転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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前回から少し時間が飛んでいます。
時間にすると…5日くらい?


この回を書いている途中で、以前書いた内容におかしいところがあった為9話の一部を修正しました。

内容自体に変更は無いですが『決戦』と書いていたところを『協力戦』に変更しました。(多分書いてた当時原作9話と11話のところで頭こんがらがってました)


最後のジュエルシード

時空管理局がジュエルシードの捜索に乗り出してからと言うもの、ジュエルシードの回収は順調に進んでいた。

まず、海底のジュエルシード6個は既に回収された。

アースラの広域魔力探査を管理外世界に使った結果、白紙に垂らした赤インクの様に分かりやすかったのだ。

回収はクロノが直々に行った。海上で魔力探査をした後『スティンガースナイプ(Stinger Snipe)』を6発海中に突き入れてしばらく待つと、封印済みのジュエルシードが6個浮上してきたのだ。…何と言うか、無駄な動きが一切無かった。銀髪オッドアイ達が複雑な心境を隠す事無く顔に出していたのが印象的だった。

クロノはその後6つのジュエルシードをアースラで一通り調べた後、「決闘には全てのジュエルシードを賭けるんだろ? なのはが持っておく方が良いさ。」と言って俺に預けてくれた。

 

そして今…

 

 

 

―海鳴市の端にある森の中

 

「リリカル、マジカル!ジュエルシード、シリアル『(5)』、封印!」

シィリン(Sealing)!≫

 

静寂を切り裂く掛け声と共に放たれた桃色の閃光が巨大な鯰を貫き、憑りついていたジュエルシードを引き剥がす。

 

リスィー(Receipt:)ナンバーファーイブ(No.Ⅴ)』!≫

「…ふぅ、ありがとう。レイジングハート、それに皆も!」

「場所見つけたのは管理局だけどな…」

「でも皆が追い込んでくれなかったら、きっともっと手こずっていたと思う!」

「…そうか? まぁ…手助けになったのなら良かったよ。」

 

管理局の手助けもあって、俺達は沼の中心付近に沈んでいたジュエルシードの封印に成功した。相手は鯰に憑りついていたらしく、沼の底でじっとしていたのだがアースラの魔力探査は掻い潜れず見つかったと言う訳だ。シリアルは5番…俺の『原作知識』ではアニメで封印された描写が無いジュエルシードだ。恐らく原作でフェイトが回収した物だろう。

 

「これで15個目…残りはフェイトちゃんの持っている分を含めると6個かぁ…」

「そうだな。問題はフェイトが今、何個のジュエルシードを回収しているのかが分からない事だが…」

「確か最後になのはと報告し合った時は5個だったよな? 変わって無ければ、見つかっていないジュエルシードは1個か。」

「フェイト、5日くらい前から見ないもんなぁ…心配だ。」

 

少し前の夕刊に掲載されていた『マンションから伸びる謎の光』は、フェイトが帰宅した時の物だろうと言う事で皆の意見は一致したらしい。ユーノがこっそり教えてくれた。

問題はその日以降フェイトが戻って来ていないらしいのだ。「最後に勝った方が全部のジュエルシードを手に入れる約束をした以上、回収はこちらに任せる心算なんじゃないか?」と言う推測も出たが、フェイトはそう言う事をするタイプには見えなかった。

よく言えば真っすぐ、悪く言えば脳筋…そんなイメージで俺達のフェイトに対する認識は一致している。先の推測を立てた転生者もそれは同じだったようで、「いや、フェイトはそんな事考えるタイプに見えなかったな。わりぃ」と即取り消していた。

ではその場合どう言う事が推測されるか…『時の庭園で何かあった』と考えるのが自然な流れだろう。

 

「なのは、そろそろ時間だよ。」

「ユーノ君…うん、そうだね…」

 

時間と言うのは『フェイトとの情報共有の待ち合わせ時刻』の事だ。6日前までは毎日進捗を報告し合っていたが、フェイトが帰ってからは勿論会えていない。その場合は最長で30分ほど待って、それでも待ち合わせ場所に現れなければ帰る事になっている。

