲撃を障壁で受けるが……やはり、少しずつ体の修復が進んでいるのだろう。魔法の威力が先程よりも増大している事がよく解る。

 

――このままじゃ持たない……!

 

「レイジングハート!」

≪Axel Shooter -Buster-≫

「ふふ……!」

 

レイジングハートが再び使用したアクセルシューターによって聖女は砲撃を中断、飛び退るように距離を取るが、その表情には余裕が戻っていた。

 

「貴女も今感じたでしょう、私の力が増しているのを。もう直この身体は完全に回復する。そうなれば、貴女の勝ち目はほぼゼロになる。」

「……」

「これが天使を取り込んだ者と、天使の力を借りている者の差なのです。大人しく降参し――」

「しないよ。降参も、絶望も……だって、確かめたかった事は済ませたから。」

「……ハッタリですね。それとも、力の差を認められないのでしょうか……」

 

口ではそう言う聖女だったが、表情にはしっかりと警戒の色が戻っていた。

私の表情や魔力の流れから、今の言葉が出任せではないと分かったのだろう。

そう、既に私達の準備は整っていた。

 

≪――なのはちゃん、結界の掌握と術式の書き換え完了や! 銀盾の皆も準備は出来とる! いつでも行けるで!≫

≪ありがとう、はやてちゃん……――これで決めよう!≫

≪ああ! カウントダウン、行くで!≫

 

「力の差なら、もう分かってるよ。きっとお互いに全力でぶつかったら、私よりも貴女の方が強い。……だけど、それは諦める理由にはならない。だって私は――私達は、今までだってそう言う相手と何度も戦って来たんだから!」

≪Restrict Lock.≫

「何かと思えば……――なッ!?」

 

念話で伝えられていたカウントが0になった瞬間、一瞬で構築されたレストリクトロックが聖女に迫る。

聖女も対応すべく未来視を起動したのだろう。しかし、それとほぼ同時に控えていた皆が転送魔法で聖女を包囲し、一斉に魔法を放った。

 

「『王の財宝』!」

「エグゾースト・フレアバインド! 20倍!」

「『魔法剣』:バインド型、『属性指定』:氷結!」

「これも喰らえ!」

≪Constellation Bind.≫

「姉さん、バルディッシュ!」

≪Lightning Bind.≫

「行くで、リイン! ツヴァイ!」

≪≪≪Gleipnir.≫≫≫

 

神宮寺君の王の財宝から無数の魔法剣が、紅蓮君が放った炎のムチが、皇君の氷結属性の剣の投擲が、神場君が作り出した星座が、フェイトちゃんとアリシアちゃんの黄金と蒼の雷が、はやてちゃんとリインフォース達が同時に放った無数の輝くロープが……――そして、レストリクトロックの光輪が聖女の身へと殺到する。

 

全方位から放たれた夥しい数の拘束魔法群に対して、回避や正面からの対処では分が悪いと判断した聖女は即座に転送魔法による退避を試みるが――

 

「――! 転送魔法が……ッ!」

 

一瞬聖女の全身を覆った魔法の光だったが、転送魔法の転送先座標が書き換えられた所為だろう。聖女の姿が消える事は無く、バインドから逃げる事は叶わない。

未来視と転送魔法の両方が無力化されたと理解した聖女は、諦めたような、割り切ったような表情で目を閉じると――

 

「――仕方ありませんね。」

 

……その声が聞こえたと同時に、聖女の纏う魔力光が真っ白に変化した。

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