転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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StS?編後 番外編
後日談 望の欠片①


――決戦の日から数ヶ月後のある日、ジェイルコーポレーションには機動六課の隊長陣が訪れていた。

 

 

 

「やあ、よく来てくれたね。機動六課の諸君。あれから早数ヶ月、元気そうで何よりだ。」

「ええ、その節はご助力いただきありがとうございます。」

 

ドゥーエの案内により来客室で待っていたはやて達の下にやって来たジェイル・スカリエッティは、挨拶もそこそこに本題を切り出した。

 

「それで、例の物は……?」

「アレは現在、なのは隊長が預かっています。物が物ですので。」

「ふむ、確かに当然の警戒だな。」

 

そう言ってスカリエッティは、はやての隣に立つなのはをちらりと見やると納得したように頷く。

今回彼女達がジェイルコーポレーションへと来る事になったのは、最高評議会の指令により、とある物をジェイル・スカリエッティへ預ける為だった。

 

「確認しますか?」

「いや、その必要はない。早速……と、言いたいところだが、少々ここでは都合が悪いね。場所を変えよう。ついて来てくれるかな。」

「分かりました。」

 

彼の言葉にうっすらと緊張感を滲ませたはやてが立ちあがりなのは達へ目配せをすると、彼女達もはやてへアイコンタクトを返し、ドゥーエとスカリエッティ博士の案内に従って来客室を出た。

 

「こんな通路が……」

「前回の時は隠していて済まなかったね。先の戦いの為に色々と備えていたので、見せる訳には行かなかったのだよ。」

「クアットロ……」

 

以前この通路を隠していたのだろう彼女の名を呟きながら、なのはは数ヶ月前の戦いを思い返す。

あの日、クアットロはなのはを逃がす為にジュエルシードの前へ姿を現し……そして、最後はその身を賭して――

 

「なのは、大丈夫?」

「! あ、ううん、大丈夫だよ。フェイトちゃん。」

「そう? 難しい顔してたけど……」

「うん……少し、思い出していただけ。」

 

クアットロだけではない、なのははあの日の勝利の為に身を捧げたナンバーズ達の姿を今も強く記憶に留めている。

もう二度と迷わない為に……もう二度と、犠牲を必要としないように。

 

「……」

「なのは……」

 

やがて彼女達は隠された通路やエレベータを経由し、ジェイルコーポレーションの地下へ、地下へと降りていく。

その先にあったのは、巨大な研究施設だ。

 

「このエリアでは主に商品ではないものを生み出している。聖女――プロトへ提供していた体も、ここで作られた。」

「それはつまり、あの日戦っていた子達もって事か?」

「その通り。」

「何でここに私等を案内したんか……そろそろ聞かせて貰おうやないか。」

 

何も物品の受け渡しの為にこんな地下にまで来る必要はない……そう判断したはやてが警戒を滲ませながら訪ねると、スカリエッティはある扉の前で立ち止まり告げた。

 

「その答えは、この部屋の中にある。もう少しだけ、お付き合い願いたい。」

「……わかった。」

 

そして、スカリエッティがカードや静脈、網膜スキャンなどの厳重なロックを解除して扉を開けると――

 

 

 

「あら、お父様。お待ちしておりましたわ。」

「え……クアットロ!?」

 

白を基調とした部屋に立ち並んだ巨大な計器類の影から、白衣に身を包んだクアットロが現れ、スカリエッティを出迎えた。

驚愕に目を見開いたなのはが視線を動かすと、そこには彼女以外のナンバーズ達がそれぞれ白衣を身につけてこちらへと視線を送っているのが見える。

 

「む、どうしたのかね高町教導官。確か彼女とはあの日の戦いで会っていたと、クアットロから聞いているが……?」

「ええ、間違いありませんわ。お久しぶりです、高町なのはさん。」

「え、あ、はい、お久しぶりです……じゃなくて!!」

「ど……どうしたの、なのは?」

 

