転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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何か熱っぽいなって思ってたらコロナに罹ってました。
症状は軽いと思うのですが、快復を優先したいのでしばらくコメント返信は出来なさそうです。
もしかしたら次回の更新遅れるかも……


光vs凶星⑥

周囲を覆う無数のバインドと、それを放った転生者達を見て思う。

大人しくしていれば、私もこの魔法を使うつもりは無かったのに……と。

 

奪い取った天使の力に私の持つ全てのリンカーコアの魔力を撚り合わせ、何よりも強靭な魔力を生み出し――それの性質を"白の魔力"に染め上げる。

 

嘗て私と家族同然に過ごした彼女が――戦略魔導軍将と呼ばれた大魔導士が編み出した、究極にして最強の術式。

彼女が"極光"と呼んだ魔力の性質を強化し、相手の体内にある潜在魔力全てを体外へはじき出して消し飛ばす……抵抗のしようが無い絶対的な空間攻撃魔法。

その性質上、潜在魔力全てを喪失した相手は確実にブラックアウトダメージで意識を失うと言う、危険極まりない魔法だ。

 

あまりにも膨大な魔力を必要とする上、それに伴い天使の力も大量に消費する為に使用は控えていたが――この状況に持ち込まれてしまった以上は仕方がない。

 

――意識を失った後、落下して死ぬ者もいるかもしれないが……私はここで負ける訳には行かない!

 

あの未来を覆す為には、今の私の力が……天使の力が必要になる! あの未来で天使が救援に来なかった以上、私がその力を振るう事で運命を覆さなければならない!

 

――この魔法を使った後、一体何人の落下を私のバインドで防げるか……

 

脳内で魔法の使用後の動きをシミュレートしつつ、私は彼女の魔法――『Over Light Punisher』の術式を発動しようとして――

 

 

 

「――させないっ!」

――な……ッ!!?

 

なのはのブラスタービットから放たれた4つの砲撃に飲み込まれた。

 

……触れた敵の魔力を霧散させる性質を持つ"白の魔力"には、一つだけ弱点がある。

それは、魔力を霧散させる際に"()()()()"()()()()()()()()()()()()()()と言う点だ。

白の魔力よりも敵の魔力の方が多く霧散させられるので、本来あまり浮き彫りにならない弱点なのだが……今、この瞬間に於いてはそれが最大のデメリットとなってしまった。

 

なのはの砲撃により、術式の発動に必要な分の"白の魔力"が散らされてしまったのだ。

しかも、なのはの砲撃は今や天使の力の性質まで獲得している。

同じ性質を帯びた私の魔力にのみ干渉したそれは、しかし当然私を狙う無数のバインドをすり抜けており、唯一の例外だったレストリクトロック以外の魔法は未だ健在なのだ。

 

今度こそ完全に無防備となってしまった私の身体に、はやての紐状のバインドが絡みつき、その瞬間――

 

――っ!? これは、魔法の発動を封じるバインド……!?

 

私の魔力の動きが阻害され、術式の構築が不可能になる。

直ぐに私のデバイスとしての処理能力を総動員して術式の解析に取り掛かるが、はやてが放ったバインドは三つだ。そのどれもが別の式を持っており、嫌が応にも時間を要する。

直ぐにグレイプニルの一つの解を導き出し解除するが――

 

「逃がさへんで!」

≪Gleipnir.≫

 

その瞬間にはやてが解除された分のグレイプニルを追加で放って来る。

どうやら同時に使用できる数は三つが最大なのかそれ以上の追加は来なかったが、そうこうしている間にも無数のバインドが私の身に降りかかり、私は一切の行動を封じられてしまった。

 

――グレイプニル以外の術式は比較的シンプルな構造だ。解除に割くリソースは最低限で良い……だが、グレイプニルの解除は三つ同時でなければならない!

 

グレイプニル三つの同時解析と雑多なバインド群の解除を並行している私の視界の隅に、それは無情にも映り込んだ。

 

「魔力の、収束……っ! くっ……!!」

――急がなければ! スターライトブレイカーの集束には多少の時間がかかる筈! 発動する瞬間にグレイプニルだけでも解除し、障壁で身を守ればチャンスはある!

 

見出した僅かな希望。

しかしそれを覆い隠すかのように、()()()はなのはの傍に姿を現した。

 

「~~ッ!! 天野朱莉……! 卑怯者の天使がァ……ッ!!」

 

 

 


 

 

 

「朱莉ちゃん!? どうしてここに……!?」

「最後の手助けだよ。……この世界で最後の。」

「え……?」

 

突如私の傍に転送魔法で現れた朱莉ちゃんに尋ねると、彼女は微笑みながらスターライトブレイカーのチャージ中であるレイジングハートの本体――宝玉部分にそっと触れた。

 

「術式、ちょっと手を加えさせてもらうね、レイジングハート。発動ワードは――」

 

そう言って身を乗り出した朱莉ちゃんがレイジングハートの本体部分を一撫ですると、レイジングハートはその魔法名を唱えた。

 

≪Star Light Breaker ――Authority of Ashtaroth.≫

「アシュタロス……?」

 

どこかで聞いた事があるような響きに、朱莉ちゃんへ視線を向けると――

 

「ふふ……私の名前。折角だから、覚えておいても良いよ。」

 

彼女は怠惰な笑顔で私を見ていた。

いつも通りの筈のその笑みは今では何処か女神の様な、それでいて悪魔の様な魅力を放っていて……

 

――あぁ、そうか……朱莉ちゃんは本当に人知を超えた存在だったんだ。

 

今更ながらにそう理解した。

次の瞬間、集束していた魔力が眩い輝きを放つと、凄まじい速度で周囲の魔力を吸い込み始める。

瞬く星のように集まっていた魔力は、まるで流星群が降り注ぐように集束魔力球へと飲み込まれていく。

見る見るうちに魔力球はその体積を増していき、構えているレイジングハートが激しく振動を始めた。

 

「……ッ! ちょ、これって……!」

 

ブラスタービットが起動し、それぞれの先端にも同様に集った魔力が即座に天使の力を帯びて増幅していく。

しかしそれでも勢いはまるで衰えない。これまで扱った事の無いような力が、とめどなく流れ込んで来る。

 

――こんな力……! レイジングハートが……!

