転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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一期
夢の中で、会ったよなぁ!


薄暗い森の中のような場所で

怪我をした少年と触手の生えた毛玉のような怪物が戦っている。

 

「くそっ、しこたまやりやがって…痛ってぇなぁ…!」

 

少年…ユーノ・スクライアが血の混じった唾を吐き捨て、怪物を睨む。

 

「…っと、そう言えばそうだったね。」

 

突然そんな独り言を発したかと思えば、突然ユーノの雰囲気が変わった。

荒い口調や態度はなりを潜め、外見通りのおとなしい少年の物に。

怪物を鋭く睨む眼光は、優しさと儚さを思わせる程に穏やかになった。

 

ユーノと怪物は機を窺うように睨み合っていたが、

やがて焦れたのか怪物が草むらから飛び出しユーノに襲い掛かった。

 

ユーノが怪物に手を翳す。その手には指先ほどの小さな宝石。

ユーノが意思を込めると、宝石から空中に魔法陣が浮かび上がる。

 

「妙なる響き 光となれ!」

 

ユーノが魔法の言葉を紡ぎ始める。

 

「許されざる者を 封印の輪に!」

 

言葉が紡がれる度に、魔法陣は複雑になっていく。

 

「ジュエルシード、封印!」

 

そして呪文の完成と共に、盾のように展開された魔法陣と怪物が衝突。

怪物は体液のようなものを撒き散らしながら、弾かれた様に吹き飛ばされた。

 

しかし怪物の意識はまだあるようで、力なく体を引きずるようにその場を去って行く。

 

「逃がし、ちゃった…追いかけ、なく、ちゃ…」

 

一方先ほどの衝突で力を使い果たしてしまったのか、

ユーノは倒れ込み、意識は失われていく。

 

「誰か、僕の声を聴いて、力を貸して、魔法の、力を…」

 

意識を失ったユーノは光に包まれ、

やがてフェレットのような小動物に変化した。

 

 

 

 

 

…と、言う夢を見た。

感想は一つ。

 

やっぱり転生者じゃないか。

 

 

 

 

 

さて、ほとんど予想通りではあるが困った事になった。

理由は一つ。夢のユーノが正体を隠しきれていなかった事である。

 

原作においてなのはがユーノの夢を見た理由は、

なのはの潜在魔力が高かった事とユーノとの距離が関係していると思われる。

つまり魔力を持っている人間ならば、なのは以外の人物も思念を夢と言う形で見る事が出来たはずだ。

 

原作ではその条件におそらく唯一該当したであろうなのはが、

たまたまユーノの近くを通りがかったおかげで奇跡的に出会う事が出来たのだ。

 

では、改めて今の海鳴市の状況を考えてみよう。

 

魔力保有者(転生者)坩堝(るつぼ)である。

距離の制限があろうと無かろうと関係なく、多くの転生者が夢を見たはずだ。

 

あのユーノの様子を見ればユーノが転生者だと分かった事だろう。

もしかしたら過激な行動をとる転生者が出るかもしれない。いや、おそらく出るだろう。

しかし、俺はRPの都合上なのはがあの場所へ向かう理由が無ければ助けに行くこともできない。

 

俺に出来るのは放課後までの間、ユーノが無事である事を祈る事だけだ。

 

≪誰か!僕を助けて!≫

 

…早いな。まだ7時前だぞ?

 

そう言えば、お店しらべで翠屋に行ったときに『親無し&デバイスが親代わりパターン』とか言ってる奴が居たな。

行動に制限が無く、魔法による飛行で一直線に向かえるのならばあり得ない事ではないな。

 

≪助け、ちょ、待っ…助けて!!≫

 

原作は開始と同時に崩壊した。

ここからはより精度の高いRPが要求される。

 

今までは原作と言うレールがあったが、それが破綻した以上はなのはの発言や行動をシミュレートしてのRPが必要になる。

その上で、ある程度原作通りの流れに持って行かなくてはならない。

 

ただし、レイジングハートが手に入る可能性は高い。

例えユーノが転生者に捕まったとしても、銀髪オッドアイの内の誰かがレイジングハート()()は届けに来るだろう。

彼らとしてもなのはには魔法少女になって貰わないと困るからだ。主にファン心理的に。

 

≪誰か!誰か!!≫

 

…いや今回の事で原作キャラの中に転生者が居る可能性が周知された事を含めて考えると、事はもっと複雑になるか。

 

しかし、テレパシーがうるさくて集中できないな…!

