転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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前回、もう寄り道はしないと言いましたが…前回までに終わらせておく必要がある伏線を貼り忘れていたので…寄り道回です。

それと投稿が大変遅れてしまい、すみません!!


それぞれの戦いの後

「これは…想像以上ね…」

 

次元間航行船アースラのモニターに映し出された決着。

なのはちゃんとフェイトちゃん…二人の魔法が絡み合うように螺旋を描き、ジュエルシードの魔導士の野望はプロテクション諸共撃ち砕かれた。

 

「エイミィ、測定結果は?」

「は、はい…えっと、測定器の故障じゃなければなんですが…」

 

動揺を隠せないと言った様子で報告された数値は常軌を逸した物だった。

 

「フェイトちゃんは平均魔力発揮値が172万、最大発揮値が約3倍です…」

 

あの年齢にしてこの魔力…素晴らしい才能だ。恐らく、良い師にも恵まれたのだろう。だが、まだ()()()()だ。素晴らしい才能を持った者が、素晴らしい師に教えを受ければ…まだ辿()()()()()()()()…問題は

 

「なのはちゃんの平均魔力発揮値は…えっと、793万…で、最大値は…その3倍…です…」

 

…予言の子、凄すぎない?

 

だが、これでハッキリした。予言が示した『光』は、やはりなのはちゃんだった…

 

『法の光の射さぬ地に、欲望の結晶が光を示す』

 

この一文に於いて『法の光の射さぬ地』は『管理外世界』を示すのだろうと言う事は早期に結論が出ていた。だが、『欲望の結晶』が何を示すのかが不明だった…その為に管理外世界にまで捜索班が回される事になり、私達も巡回のついでに管理外世界を見て回る必要があったのだ。

だがこれでその努力も報われる。本部にも良い報告が出来るだろう…これで魔法の存在が露見してしまった事ととんとんになると良いのだけれど…

 

いえ、管理局に関わるかどうかはあくまであの子が決める事。それよりも今は…

 

「エイミィ、現地の全員に通信を繋いでちょうだい。」

「あ、はい! 了解しました!」

 

先ずは皆を労ってあげないとね。

 

「皆お疲れ様! 最後のジュエルシードは無事に封印されたわ!」

『艦長、こちらも木の消滅を確認しました。』

「ありがとう。…これでジュエルシードは全部回収出来たのね?」

『はい。後は、あの女の子の安否が気になりますが…』

「…そうね、それについてはなのはちゃんに確認するわ。クロノ、他の皆もお疲れ様。」

『はい、これより帰艦します。』

 

クロノ達はこれで良し…問題はやはり、ジュエルシードの宿主になっていた女の子ね

 

「…なのはちゃん、フェイトちゃんもお疲れ様。ジュエルシードに憑かれていた女の子は無事かしら?」

『リンディさん! 傷は無いみたいなんですけど、意識を失ってて…』

「うーん、流石にその子をアースラに呼ぶ事は出来ないわね…こちらから医療班を送るわ。少し待っていて頂戴。」

『はい!』

「それじゃエイミィ、手配をお願い。」

「はーい!」

「なのはちゃんは…そうね、待ち合わせ場所の近くにベンチがあったわね。そこに彼女を寝かせてあげてくれる?」

『分かりました!』

 

…さて、これで一段落ね。私も報告書を纏めなくちゃ…

 

 

 


 

 

 

――それは、ほんのちょっとした好奇心だった。

 

フェイトが戦うと言う、相手の魔導士がどれほどのものか一度見てみるのも悪くない…そんな何気ない好奇心で、私は第97管理外世界を覗く事にしたのだ。

 

だが、水晶球に映ったのは…

 

「なんてこと…フェイトが、アレと…?」

 

水晶球に別の世界を映し出す魔法…それは対象の世界とこの世界を繋ぐ、次元魔法の基礎だ。故に限定的ではあるが、今この水晶球を通して二つの世界は繋がっており、その繋がりを通してあの魔導士の圧倒的な魔力を感じる。

結論から言えばフェイトが戦おうとしている相手は、才能と言う言葉では説明が付かない程に常識を逸脱した何かだった。

高い才能を持った魔導士が長年魔法の研鑽を続けたとして、それでもピーク時にあれほどの魔力を有する瞬間が果たしてあるかどうか…

当然私の魔力も上回っており、勝てるかと問われれば自信を持った答えを返す事は出来ないだろう…

 

「アレとフェイトを戦わせるのは危険だわ。

 決着の付き方によってはフェイトの心に傷が残る可能性もある…」

 