転生前はあまり見かけなくなっていた折り畳み式携帯電話に表示されている時刻は、待ち合わせ時刻の15分前だった。

 

「その、なんだ…今日は、会えると良いな。」

「うん…ありがとう、じゃあ行ってくる。また明日ね!」

「あぁ、また明日な。」

 

皆に別れを告げて待ち合わせ場所に向かう。待ち合わせにはユーノもアルフも同行してはならない為、ユーノともここで一旦お別れだ。

 

 

 

 

 

 

待ち合わせの時刻、待ち合わせの場所…そこにフェイトは居なかった。居るのは物陰に隠れてこちらを覗いている銀髪オッドアイくらいだ。本人は隠れているつもりだろうが、沈みゆく太陽を反射する銀髪が眩しい為にもろバレである。

 

傍にあったベンチに腰掛けてしばらく待つ。

 

 

 

…フェイトが帰る前は、遅れても5分くらいだった。

そして今、その5分はとうに過ぎてしまっている。

 

 

 

「…待っててくれたんだ。」

「! フェイトちゃん!?」

 

久しぶりに聞く声に振り返れば、久しぶりに見る顔と目が合った。

 

「待たせてゴメンね…ちょっと、家でやらなきゃいけない事があったんだ。」

「…ううん、大丈夫だよ。いっぱい話そう、お互いの5日間の事。」

 

 

 

「…修行!?」

 

フェイトが言うには実家…ぼかしてはいたが『時の庭園』の事だろう。そこで修行していたらしい。

…そんな少年誌の主人公みたいな事してたの!?アレよりももっと強くなったの!?

 

「うん、最後の決闘で負ける訳には行かないから。…母さんが色々教えてくれたんだ。」

「えっ!? …フェイトちゃんのお母さんも、魔導士なんだ…」

「…貴女のお母さんは違うんだね。」

「う、うん。魔法の事はニュースで見て驚いてたもん。」

 

危なかった。思わず「あのプレシアが!?」と言いそうになってしまった。

しかし、プレシアがフェイトの修行を見る…ねぇ…?

確かプレシアは子育ても教育もリニスに任せていたはず…リニスはもう役目を終えているから居ないのだろうけど、それでも本人が直々にってのは違和感が強いな。

でも…フェイトが言うんだったら真実だろう。少なくともそんな嘘をつく性格じゃないはずだ。そして、その情報を明かしたと言う事は『絶対的な自信』を手に入れたのだろう。…さらに言えば、俺はフェイトが『何を』『どのように』修行したのか、修行の成果が戦法にどんな影響を与えているのかを知らない。フェイトの癖だって修正されているかもしれない…そんな相手に勝てるかも分からない。

 

…何でだろう。交わしていた『約束』が、今までで一番『分の悪い賭け』に早変わりしたのに…俺は今までで一番ワクワクしてきている。

 

 

 


 

 

 

「えっ、15!?」

 

嘘だろ…5日間でそんなに見つかるものなのか!? と、思ったが…海のジュエルシードを回収したと考えれば別に驚くほどのペースではない。

 

「あはは…管理局の皆にも助けてもらったんだ。」

「そうだったんだ。管理局の人達って凄いんだね…」

 

物語と同様に暴走させたのか、それとも地道に1つずつ封印したのか…そんな事はどうでも良い。

これで『約束』の日は一気に近づいた。手の内を見せない内に決闘の日を迎える事が出来れば、圧倒的なアドバンテージが得られる。

…ジュエルシードの大半をなのは達に任せてしまった事に対する後ろめたさはあるが、それは決闘に持ち込むべきではない感情だ。正々堂々戦って、勝った者のみが互いが賭けた全てを手に入れる…それが決闘なのだから。

 

「…私が持っているジュエルシードは、あれから変わらず5個。つまり…」

「うん…残ったジュエルシードは1個。だね…」

「ほとんどのジュエルシードは、あなた達に任せてしまったし…準備期間が必要なら…」

「ううん、大丈夫だよ。」

「…でも、」

「フェイトちゃんが修行してきたのと同じように、私も何もしてなかった訳じゃないよ。…私だって強くなってる。」

「…分かった。最後のジュエルシードを封印したら、1日休息日に充てて2日後に…それでどう?」

「うん、分かった。…お互いに悔いの無いように、全力全開で戦おうね!」

「そうだね、お互い悔いが残らない様に…」

 