 

 

 

うるさい…?

 

このテレパシーは魔力保有者全員に一斉送信されている…他の転生者も全員聞いてるだろう。

更に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

原作のなのはの性格なら、声の主を探すのではないか…?

つまり、もう俺だって動き出さない訳には行かない…!?

 

…勘弁してくれ!まだ考えも纏まっていないのに!

 

慌てた様に階段を駆け下りる。

 

「なのは!そんなに慌ててどうしたの!?」

 

桃子さんが声をかけてくる。

桃子さんは転生者ユーノ肯定派か否定派か?

魔力を持ってるのか持っていないのか?

考えてる暇もない!

 

「誰かが助けてって言ってるの!行かなきゃ!」

「ちょっと、待ちなさい!誰かって誰なの!?」

「分からないけど、ずっと助けてって言ってるの!今も!」

 

桃子さんが怪訝な表情を浮かべている。

ユーノの声のタイミングがおかしい事に気付いたのだろう。

この様子だと夢を見た訳ではないのかもしれない。

 

「どっちにしてもそんな恰好(パジャマ)で外に出るつもり?

 学校に行く準備をしてから行きなさい。」

 

物分かりが良いのは転生者だからだろうか。

この時ばかりは桃子さんが転生者であることに感謝だな。

 

 

 

 

手早く支度を済ませて塾へ向かう近道へ向かう。

表情は心配そうに、ややキョロキョロと辺りを見回しながら。

 

「なのは!」

 

背後から呼び止めるこの声は!…誰だっけ?

後ろを振り向くとそこには…誰だろう?

多分、クラスメイトの一人のハズだ。

 

いや、俺は悪くない。だって銀髪オッドアイの見分けなんて先生でも結構間違うんだから!

 

「貴方は、えっと…神崎(かんざき)くん!」

「…神谷(かみや)な。」

 

「…ごめんね。神谷くん」

「良いよ、俺達見た目だけじゃなく苗字も似てるもんな…

 でもやっぱり見分けついてなかったんだな…」

 

そうなんだよな。こいつら何で名前に『神』とか『剣』とか入ってる確率が高いんだよ。

おかげで出席確認で『か行』が渋滞起こしてて『神藤(しんどう)』くんが12番目って事に…

 

いや、コントしてる場合じゃない!

 

「えっと、信じてもらえないと思うけど、朝に夢に出てきた子の声が…」

「あぁ、分かってる!俺もその夢を見てここに来たんだ!」

 

なるほど、なのは()と同じ境遇を演出する事で親しくなろうって事か。

今は寧ろ好都合だ!

 

「ほんと!?」

「あぁ、どうやら俺達は似ているところがあるのかもな!」

 

おおぅ、ぐいぐい来るなぁ。

でもなぁ…

 

()()()も!?」

「みんな?」

 

銀髪オッドアイ(神谷)が振り向く。

そこに居たのは11人の銀髪オッドアイ達だった…

 

「「「「「「「「「「「あぁ、どうやら俺達は似ているところがあるのかもな!」」」」」」」」」」」

 

神谷くんは両手で顔を隠して座り込んでしまった。耳まで真っ赤になっている。

だが、これでなのはが迷わずにユーノのところまで行ける理由が作れる!