軍人や凶悪な次元犯罪に関わった魔導士は、時に心に深い傷を負うことがある。そう言う魔導士は魔法に対して苦手意識を持ったり、恐怖を拭い切れずに魔法の出力も不安定になる。

…フェイトは贔屓目に見なくとも、高い才能を持っている。特に飛翔魔法に関して言えば、まさに天賦の才と言って差し障りない。

その才能がここで潰れてしまうのは…親としても、師の一人としても避けたい。

 

ましてあの子は飛翔魔法が本当に好きらしく、鍛錬の合間も息抜きに飛翔魔法で飛び回るほどだ。

心が折られると言う事は、その羽根をももがれる事と同義…

 

戦わせるべきではない。次元魔法で介入してでもアレをどうにかしたいと思う私と、

フェイトの努力を踏みにじるような行いはしてはならないと自制する私が心の中でせめぎ合う。

 

…いや、例え介入したとしても…おそらくアレを倒す事は出来ない。

プロテクションに関しては対応可能だが、あれ程の魔力を持つ相手を一撃で倒すには次元間を越えた魔法の出力では不可能。…私が直接その場に居ないと不可能だ。

 

「…ここは様子を見ましょう。あの子の初めての戦いなのだから、私が邪魔するのはお節介も良いところだわ。」

「賢明なご判断です、プレシア様。」

 

…居たのか、似非執事(こいつ)

 

「お食事をお持ちしました。」

「…そうね、もうそんな時間だったわ。」

 

気付かない間に結構時間が経っていたらしい。机に散らばる資料のいくつかを()()()()スペースを開けてやると、そこに食事を乗せたプレートが置かれる。

 

「お嬢様達の様子はいかがでしたか?」

「フェイトは今の実力を隠したままジュエルシードの対応を済ませていたわ。この後決闘をする相手に手の内を晒さなかった判断は評価してあげても良いかもね。」

「お嬢様がいらっしゃらない時くらいは、素直になってもよろしいかと存じますが。」

「…余計なお世話よ。食事を置いたのなら直ぐに出なさい。」

「もう少しお嬢様についてお話ししたかったのですが…」

 

こいつは私を友達か何かだと勘違いしてないか? 最近は特に馴れ馴れしいと言うか…お前は私の何なんだ?

…まぁ良い、私の命が尽きればフェイトの世話をするのは多分こいつとアンジュになるだろう。フェイトの事を大事に思っている事に関しては多少なり信用出来なくもない相手だ。

 

「待ちなさい。」

「はい?」

「…休憩時間にこれでも見ていなさい。」

 

そう言ってフェイトとあの魔導士の戦闘映像を記録した端末を投げて寄こしてやる。

 

「これは…?」

「さっきの戦闘の記録映像よ。」

「ありがとうございます! 直ぐに拝見させていただきます!」

 

随分とご機嫌になって部屋を出て行ったが…()()()? 休憩時間に見るようにと言ったはずだが…

 

…そう言えば、アイツの仕事ぶりをこの目で最後に見たのはいつだっただろうか…?

確かに今この時の庭園に居るのはアンジュと似非執事と私だけだが、それでも広大なこの時の庭園の手入れはそう簡単に済ませられる筈がないのだが…

 

…まぁ、それについては後で釘を刺しておこう。今はあの映像の()()()()()()について考えたい。…もしかしたら、それがあの魔導士があれ程の化け物になった理由の一つかも知れないのだから。

 

「あの()()()()()()()()は用途から考えてその場で構築した物のはず…だと言うのに、あのダミーの環状魔法陣に刻まれた痛々しいポエム…」

 

流石にアレはあの少女が考えたものじゃないだろう。…デバイスとのSM物なんてニッチなジャンルを開拓しているような年齢ではない。

ならばあれは()()()()()()()…考え得る候補はあの場に()()しか存在しない。

 

「…完全な自我を持ったデバイス。自らの欲望どころか、妙な性癖まで芽生えたある意味あの魔導士よりも奇妙な存在ね。」

 

…あのデバイスがあれほどの魔力を得る切っ掛けになった可能性は、正直0に限りなく近い。だが、万が一…いや億が一にもそれが切っ掛けになるのだとしたら…

 

「…バルディッシュも…いえ、止めておきましょう。あんなものをフェイトに見せる代償には見合わないわ。」

 

 

 


 

 

 

「…なんか、今ギリギリで窮地を脱した気がする。」

「フェイト? 何かあったのかい?」

 

急に感じた寒気に思わず身体を振るわせると、アルフが少し心配気にこちらを見る。リニスは台所で料理中なので気付いていないようだ。

 

「ううん、多分大丈夫。」

「本当だろうね? フェイトは目を離すと直ぐに無茶するんだから…」

「うん…何と無く寒気がしただけだから。」

「…風邪ひいてないだろうね?」

 

一応体調管理には気を付けているつもりなんだけどな…?

