今回はあまり重要な伏線とかは無いです。
大体普段こんな感じに過ごすんだなーって感じの回ですね。
世間を色んな意味で騒がせたジュエルシードの回収が終わった。
いよいよフェイトとの決戦を翌日に控えた今日は、体を休めるのにはお
「なぁ、見ろよ神谷! これ…どう見える!?」
バーベキューの準備をしていると後ろから声がかかったので振り向くと、何やら銀色の魔力弾のような物を持って走ってくる銀髪オッドアイが一人…
「ん…神場か。どうも何も普通の魔力弾に見えるが…まぁ、お前の事だから新しく作った魔法か何かか?」
コイツは特典で『魔法を作る』と言う強力な能力を貰っているのだが…どうも魔法の作成はイメージがしっかりしないと上手く行かないらしく、時たまこうして出来た物を見せに来てくれるのだ。
「おぅよ! 手…出してみ?」
「こうか?」
「そそ…で、これをこう置くと…どうだ!?」
俺が差し出した手の上に
「…なんか、生暖かくてぬめぬめしてるな…ナニコレ、魔法?」
「魔法創造の応用でさ、魔力変換資質を再現できないか? って思って…やって見た。」
「…おぉ、なるほどな。で、これ何?」
「一応…水?」
水…コレ、水か? なんか生暖かい卵白の様な手触りと、スポンジボールの様な弾力が実に不愉快なんだが…いや、そもそも…
「水って魔力変換資質に入るのか? あれって炎熱とか電気とか、あくまでエネルギーだから出来るんじゃないのか?」
「やっぱりそう言うもんなのかな…? いや、俺もなんか触ってて妙に気持ち悪いなって思ってはいたんだよ。」
「そんなもん俺に持たせるんじゃねぇよ!?」
思わず地面に叩きつけると謎の物体は『べちょっ!』と言うあまり耳に良くない音を立てて半分ほど潰れると、やがて溶け始める。
「…」
「…」
「おま、何つーもん触らせてくれてんだ…ちょっと手ぇ洗ってくる…」
「お、おぉ…すまん。…俺も手、洗うわ。」
…これ、生態系に影響無いよな? そんな事を考えながら二人並んで川で手を洗っていると…
「ん…? 何やってんだお前ら?」
「…神崎か? お前こそどうしたんだ? さっき釣りに行くって上流に向かったばかりだろ?」
「いやー、餌を忘れててさぁ。虫でも良いんだろうけど、せっかく用意した釣り餌使わないのも勿体無い気がして…」
「釣り餌ってぇと、お前のバッグか。アレならテントの奥に纏めてあるぞ。」
「サンキュー!」
そう言って俺達が来た方…テントの方に向かう神崎。…神崎か、そう言えばなのはと最初にまともに話した時、アイツと間違えられたんだったな…
今となっては懐かしい思い出だ。
「…うわ、なんだコレ!」
…今の声、神崎か?
「…あー、アレか。」
見るとさっき神場が出した魔法っぽい何かに触ろうか触るまいかで葛藤する神崎が見えた。
「神場、アレどうする気だ? ここに置いて行くのも不安なんだが。」
「一応アレも魔法なはずなんだけどなぁ…全然消える気配が無いんだよ。なんかバグったかな?」
「…まぁ、最悪の場合は神宮寺の『王の財宝』に…」
「他人の能力をゴミ箱代わりに使うんじゃねぇ。」
「うおっ!? 神宮寺!?」
完全に今の話を聞かれたらしく、意外に温厚な神宮寺も不機嫌そうな声色だ。
「一応言っておくがバーベキューのゴミは各自で持ち帰れよ?」
「大丈夫大丈夫。解ってるって。」
「そう言えば神宮寺は何でこっちに? 向こうでみんなと泳ぐんじゃなかったのか?」
「…のど乾いただけだ。」
「バッグならテントの奥な。」
「おぅ。」
神宮寺がテントに向かおうとした時、戻ってきた神崎と鉢合わせになる。
「…ん? 神宮寺も来たのか。」
「神崎? …あぁ、釣り餌忘れたのか。」
手に持っているのは…釣り餌が入ったビニールと…
「そう言う事。あ、これ持ってみ? なんかおもしれー感覚するぞ。」
「…なんだそれ、魔力弾か? なんで半分溶けてるんだよ…」
アレの感触を面白いと表現できるコイツはある意味大物かも知れん。
「まぁまぁ、手ぇ出してみ?」
「やだよ見るからに気持ち悪いし。」
半分溶けた銀色の何かだからな…神宮寺の反応も別におかしくは無い。
「えー…ったく、全部使っちまうぞ?」
「使えば良いだろーが。」
「ノリの悪い奴め。」
そう言って神崎は例の何かを持ったまま上流の方へ…
「…待て待て待て待て待て!」
「なんだよ!?」
立ち去ろうとする神崎の肩を慌てて掴んで制止する。
いや、『なんだよ』じゃないが!? 何でお前はそんな不思議そうな表情が出来るんだよ!? そっちのが不思議だわ!
