「…相談?」
相談と言ったが、実質的には取引だ。
フェイトに告げた内容を纏めると、以下のようになる。
1.これからジュエルシードが見つかった場合、先に見つけた陣営がそれを手中にするものとする。
2.地上にばら撒かれたジュエルシードの回収を最優先とし、お互いのジュエルシードを賭けた戦闘を控える。
3.地上にばら撒かれたジュエルシードを全て回収した後、お互いの持つ全てのジュエルシードを賭けて決闘する。
「…まだ、他の皆とも相談しないといけないけど…どうかな?」
とフェイトに問いかける。
「…理由は?」
「魔法の事が皆に知られちゃって、子供達がジュエルシードを探してるの。
…私は、街やみんなにジュエルシードの被害者になって欲しくない。」
「そう。…最後の決闘は1対1?」
「うん、そのつもり。」
フェイトは少し考えて、下に集まっている銀髪オッドアイ達に一度目を遣ってから答える。
「…あなたの目的は分かった。」
「!本当に!?」
「だけど、私の方があなた達よりも強い以上、私にメリットは無い。」
「…どうすれば、受け入れてくれるの?」
「簡単。…私がその条件を呑まなければならない程に、あなたが強いと証明すれば良い。」
フェイトが下ろしていたバルディッシュを再び構える。
…言われて気づいた。確かにこの条件、フェイトは飲む必要が無い事に。
フェイトは俺達全員を相手にしても戦闘をこなせるが、俺達はフェイトにまともなダメージを与えられていない。…強いて言うならば、神宮寺があと一歩のところまで行っていたらしいが、それはフェイトにとって神宮寺一人以外は警戒に値しないと言う事。
俺達は…
「ユーノ君、離れてて。」
「…気を付けてね、なのは。」
なるほど。つまり、どの道俺はフェイトに勝たなくてはならないらしい。
それに、俺も『何の戦力にもならない』とまで言外に告げられては流石に面白くない。
「神谷くん、結界お願い!」
「結界だな。解った!」
「おい神谷、俺達も結界には入れろよ?」
「解ってるよ、もう懲りた!」
周囲に結界が張られたことを確認し、戦闘の準備が出来たところでフェイトから声がかかる。
「そう言えば、まだ私はさっきの条件を呑んでいない。…賭けて、ジュエルシードを1個。」
「…良いよ。フェイトちゃんもね。」
「勿論。」
前回は防戦一方のまま手も足も出ず負けてしまったが、今回はそうは行かない。
取引の事もあるし、皆の安全が大事なのも勿論だが、それ以上にここまで言われて負けたくない。
「…レイジングハート、お願い。」
≪
「…行くよ、バルディッシュ。」
≪Yes sir.≫
バルディッシュがサイズフォームへ変化し、光刃を生み出す。だが、俺は今もプロテクションを解いていない。
前回、最後のブリッツアクション以外では破られなかった以上、このプロテクションは
「レイジングハート」
≪
「…?…ッ!」
発音が酷い
…だがこれで良い。これでフェイトはブリッツアクションの準備段階の二重の防御を簡単には張れない。
「バインド…覚えたんだ。」
「…そうしないとフェイトちゃんの速さに対抗できないもん。」
≪
続けてディバインスフィアを4つ生成、まだ発射はせずに周囲に滞空させる。
「…バルディッシュ」
≪sir. Photon Lancer Multi shot≫
フェイトも自らの周囲にフォトンスフィアを滞空させる。こちらに合わせたのか、数は俺と同じ4つだ。
…試されているのだと直ぐに察する。ここで力を証明しなければ、本当にあの取引はご破算になるだろう。
ならば、
≪
レイジングハートの先端に光を宿し、高速で翔ける。だが、このままではフェイトの速度にはもちろん追いつけない。だからこそのディバインシューターだ。
「行って!」
≪
フェイトの逃げ道を封じる様にディバインシューターを操作する。
≪Fire.≫
フェイトが撃ち落とそうとするがそうは行かない。ディバインシューターは操作性に特化した射撃魔法だ。フォトンランサーを躱してフェイトに迫る。
「っ!」
フェイトはディバインシューターに追跡されながらも、空を幾何学的な軌道を描いて翔ける。何故か前回程の速度は出していないが、直角に何度も曲がられて中々追いつけない。気づけばフェイトはディバインシューターを引き連れる様に、俺の方へ向かって来ていた。
俺もフラッシュムーブを維持したままフェイトに突撃する。
「ハァッ!」
「ていっ!」
フェイトはバルディッシュを振り抜き、俺もレイジングハートを振り下ろす。レイジングハートに宿った魔力と、バルディッシュの攻刃がぶつかり凄まじい衝撃を放つ。直後フェイトは一瞬でトップスピードに変化し、体を回転させながら俺の後ろに回り込む。
目の前には俺の撃ったディバインシューター、後ろにはバルディッシュを振りかぶったフェイト…この挟み撃ちが目的か!