突然大声を上げたなのはに動揺しつつ尋ねるフェイト。

なのはが返答しようと振り返ったところで、思い出したようにはやてが手を叩いた。

 

「あ、あー! そう言えば、伝えるん忘れとった!! あのな、なのはちゃん……実はあの時爆発したのは……」

 

申し訳なさそうにはやては説明を始めた。

あの場に現れたスカリエッティの戦力は全て、遠隔操作された機械兵の様なものだった事。その為、あの時爆発した誰一人として死んでおらず、ピンピンしている事。そして、その辺の事情を戦闘後の処理中にリオン達から聞いていた事――

 

それらをこのタイミングで聞かされたなのはは……

 

「――何でもっと早くに言ってくれなかったの!!?」

「すまん! あの後、色々と手続きに追われとってすっかり……!」

「あ、もしかしてさっきなのはが難しい顔してたのって……」

「そうだよ! 私の所為で死んじゃったと思ってずっと気にしてたんだよ!?」

 

顔を真っ赤にして怒るなのはと、平謝りするはやて。

そんな光景を遠巻きに眺めながら、クアットロは呟く。

 

「馬鹿馬鹿しい、私がお父様以外の為に命を懸ける訳がありませんわ。」

「まぁまぁ、そう邪険に扱う事もあるまい。こうして私達の方も一切犠牲は払わずに済んだのも、あの時彼女がジュエルシードを封印してくれたおかげなのだから。」

「お父様がそうおっしゃるのでしたら……」

 

やがてなのはが落ち着いてきた頃合いを見計らって、スカリエッティがパン!と手を一つ叩いて注目を集めると、話を本筋に戻した。

 

「……さて、誤解も解けたところで本題に入ろう。――これを見てくれたまえ。」

 

そう言って彼が示した先には――

 

「女の子……いや、あれは『生死体』か?」

 

無数の端末がぐるりと囲んだその中心にポツンと置かれた椅子……そこに座って目を閉じた、無数のコードが繋がれた少女が一人座っていた。

 

「その呼び名は好きではないと以前言ったと思ったが……まぁ、良い。彼女は君達の言う生死体(それ)を改良して生み出された『器』だ。」

「器……」

「簡単に説明すれば、彼女は『意思を持つ物』の身体となる受け皿……そうだね、例えば、高町なのはのデバイスである『レイジングハート』を組み込んだ場合、彼女はレイジングハートの身体になるのだよ。聖女がリンカーコアでやったようにね。」

()()()()()()……まさか――!」

 

スカリエッティの説明を聞いたはやては、それが今回彼女達が運んだ物に関わるという確信を得る。

信じられないものを見るような視線を受けたスカリエッティは笑みを浮かべ、計画の全容を明かした。

 

「そう、今回私が彼女に組み込むのは君達が持って来てくれた『ジュエルシード』だ。ジュエルシードには明確な意思と人格が存在する事は、先の戦いで確認できたからね。」

「バカな、危険過ぎる! ジュエルシードはただ魔力を溜め込むだけのロストロギアやない! コイツは――」

 

はやては今まで、彼にジュエルシードの一つを預けるのはジュエルシードの分散管理の為だと思っていた。

表向き管理局との繋がりが明らかになっていないジェイルコーポレーションはジュエルシードを狙う犯罪者の標的になりにくく、保有する戦力の高さから考えても絶好の保管場所と考えていたからだ。

しかし、真実はその逆。彼はジュエルシードを何かしらの研究に利用するつもりだと明らかになった。

はやては一人の管理局員として、その危険性を説くが――

 

「確かにリスクはあるが、対策はしてある。この器は特別性でね、彼女に組み込んだジュエルシードは自由に動ける身体を手にする一方で、その力を封じられるように設計してある。言ってみれば、この身体はジュエルシードと純粋なコミュニケーションをとる為の物なのだ。」

「何の為や!? それに、ジュエルシードを組み込んで本当にその力を封じられる保証も無いやろ!」

「確かに実際にジュエルシードを組み込むのは今回が初めてだ。だから、君達に運んで貰ったのだよ。君達は……特に、高町なのは教導官とフェイト・テスタロッサ執務官は、ジュエルシードの暴走体の封印に慣れているだろう?」

