温泉回です。
フェイトが去ってから数分後…取引内容に関する説得は後で考える事にして、俺達は一旦旅館へ戻る事にした。
「なのは!無事だったのね!」
「なのはちゃん!」
「アリサちゃん、すずかちゃん!待っててくれたの!?」
二人は旅館の入り口で俺達の帰りを待っててくれていた。
「当然でしょ。あんな
「音とか凄かったんだよ?途中からは聞こえなくなっちゃったけど…」
「あはは…心配かけてゴメンね…」
フェイトが戦っている時はスパーク音とか雷鳴が絶えず響いているからなぁ…封時結界の有難みが本当に良く分かる。
「それで、勝ったのよね?」
「うん、勝ったよ!」
「…なら良いのよ。ほら、疲れてるでしょ?温泉行くわよ!」
「あっ、待ってよアリサちゃん!?」
「待ーちーまーせーんー!」
アリサに引っ張られるように更衣室へ連行されていく…後ろからはすずかも笑顔で付いて来ており、逃げ場は無いようだ。
温泉から上がった直後の事だった。正面からアリサに手を引かれたなのはがやってきた。もう一人の友達であり、忍の妹でもあるすずかも一緒のようだ。
「なのは、今から温泉か?」
「お兄ちゃん!お兄ちゃんは今上がったところ?」
「あぁ、晩御飯までには部屋に戻るんだぞ?」
「うん!」
なのは達と別れて直ぐ、今度はなのはの同級生で転生者であろう銀髪オッドアイ達が揃ってやってきた。
「お前たちは…なのはの友達だったな。今から温泉か?」
「あっ、はい。」
「…」
…見れば見るほどそっくりだな。転生の時に誰かと相談出来たりはしなかったから…全員この外見を願ったと言う事なのか…?
「…えっと?」
「…いや、なんでもない。」
「あっ、そうですか?」
父さんは歩調だとか体幹や気配で見分けると言ってたが、俺にはまだ早かったようだな…恭也として生まれてからと言うもの、恭也としてふさわしい男になろうと鍛錬は欠かしていないつもりだったが…まだまだと言う事か。
「と…そうだ。わざわざ言うまでも無い事だとは思うが…」
「はい?」
「女湯を覗こうとか考えるなよ?」
「覗きませんよ!?」
まぁ本当に覗こうとしてると思ってはいないが、こういうのはある意味『お約束』だからな…
「お前たちは…なのはの友達だったな。今から温泉か?」
「あっ、はい。」
「…」
…なんだろうか、何やらすごく見られている気がする。と言うかガン見されてる…俺達何かしたか?
「…えっと?」
「…いや、なんでもない。」
「あっ、そうですか?」
何だろう、何かを諦めたような…悔しさのような物を感じる…
「と…そうだ。わざわざ言うまでも無い事だとは思うが…」
「はい?」
「女湯を覗こうとか考えるなよ?」
「覗きませんよ!?」
それだけ告げると恭也は去って行った。
…もしかして、恭也なりの冗談だったのだろうか…?
「なんか…恭也さんってイメージと少し違うな。」
「あぁ、なんて言うか…思ってたより、雰囲気が柔らかい感じ…?」
「でもたぶん半分くらいは本気だったぞ。」
「えぇ…初対面でそれは少し失礼じゃね?」
「…で、何?お前ら覗く気だったの?」
「覗かねぇよ!?」
「人聞き悪い事言うんじゃねぇよ!」
そんな冗談を言いながら俺達は男湯の方に入って行った。
アリサとすずかが目の前で着替えている。…まぁ、俺も普通に着替えている訳だが。
「あれ、なのは?今から入るの?」
「あ、お姉ちゃん。」
大浴場の方から美由希さんが出てきた。どうやら恭也さんと同じく先に温泉に入っていたようで、今上がったところらしい。
「みっ、美由希さん…大きい、わね…」
「ア…アリサちゃん…」
アリサが美由希さんの方を見て固まり、すずかが少し残念な物を見るようにアリサを見ている。
「あっ、二人も今から入るんだ。夕飯に遅れないようにね?」
「あはは…さっきお兄ちゃんにも言われた」
「あ、お兄ちゃん先に出てたんだ。あ、そうだ!温泉に入る前に髪の毛はちゃんと上げておくんだよ?温泉につけちゃうと傷んじゃうからね。」
「はーい!」
「はい!」
「…」
そう言って備え付けの鏡の前で鼻歌交じりに髪の手入れを始める美由希さんと、未だに固まっていながらも目線が美由希さんから離れないアリサ。…いや、裸なんだから早く大浴場に行かないと風邪ひくぞ?