 

「ありがとう!じゃあ、みんなで手分けして…」

 

こう切り出してやれば…

 

「それには及ばないぜ!」

「俺達には!」

「この声の主の居場所が!」

「分かるからな!!」

 

凄いチームワークだ。見た目も相まって凄まじい一体感を感じる…

 

「ほんと!?お願い、私も連れて行って!」

「「「「「「「「「「「「あぁ、俺たちに任せなぁ!!」」」」」」」」」」」」

 

いつの間にか神谷くんも立ち直ったようだ。

でも近所迷惑だから声は抑えてくれ。

 

 

 

それから十数分後、俺たちは銀髪オッドアイ達の先導でユーノが倒れた現場に着いたのだが…

そこにユーノの姿は無かった。

 

「ここに居たのは間違いない!」

「あぁ、僅かにだが戦闘の痕跡がある。夢で見た時の物だろう…」

「あの声…助けを求めていた以上、追跡者が居たんだろう。」

 

銀髪オッドアイ達は自信満々に案内していたのにも関わらず、

現場にユーノが居なかったから慌てているのか言い訳の様な事をし始めている。

 

だが、思念波の内容からここまでは予想していた。問題はどこに逃げて行ったのかだ。

辺りを見回して痕跡を探す。

 

「こっちだ!この植木の小枝が折れている!」

 

銀髪オッドアイの一人が声を上げる。

言われて近付くと、確かに不自然な空洞が出来ているようにも見える。

 

「ほんとだ!じゃあ、あの子はこの先に!?」

 

急いで走る。銀髪オッドアイ達も付いてくる。

 

しかし、いくら探してもユーノは見つからない。

 

そう言えば…いつの間にかユーノの声が聞こえなくなっている。

 

間に合わなかったのか?

この状況でなのははどうする?

やはり心配して探すのか、それとも諦めてこのまま学校に向かうか…

 

途方に暮れていると声が聞こえてきた。

 

「そいつを渡せ!そいつをこのまま逃がす訳には行かねぇ!!」

 

この声…隣のクラスの銀髪オッドアイ!

ユーノはそっちに居るのか!

声の方向へ走る。

声が近づく度に向こうの状況が分かってきた。どうやら誰かがユーノを庇っている?ようだ。

 

「はぁ…はぁ…えっ?朱莉ちゃん…?」

 

現場に着いてみれば案の定ユーノを憎々し気に睨む銀髪オッドアイたちと、

ユーノを抱きかかえて数え切れない数の魔法陣を展開する天野朱莉の姿があった。

 

 

 


 

あーぁ、何でこんな事になっちゃったのかなー。

ユーノ君が転生者ってだけでここまで怒らなくても良いのにねー…

 

ともかく、天使としての役割は果たさなくては!

 

転送魔法で駆けつけてみれば、動物形態のユーノ君に魔力刃を大量に飛ばす銀髪オッドアイ君たちの姿が…

 

…彼らは過激な行動に出そうだからって隣のクラスに入れられた子たちですねー。

やっぱりこういう行動に出てしまいましたかと思ったものですが…

よくよく見ればあの魔力刃、ちゃんと非殺傷設定が付与されてますねー。

 

酷い罵声こそ浴びせていますが、頭の中に冷静な部分はちゃんと残っている様子。

ここはユーノ君を抱えてー…まぁ多重防御の魔法で問題ないでしょう。

 

結界魔法陣展開ー!っと。一先ずこれで話し合いは出来そうですねー。

 

 

 


 

くそっ!ユーノの奴が転生者だと分かった以上、なのはと簡単に合流させる訳には行かねぇ!

朝食も摂らずに家を出て飛翔魔法を使う。

こんな時は親無しパターンの転生者で良かったと思える。

 

神様から貰った特典で俺の魔力は既にAクラス魔導士のそれを優に上回っている。

距離は結構あったが、10分しないうちにユーノもどきの居場所に到着できた!

 

ユーノもどきはのんきに寝ている…いや、狸寝入りだなコイツ…!

