やっぱりこういった決闘の決着があっさり付くと物足りないと思いますので、あと1話か2話続きます。
決闘の開始と共に動いたのはフェイトだった。
雷の尾を伸ばしながら一瞬で距離を詰めてくるその速度は、前回の戦いに比べて少し早くなったように感じる。
持ち前の速度を活かして確実に先手を取るのは、今までのフェイトの戦い方のセオリーであり基本戦術だ。
そして俺の基本戦術は…
≪
アホみたいに高い魔力による堅い守りと、一撃必殺の火力だ。…卑怯と言うなかれ、これが出来るのに決闘で使用しない方が寧ろフェイトに失礼と言う物なのだから。
≪
そしてフラッシュムーブの加速で俺もフェイトに対して突撃する。フェイトの想定したタイミングをずらし、カウンターを取るべくレイジングハートに魔力の光を灯す。
≪
「ハァッ!」
気合と共に振り抜いたレイジングハートは、しかしフェイトに届かない。一瞬の違和感。
フェイトとの距離が、縮まっていない。
フェイトはあの一瞬で進行方向を180度切り替えたのだ。…姿勢を変えずに。
そして振り抜いたレイジングハートがフェイトの代わりに捉えてしまったのは、移動方向が逆になった事でこちら側に伸びる雷の尾…魔力が変換された電撃はレイジングハートを通してプロテクションに守られた俺まで到達した。
体に走る衝撃と痺れに魔力の制御がおぼつかず、プロテクションの維持が出来ない!
「うぁっ!?」
「そこッ!」
当然この隙を逃すフェイトではない。
再び方向を180度切り替え、今度こそこちらに突撃してくる!
「…くっ!」
咄嗟に飛翔魔法を解除、同時に思いっきり仰け反る事でバルディッシュの一閃をギリギリ回避する! だが、フェイトの追撃は止まらない。一度は通り過ぎたその身を再度反転、鋭角に切り返し自由落下する俺に即座に追い付いてくる!
「ディバイン、シューター! …シュート!」
未だに痺れの残る腕で何とか照準を合わせ、ディバインスフィアを2つ放つ。日頃特に練習していたおかげで何とか放てた2つの光弾は、しかしあっけなくバルディッシュに切り払われ霧散…少し時間は稼げたものの、まだ少し足りない!
「っ! …レイジングハート!」
≪
飛翔魔法を再発動。ただし、飛ぶためではなく
「加速を…!」
少しだけで良い! 時間を稼げ!
「ディバインシューター、シュート!」
再び光弾を2つ射出。バルディッシュで切られる寸前に左右に別れ、挟み撃ち…一瞬バックステップのように戻ったフェイトに、2つ揃って切り捨てられた。
…だが、
≪
何とか魔法の制御が可能なまでに回復できた。海面すれすれで飛翔魔法を操り方向転換、再びフェイトと距離を取る。
再びプロテクションを纏った俺に追撃は無駄と判断したのだろう。フェイトは冷静にこちらの様子を窺っている。…正直危なかった。雷の尾を攻撃に利用すると予測できなかった俺の読みの甘さが招いた結果だ。
「…ふぅ。」
深呼吸を一つして気を引き締める。…今の一瞬だけでもフェイトの戦い方に変化がある事は十二分に理解できた。少なくとも突撃一辺倒ではない。下手に踏み込めば手痛いカウンターを貰う事だろう。
「バルディッシュ」
≪sir. Photon Lancer Multi shot≫
展開したフォトンスフィアは4つ…いや、体の影にもう一つ。計5つか。
「レイジングハート!」
≪
こちらもディバインスフィアをプロテクションの外に5つ展開すると、フェイトがフォトンスフィアを維持したまま突撃してくる。
だが俺はプロテクションを維持している。そしてもうレイジングハートを雷に晒す様なへまをするつもりは無い…フェイトはどうするつもりだ…?
「行くよ、バルディッシュ…!」
≪Photon Lancer…≫
…ここでフォトンランサーだと?
既に展開したフォトンスフィアはそのままに、新しく生成するつもりのようだが…それでプロテクションを貫くつもりなのか…?
≪…Occurs of Dimension Jumped!≫
「!?」
突如、目の前…
これは、まさか…ッ!
