書こうと思っていた部分もコレで多分最後なので、以降は不定期更新になります。
(新しく書く話が思い浮かんだら書くかも?程度です)
「――さて、そろそろ裁判に関する打ち合わせを始めようか。」
ジュエルシードとの戦いの後、留置所へ向かうヘリの中でリオンがそう切り出した。
彼女の言う裁判とは当然『聖女・プロト』の事であり、彼女を含めた重要参考人がこの打ち合わせの為にこのヘリに集められていた。
「ちょっと待ってくれますか?」
しかし、ここで一人の女性が挙手し、待ったをかけた。
「む……確か、リーゼアリアだったか。」
「はい。聖女――プロトの行動が制限されるより前に、伝えたい事がありまして……」
「ふむ……今でしか出来ない話と言うのであれば、許可しよう。」
「ありがとうございます。実は――」
そしてリーゼアリアは語った。
数年前、ギル・グレアムの死の裏で起こっていた出来事を。
自分達姉妹がプロトに従う事になってしまった原因と、その時に交わされた一方的な"約束"を。
「成程、ギル・グレアム元提督のリンカーコアが……」
「そうですね。確かに、今を逃せば彼との約束を果たせるのはずっと先になってしまう。……失礼ですが、リンカーコアの制御を行っても良いでしょうか?」
「良いだろう。ギル・グレアム元提督の話も聞いておきたい所ではあるし……クリーム、確かあそこあの場から回収した生死体が、このヘリにも積んであったな。」
「うむ、用意しよう。」
そう言ってクリームが用意したのは、藍色の髪を真っ直ぐ伸ばした少女の身体だった。
そしてリーゼ姉妹が見守る中、用意されたその身体にプロトの手でギル・グレアムのリンカーコアが定着させられる。
「――これで、リンカーコアはこの身体に定着しました。既に私とのパスも断ち切りましたので、以降私でも彼に対する干渉は不可能となります。」
プロトがそう報告するとほぼ同時に少女が小さく呻き……――そして、その目が開かれた。
「……ん、む……ッ! こ、ここは……私は――!? ん"んっ……!? この声はいったい……!?」
「と……父様?」
「父様だよね!?」
「リーゼ……ここは、管理局のヘリの中か?」
「「父様!」」
「うお……っ!?」
敬愛する主と久しぶりに言葉を交わした二人は、感極まってグレアムへと抱き着く。
それにより自身の身体が年端も行かぬ少女になっている事を自覚し、混乱するギル・グレアムであったが……やがてリーゼ姉妹からの説明を受けて、自分の置かれた状況とこれまでの経緯を理解した。
「――そうですか、貴女方が時空管理局の最高評議会……御噂は耳にした事があります。」
「うむ……今は訳あってこんな姿だがな。さて、貴様の身に起きた事は既にそこのリーゼアリアから聞いているが、一先ず貴様自身の口からも当日の出来事について聞いておきたい。」
「分かりました。私にとっては先程の事ですが――」
そう前置きしてグレアムは語った。
寿命を迎えるその寸前に現れた聖女……プロトとのやり取りと、自身の意識がリンカーコアと共に蒐集されてから、今までの事を。
とは言っても、プロトの中にいる間は彼の意識はなく、新しい事実が浮上する事は無かったのだが……
「……ふむ、記憶の整合性と魔力波動の一致から考えて、やはりギル・グレアム本人のようだな。」
「はい。ただ、私自身この記憶が作られたものと言われれば、クローン等の可能性は否定できませんが……」
「何言ってんのさ父様! あたし達とこうして使い魔のパスが繋がってるんだから、間違いなく父様本人だよ!」
「! そうだな……ありがとう、ロッテ。」
「うーん……頭じゃ父様って分かっていても、やっぱ見た目がずっと年下の女の子ってのは慣れないね……」
そんな主従のやり取りを見ていたリオンは、難しい表情でグレアムに釘を刺した。
「さて、ギル・グレアム元提督。分かっていると思うが、今の貴様の状態は決して知られてはならぬ。」