 

≪ぐ……ッ!≫

「ゴメンね、無理させちゃって。少しだけ苦しいのは我慢してね。」

≪は……っ、こんなの……俺にとってはご褒美、だが……?≫

 

レイジングハートはそう言うが、扱う力の反動かそのフレームには既に無数の罅が入っており――

 

≪ぅ……!?≫

「レイジングハート!?」

 

その罅はレイジングハートの本体にまで広がっていた。

慌てて魔力の収束を止めさせようとする私の腕を、朱莉ちゃんが咎めるように掴む。

 

「落ち着いて。大丈夫、私がいるから。」

 

そう私を見つめる彼女の眼は今までの物とはまるで異なり、真剣そのものだ。

天使である彼女が、『絶対に私が何とかするから』と眼で訴えかけて来る。

 

私は、彼女に何が出来るのかを知らない。

ただ彼女には人知を超えた力があって、きっと何か方法があるのだろうとは思う。

 

「お願い、なのはちゃん。今は……今だけでも、私を信じて。」

「~~ッ!」

 

信じて良いのか……一瞬生まれた迷い。

それを振り切る切っ掛けを作ったのは……

 

≪daい、丈夫だ、naのは……おrれにとっては、こんなの……は……!≫

「レイジング……ハート……――ッ!」

 

強がりなのか、それともただ発声機能に影響が出てしまっただけなのか……声を震わせながらそう言ったレイジングハートの声が、私に大きな決断をさせた。

 

「…………分かった。貴女を信じるよ、アシュタロス。」

「! ……うん。ありがとう、なのはちゃん。」

 

 

 


 

 

 

「……なんちゅー魔力や……まだチャージ段階やって言うのに、身震いして来たわ……」

 

はやてがそう言って視線を向ける先には、五つの巨大な魔力球が恒星のように輝いていた。

先程まで絶えず降り注いでいた魔力の流星は少しずつ治まってきており、チャージの完了が近い事が伺える。

 

「はやて! そろそろ退避した方が良いんじゃないか!?」

「アホ! 聖女を確実にここに留めんとあかんやろ! 見てみぃ、今だって私達が少しでも気ぃ抜けば、直ぐにでも聖女は逃げ出すで! ギリギリまで粘るんや!」

 

はやてが言う様に、聖女はグレイプニルの同時解析を並行しているとは思えない速度で銀盾やフェイト達のかけたバインドを解除して行っている。

その身を苛む鎖や帯、光輪が『パキン、パキン』と絶えず砕けては、なのはの生み出した恒星の引力に引かれるようにして集束魔力球の一部になっていくのだ。

 

「く……っ! 死なば諸共、ってか……!」

「ああ、分かったよ! やってやろうじゃねぇか!」

「安心せい、死にはせぇへん。だいたい、私もフェイトちゃんもアレ喰らってるんやで?」

 

――まぁ、私等ん時はあそこまでえげつない魔力やなかったけど……

 

はやてが胸に秘めた言葉を知ってか知らずか、銀盾達の眼に勇気の光が宿った……ように見える。心なしか。

 

「ああ、そうだったな。そう言えばそうだった……! なのはの友人を名乗るなら、スターライトブレイカーの一発や二発、受けた事が無いとな!」

「俺、スターライトブレイカーを受けたらなのはに告白するんだ。」

「じゃあ俺はお前がふられた後になのはに告白するわ。」

「んだとぉ!?」

 

「――ははっ、こんな時でも変わらんなぁ、あんた等は。」

 

 

 

その時だった。

なのはの作り出した五つの恒星全てに環状魔法陣が発生し、チャージの完了を告げるのと――

 

「なん、やと……ッ!?」

 

はやてとリインフォース達がかけたグレイプニルの三重の拘束が音を立てて砕けたのは、同時だった。

 

――落ち着け! 聖女はリインの結界で転送魔法は使えん! それに皆のバインドはまだ残っとる! だったら直ぐに追加を……!

 

「グレイプ……」

≪皆、避難して!≫

「――なのはちゃん!?」

≪早く!≫

 

はやてがグレイプニルで再び聖女の魔法を封じようとした瞬間、なのはの念話がはやて達全員に届く。

見れば、恒星の輝きは既に最高潮に達しており、聖女は白い魔力を身に纏っている。

 

――ここで強引にグレイプニルを放っても、かき消されるだけか……!

 

もう彼女に賭けるしかない。

そう判断したはやては即座に撤退の指示を飛ばし、自身もまた避難の為に地上へ急ぐ。

 

直後、聖女は白い魔力でバインドをかき消し、身体の修復すら後回しにして全力の障壁を幾重にも重ね――

 

「スターライト……ブレイカアアアァァァーーーーッ!!」

 

ほぼ同時に結界中に散らばっていた全ての魔力、天使の力を集束させた『スターライトブレイカーA.A』の全エネルギーが解放された。




自身のネーミングセンスに悩まされた回。
朱莉の本名とこの展開に関してはプロットの時点で決めてたんですが、名前は最後まで決まらなかった……
ちなみに朱莉の『怠惰』なところがアシュタロス(と言うかアスタロト)要素です。
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