 

ユーノもどきの傍に魔力刃を飛ばして警告する。

非殺傷設定はつけてあるが、それでも慌てて飛び起きたそいつに尋問する。

 

「てめぇ…ユーノじゃねぇだろ?いったい何を願ってそうなったんだ?ア"ァ"!?」

「いぃっ!?」

 

案の定逃げ出したユーノもどきを追撃するが、的が小さい事と草むらの中に逃げて行った所為でなかなか捕まらない。

逃げている最中も念話で助けを求め続けているが、その間もこちらの増援が増えていく。

 

最終的に1vs7まで増えた時は流石に卑怯だと思ったが、全員非殺傷設定は付与してるようだしまぁ良いかと切り替える。

 

やがて二手に分かれてからの挟み撃ちが成功し、完全に包囲できたと思ったら…

突然聖祥の制服(うちの学生服)を着た女子生徒が現れてユーノもどきを庇いやがった!

 

「そいつを渡せ!そいつをこのまま逃がす訳には行かねぇ!!」

 

どういう防御力してるのか知らねぇが、7人がかりでも全然突破できる気がしねぇ…

どう考えても俺らと同じ転生者だ。

 

「おい、お前も転生者だろ!なんでそんな奴庇うんだ!」

 

仲間のうちの誰かがなんでそんな奴を庇うんだと問い始めた。

 

そうだ、同じ転生者ならそいつが何を考えてユーノになったのかなんて直ぐに解るはずだ!

ユーノはなのはと同じ家に住めるし、一緒の風呂にも入ってたはずだ。

流石に〇学生の風呂覗くのは犯罪だろう、ロリコンめ!畜生、俺もそう願えばよかった!!

 

「いやー、流石に話し合いも無しに一方的って言うのは、あんまりにもあんまりじゃないかなー?って思ってさー」

 

…あの妙な喋り方、確か隣のクラスの?

名前は…思い出せん。確かこんな目立つ行動をとるやつじゃなかったと思ったが…

 

「話し合い?何を話し合えって言うんだ!

 そいつはなのはに近付くためにユーノに成り代わったんだぞ!

 ユーノの立場ならなのはと一緒に住めるし、風呂にだって一緒に入れるんだからなぁ!!」

 

俺と同じ事考えてる奴が居るな。まぁ、誰でも思い浮かぶか。

 

「って、みんな言ってるけどー?

 実際のところどうなの?」

 

あの女子生徒がユーノもどきに問いかけている。

ふん、どうせ下心全開で願ったに決まって…

 

「はぁっ、はぁっ…そんなっ、()()()はそんなつもりじゃ!

 はぁっ…そもそも『ユーノになりたい』なんて、願ってないっ!!」

 

 

 

えっ?

 

()()()

 

 

 


 

やっとあたしが攻撃されている理由が分かった。

そもそもあたしの事、男だと思ってたのね…

 

確かになのはの世界に女性が望んで来るってのは考えにくいかもしれないけど、

仮に男だったとしても()()()()()()使()()()追い詰めるのは酷すぎじゃない?

 

唖然として攻撃も止んだみたいだし、今のうちに言いたい事全部言っておこう…

 

「あたしが願ったのは『魔力』と、『無限書庫の本が読みたい』と、『なのは達の手助けがしたい』の3つよ!

 それで転生したらユーノになってたの!

 あんたがあたしの事勝手に男だと決めつけてただけなの!分かった!?」

 

人の事を覗き魔みたいに!失礼にも程があるでしょ!?

 

「お、お前が本当に女って証明できるのかよ!」

 

動揺しつつも聞いてくる。実際痛いところだ…

自分の心の性別を証明するなんてどうすれば良いのか分からない。

 

「そうだ!この場を逃れるために女言葉を使ってるだけじゃねぇのか!?」

「そうだ!証明する方法なんてねぇだろ!!」

「じゃあ、あんたはどう説明すれば納得するのよ!!」

 

このままじゃ平行線だ…なにか、方法を示さなきゃ…

 

 

 

「はぁ…はぁ…えっ?朱莉ちゃん…?」

 

この声は!