 

そう言って、スカリエッティはそこに居並ぶ戦力を見回す。

高町なのは、フェイト・テスタロッサ、八神はやては勿論、アリシア・テスタロッサ、プレシア・テスタロッサ、リニス、アルフ、リインフォースと、ジュエルシード一つに対して明らかに過剰な戦力が集まっている。

そして、このメンバーははやてが選んだ訳ではない。この指令を受けた際、最高評議会直々に指名された面々だった。

 

――考えれば変な話やった……!

 

いくらロストロギアの運搬だからと言って、それほど離れていない距離……それも見知った相手に対して、これ程の過剰戦力を割り振るのはおかしい。

今の機動六課は他に仕事を抱えていないとは言え、それでも隊舎の守りにはもう少し人員を残すべきだ。

少なくとも彼女が人選を任されていたのならば、多くてもなのは、フェイトとはやて自身で済ませていただろう。

 

しかし、コレではっきりした。

 

――この事、リオンちゃん達は知ってるみたいやな。

 

そうでなければこんな過剰戦力を割り振ったりはしないだろうと、はやては判断する。

ならば、ここで自分が確認するべきは一つだ。

 

「……わざわざジュエルシードを使う理由は何や?」

「ふむ、既にリオン達には伝えたが……確かに君達にも説明しておいた方が、この後の工程がスムーズに進むだろうね。――良いだろう、説明しよう。私がここまでする理由は次元世界の今後の為だよ。」

「次元世界の今後やと……?」

「例えばだ、ジュエルシードを今のように分散・管理を続けたとしよう。その管理は果たしていつまで持つと思う? 一体、その安全はどの程度保証されると思う?」

 

時空管理局が続く限り? では、数百年か数千年か、それが滅んだ後は? そもそも管理局の中からジュエルシードに魅入られた者が出ないと言い切れるか?

スカリエッティはそんな『身内』のリスクを語り始める。

 

「あの戦いで、ジュエルシードは力を示し過ぎた。先の一件に於いては情報統制こそされたが、十年前の事件はそうではない。既にジュエルシードの存在を知る者は多く、かのロストロギアを狙う次元犯罪者だって出て来るだろう。」

「……」

 

はやては、スカリエッティの言う事が完全に間違いだと言い切る事が出来ないでいた。何故なら彼女達、転生者は知っているのだ。ジュエルシードが奪われる可能性がある事を。

アニメでそれを実行したのがスカリエッティだっただけで、他にも同様の事を考える者がいないと言い切れない事を。

 

「私達が真に警戒するべきは、ジュエルシードを手にした者が何を願うかではない。ジュエルシードに宿った意思が、再び目覚めた時にどういった行動をとるかだ。違うかな?」

「それと、ジュエルシードに身体を与える事がどう繋がるんや?」

「それは――」

 

 

 

スカリエッティの説明を受けて、はやてはジュエルシードをスカリエッティへと渡した。

彼の言葉に一定の根拠と信頼性があった事、そして計画が成功すれば彼の言う通り、未来永劫ジュエルシードの齎す最悪の危険性が排除される可能性が高い事が理解できたからだ。

 

「……さて、コレでジュエルシードのセットは完了だ。これよりジュエルシードの封印を解き、意思を身体と繋げる……少し、離れていたまえ。」

「分かった。」

 

そう言って、スカリエッティははやて達を数m程下がらせる。

既にセットアップ済みの彼女達にとって、この距離は何かあった時に即座にジュエルシード及びスカリエッティの無力化・捕縛が可能な距離だ。

緊張が走り、スカリエッティの立てた指がカウントを刻む。そして――

 

「――う……ここ、は……?」

「! 目が開いた……!」

「何よ、貴女達……――ひっ、高町なのは!? 何で!?」

「……とうとうロストロギアにもトラウマ植え付けるようになったんか、なのはちゃん。」

「えぇ……?」

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