「くしゅんっ!」
「アリサちゃん…」
「…はっ!な、なによ…別に何でもないわよ!?」
すずかの視線が呆れを通り越して生暖かい慈しみを湛えたものになっている。アリサは普段冷静な分、ギャップが刺さったのかもしれない。
…俺はアレだな、なんというか見慣れてしまった。そりゃ勿論最初はついついチラ見してしまったりもしたが、それだって5歳くらいまでだ。美由希さんや桃子さんは俺が幼い頃、よく俺をお風呂に入れてくれていたからな…士郎さんが回復するまでは特に二人と入る機会が多かった。
すずかも俺と同じような感じだろうな…姉の忍さんに、ノエルやファリンを始めにメイドさんも多い。耐性が無かったのがアリサだけだったのだ…うん。
「アリサちゃん、大丈夫。」
「す、すずか!?」
「私は見慣れているけど、アリサちゃんは一人っ子だもん。仕方なかったんだよ。」
「ちょっ、何!?撫でるなぁ!」
と仲良く大浴場に向かって行ってしまったので、俺もユーノを連れて慌てて付いて行く。
≪楽しそうね、彼女達≫
≪ユーノ。まぁ、そうだな…≫
勿論ユーノは冷静だ。原作と違って中身は女性だからな。原作のように動揺する理由がそもそもない。
≪で、どうなの?≫
≪何が?≫
≪堂々と女の子の裸を覗いた感想は?≫
意地悪な質問だが声のトーンから察するに本気では無く、どうやら俺を
≪…ユーノも分かってるだろ?罪悪感も興奮も無いよ≫
≪何よ、つまらないわね…まぁ、そんな感じとは思ったわ≫
境遇で言えばユーノも似たような物だろう。もう俺達の元の性別を証明するものは、自身の記憶だけなのかもしれない。
この先俺達が成長して思春期を迎えた時、どっちに恋愛感情を抱くのか…その時までに今の性別にも向き合わないといけないんだろうな…
≪ユーノはどうするんだ?将来のお相手は≫
≪本当にどうしようかしらね…前世じゃ仕事が旦那様だったし、また
≪ドライだなぁ…≫
≪きっと思春期迎えても変わらずこのまま過ごして、三十路が見えてきた辺りでまた焦るのよ。その時の私に任せるわ≫
≪乾いてるねぇ…≫
≪それとも、案外あなたも私も元同性に運命を感じるようになってるかもね?≫
≪…少なくとも今は寒気しか感じないな≫
≪でしょ?なるようになるわよ、きっとその内ね≫
念話をしながらアリサを追って大浴場にやってきたが…アリサとすずかが居ない。
…それにこの風景、何か違和感があるような?
…
…何でリンディさんが湯船に浸かってるんですかね?
「更衣室を見る感じじゃ、今男湯は実質貸し切り状態…」
「恭也さんはさっき出た。あの様子からして士郎さんは今大浴場には居ない…」
「つまり…?」
「「「貸し切りだッ!」」」
…勢い良く大浴場の扉を開けると、俺達を待っていたのは湯船に浸かっているクロノくんでした。何故!?
「…やぁ、待っていたよ。実に不本意ながらね。」
一言目から失礼過ぎるだろこの執務官。とりあえず作戦会議だ。
≪何であんなに機嫌悪そうなん?≫
≪知らん。俺等初対面だよな?画面越しには一方的に知ってるけど。≫
≪『実は僕と君達とは前世からの因縁があるのだよ』的な?≫
≪俺らの前世ふつーの地球人なんですが?≫
≪違いない≫
念話でこそこそ喋っていると…
「まぁ、君達も湯船に浸かると良い。その恰好では体調を崩すぞ?」
「あ、ハイ」
「お邪魔します…?」
軽く体を洗ってから湯に浸かる。…俺達なんでクロノと一緒に湯船に浸かってるんだ?
…すみません、クロノさん?なんで結界を張る必要があるんですかね?
「…君達を待っていた理由は他でもない。時空管理局の事は知っているだろう?」
「あっ、ハイ」
「ちょっ、おまっ!」
「えっ、あっ!しまった、つい!」
なんてこった、この短時間で俺から情報を引き出すなんて…これが若くして執務官に上り詰めた男の手腕…!
「隠す必要はないさ。僕は君たちのような者を
少なくともその人達と友好的な関係では無さそうだな…声のトーンで分かるわ。何やってんだよ転生者ぁ…
そしてクロノがおもむろにデバイスを取り出し、攻撃かと思わず警戒する俺達をよそに…空間に映像が投影される。
これは何だろうかとクロノに目線を向けると、「とにかく見ろ」と言わんばかりに映像を顎で指す。
…本当に何したんだよ転生者。クロノがここまで失礼な行動取るなんてよっぽどのヘイト稼がないと有り得ないんだけど…?
そう思いながらも目を映像に向けると、映っていたのはなんとも豪勢なシャンデリアがぶら下がった一室だった。
…これは、部屋の様子から考えるとパーティ会場か?随分広いな。色とりどりの料理が並べられている一方で、会場に居る殆どの招待客は
『えー…君達はこれより、次元世界を守る時空管理局の一員で…ある。』
『…』
『それぞれの…あー、正義を胸に…その、くっ…負けんぞ…! 凶悪なる次元犯罪者及び、危険を孕むロストロギアの脅威より、無辜なる民を守る盾として、正義を貫く鉾として…』
『…』
『…であるからして、我らこそがこの世界の秩序を守る者であると言う矜持を忘れず…』
『…』
『…ぐっ、胃が…ッ! 信念を決して曲げる事無く、常に高潔たる精神を…』
…それは恐らく時空管理局の新入局員へ向ける歓迎のあいさつだったのだろう。だが、目の前にずらりと並んだ銀髪オッドアイ達を前に
「えっと…この映像は?」
「…去年の新入局員歓迎会の映像だ。」
「そのぉ…この大量の銀髪オッドアイ達は…もしかして?」
「…同時期に入局試験をパスした新入局員達だ。」
「あの…挨拶していた人、凄い隈だったんですけど…何で彼に」
「
瞬間、クロノから凄まじい圧が噴出した。
歓迎会の挨拶は適当です。管理局の挨拶なんて知らないのでなんかそれっぽい感じで…
新入局員への挨拶を済ませたナイスミドルは舞台袖に引っ込むと同時に、やり遂げた漢の顔で立ったまま意識を失いました。(生きてる)