…だが俺の操作性を見誤ったようだ。直ぐにディバインシューターを操作、俺を躱し、フェイトの更に後ろに回り込ませる。
「くっ!」
≪Round…≫
先にディバインシューターに対処しようと後ろに手を伸ばすフェイト。だが、俺からは隙だらけだ。
≪
「ッ!」
レイジングハートの声にこちらを振り向くフェイト。
≪
即座にラウンドシールドを中断、
ディバインバスターにディバインシューター全てが消し飛ぶが…
「ッ!バインドッ!?」
俺が無詠唱で設置したバインドにフェイトの右腕と右足が捕まる。フェイトの癖を利用したトラップだ。
そして、これが本命!
「ディバイン、バスター!」
≪
「くっ!」
≪Round shield≫
直撃!ラウンドシールドで防いでいるようだが、ここが正念場。ディバインバスターの出力を上げる。
「ハアアアァァァ!」
「くっ…うぐ…ッ!」
ピシ…ギシッ…と異音が聞こえ始める。もう一押し…っ!
≪put out≫
「バルッ…ディッシュ…っ!」
そこで戦いは終了した。
≪
「くっ!」
≪Round shield≫
初めて受けたなのはの攻撃は、俺が想定していたよりも遥かに重かった。
展開したラウンドシールドから伝わる圧力には、絶対に勝つというなのはの思いを確かに感じた。…だからだろうか。
≪put out≫
「バルッ…ディッシュ…っ!」
初めての敗北を知らせるバルディッシュの声に、咎めるような言葉と裏腹に思わず納得してしまったのは。
程無くして、ディバインバスターの砲撃が終了…いや、中断したのだろう。なのはの様子を見る感じまだまだ魔力には余裕がありそうだ。
短時間で良くここまで…素直に称賛したいが、やはり自信満々で挑んでおいて負けてしまった為か、どうにも心が素直になれそうもない。…まるで子供に戻ったみたいに。
「フェイトちゃん!これでさっきの相談、考えてくれるよね?」
そう言えばそんな話だったな。…なのはにとって、賭けたジュエルシードよりも相談の方がよほど重要だったらしい。
「負けは負け、あなたが周りを説得したら…良いよ。受けてあげる。」
「本当!?」
「…うん。」
真っ直ぐな目に絆されたのか、少しだけ素直になれた気がした。
「それよりも、はい。ジュエルシード。」
「えっ!?」
「…忘れてたの?」
「…あはは。」
慌ててジュエルシードを受け取るなのは。
自分の取引は覚えていてこちらの取引を忘れているとは…黙っておけばよかっただろうか?…まぁいい。今の俺は妙に気分が良いのだ。
「あそこの岩場にジュエルシードがある。」
「…へっ?」
「餞別。…最後に全部取り返す。」
「あっ…うん!」
「…またね」
「うん、またね!」
銀髪オッドアイ達に目線をやると、結界を張っていた…神谷だったかな?が結界を解除してくれた。
「フェイトォー!心配してたんだよ!!」
結界が解除されて直ぐ、アルフが飛び込んできた。解ったからそんなに抱き着かないで欲しい。
「アルフ、撤退。」
「えっ、でもまだジュエルシードは…」
「負けた。だから、撤退。」
「…えっ、負けた!?フェイトがかい!?」
「撤退。」
「わ、分かったってば!」
慌てて俺を解放するアルフ。
成果は無いどころかマイナスだったが、取引の事を思えば特になんてことはない。最後に勝てば、全て手に入るのだから。
「…ん?」
「どうしたの?」
「いえ、小規模な次元震?を感知しました。」
「…見せてくれる?」
「はい、えっと…これですね。次元震と表現するには本当に極小規模ですが…」
「…この次元座標、第97管理外世界よ。」
「管理外世界で次元震に満たないとはいえ…ここまで届くほどの強力な魔力反応ですか?」
「…一度、確認の為に出向いてみましょうか。何かあってからでは遅いわ。」
「了解しました!」
フェイトの敗因は油断も多く含まれていますが、それ以上になのはのイレギュラーさが大きく関係しています。
因みに原作11話のなのはと比べると、
原作11話のSLB>現在のディバインバスター
原作11話のディバインバスター<<現在のディバインバスター
くらいのバランスです。