「貴様も当然分かっていると思うが、公的に既に死んだ人間が性別こそ変われど今こうして生き返っているという『奇跡』……それは、大切な人間を失った者を狂わすのに十分すぎる情報だ。」
リオンが皮肉を込めて呼んだ『奇跡』のタネは、死ぬ前に収集されたリンカーコアだ。
既に死んだ人間の蘇生などプロトにも不可能だが、ギル・グレアムが生き返ったという情報だけを手にした人間はそう考えないだろう。
『彼が生き返ったのだから、あの人も……』そんな願望が偏った情報と共に広がり続ければ、これから隠蔽される聖女の本当の能力と正体が何かの切っ掛けでバレる可能性だってあるのだ。
そうなれば今度はまた別の火種が生まれる。
『プロトの正体が人の手で生み出されたユニゾンデバイスであるならば、その
夜天の魔導書が生まれるより遥か昔に失われた技術だが、それが再現されない保証はない。
何の間違いか、それこそ奇跡か……万が一にも再現されてしまえば、『永遠の命』と言う禁忌が簡単に手に入ってしまう。
そして、そう言った物を容赦なく使うのが次元犯罪者なのだ。
だからこそ、プロトの正体と不老不死の奇跡は知られてはならない。
取り返しのつく内に情報をコントロールする必要があるのだ。
「――という訳だ、分かってくれるな?」
「はい。……私はこれからどうなるのでしょうか?」
「……我々としては、貴様には再び時空管理局に入局し、その力を役立てて貰いたいところだ。」
「私が再び管理局に、ですか……」
「うむ。我等の目の届く範囲であれば、貴様に近付く輩の監視もしやすいという理由もあるが――」
「……貴様も知っていよう。そもそも時空管理局自体、慢性的な人材不足と付き合い続ける組織だとな。」
リオンの言葉を補足したバルトが言う様に、時空管理局は常に人手不足で
次々に発見される次元世界やロストロギア、そして生まれ続ける次元犯罪者。
技術の革新が、忘れられた先人の置き土産が生み出すトラブルに対応するには、人手は文字通りいくらあっても足りないのだ。
「……分かりました。私の力がまだ人々の助けになるのであれば、どうぞお使いください。」
恭しく頭を下げるギル・グレアム。
彼が再び管理局へ入局する事を決めた理由は、自らが生きている限り嘗ての罪を少しでも贖うと言う決心からだった……のだが、続くリオンの言葉にその決心は若干揺らいだ。
「うむ、感謝するぞ。ギル・グレアム……いや、
「…………は?」
『――一体この人は何を言っているのだろう?』
あまりにも突然な事だった為、そんな本心がふんだんに込められた不躾な視線を向けてしまうギル・グレアム。
「……リオン、説明せねば伝わらんぞ。」
「む、そう言えば説明が飛んでしまったな。では先ず、その姿の貴様を『ギル・グレアム』と呼ぶ訳にいかぬという事は分かるな?」
「は、はあ。」
「そこで、今の容姿に沿った名を用意した。『ギル・"グレア"ム』から取って、『クレア』だ。」
「……」
ギル・グレアムには今の自分がどんな容姿をしているか確かめる術がないが、目の前の最高評議会の三人の状態と自身の声から、彼らと似た様な状態だろうとの推測は出来ていた。
また、『ギル・グレアム』が死んだ事は既に広く知られている事も聞いた為、名を変える必要があるのも理解できる。
しかし、まさかこれ程もろに女性名を付けられる事になろうとは思いもよらなかったのだ。
「最初は『グレア』と言う名も悪くないと思ったが、クリームの用意した身体と微妙に響きがミスマッチでな……まぁ、悪くはないだろう?」
「はあ、成程……――? 失礼ですが、『クリーム』とは?」
一体今の自分はどんな姿なのか無性に気になり始めたグレアム改めクレアだったが、リオンの言葉の中に紛れた聞き慣れない名が気になり問い返すと、正面に並んで座る三人の少女の内の一人……黄色の髪を持った少女が残りの二人から視線を向けられ、顔を逸らした。
「――くっ……!」
「まぁ、こやつの今の名が『クリーム』よ。髪の色から咄嗟に付けられたのだが、訂正する暇もなく今では完全に定着しておる。」
「そ……それは、何とも……」