≪…fire!≫
「レイジングハート!」
≪
プロテクションを張ったままだと
直後、バリアジャケットのリボンを裂くように目の前をフォトンランサーが通り抜けて行った。
…次元魔法! 入口と出口を指定し、魔法そのものを
「バルディッシュ…ッ!」
≪Multi shot fire!≫
「レイジングハート!」
≪
無理な姿勢で回避した為、撃ち出されるフォトンランサーを回避できない。やむなくディバインシューターで相殺するが…
「ハァッ!」
「うっ、くぅ!」
≪
既に至近距離まで詰めてきたフェイトの連撃に次第に追い詰められていく…!
「ハッ!」
「…!」
フェイトがひときわ力強くラウンドシールドを攻撃した直後、回転しながら俺の後ろに回りこむ!
≪
すかさず右手でもう一つのラウンドシールドを展開し防ぐが、両手を伸ばした俺の目の前に既に回り込んだフェイトがバルディッシュを振りかぶる!
≪
フラッシュムーブで速度を得る。だが、回避の為じゃない!
≪
ここで退けばまた追撃を食らうだけ! だからこそ、ここは迎え撃つ!
「はぁぁっ!」
「…!」
レイジングハートとバルディッシュがぶつかった事で眩い光と衝撃波が発生し、俺達を包み込む。
この光の中で取る行動次第では、ここで負ける…そんな確信があった。
時間の流れが遅くなったかのように思考が加速する。
フェイトの姿は見えない、距離を取った? 次の手…多分攻撃。一番信頼しているであろう近接攻撃。…スパーク音…どこから…背後! フラッシュムーブはまだ持続している。回避を…いや、反撃!
引き延ばされた時間の中、一瞬で判断してレイジングハートに意思を伝える。
≪
即座に反転し振り抜いた一撃は、同じく振り抜かれたバルディッシュを捉える。
「…!」
「ハアァァァッ!」
そのまま力任せ…いや、
「うっ…!」
「レイジングハート!」
≪
「っく!」
追撃のディバインバスターは躱された…だが、まだだ! フラッシュムーブはまだ解除しない!
「まだっ!」
「なっ…!?」
回避直後のフェイトにこちらから突撃し、一瞬呆気にとられるフェイトにレイジングハートをさらに振り抜く!
≪
≪Defenser!≫
防御魔法で防がれるが、そこにさらに追撃の…
「ディバインバスター!」
「くっ!」
放たれた砲撃は、今度こそフェイトを防御魔法ごと捉えた! 今しかない!
「はぁぁ!」
ディバインバスターの出力を上げる。前回はこれが勝利の決め手だった…だが、やはり前回とは少し違うようだ。
≪Blitz Action≫
「…えっ!?」
微かに聞こえたバルディッシュの声に耳を疑う。ブリッツアクション…フェイトが使用することでフェイトに音を越える程の速度を与える魔法。だがその代償は大きく、フルスペックで活用する為には二重の防御魔法をかけなければ自らをその衝撃波で傷付けてしまう諸刃の剣。
…フェイトは防御魔法を一つしか使っていない。
「…フェイトちゃん…?」
砲撃が止んだ時、フェイトは俺の目の前から忽然と姿を消していた。
今回の決闘は出来るだけ色んな魔法を使わせていきたいですね…全力全開って感じに出来ればなと思います。
以下捕捉
・Photon Lancer Occurs of Dimension Jumped
フェイトがプレシアから教わっていた次元魔法。
と言ってもプレシアのように自由自在に次元世界を超える事はまだ出来ず、発生する座標を「同じ次元世界」の「眼に見える」範囲に飛ばす事が現状の限界。
サンダーレイジの様な強力な砲撃を飛ばす事もまだ出来ない。
反動も魔力の消費量も大きい為多用は出来ないが、今回の決闘ではなのはのプロテクション対策として使用した。
習得に合わせて魔力量も鍛えており、1発撃っただけでは戦闘に支障をきたす事は無い。
・Flash Impact
レイジングハートに魔力を集め、物理的にぶん殴る事で魔力爆発を起こす魔法(?)。
射程の短さからか、絵面的な問題なのか、原作では一度しか使われていない。
レイハさん(マゾ)曰く「一番道具扱いされている感が出るので、お気に入り」とのこと。
この決闘でのレイハさんは、この時点で内心かなり大満足している。