身をよじって、助けてくれた女の子(アカリちゃん…で良いのかな?)の肩から後ろを見るとそこに居たのは…

 

「あれー?なのはちゃんじゃーん」

 

高町なのはだった。

これで何とかなるかもしれないと安堵したところに、なのはの後ろからあいつの分身が大量に…!

 

「なのはっ!!後ろ!!」

 

 

 


 

「なのはっ!!後ろ!!」

 

後ろ?

振り向くとここまで一緒に来たオッドアイ達が唖然としている。

 

「おい、あいつって天野…だよな…?」

「えっ、強くね?どんだけ固いんだよ…」

「朱莉ちゃん転生者だったのか…タイプだったのに…」

「あきらめんなよ、チャンスはいくらでもあるさ…」

 

なんか理由は様々なようだが特に危険は感じない。

 

「後ろにあいつの分身が!!」

 

『あいつ』と指差しているのはユーノに攻撃していたと思われる銀髪オッドアイ達…

あぁ、もしかして大量の銀髪オッドアイ達を分身魔法と勘違いしているのか?

 

「えっと…」

 

何も言えねぇ…言われてみれば魔法あるんだからそう考えた方が自然なんだもの…

 

「なぁ、なんか今俺たちすげぇ失礼な事言われたんじゃね?」

「言うなよ、考えないようにしてたんだから…」

 

銀髪オッドアイたちに『同じ顔』と言うのはうちの学校ではある種のタブーとされている。

理由は見ての通り、凄いヘコむからだ。

そして、それはユーノを攻撃していた連中にも言えた事である。

 

「もしかして俺たち、分身って思われてたのか…?」

「道理であんた『たち』って呼ばない訳な…」

「俺、これでも個性出そうと頑張ってるんだぜ…?」

「諦めろよ、全員バリアジャケットが黒一色の時点で個性の主張は無理なんだよ…」

 

これは…フォローしておいた方が良いよな?

 

「えっとね、信じてもらえないかもしれないけど…

 この人たちは見た目は似ているけど、みんな別の人で…」

 

えっと、結構これってセンシティブな問題だから言葉選びに気を遣うなぁ…

 

「こっちのみんなはクラスメイトの子たちで、そっちのみんなは隣のクラスの子たちなの!」

「え!?嘘でしょ!?」

 

この人結構正直にもの言うなぁ…

 

「なのは…まさか俺たちのこと見分けてくれて…?」

「まじかよ…俺たちだって時々間違えるのに…」

「隣のクラスでも覚えてくれるなんて女神かよ…」

 

ごめん、見分けはついてないんだ…

とりあえず事情はユーノの人にも伝わったのか…

 

「えっと、ごめんなさい。

 これに関してはあたしが悪かったわ。」

 

しかたないよ。殆ど目の配色で覚えるしかないんだから。

 

「よく見ればあんたは鼻が少し小ぶりね。

 そっちのあんたは眉の形がすっきりしてるし…」

 

…えっほんと?言われて見てもよくわかんない。

だが、彼女(?)はそんな特徴を次々言い当てて区別出来ているようだ。

 

「あいつ、初対面で俺たちの顔を見分けて…」

「まじか、涙出てきた…」

「俺のデバイスだってたまに間違えるのに…」

 

なんか隣のクラスのオッドアイ達が凄い感動してる。

 

「なぁ、あいつ良い奴なんじゃね?」

「もう性別とかどうでもいい気がしてきた…あいつなら一緒の風呂とか問題ないだろ」

「外見ユーノだろ?俺、行ける気がするわ」

 

何がだよ落ち着けよ。

なにはともあれ険悪な雰囲気は一気に霧散した。

一人だけ道を外れそうなやつもいるが、問題は解決したと言って良さそうだ。

 

「その…ユーノ、さっきは悪かった!お前を疑ったりして!

 俺の名前、『神原 剣治(かんばら けんじ)』って言うんだ、よろしくな!」

「俺も、悪かった!

