ジュエルシードとなのはが普通に転送魔法使用してましたけど、聖女戦からずっとリインフォースの結界の中なので転送魔法封じられてるんですよね……なんで書いてる時に気付かなかったのか……
ジュエルシードの全てが、アリシアの身体の中で共鳴しているのが分かる。
圧倒的な魔力が湯水の如く溢れ出し、空間を揺らす。
小規模な次元震が、彼女の高笑いに合わせて発生し続けている。
予言で『天の眼』と記されていたと思われる次元の裂け目が、少しずつ広がっているのが分かる。
このまま広がり続ければ、ミッドチルダの全てが虚数空間に飲み込まれる事になるだろう。あの伝説の都、アルハザードのように……
――これが、滅び……?
もしもそうなのだとしたら、確かにこれはそう形容するしかない。
今の彼女は存在するだけで次元震を生み出す上、支配下に置いた銀髪オッドアイの力で自身は虚数空間を気ままに動き、あらゆる次元世界に移動する事も出来るようになってしまった。
全ての次元世界が、彼女の気まぐれ一つで消滅しかねない……だったら、ここで絶対に倒さなければならない。彼女が唯一『自分の手で殺す』と拘る私にしか、それは出来ないのだから。
――先手必勝!
<プロト!>
<はい!>
プロトの次元魔法でジュエルシードに肉薄する。そして――
「――≪Over Light Punisher≫!」
間髪入れずにその魔力を弾き出し――……!?
「魔力が、弾き出せない……!?」
<拙い……ジュエルシードの魔力が
<えっ!? う、うん!>
切羽詰まったプロトの声に咄嗟に返答した直後、彼女が『混乱しないように』と言ったその理由が明らかになった。
――うっ……なにこれ……!?
一瞬で視界が二重になる。
現在の光景の上に、無理やり未来の光景を重ねたような視界……更にその所々にはまた違う未来が映っている。
プロトはこんな視界で戦っていたのかと驚愕するも束の間、私はプロトがこの光景を見せた理由を思い知った。
「今の私に近付くなんて無謀ね……高町なのは!」
次の瞬間、ジュエルシードは全身から青い輝きを放ち、金色だったアリシアの髪は青く染まる。
そして額に存在していた青い六弁の花の様な模様は消え、代わりに菱形の紋様が大きく浮き上がった。
そして、未来視によって見た光景が訪れる。
「≪Disaster Edge≫!」
さっきまでは6つが限界だった菱形の誘導弾は、その速度も操作性も威力も増して私の眼前に現れる。その合計21個。
――この数は……それに、動きもさっきまでとは全然……! 距離を取りながら躱さないと……!
未来視によって軌道が読める為何とか回避出来ているが、それでもギリギリだ。
僅かな隙間を見つけて飛び込んでも誘導弾がバリアジャケットを掠め、忽ちバリアジャケットがボロボロになって行く。そんな嵐を掻い潜り、時に障壁で上手く受け流しながら次第に距離を取る。
一瞬白い魔力で放つショートバスターなら掻き消せないかとも考えたが、次の瞬間未来視にショートバスターを貫いて襲い来るビジョンが過り断念する。
ジュエルシードの魔力が濃すぎる為に、白い魔力で搔き消せる限界を超えているのだ。
「このままだと……――ッ!」
「遅いよ! ≪Apocalypse Breaker≫!」
いつの間に上を取られたのだろう。そんな疑問が過るよりも前に、その手から濃紺の砲撃が放たれる。
「プロテクション!!」
<Aurora Protection!>
私のプロテクションの更に前方に、プロトの生み出した白いオーロラが無数に現れる。
ジュエルシードの砲撃はそのオーロラによって威力を減衰させながらも、私の障壁に到達。
その威力によって私は、プロテクション毎地上に叩きつけられた。
「――ッぐぅ!!」
「これでとどめよ! ≪Apocalypse Breaker≫!」
魔力が増えた事で回復力も増したのだろう。反動によるダメージを受けたアリシアの腕は一瞬で再生され、再び――いや、今度は先程よりも巨大な砲撃が迫る。
今度のは障壁では到底受け止めきれそうにない……!
――回避しないと……!
未来視の光景を参考に回避のルートを……――!
――ダメだ、間に合わない!? イチかバチか防御するしか……!
思いっきり地面に叩きつけられた所為で、私の周囲は障壁の形に――お椀型に抉れている。
空戦適性がある魔導士にとっては僅かな高低差だが、この一瞬の隙を、一寸の距離を鬩ぎ合うこの戦いではそれが致命的だった。
「プロテクショ……!」
「――なのはさん!!」
イチかバチか障壁を張ろうとしたその瞬間、目を疑った。
私の前に割り込み、代わりに砲撃に立ち向かう背中は――
「IS起動――『振動破砕・改』!!」
「スバル!?」
恐らくキャロが施したのだろう強化魔法の淡い光を纏ったスバルは、青い波形を生む拳をジュエルシードの放った砲撃へぶつける。
――そうか、スバルの技なら……! だけど――!
