転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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タイトルで分かると思いますが、クロノくん登場回です。
ただし過去編は長くなってしまう上に捏造設定に溢れてしまうのでカットしております。

そして、先に謝っておきたい事があります。

エイミィファンの方々、本当に申し訳ありません。


時空管理局執務官の苦境

 数多の次元世界を管理する組織、時空管理局。

 その組織に所属する次元空間航行艦船アースラが、第97管理外世界からの魔力反応を捉えられたのは殆ど偶然だった。

 たまたま付近を航行中に強力な魔力反応を感知した…切っ掛けはそんな些細な物だった。

 基本的に次元間を渡る技術を持たない世界は管理局が関与するべきではないと管理局法で定められているが、魔法文明のない世界で魔力反応を感知した為、本部に連絡した後、()()()()()現場に向かっただけだったのだ。

 

 

 

「クロノくん!しっかりして!!クロノくん!!ごめんね、私の配慮が足りなかったから、こんな…失敗…っ!」

「エイミィの所為じゃないよ…本来、僕も想定出来た範囲のハズだった。…管理外世界と油断していたのは、僕だ…」

 

 今、俺は補佐を務めてくれているエイミィに抱えられ、ギリギリで意識を保っているところだった。

 目の前には自分を責めているのか、辛そうな表情を浮かべるエイミィ。周りを見ると複雑な表情をした母さん(リンディ)と心配そうにこちらを見る、もはや顔馴染みとなった搭乗員達(銀髪オッドアイ)

 

「大丈夫…少し、古傷が開いただけさ。…ぐっ!」

 

 平静を保とうとしても、腹部から感じる痛みに思わず顔を(しか)めてしまう。

 

「クロノ、少し部屋で休みなさい。」

「…っ!母さ…艦長、大丈夫。これくらい、問題無いです!」

「今のあなたに冷静な判断が出来るとは思えません。…今は、休みなさい。」

 

 …解っている、今俺が()()()()に行けば…冷静ではいられない。抉られた古傷は、()()の存在を否定するように今も痛みを訴え続けている。

 …それに、俺と同じ痛みに耐えている母さんの気遣いを無碍には出来ない。

 

「…分かりました。…母さんも、あまり無理はしないように。」

「えぇ、そうね…そうするわ。」

 

 ドアをくぐり、自室へ向かう途中…俺はどうしてこんな事になってしまったのか思い出していた…

 

 

 


 

 

 

「もうすぐ例の魔力反応があった管理外世界ね。いざと言う時の為に、何時でも出られるよう準備しておきなさい。」

「はい、艦長。」

 

 そんなやり取りをしつつ、俺はこれまでの事を思い返していた。この世界でクロノとして生を受けてから、色々な事があった。…本当に色々な事が。

 転生の願いで『管理局でも上位に入れるスペック』を望んだからか、前世よりも遥かに物覚えが良く生まれた俺は、幼くして魔法の才能も発揮した事もあって神童と呼ばれた。

 母の勧めもあって管理局に入ってからはメキメキと頭角を現し、今はこうして執務官にまで上り詰めた。…ここまでは問題なかった。

 問題は、俺がアースラに配属される事になってからだ。

 

 

 

 …原因は銀髪オッドアイ。もはや悪夢だった。

 

 何故俺が責任ある立場になる前に入局してくれなかったのかと、今でも思う事がある。

 奴らは全員が転生者であり、その為か『ほぼ同じ時期にこの世に生を受け』、『ほぼ同じ時期に管理局に入局した』。全て『原作に介入しよう』と言う目論見からくる行動だろう。

 当然の事だが人事を始めとして酷いパニックだった。万年人手不足の管理局員としては、優秀な魔導士を欲する気持ちは解る。何せ彼らは皆Aクラス以上の魔力を発揮しており、更に半数近くがレアスキルを持っていた。

 当然上の連中は全員迎え入れようと乗り気だったが、現場ではそう簡単には行かない。

 コピペでもしたかのようなそっくりさんが500名以上同時に入局したのだ。彼らが一般局員の内はまだ良いかも知れないが、昇進して行き『責任ある立場』になった時は間違いなく各部署間での情報のやり取りに混乱を招く。

 分身等の魔法が使用されていない事を確認する段階で、彼らの魔力波動はそれぞれが異なっており、別人と識別できることが判明したのは不幸中の()()()()()()幸いだった。…彼らを見分けるには魔力波動を見るしか無いと悟った人事は、研究部に申請し『特殊な名札』を開発。管理局の各セキュリティに連動させる為の手続きや開発、それぞれの部署間の連絡にてんやわんやだった。

 …そう。何を隠そうこの段階で『執務官』などと言う責任ある立場になってしまっていた俺もガッツリ巻き込まれたのだ。…今でも思い出すだけでげんなりする。

 

 なぜこんな事を思い出しているのか?このアースラにも十数名搭乗しているからだ。目の前でパネルを操作している奴らを含めて…

 

「第97管理外世界…調べてみましたが、魔力を有して生まれてくる人の割合は少ない為、魔法文明発展の可能性はほぼ無しとみなされているようですね。」

 

 そんな事をぼんやり考えている間、俺の補佐兼管制官のエイミィが地球…第97管理外世界の情報を調べてくれていた。

 