「お前、まさか
「? 別に良いだろ。なんかよく釣れそうだし。」
「それ後で食うんだぞ!? 分かってんのか!?」
「…んー、大丈夫じゃねぇか? 魚だって普段は虫とか食ってるんだぞ?」
「虫はまだ食物連鎖の範囲だろうが!
実験中の魔法なんて得体の知れないものを腹に運んで溜まるか!
「マジか。神場、後でもう2,3個増やしてくれ。」
「お前頭おかしいのか!?」
「ホラよ。」
「気軽に増やすんじゃねぇ!!」
処理に困るんだよ!
久しぶりの純粋な休日だってのに訓練よりも疲れるのはなんでだ!?
「フェイトー、そっち読んだらあたしに回しておくれー」
アルフの声に首肯で返す。
今俺は溜まりに溜まった漫画を消化しながら、なかなか充実した休日を送っている。
そう言えばこうしてのんびり漫画を読むのも久しぶり…いや、今生では初めてか。ずっとジュエルシードや魔法の訓練を優先していたからな…こう言う休日があっても良い。
今読んでいるのは冒険要素が強いバトル漫画だ。当たり前だが前世では聞いた事の無いタイトルで、主人公の青年が宇宙をかける旅の中でいざこざを解決したり、未知の神秘に触れたりしながら親友の仇である宿敵メイガンを追うと言う王道ストーリーだ。
…と、この巻は終わりだな。
「アルフ」
「待ってました!」
次は…これが最新刊か。これを読めば最新の話題に着いて行けると言う訳だ…話す相手は居ないが。
…
――物語が進み主人公が敵対する組織の研究者…マルクスの生み出した次元の裂け目に呑み込まれると、それまでの雰囲気とは全く違う光景が広がっていた。
『ここは…マルクスの奴は!?』
機械に囲まれた部屋から一転、薄暗い森の中に放り出された主人公…ハンスは周囲を見回すがマルクスの姿は無い。
奇襲を警戒するハンスの耳が、木々の揺れる微かな音を捉え振り向くと…!
『あなた…変わった服を着てるのね? どこから来たの?』
「うん…?」
――物語が進むにつれて明らかになる事実の数々…! なんと、ここは
「…」
――だが主人公は勿論魔法が使えない…そこでこの世界で魔法が使えるメカニズムを調べると、なんとその力の源泉は地中深くから採掘される
「…」
――魔法の石を手にすれば、宿敵であるメイガンとの戦いを有利に運べる! ハンスは石を求めて森で知り合った少女を連れて冒険するが、魔法の石は災厄をも齎す両刃の剣!
「…」
パクっとるやん。
…いや、前世でも流行の時事ネタを漫画が取り入れる事は珍しくはなかった。話題の人物やイベント、時には一発屋の芸人や別の漫画のネタのオマージュ等、漫画の表現は意外に自由なのだ。
であるならば、最近巷を賑わせている
だが、まさかのレギュラーキャラ化は流石に少し恥ずかしい物がある。実際、映像加工のおかげで違う所もそれなりにある。細かい装飾だったり、目つきだったり…性格に至っては『好奇心旺盛』で『お喋りで』主人公を『ぐいぐい引っ張る系』と言うように全然違う。
だが、関係者が見れば一発で俺が元だと分かってしまう。なぜなら…
「バルディッシュ…殆ど同じ…」
「えっ、フェイト!? 最新刊で何があったんだい!?」
バルディッシュはあくまで武器として捉えられており、その特徴的な先端は映像加工のモザイクからはみ出ていたのだ。結果としてこれは8割がたバルディッシュそのものであり、それを振り回して
「うぐぅ…」
「フェイト!? 気になるじゃないか!?」
最新刊の最後はやはり同じ世界に来ていたマルクスの噂をハンスが聞きつける所で終わっている。
漫画はこれから『魔法世界編』の佳境に入るのだろうが、元ネタの騒動はもう直ぐ決着である。
「この漫画のこれから…色んな意味で楽しみ。」
「フェイト! 次巻プリーズ!」
アルフは例の少女が登場した瞬間に噴き出していた。
「…そう、魔法の石はもう全部回収されたのね。」
「うん…結局、女の子が一人巻き込まれちゃったんだけど。」
「でも、その子ももう大丈夫なんでしょ? なのはちゃん達もみんな頑張ってくれたんだし、きっと感謝してくれてると思うよ!」
「ありがとう、すずかちゃん。」
たった一日だけど、平和な時間が取れた休日…俺はアリサとすずかと一緒に羽を伸ばしていた。
明日はジュエルシードの行く末を左右する決戦の日。訓練は今まで欠かさなかったし、作戦も練った。…後は明日に向けて気力を満たすだけ。人事を尽くして天命を待つと言う言葉があるように、今はただ待つ時なのだ。