スバルの振動破砕・改は対魔法の技としては間違いなく最強と言っていい。
それが
「――くぁッ!!」
「スバルッ!」
ジュエルシードの砲撃の威力の大半は殺されているが、代わりに制御を失った魔力によって発生した爆発が周囲を蹂躙する。
余波で吹っ飛ばされてきたスバルを受け止めた私はその勢いに押されてたたらを踏むが、辛うじて倒れ込む事だけは堪えた。
「ふぅ……ありがとう、スバルのおかげで助かったよ。……そっちは怪我はない?」
「なのはさん……はい! この通りです! ――まぁ、腕は今ので一つ動かなくなっちゃいましたけど……」
プラプラと揺れる右腕に目を落としながら、スバルは残った左腕でガッツポーズをして見せる。
しかし直ぐに表情を引き締めると、続けてこう言った。
「遅れてすみません、なのはさん。――機動六課フォワード、スターズ及びライトニング、加勢します!」
「――!」
『無茶だ』……ついつい喉元まで出かかったその言葉を、寸でのところで呑み込む。
何故なら彼女達は守られるだけの一般市民ではない。私と同じ時空管理局の魔導士であり、私と同じ機動六課として"滅び"を覆すべくこの場に立ち――そして、何より私達が全力で鍛え上げた、正真正銘の精鋭達なのだ。
現に今、私は目の前のスバルに助けられたばかり……これでは何を言っても説得力に欠けると言う物だろう。
だから、私は彼女達を止める代わりにこう返す。
「――うん、わかった。アシストお願いね。」
「~~ッ! はいッ!!」
彼女達は成長した。私達が期待したように――いや、私達の期待を大きく超えて。
だから私も安心して背を預けられるのだ。
そう言外に告げると、認められた歓びからか満面の笑顔を見せるスバル。
……なんかこのままだとちょっと危うい気がしたので、少しだけ釘を刺しておこう。
「あまり前に出過ぎないようにね、特に今のスバルは片腕が使えないんだから。」
「あっ! そうでしたね、すみません……!」
ピシッと背筋を正したスバルは、左腕のみで構えを取り次の攻撃に備える。
その反応に微笑ましいものを感じながらも、私も改めてジュエルシードの攻撃に備えて……そして気が付いた。
――成程、追撃が来なかったのはそう言う事か……
ジュエルシードの――アリシアの腕が、砲撃の反動で受けたダメージから回復し切っていない。
恐らくは最大出力だっただろう先程の砲撃は、ジュエルシードにとっても諸刃の剣。
圧倒的な魔力による再生も間に合わない反動を、その腕に負っていたのだ。
彼女の目論見通り、今の一撃で私に止めを刺す事が出来ていれば問題は無かったのだろうが……スバルの介入によりその予定は覆された。
――スバルがくれたこのチャンス、無駄にはしない!
「アクセル・フィン、フラッシュムーブ!」
「ちっ……!」
私の接近に対して距離を取ろうとするジュエルシード。しかし焦りからか、
ジュエルシードの背後へと迫る彼女は、その両手に宿した
「――紫電一閃!」
「なッ……!?」
背後からの一撃に咄嗟に反応したジュエルシードは、ヴィヴィオの紫電一閃を障壁で受け止める。だが、
――動きが止まった!
もう、白い砲撃では今のジュエルシードの魔力を散らせない……だったら!
<プロト、黒い魔力を!>
<はい、合わせます!>
「ディバインバスター!」
「――ッ!」
ジュエルシードはヴィヴィオの攻撃を受け止めたまま、私の黒い砲撃に対しても障壁の防御を張る。
黒い砲撃は触れた魔力を結晶化できる性質があり、その浸食は魔力を伝って体内にまで及ぶ。だが……
「これは……――バリアブレイク!」
「くっ……!」
障壁が完全に結晶化する前に、バリアブレイクで躱された。
魔力の繋がりも同時に断たれてしまった為、浸食も本体にまで及んでいない。
今のジュエルシードは右手でヴィヴィオの攻撃を受け止める障壁を展開しており、左手がフリーになっている。もう一度黒い砲撃を放っても、同じように防がれてしまうだけだろう。
「ディバインバスター!」
<Accel Shooter!>
「ちっ……面倒な!」
しかしだからといってここで私の攻撃が止めば、その隙にヴィヴィオが反撃で墜とされかねない。何が何でも、この攻守の流れを変えさせてはいけないのだ。
こうして二人がかりで攻めている筈なのに、常に刃を突きつけられている様な緊張感……
――魔力が多いだけじゃない……!