 俺は『神林 龍之介(かんばやし りゅうのすけ)』!何かあったら力になるからな!」

「俺が間違ってたわ、やっぱり最初から相手を疑ってかかるのは駄目だよな…

 俺の名前は『神宮寺 雷斗(じんぐうじ らいと)』。困ったことがあったら遠慮なく相談してくれ。」

「さっきはどうかしてた!マジにゴメンな!?

 こんな状態で言うのもなんだけど、俺の名前は『神楽坂 英雄(かぐらざか ひでお)』ってんだ。

 これからはお前の力になるから、許してくれないか?」

「なんていうか俺、ユーノの事誤解してたよ。

 …俺は『神無月 蒼魔(かんなづき そうま)』。

 その、友達からよろしく。」

「正直まだ迷ってるところはあるけどよ…あんたが良い奴ってのはスゲェ分かった。

 …『神田 龍二(かんだ りゅうじ)』。よろしくな!」

「俺、『神場 虎次郎(かんば こじろう)』。

 …さっきは、悪かった。」

 

名前の『神』率高いなオイ…

もうあいつらの中では性別関係なく『いい奴だから大丈夫だろ』って事になったらしい。

見分け付くだけでそんなに変わるか?…俺も名前覚えてみようかな、保身の為にも。

 

「…はぁ、もう良いわよ、誤解も解けたみたいだし。

 問題は…」

 

ん…俺?

あっ、原作崩壊の事か。

 

「あぁ、そうだったな…俺達、普通に空飛んでるし…」

「やっちまったな。完全に頭に血が上ってた…」

 

どうしよう、俺もなんか言葉を絞り出さないと…

 

「やー、なのはちゃんに知られちゃったかー。」

 

朱莉!ナイスパス!

 

 

 


 

何とか話し合いで解決できたようで何よりだねー。

ただ、見た目かぁ…結構本人たちには深刻な問題みたいだね。

 

顔立ちはもう変えられないけど、固定されちゃってるバリアジャケットのデザインくらいは神様の方からサポートしてくれるように伝えておこうかなー。

 

っと、原作の流れが変わっちゃった事に慌ててるのかな?

別に原作の流れ通りに進めないといけない訳じゃないんだけどねー。

 

じゃあ最後に助け船、出してあげちゃいますかー。

 

「やー、なのはちゃんに知られちゃったかー。」

 

「朱莉ちゃん、これって何なの?」

 

おーおー、嬉しそうな表情が隠せてないなー?

まぁ、みんな魔法を知った高揚と捉えてくれてるみたいだし問題ないでしょ。

 

「まー、見ての通り魔法ってやつだよー。

 この子が見せた夢とか、助けを求める声なんかも魔法の一部なのさー。」

「この子も魔法使えるの!?」

「この子だけじゃないよー?

 この子の声が聞こえたのなら、なのはちゃんだって使える筈さー。

 ね?えっと、ユーノ君?」

 

わー、なんて自然な流れだろー?これでなのはちゃんにレイジングハートが渡せるぞー?

 

「えっと、そう…だよ!

 僕はユーノ。君…たちが僕の声を聴いて来てくれたんだね!」

 

おやー、一応男の子の口調は続けるみたいだね。

さっき素の話し方してたのを聞かれてたと思ったけど…まー良いか。

 

「僕はこの世界に、『ある探し物』の為に違う世界から来たんだ…」

 

これで、一応原作の始まり始まり~…かな?

 

 

 




難産でした。
特に銀髪オッドアイ達の名前に苦労しました。

転生物を読んでると『神』『剣』『龍』『虎』と言った文字が苗字に付きがちな気がしたので、
その辺を意識してます。

今回名前が出たのは隣のクラスの転生者ですが、なのはのクラスも大体同じ感じですね。

ユーノの中の人は女性です。
前世でメイク関係の顔をよく見る職業に就いていた為、銀髪オッドアイ達の見分けがつきました。
性格は普段は温厚ですが、戦闘になると結構物騒な口調になりがちです。
ゲーム等も結構やるタイプでしたが、ゲーム中の語彙は友達から見ても「元ヤンかな?」と言うくらいには物騒でした。

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