「おのれ、八神はやて……!」
「――!?」
自分よりも悲惨な名を付けられた事例を前に、少しばかり心が軽くなったところでまさかの名付け親が明らかになり動揺するクレア。
その反応を目敏く察知し、クレアとはやての関係を思い出したクリームが良い事を思いついたとばかりに詰め寄る。
「おお、そうだ! 貴様はあのはやての親代わりでもあったな! 折角の縁だ、『クレア』と言う名が気に入らなければ、是非とも彼女に名付けて貰うと良い! きっと素晴らしい名を……!」
「いえ、折角頂いた名ですので喜んで使わせていただきます。」
「――ちっ、まぁ良い。」
ギリギリのところで『アイちゃん』と言う名がつけられるのを回避したクレア。
つまらなそうな様子で元の座席へと戻ったクリームを、リオンが軽く諭す。
「クリーム、今はまだ本題の途中だ。そう言うのは後にせよ。」
「……分かっておる。」
「さて、話を戻すぞ。確か……名を変える理由について、改めて説明したところだったか。」
リオンの確認にクレアが首肯で返すと、彼女はそのまま続きを話し始めた。
名を変えるにあたって、当然ながらクレアは管理局に新人として入局する事になる事。
魔力波動の検査に引っかからぬよう、管理局のデータベースに登録された『ギル・グレアム』の魔力波動の情報はスカリエッティに改竄して貰う事になる事。
そして、最後に今までクレアを挟むように座っていたリーゼ姉妹へと話題が振られた。
「リーゼロッテ、及びリーゼアリアの両名はどうする。再びクレアと共に入局するのであれば、そちらの魔力波動のデータも改竄せねばならないが……」
「当然、あたし達も父様と一緒にもう一度入局するよ! 使い魔として! ね、アリア!」
「うん。私達はもう二度と父様と離れないって決めたから……だからお願い、父様。」
「……そうだな、分かった。また一からやり直そう――よろしくアリア、ロッテ。」
二人の頼みをクレアが断れるはずもなく、再び三人は入局を決めた。
活躍が約束された人材を三人獲得できた事でほくほく顔のリオンは、思い出したように付け加えた。
「ああ、そうだ。入局に際し、使い魔の二名は容姿を幼く変えておいてもらいたい。いずれは今の姿になっても良いが、まだリーゼロッテとリーゼアリアの姿は記憶に新しい。万が一を避ける為にも、徹底を心掛けてくれ。」
「確かにそうだね……魔力節約モードか。」
「うへぇ~……アリアはともかく、近接戦闘主体のあたしは影響出てきそう……」
「文句言わないの。父様とこれからも一緒にいる為なんだからさ。」
「はぁ~い……」
「……それと分かっていると思うが、人前で『父様』等と呼んでは意味がないからな? 呼び方は考えておけ。それと、クレアも二人に新たな偽名を考えておく事だ。」
リオンの釘差しに再び「うへぇ」と声を漏らすリーゼロッテ。
そしてリーゼアリアやクレアと共にそれぞれの呼び方について思考を巡らせ始めた三人を見て、リオンはプロトと本題について話し始めた。
「――さて……随分と遠回りしてしまったが、裁判についての話し合いに戻るとしようか。」
「……ああ、そう言えばそちらが本題でしたね。」
「うむ。では、先ず……」
その後、裁判でプロトは懲役500年の刑を受ける事となる。
自身にまつわるあらゆる真実を隠したまま、『プロテア』と言う名の
ややぶつ切り気味ですが、グレアム元提督の顛末に関しては書けたのでこの辺で区切りとします。
この後『プロテア』と言う魔導士には以下の設定を付けられました。
・プロトと言うユニゾンデバイスの主。(強制ユニゾン能力、支配能力を隠す為)
・HE教団の聖女。
・人形等の無機物に対して使い魔契約の様にパスを繋げ、操るレアスキル持ち。
・懲役500年をデバイスであるプロトと共に科せられる。(プロテアは寿命により獄中死)
一応この後プロトの中の他のリンカーコアについても色々書いていたのですが、文章が伸びに伸びてわちゃわちゃしだした挙句、区切りも悪くなったのでカットしました。