私が思っていたよりもジュエルシードは前回の敗北から学び、そして支配した転生者から多くの知識を得ている。
――学習するロストロギア……本当に厄介だね……
彼女の脅威を改めて感じていると、ヴィヴィオが攻撃の手を緩めないまま念話を繋いできた。
≪なのはさん、私の合図で標的から距離を取って下さい。≫
≪……何か作戦があるんだね?≫
≪はい。即席ですが、ティアナが考えてくれています。≫
≪分かった。≫
ティアナの作戦……フォワード達の戦い方に関しては、私よりもティアナの方が詳しい。彼女達の能力を最大限活かす事が出来るのも然りだ。
私自身、レイジングハートが目覚めるまでは決め手に欠けている以上、その作戦に乗ってみよう。
≪――今!≫
ヴィヴィオからの合図で攻撃を中止し、言われた通りに距離を取る。
その瞬間、同様に距離を取ったヴィヴィオの背後から現れたのは、フリードの背に跨って祈るように手を組むキャロと、彼女を転生者の攻撃から守るエリオの姿。そして――
「――竜咆召喚『ギオ・エルガ』!」
詠唱を終えたキャロの眼前から、彼女の要請に応え、ヴォルテールの咆哮が召喚された。
「……!」
それは障壁で身を守るジュエルシードに直撃し、周囲を煙が覆う。
しかし、今の一撃では恐らくジュエルシードの障壁は貫けていないだろう。彼女の纏う障壁は、白い魔力でも貫けない程に魔力の密度が高い。それが分からないティアナではない筈――……?
――これは、霧……?
僅かな時間で突然発生した霧が、ジュエルシードの周囲を覆い尽くし白い繭の様な球体を形成する。
その瞬間、既視感を覚えた。
以前ティアナ率いるフォワード陣との模擬戦を行った時にも、似た戦法を彼女は取っていた。
≪なのはさん、聞こえますか!?≫
≪ティアナ! この霧はもしかして……?≫
繋げられたティアナからの念話。
彼女の狙いについて確認したい事があった私は、真っ先にこの霧について尋ねた。
≪はい、以前なのはさん相手に使用したのと同じ、私の魔力です。これから――≫
≪駄目ッ! ジュエルシードは……あの敵は、自分を中心に広範囲を攻撃する魔法を持ってる! 霧に紛れて攻撃しても……!≫
これは訓練とは違う。ここは仮想空間でもない。敵はこちらの安全を考えた攻撃はしてくれないのだ。
それを伝えようとする私に、ティアナは逆に「落ち着いてください」と窘めてきた。
≪その魔法については地上から観察して確認しています。そしてそれが、私の狙いです。≫
≪ティアナ、貴女は何を……≫
その瞬間、霧の内側から青い光が溢れ出す。ジュエルシードの空間攻撃だ。
それとほぼ同時に、霧を内側から高速で突き破って出て来たのは――
「皆、無事だったんだね……!」
「はい、ティアナの作戦通りに!」
ストラーダを握るエリオと、小さくなったフリードを抱えてエリオにしがみ付くキャロ。そしてエリオと同様にストラーダを掴み、その噴出の勢いで共に抜けて来たヴィヴィオの三人だった。
≪これで霧の中には標的が一人だけ……そして、私の霧によってさっき標的が使用した魔力の大半を、あの中に閉じ込めています。≫
≪まさかスバルの振動破砕・改で……?≫
確かにあのコンボは決まれば相手に大きなダメージを与えられるだろう。だがそれは、敵が障壁を使用しなかった場合だ。
あの時私がダメージを受けたのも、障壁の使用が制限されていた事が大きい。
まして、あの身体はあくまでもアリシアの物……本体であるジュエルシードにまで影響が届くのかも不明なのだ。
しかし、ティアナの狙いはまたしても私の想像の上を行った。
≪いえ、決めるのはなのはさんです。黒い魔力で、あの霧を結晶化させてください。そうすれば――≫
<成程、そう言う事でしたか……!>
ティアナの念話を聞いていたプロトが感心したように呟く。
黒い魔力の性質は白い魔力と真逆であり、魔力を固着させ結晶化させる。
ジュエルシードに対して直接撃っても障壁で防がれるだけだが、彼女を閉じ込めている霧に使用すれば……!
<プロト!>
<準備は出来ています!>
「ディバインバスター!」
構えた手の先から放たれるのは黒い砲撃。
それが霧に触れると、そこを中心に結晶化の波が見る見るうちに広がり……全てを包み込んだ。
≪――これで、対象……ジュエルシードを閉じ込める作戦は完了です。≫
≪貴女の作戦にはいつも驚かされるけど、今回は飛び切りだね……ティアナ。≫
そこに残されたのは、ジュエルシードを封じ込めた巨大な黒い結晶だけだった。