久しぶりに色々な事をして遊んだ。すずかの家のゲームで遊んだり、お茶とお菓子を囲んでのんびり話したり…そんな楽しい時間は早く過ぎて、時刻はもう夕方。
門限が迫っている事もあって、そろそろ帰ろうと言う時だ。
「明日、全部終わるのよね?」
アリサが口を開き、真剣な目で俺を見る。
「うん…全部終わらせるよ。ユーノ君の為にも、絶対に。」
「…無事に帰って来なさい。最悪の場合は勝てなくても良いから、絶対に無事に帰って来ること!」
原作を知っている筈の
それでも、例え危険な戦いでも『高町なのは』ならきっと…
「…うん。でも、私も負けられないから…負けたくないから、全力でぶつかってくる。きっと、あの子も同じ気持ちだから。」
いや、絶対に妥協はしない。逃げないし、一歩も引かない。最後まで全力で戦うだろう。
「そうよね。あんたはそう言う子よね…」
そう、『高町なのは』はそう言う子なのだ。
「…そう言えば、私達その子の事全然知らないよね。…どんな子なの?」
「うーん…えっとね…強くて、真っ直ぐな子で…あ、そうだ!」
持って来たカバンの中を探る。
二人にも見せたくて持って来ていたのだが、出す機会も無く忘れていたのだ。
「こんな感じの子だよ!」
取り出したのは週刊少年誌の一つ。開いたのは最近急なテコ入れで評価がブレ始めた漫画『未来冒険王ハンス』の1ページ。
『ハンス! 次はあの店に行かない!?』
新規キャラの『フェイトの特徴を多く持つ女の子』が主人公の手を引き、初めて来た城下町をやや強引に引っ張りまわしているシーンだ。
「へっ!?」
「ふひゅっ!」
アリサの唖然とした顔と、すずかが吹き出しそうなのを堪える表情が印象に残った一幕だった。
リムジンで送ろうかと言うすずかのお誘いをやんわりと断り、飛翔魔法で俺はある場所に向かっていた。
今の時刻は18:24。今は行く必要はないけれど、なんとなくそこに行けば会える気がしたのだ。
「…やっぱり。あなたもここに来たんだ。」
「フェイトちゃん…うん。ここに来れば会える気がしたから。」
場所は海鳴臨海公園、昨日までの待ち合わせの場所…そして、明日の決闘の舞台となる場所でもある。
もう待ち合わせる必要はないのに、ここに来ればフェイトもここに来てくれる…そんな確信が何故かあった。
「…明日、この場所で今までの全てに決着が付く。」
「うん…」
「きっと…どっちが勝っても、私達が戦うのはそれが最後。」
「…うん。」
「私は、今出せる全部をあなたにぶつける。だから…」
「勿論私も全力で戦うよ。全力全開…私の出せる全てで。」
「うん…お互いに一切悔いが残らない様に。」
「どっちが勝っても、恨みっこ無し…だから、」
「…?」
「明日の戦いが終わったら、私達はきっと友達になれるよね?」
「…そうだね、きっとなれるよ。全部の決着を付けたら、きっと…」
そしてしばらくお互いに無言のまま海を眺めていた。
何か話さなければと思う一方で、何も話す話題が出て来ず…やがてなんとも居心地の悪い沈黙になって行く。
…ふと、一つ話題が思い浮かんだので話してみようかなと思った。
「そう言えば、『未来冒k』」
「明日はよろしく、またね。」
…逃げるように飛んで行ってしまった。
何か悪い事でも言ってしまっただろうか…?
今回は特に書く事も無いので…『未来冒険王ハンス』について即興で考えた設定でも書きます。(誰得?)
舞台は近未来。エネルギー銃とナイフ一本で宇宙を翔けるハンスの冒険を描いた物語。
人気度は掲載週刊誌の中では真ん中辺りを前後している感じ。
王道を外れない安心感と、戦闘における銃とナイフを使った駆け引きが魅力だった。
一方で真新しさに欠けているところがあり、簡単に言ってしまうと『ある程度先が読めてしまう』。
最近変わった担当編集に「時事ネタを取り入れてみてはどうか」と言われ、魔法の要素を取り入れてみたが、ものの見事に賛否両論。
「主人公の愛銃とナイフのみで困難を切り開く姿が好きだったのに」と言う意見と、
「先が読めなくなって色んな意味でスリル満点」と言う意見で割れた。
最近は担当編集と頭を抱えて色々考えているが、先の展開は作者にも分からなくなってしまい評価は徐々に落ちてきている。