転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ふと思いついた短編です。
時系列とかはあまり決めてませんが、だいたいStS?編の少し後に海鳴市で起きた事件の話です。


恐怖! 魔都・海鳴の事件簿!

光在るところに影在り――

その光が眩しければ眩しい程、対する影もまた深く……暗くなっていく――

 

 

 

機動六課の奮戦により、滅びを乗り越えてから早数ヶ月……

 

時空管理局はその発足当時から数えても、類を見ない栄光の時代に差し掛かっていた。

その中心となっていたのが、『高町なのは』と言う一人の魔導士の存在だ。

 

彼女が初めて公的に姿を見せたのは、とある次元犯罪グループの大捕り物。

当時、彼女が予言に記された光であるという確証を得た一部上層部の意向により、高町なのはは活躍の機会を与えられ……そこで十分すぎる成果を叩きだした。

 

その原因はいくつかあるが、最も大きかったのは彼女が参戦した時に両軍は長い膠着状態の只中であった事だった。

敵の犯罪者グループが当時捕捉されていた犯罪グループの中で最大規模であり、油断ならない相手だと聞かされていた高町なのはは、最初から全力全開で戦いに臨んだのだ。

 

そう、即ち――初手スターライトブレイカーである。

 

たった一度の、それも個人の放った砲撃により全軍が戦闘不能となり、同時に拠点を周辺の地形毎消し飛ばされた事で彼女の評価は時空管理局、次元犯罪者の間で絶対的なものとなった。

 

あの大組織が一撃で壊滅した……

彼女に目をつけられればおしまいだ……そんな噂に尾ひれが付き、知れ渡った事で犯罪の発生件数は激減。

恐れるあまりに自然消滅する犯罪グループも多々あった。

 

 

 

……だが、全ての犯罪者がそうではない。

次元世界の裏社会に知れ渡った絶対的恐怖の象徴である高町なのはを打倒すれば、それだけで裏社会の頂点に立てる……そんな無謀とも取れる計画を立てる者が現れるのも、また必然だったのだ――

 

 

 

 

 

 

「くっくっく……ここが第97管理外世界――あの高町なのはの故郷か。」

 

いま、そんな招かれざる客が彼女の生まれ故郷に足を踏み入れていた。

 

「マ、『マーケィ』のアニキィ……本気でやるんですかい?」

「ここまで来て日和ってんのか、『ラッグ』……良いか? これはチャンスなんだぜ? それも一生に一度あるかないかってぇ、ビッグチャンスよォ!」

「そうよ、まだどこの勢力も高町なのはの故郷に手を出していない。しかも情報によれば、ここはリンカーコアを持って生まれる人間も滅多にいないそうじゃないか。……これはチャンスだよラッグ。アタイ等が何処よりも先に高町なのはの家族を人質にしちまえば、アイツはアタイ等に逆らえない……後は、分かるだろ?」

「……分かったよ、『フゥ』。そうだよな、ビクビクしてばかりじゃチャンスは次の奴に行っちまう。」

「そうさ! その意気だよ!」

 

とある情報筋から高町なのはの故郷の情報を仕入れた彼等――マーケィ、フゥ、ラッグの三人は、既に目的の場所を海鳴市内にまで限定していた。

 

これまで目立った成果を上げて来なかった彼等の下に、偶然巡って来た高町なのはの故郷と言う情報(好機)

競争が始まる予感を察知した彼等は他勢力を出し抜く為、最低限の備えでこの地球にやってきていた。

 

≪ま、確かに装備は心許ないが……こんな平和ボケした街だ。魔法の心得の無い素人数人程度、どうとでもなるだろうぜ。≫

 

高町なのはの家を探しながら街を散策する三人。

彼等の目に映るのは、何処までも活気に満ち溢れた平穏な日常だった。

 

≪……なぁ、本当にここが高町なのはの生まれた街なのかい? こんな平和な街が?≫

≪確かにイメージとは違うが……それもまぁ、直ぐに分かるだろ。≫

 

高町なのはの情報を得る為、街を散策しつつ念話でそんなやり取りをする三人に、二人の女性が駆け寄って声をかけた。

 

「あっ、()()()()()()! こっちに戻って来てたんだ!」

「もう……来るなら来るって連絡くらいしなさいよ、なのは。」

――っ! ()()

≪マーケィ、ラッグ、こっちの方で釣れたよ。≫

≪! 思ったよりも早かったな、やっぱ運が向いて来てるぜ!≫

 

仲間に念話で状況を伝えつつ、二人の女性――アリサとすずかに声を掛けられたなのは……に化けたフゥはアリサ達に振り返る。

 

≪良いか、バレねぇように情報を引き出せ! 無理そうなら俺らが着くまで時間を稼ぐんだ!≫

≪了解!≫

≪ところでフゥ……高町なのはの真似とか出来るのか?≫

≪心配性だねぇ、ラッグは。こう言うのは当たり障りない口調でやってりゃ案外バレないんだよ!≫

 

 

 

「――や、久しぶりだね。二人共。」

 

――誰よコイツ。

――なのはちゃんじゃない……!?