「第97…確か、グレアム提督の出身がその世界じゃなかったかしら?」

「確か地球のイギリス…でしたね。」

 

 ギル・グレアム提督。数年前、俺の父であるクライド・ハラオウンと共に『ある事件』に関わった提督だ。

 …そう言えば、あの人も地球出身だったな。遠い記憶だった事もあって忘れてしまっていた。

 

「優秀な魔導士よ。今回確認できた魔力波動の持ち主共々…ね。」

「うーん…魔力保有者が産まれにくい分、魔力を持った人に素質が集まりやすい…とか?」

「さあ?その辺りの事情は今のところどちらでも構わないわ。問題は『魔法文明が発展しない筈の世界』で何故、『次元震に発展しかねない程の魔力』が放たれたのか?よ。」

 

 原因はまぁ、予想できる。高町なのはとフェイト・テスタロッサと言う将来管理局のエース達がロストロギアを巡って何度も争っているのだ。その戦闘の内の一つの魔力を感知したのだろう。…よく無事だったな、地球。

 

「…エイミィ、その管理外世界の資料には何かヒントになるような事は書かれていなかったか?」

「無かったね~…やっぱり現地の状況を確認しない事には何とも…」

 

 …まぁ、無いだろうな。二人の魔導士もジュエルシードも、『たまたま同じ時期』に地球に集まっただけなんだから。…ん?『同じ時期』…嫌な予感がするけど、なんだろう。何故か帰りたくなってきた。

 

「…そうか。」

「…はぁ…やっぱり良いなぁ…」

「ん、何か言ったか?」

「いやいや!何でもないよ!」

「…?そうか…?」

「うんうん!」

 

 何かエイミィが言っていた気がするが、俺はどうにもそれどころじゃない予感がする…

 


 

 危ない危ない…思わず声に出てたみたい…

 こんな天国のような職場に就けたんだから、振る舞いには気を付けないと!

 

 でも………はぁっ、やっぱり良いなぁ…クロノくん!

 あどけない顔!きりっとした表情!!まだ声変わりしていない中性ボイス!!!

 既に私よりも強いし、上司だけど…色々オトナのセカイを知らなそうな純朴さが最ッッッッ高!!

 

 あぁ…この世界に転生できて良かった!やっぱりクロノくんは最高だよ!

 何とかもっとお近づきになれないかなぁ…やっぱり、もっと活躍して実力をアピールしなきゃだよね!

 

 …と、現地の映像が撮れたみたい。ナイスタイミング!

 

「クロノくん、現地の映像来たよ!モニターに出力するね!」

「ん、頼むよ。エイミィ。」

「まっかせて!」

 

 パネルを操作して、コレで…良し!………あ゛っ…

 


 

「クロノくん、現地の映像来たよ!モニターに出力するね!」

 

 …地球の映像か。前世に暮らしていた星と考えると感慨深く思うところがあるな。

 違う世界だし、やはり少し異なっているのだろうが…懐かしく思うくらいは許されるだろう。

 

「ん、頼むよ。エイミィ。」

「まっかせて!」

 

 エイミィがパネルを操作し…モニターが懐かしい故郷を…

 

『なのは…フェイトと協力するのは良いが、皆をどう説得するつもりだ?』

『あいつらもリベンジに燃えてたからな…』

『…えっと、全部終わってから個別に再戦って言うのはどうかな…?』

『あいつ等それで納得してくれるかなぁ…』

『意図は汲んでくれるだろうけど、やっぱり賭けている物がある方がお互いに全力でぶつかれるよなぁ…』

『『『『『『『う~ん…』』』』』』』

 

「う~ん…」

「クロノくん!?大丈夫!?しっかりして、クロノくん!!」

 

 いかん、思わず意識が…

 

 …そうだよな、そっちにも居るよな…

 

 ……あいつ等、やっぱり管理局に入ろうとするんだろうなぁ…

 

 あぁ…胃が、痛い…




現在アースラの搭乗員の2/3が銀髪オッドアイです。

そして、クロノくんエイミィさん共に転生者ですが…エイミィさんの前世は…ショ○コンです。本当に申し訳ございません。でもアースラに同乗出来ているので無害です。ほんとうです。

以下、銀髪オッドアイの付けている『特殊な名札』の設定。

名称:半同一個体識別名札(酷すぎる名称の理由は当時の開発担当の鬱憤晴らしが半分)
機能:それぞれに登録されている魔力パターンと、着用者の魔力パターンが一致していないと効果を発揮しない。
   起動中は名札の上部に引かれたラインが僅かに発光し、一定周期で変化する魔力信号を放つ様になる。
   一定以上のセキュリティがかかっている部屋に入る為にはこの信号が必要になる。
   また、個人の証明用として中央下部に設置されているボタンを押す事で登録者の顔写真がホログラムで空中に投影される。(顔写真のみのすり替え偽造防止用)
   これらの機能は着用者の魔力を用いて発動する。(必要な魔力は魔力弾一発にも満たない僅かな物)

アースラ搭乗員だけでなく、管理局本部の銀髪オッドアイ達も全員付けてます。
因みに、この名札の機能実装に当たって管理局の各セキュリティに大規模な改修が入った為、管理局設立以来最大規模のデスマーチが行われた模様。

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