 

「二人とも、ご飯が出来ましたよ。配膳手伝ってください。」

「はいよー。」

「あ、うん!」

 

明日は一日体を休めて、明後日はいよいよなのはとの決闘だ。こんな時に体調を崩すのは勘弁だな…

 

 

 


 

 

 

夕食後、俺は自室で今までの事についてユーノと念話していた。

 

≪今まで大変だったけど、これで一先ず街の方は安全だな。≫

≪うん。あの女の子が憑かれちゃったのは残念だったけど、ちゃんと夢だと思ってくれたんでしょ?≫

≪うーん…アレは、成功したのか失敗したのか…≫

≪…ちょっと? 本当に大丈夫だったんでしょうね?≫

≪多分…大丈夫だったと思うんだけどなぁ…≫

 


 

――海鳴臨海公園、ジュエルシード封印後。

 

 

 

アースラの通信でリンディさんに言われた通り、女の子をベンチに寝かせて直ぐ管理局の医療班(銀髪オッドアイ)の人が来た。

 

「脈拍、瞳孔の働きは正常、リンカーコアは元々持ってないようなので…馴れない魔力を強引に行使した事による疲労だと思います。

 ジュエルシードの意志から解放された事による反動もあるかもしれませんが、いずれにせよ命に別状は無いですよ。

 目が覚めた後、記憶に問題が無ければ直ぐに普段の生活に戻れるでしょう。」

「良かった…ありがとうございます!」

 

検査を終えた医療班の人が、クロノに呼ばれて帰って行った後…

 

「…ぅ、ん…あれ、ここは…」

「あ、目が覚めたんだね!」

「あ…魔法使いさん…」

「私? 私は魔法使いじゃないよ。」

 

目が覚めたこの子が今までの事をどれだけ覚えているのか…程度によっては、このまま放置すると拙い気がする。このままこの子と別れて、いつか今回の事を思い出した時…この子は間違いなくショックを受ける。…だからその前に対処する。

 

「えっ? でも変身して、私と魔法で…?」

「…もしかして、夢でも見てたんじゃないかな? 最近、話題だもんね。手に入れれば魔法が使える『魔法の石』って。」

「夢…? 私がやった事は、全部夢…?」

 

そう言って、茫然としてしまう女の子に()()()()()()()()()()()()を吹き込む。

内容はこうだ。

 

『魔法の石を見つけたのは今日の事であり、それはただの石だった。

 喜びのまま駆け出した女の子は転んでしまい、そのまま気を失ってしまう。

 夢の中では魔法の石は本物で、魔法使いと会ったのも魔法を使ったのも夢の中。

 倒れた女の子をベンチまで運んで様子を見ていた俺をみて、()()()()()()()()使()()と混同してしまった。』

 

…正直、信じてもらえるかどうかは賭けだ。でも、『人に対して非殺傷設定なしの魔法を撃った』事実は夢にしておきたいのだ。

勝算は無い訳ではない。『成長した筈の木が戻っている』『使った魔法は全部誰かが使ったもので、オリジナルは一つも創れなかった』…この辺りの情報を上手く使って、事実の解釈を捻じ曲げれば何とかできそうではあるのだ。

 

「きっと、夢だったんだよ。全部。」

「でも、私ちゃんと魔法を使ったもん!」

 

どうやら、あの時の女の子の落ち着いた口調も本来の物とは違ったらしい。

大人びていた態度とは正反対の様子を見て、本当にこの子を解放できたんだと実感する。

…だからこそ、あんな事をした記憶は全部悪い夢の中に捨てさせてやりたい。

 

「どんな魔法?」

「空を飛んだよ! ニュースで見た光も出せたもん! 木だって魔法で大きく…して…」

「『木』ってどの木?」

 

公園の木は全部元通りだ。成長した根の影響で抉られた地面も、管理局員のおかげでぱっと見は元通りに見えるように整えられている。

 