 

開口一番に異変を察知した二人だったが、そんな気配はおくびにも出さず会話を続ける。

アリサもすずかも転生者である上に、幼い頃から誘拐犯などから常に狙われて来た。こういった状況に於ける対応には慣れていたのだ。

 

「最近どう? お仕事の方は。」

「問題無いよ。ところで私のお父さんは元気?」

「あー……私達県外の大学に行ってるから、あまり詳しくないのよ。なのはのお父さん、何かあったの?」

「ん? あー、ちょっと怪我したって話を聞いてね。心配で来てみたんだ。」

「そうなの!? 大変だね……この辺りだと、総合病院の方かな?」

「あ、そんな大怪我じゃないから大丈夫! 心配しないで! それじゃあ、私急いでるから!」

「え? あ、うん。またね!」

「偶には連絡よこしなさいよー!」

 

そう言って、ぼろが出ない内にアリサ達から距離を取るフゥは、直ぐに念話で仲間の二人に情報を共有する。

 

≪ダメだ、空振り。なのはの情報は持ってなかったよ。≫

≪そうか……まあ良い。知り合いがいたのなら、高町なのはの家もその付近にある筈だ。そっちに合流する。良いな、ラッグ。≫

≪あぁ!≫

 

マーケィの指示を受けてフゥが合流場所へ駆けだした一方、手を振り駆け足で去って行く彼女に同じように手を振って見送ったアリサ達のその後の行動は早かった。

 

「――すずか、あいつ等に電話よ!」

「もう掛けてる! 早く出て……!」

 

 

 

 

 

 

「『高町家』……ここだな。」

「まさかこんな早くに見つかるとはね……」

 

アリサ達と別れてから数分後、不幸にも彼等は高町家に辿り着いてしまった。

そして更に不幸な事にこの日高町家の経営する喫茶・翠屋は定休日であり、今家の中にはなのはの家族が揃っていた。

早速目的を果たすべく、なのはのフリをしたフゥが魔法で鍵を開けて家の中に踏み込む。

 

 

 

「ただいま~」

「ん? ああ、なのはか。どうしたんだ、連絡も無しに……」

 

そう言って彼女を出迎えたのは、兄の恭也であった。

彼は道場から戻って来た所だったのか、二本の木刀を片手に気さくに声をかける。

 

――植物性の模造剣か。デバイスって訳でもなし、警戒する事も無いか。

「ちょっと皆に用事があって……お父さんは?」

「ああ、今ちょっと出ていてね。直ぐに帰って来ると思うよ。……その二人は、知り合いかな?」

「そうだよ、向こうで知り合ったの。頼りになる仲間なんだ。」

「どうも、マーケィです。話はなのはさんから兼ねがね……」

 

そう言って握手をする振りをしながら、恭也へ襲い掛かろうとマーケィが前に出た瞬間――

 

「――薙旋(なぎつむじ)。」

 

一瞬の内に振るわれた木刀により、マーケィの意識は一瞬で刈り取られた。

 

「へ……?」

 

断末魔も無くどしゃりと倒れ込んだマーケィを前に、思わず硬直するフゥとラッグ。

 

「ちょ……ちょっと、いきなり何を……!」

「お前がなのはじゃない事は気付いていた。……こいつ等が、碌な連中じゃない事もな。」

「! な、なんで……」

「何もかも違うからだ。呼吸のリズム、足運び、声のトーンに話し方――そんな雑な仕上がりで俺を騙そうとは……舐めているのか?」

「く……っ! アンタこそ、アタイ等を舐めるんじゃないよ!」

 

フゥには恭也の言う理屈は殆ど分からなかったが、小細工が通用しない相手と分かると変身魔法を解除。直ぐに複数の射撃魔法を精製し、先手必勝とばかりに放つ。

 

――魔法も扱えない未開人が、思い知れ!

 

唐突に放たれた数発の魔力弾は、狙い通りに恭也目掛けて突き進む。

そして――

 

「――ハッ!!」

「は……?」

 

全ての魔力弾が二本の木刀で迎撃された。

あまりにも常識を逸脱した光景を前に、今度こそ思考が止まるフゥ。

逆にその衝撃で我に返ったラッグは、硬直したフゥさえも見捨てて逃げようと振り向くが……

 

「――やぁ、もうお帰りかい? 人の娘の姿で喧嘩を売っておいて……」

「ヒッ……!」

 

そこには静かな笑みを湛えた鬼神(士郎)が居た。

 

 

 

「――すみません、遅れました! って、もう終わってますよね、そりゃ……」

 

アリサから連絡を受けた銀髪オッドアイ――時空管理局に入局せず、地球に残る事を選んだ一人――が駆けつけた時には、彼の予想通り全てが終わっていた。

ロープでぐるぐる巻きにされたマーケィ、フゥ、ラッグの三人は恐怖のあまりガタガタと震えており、既に抵抗する気力も失くしていた。

 

そんな彼等を木刀の先でつつきながら、恭也が言う。

 

「ああ、()()()この三人組だ。()()()()()()お願いするよ。」

「はい。」

 

彼等にとって、今回のような出来事は初めてではなかった。

少し前からなのはの家族を人質に彼女を倒そう。従えようという者は既に何人も現れており、その(ことごと)くがこうして誘拐しようとした本人達の手によって返り討ちにあっていたのだ。

 

≪あ、リンディさん。いつものお願いします。≫

≪また? 飽きないわね、連中も。分かった、直ぐに向かうわ。≫

≪お願いします。≫

 

この後彼等は駆けつけた銀髪オッドアイの手によりバインドがかけられ、リンディさんに引き渡されて逮捕される。

そんな犯罪者の末路を見る度、彼等は思うのだ。

 

――……全く、なんで魔法が使えないってだけで、なのはの家族を侮れるんだか。

 

と。

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