 

 

思えば、俺達はジュエルシード回収で苦戦する事は殆ど無かった。

戦いと言えるものと言えば、お互いにジュエルシードを賭けてぶつかった時くらいだった…

 

 

 

だから、油断していたんだ。…俺も、なのはも。

 

 

 


 

「クロノくん…最後のジュエルシードの反応、見つかった?」

「…いや、今のところまだ見つかっていない…」

 

…どう言う事だ? なのはからの報告によれば、フェイトが持っているジュエルシードは5個のままと言う事だった。俺はフェイトが『時の庭園』に戻る前にジュエルシードを一つ回収したのだと思っていたのだが…?

 

「オペレーター! 探査範囲を広げてくれ!」

「やっていますが…これ以上広げても『第97管理外世界』の魔導士の反応が混ざってしまい、なんとも…」

「人が住んでいないような森や山中に反応は?」

「…いえ、見たところそんなに大きな反応は無いですね…」

 

あまり大きくない魔力の反応は恐らく自然動物の物だろう。地球ではリンカーコアを持って生まれる者は少ないが、リンカーコアを持って生まれるのは何も人間だけとは限らない。

…それに、ジュエルシードの魔力はどれもほとんど同じ数値だ。微弱な反応は先ず『はずれ』で間違いない。

 

「もしや、街中に…?」

「あり得ない話ではないですね…しかし、それならば先に捜索していた彼らが見つけられないとは思えませんが…」

「…まさかな…?」

 

俺の脳裏に最悪の可能性が浮かんだ。

 

 

 


 

それは数日前の事だった。

 

 

 

「魔法の石…魔法の石…無いかなー?」

 

連休中の『海鳴臨海公園』を、少女が歩いていると言うごくありふれた光景だった。

それは丁度なのは達が温泉街に出かけている最悪のタイミング。

 

「あっ! あれってもしかして…!」

 

それはとある物語で偶然『3人目の魔法使い』と出会う切っ掛けになったジュエルシード。…物語に於いて印象深いシーンの立役者だからと言う、ある種の『転生者のエゴ』によって見逃されていたジュエルシード。

 

「やっぱり! あの魔法の石だ! これで私もあの子達みたいな“魔法使い”に…えっ!?」

 

そのジュエルシードが、少女の手の中で光を放つ。

ジュエルシードは少女の手に潜り込み、少女の願いを『自分の為に正しく叶えた』。

 

 

 

 

 

 

光が収まると、残されていたのは気を失って倒れた少女が一人。

それもすぐに目を覚まし立ち上がる。

 

「…あれ、私…寝てたのかな…?」

 

少女は先ほどの出来事を覚えていないのか、何事も無かったように歩き出す。

 

「うーん…魔法の石、魔法の石…()()()()()()()…」

 

その内に潜り込んだモノに、目的を書き換えられた事に気付く事も無く…

 




最後のジュエルシードが発動してないとは言っていないですからね。

少女は表向き何の異常も無く日常を過ごしています。ただし、ジュエルシードを拾った記憶は封印されていますが。
魔導士ならリンカーコアがある位置にジュエルシードがあり、リンカーコアの役割も果たしています。その為、ジュエルシードが封印されてしまえば魔法も使えなくなります。…と言っても、魔法の力を手に入れた事を覚えておらず、意識の誘導までされるので()()()()()()魔法が使える事は一度だって無いのですが…

ジュエルシードを見逃した転生者についてですが、発見したタイミングは実はこの小説の9話の時です。
その時は21番の行方を追っていて優先度が低かった事、発動までの期間が長く緊急性が無かった事、何よりも現実であると言う認識がその当時において無かったのが原因ですね。
その後はフェイト乱入から、『実力を示せばフェイトの好感度が上がる』(意訳)と言う情報により修行パートに移り、完全に忘れていると言う…
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