「…勘違い、だったかも。…でもいっぱい魔法は使ったんだよ!」

「ちなみにだけど…あなたはどんな魔法が使いたかったの?」

「…空を飛んだり、大人になってみたり…」

「あなたは大人になる魔法は使った?」

「…使ってない。」

「どうして使わなかったの?」

「…使えなかった。」

「うん、夢ってそう言うものだよ。『何故か普段はしない事をしたり』『自分がしたい事を出来るはずなのにしなかったり』…自分の考えと行動がバラバラで、後で思い返しても自分の行動だって説明できない。」

「…違う、違うの。」

「違わないよ。だって、あなたは今()()()使()()()()でしょ?」

 

すると女の子は目じりに涙を浮かべながら俺を睨み、()()()()()()()を俺に向ける。

 

「…撃つよ。」

「…撃てないよ。」

「撃つもん!」

「…うん、じゃあ撃っても良いよ。」

「…っ! …いじわる。」

「意地悪で良いよ。」

「…魔法使いの、いじわる!!」

 

女の子はそう叫ぶと走って行ってしまった。

…これ、成功か失敗かで言うと失敗っぽいなぁ…

せめて俺が『嫌な魔法使い』として記憶に残ってくれれば、罪悪感くらいは減らせるかな。

 

 

 


 

≪…って感じだったんだけど…≫

≪全っ然誤魔化せてないじゃないの!≫

≪いや、でもあの後…≫

≪良いから、明日にでもあの子見つけて何とかしなきゃ!≫

≪いや、その場合先ずはフェイトに…≫

≪何でここでフェイトが出てくるのよ!?≫

 

どうにもユーノの説得は難しそうだな…

 

 

 


 

 

 

『…魔法使いの、いじわる!!』

 

そんな悪口を言って逃げちゃった。

私は謝りたかったのに、謝らせてくれないから…あの魔法使いさんは優しいけど意地悪だったから。

 

そのまま公園の出口まで走ってると目の前に突然、誰か降りてきた。

直ぐに空から来たんだって分かった。だって…

 

「…! あなたは!」

 

金色の髪の毛、黒い服…最後に私を止めてくれた、もう一人の魔法使いさん。

 

「魔法使いさんならわかるよね!? 私が魔法を使ってたって!」

「…私は知らない。」

「嘘!」

「あの子が知らないなら、私も知らない。」

 

なんで…!

 

「…でも、魔法の石は持ってる。」

「…っ!」

 

そう言って、魔法使いさんは手に持った杖から6個の魔法の石を浮かべる。

 

「持てば魔法を使えるようになる。…それは本当。」

「…」

「この近くでも、最近。一つ新しく()()()。」

「それは…」

 

拾ったんじゃない…私じゃない私を倒して、手に入れたんだ。

魔法使いさんは魔法の石を浮かべたまま私に近付いてくるが、私は思わず一歩、二歩と後退ってしまう。

 

「…欲しい?」

「いらない…!」

 

咄嗟にそう答えていた。あの石を見るだけで怖かった。もう、私が私じゃなくなるのは嫌だった。

 

「…それで良い。」

 

魔法使いさんは魔法の石をまたしまって、話を続ける。

 

「あなたは魔法を使っていたんじゃない。…魔法に使われていただけ。」

「でも…」

「あの子が夢だと言ったなら、それがあの子の願い。」

「でも!」

 

分かってる。あの魔法使いさんは全部無かった事にしてくれようとしたんだって。

でも私があの石を見つけなければ、拾わなければあんな事にならなかったのに…

 

「…あの子の為に何かしたい?」

「…うん。」

「じゃあ魔法の石を集める人が居たら、あれは怖い物だって教えてあげて。…もう全部、私達が回収したって事も。」

「本当…?」

「うん、もう大丈夫。」

「…うん、分かった。みんなに教える…」

「それで良い。あの子も喜ぶ。」

「魔法使いさんもあの魔法使いさんに教えて。私、ありがとうって言ってたって…」

「うん、ちゃんと教える。」

 

魔法は私が思っていたよりもずっと怖い物だったけど、あの人達みたいな魔法使いさんが居れば多分大丈夫。

きっと…これから先何があっても、あの二人が魔法から皆を守ってくれるんだって思える。

 

「ありがとう、魔法使いさん…ううん、()()()()()。」

 

魔法の石は、私に本当の意味での魔法をくれなかったけれど、おかげで魔法に少しだけ詳しくなれた…そんな一週間だった。




次回は本当に休日ダイジェスト回です。
もう本当に寄り道は無いです。本当です。もう忘れものも無いので!
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