転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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決闘②

「ディバインバスター!」

「くっ!」

 

なのはのディバインバスターをディフェンサーで防ぐが、元々ディフェンサーの防御力はそこまで硬くない。真っ向から防いでも持ち堪えられないので、激流に身を任せるように後退する。

 

「はぁぁ!」

 

なのはの声と共にディフェンサーにかかる圧力が跳ね上がる。ディバインバスターの直径も膨れ上がり、俺を丸々呑み込める程の太さにまで増大…俺は、直感的に好機と判断した。

 

「ごめんねアルフ、リニス。()()()()()()使うよ。」

≪Blitz Action≫

 

構築された魔法が、俺に更なる速度を与えてくれる。跳ね上がった移動速度は音速を余裕で超え、俺自身にも刃を向ける。…だがそれは、あくまで()()()()()()()()()だ。

ディフェンサーを維持したまま、音速すれすれでディバインバスターと同じ方向に飛翔する。以前この魔法で大怪我をした後の練習で大体どれくらいで飛べば音速を超えるのかは掴んでいる。幸いな事にディバインバスターの速度は音速には到達していなかった為、直ぐに抜け出せた。

そのまま速度を維持したまま90度上方へ方向転換、雲に姿を隠してブリッツアクションを解除する。バク転の要領で体勢を立て直して遥か下を浮遊するなのはの様子を見れば、計算通りに俺の姿を見失っているようだ。

 

今のなのははプロテクションを纏っていない。先ほどの次元魔法を警戒しているのだろう。だからこそ、この魔法が意味を成す。

 

「フォトンランサー…」

 

雲の中にフォトンスフィアを5個、待機状態のまま隠して静かに移動する。なのははまだこちらには気付いていない様だが、その分周囲を警戒している。

…ファランクスシフトと言う手段もあるにはあるが、あの魔法は制御に集中が必要な為こちらが自由に動けず、次元魔法を撃つ余裕もない。プロテクションを張られれば突破は難しく、リスクの方が遥かに高い。

使ってもせいぜい観戦している銀髪オッドアイ達が喜ぶだけだろう…ならば!

 

≪Blitz Action≫

 

音速ギリギリのヒット&アウェイが最善の一手!

 

 

 


 

 

 

姿を晦ましたフェイトの奇襲を警戒していたその時、突如としてざわりとした悪寒を感じ、直感に従い身体をずらす。

直後、鳴り響く雷鳴と身体を持って行かれそうな突風が奔る。後に残った雷の残光と、躱したはずなのに微かに感じる腕の痺れに、今の光がフェイトだと遅れて理解した。

 

「…っ! 速い…!」

 

振り向けば既に目の前に迫る雷光。

 

プロテクション(Protection)

 

咄嗟に張ったプロテクションで間一髪攻撃を防ぐ事に成功するも…

 

「レイジングハート! 解除!」

オーゥラァイ(All right).≫

 

一瞬目の前の空間が揺らいだ為、即座に解除する。すでに揺らぎは無くなったが、これでは迂闊にプロテクションを張る事も出来ない!

攻撃に備える為に振り向くと、フェイトもこちらに向かって方向転換をするところだった。

どうやら流石のフェイトもあの速度のまま直角に曲がる事は出来ないようで、緩やかなカーブを描いている。…先ほどの切り返しに比べて若干タイミングが遅いのは、一時的とは言え次元魔法にリソースを裂いたからか? 隙と呼ぶにはあまりにも狭い空白だが、活かすとしたらこれしかない。

 

「シュート!」

 

簡易的な砲撃魔法を放つが、やはりと言うか最小限の動きで躱されて接近される。

 

ラウンシール(Round Shield)!≫

 

今度はラウンドシールドで防ぐがシールド越しに感じる圧が強く、腕が弾かれそうだった。どうやら完全に防ぐには受け流す必要があるようだが…問題はそんな練習はしていない為、ぶっつけ本番と言う事だ。

振り返れば、やはり既に目の前に迫る光。

 

ラウンシール(Round Shield)!≫

 

受け流す為に斜めに張ったラウンドシールドは、方向を間違えたのか先ほどよりも強い衝撃を感じた。咄嗟に飛翔魔法を解除。

結果として俺は大きく弾き飛ばされ、その目の前を戻ってきたフェイトが()()()()()。…なるほど、どうやらぶっつけ本番は向こうも同じだったようだ。

 

 

 

 

 

 

プロテクション(Protection)

 

 

 

「…え?」

 

突如として張られるプロテクション。俺の意志ではない。

そして、一瞬の後に感じる()()()()()()()…オートガード!?

思わず振り返るが、フェイトはそこにはいない。当たり前だ、先ほど俺の目の前を通り過ぎたばかりなんだから。

恐らくはさっき姿を晦ませた時に予め用意していたんだろう…フェイトの攻撃はただでさえ目立つ。それが上手く注意を引きつけて…

 

そして目の前に発生した揺らぎから、フォトンランサーが飛び出してくる。正確無比なその弾道は、完全に顔面直撃コースだ。

 

プロテクションの解除は間に合いそうもない。回避は不可能。

 

揺らぎから飛び出したフォトンランサーが飛んでくるのが、やけにゆっくりと見える。思わず顔を庇う為に腕が動いた。

 

 

 

そして…プロテクションの中で、爆発が起こった。

 

 

 


 

 

 

なのはのプロテクションの内部で爆発が起こるのを確認し、決着をつけるべく追撃に向かう。

なのはは元々タフネスに優れた魔導士だ。今の一撃では完全には倒せていない可能性が高い。だがプロテクションが解除された所に追撃すれば、流石のなのはも墜ちるはずだ。

 

目論見通りに解除されたプロテクションから、爆発によって発生した煙が漏れ出す。

俺は迷う事無くその煙に突っ込み…

 

 

 

「…くっ!? なんで…!」

 

バルディッシュを振り上げたところで、バインドによって拘束された。

ありえない事のはずだった。俺の魔法は全部雷の性質変換によって攻撃した相手を一時的に麻痺させる。それは例えなのはにだって例外なく同じ効果を及ぼすはずだ。生物である以上…いや、例え機械相手でも動きを止められる。なのはは感電し、飛翔魔法の維持も難しい状態になるはずだったんだ…なのになんで…

 

「どうして、動けるの…?」

 

何でなのはがレイジングハートを構えていられるんだ…?

 

 

 


 

 

 

至近距離で発生した魔力爆発の影響で上半身のバリアジャケットはボロボロで、インナー部分が露わになってしまった。それでも俺自身には軽い痺れ以外に大きな影響は無く、魔力も体も問題無く動かせる。

…さっきのあの一瞬、正直完全に敗けたと思った。

一瞬の判断だった。顔を庇う為に腕を動かした瞬間、思ったのだ。

 

このフォトンランサーを魔力弾で相殺できれば、フェイトの虚を突く事が出来るのではないか? …と。

 

咄嗟に放った魔力弾は構築が甘かったのか完全な相殺こそ出来なかったが、フォトンランサーの威力の大部分を削ってくれたのだ。

後は発生した煙にバインドを隠し、追撃に来るであろうフェイトを待った。

その結果が今、目の前にある…フェイトはバインドで固定され、俺は決定的なチャンスを得た。

 

更に上空へと飛翔し、フェイトとの距離を大きく開ける。この魔法はクロスレンジでは撃てない事が悩みだな。

 

「行くよ、フェイトちゃん! 正真正銘、全力全開…私の、最後の切り札!」

 

足元に広がる大規模な魔法陣。ポエム魔法(ディバインクラッシャー)のそれとは違い、ちゃんとした魔力式で構築されている。

目の前に巨大な環状魔法陣が展開され、星屑のようにこの一帯に散らばった魔力の残滓が、流星のように魔法陣の中心に収束されていく…

 

 

 


 

 

 

見上げる先に巨大な星が形成されていく。

星から感じる魔力の圧と光量はどんどん高くなっていき…俺の記憶の奥底から、本能的な恐怖を引きずり出した。

 

「…くっ! …ぬぅっ!!」

 

もがいても、魔力を放ってもバインドは壊せず、俺の眼は光に釘付けになって行く。

やがて光の膨張は止まり、その魔法が放たれる。

 

 

 

「スターライト…ブレイカー!!」

 

 

 

…鮮明に呼び起こされた、俺の中に残っていた記憶(トラウマ)

 

雲一つない青空、あらゆる計器が『異常なし』と示していた時に唐突に訪れた()()()()()

 

…前世の、最期の記憶。

 

 

 

眼前に迫った光の壁は、あの時の光景に酷似していた。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"!!!!」

 

 

 

光は俺の意識まで真っ白に染め上げて…全ての決着がついた。




一応もう一話決闘に使う予定だったのですが、内容が流れ的に良くなさそうだったので若干プロットとは違う結果に。

フェイトさんの前世最期の光景は完全にトラウマになっています。
正真正銘『滅びの光』をまともに見てしまったので…


フェイトさんは生きてますよ。あくまで魔力ダメージなので。…あくまで。


あと、前世の地球が滅んだ理由もSLBじゃないですよ。念の為。

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