転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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~前回のあらすじ~

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"!!!!」


動き出す黒幕

「何と言う…規格外の破壊力…」

「ふぇ…フェイトちゃん、生きてるかな…?」

 

動揺を隠す事も無く言葉に出すクロノとエイミィに対して、俺達転生者はアースラのモニターに表示された光景に言葉が出ない。

…この結末は見た事がある。SLBと言う最終兵器だって、この世界に産まれる前から知っていた。

だが、()()()()()()()()()()()()にこれほどの差があるとは知らなかった。

 

…まぁ、端的に言うと…めっちゃ怖いです。

 

「何あれコッワ…」

「一瞬、海に…大穴が…」

「非殺傷設定って、本当に…非殺傷なんだよな…?」

「結界がまだ残ってるのが奇跡だな…」

 

やがて、SLBの光が収まり…気を失ってなお、()()()()()()()()()()()()のフェイトが映る。

 

「…ヒェ…」

「磔のまま、アレを…」

「バインドの強度から見ても、絶対なのは原作より強いじゃん…」

「まさか、俺達との特訓が…なのはを魔王に…?」

「寧ろフェイトよくあそこまで戦ったよな…」

バリアジャケット(魔王の鎧)の上半身を破壊したってかなりの大健闘だろ。」

「…なんか今『バリアジャケット』に変な意味込めなかった?」

 

なのはがゆっくりとフェイトの傍に降り、バインドを解除。フェイトをお姫様抱っこの状態で浮遊している。

 

「…これって、気絶した姫を魔王が攫うシーンだっけ?」

「介抱してるだけだから…」

 

軽口を言っているが、結構内心ガクブルだ。元々そう言うつもりは無かったが、敵対してなくて本当に良かったと思う。

 

やがて目を覚ましたフェイトがふらつきながらも飛翔魔法で浮遊し、なのはと小声で二言三言会話した後の事だ。

バルディッシュがジュエルシードを吐き出した瞬間…

 

「…? あれ、クロノくん…この反応って…?」

「…なっ! これは、まさか!?」

 

…なんだ? クロノ達の様子が慌ただしくなってきたな…

 

 

 


 

 

 

…正直、あそこまで怖がらせてしまうとは思わなかった。

俺の腕の中で気絶しているフェイトを見ながら、先ほどの絶叫を振り返る。

原作じゃフェイトは言葉も無くスターライトブレイカーに飲み込まれていたが、ここに来てまさかの大絶叫。恐怖の理由は間違いなくスターライトブレイカーだよな…目を覚ましたらせめて一言謝らないと…

 

「…ぅ」

「! フェイトちゃん、気が付いた!?」

「…あ、れ…? 私…」

「…フェイトちゃん?」

「え…? あ…」

 

なんだ? 様子がおかしいな…まさか、スターライトブレイカーがトラウマに…?

 

「…もう、大丈夫。 ちゃんと飛べるから…」

「でも…」

 

…正直大丈夫そうには見えない。表面上は平静を装っているつもりのようだが、顔が真っ青だ。

 

「大丈夫、勝負は…私の負け。ちゃんと約束は守るよ。」

「う、うん…」

 

そう言う事を言いたい訳じゃないんだが…

フェイトの様子がおかしいのが気になるが、本人が大丈夫と言っているので解放する。

少しふらついているが、本当に大丈夫だろうか? …一瞬そう思ったが直ぐに飛翔魔法は安定し、フェイトは目の前に危なげなく浮遊する。

 

「…バルディッシュ。」

≪…sir, Put out.≫

 

何処かモヤモヤした物を感じながらも、目の前に漂う6個のジュエルシードを回収するべくレイジングハートを構えようとしたその時…

 

「あ、空…」

「空…?」

 

フェイトの声につられて空を見上げれば、暗く渦巻く次元の歪みが目に入った。

 

「…アレって…」

「プロテクション! 急いで!」

「えっ? …うん!」

プロテクション(protection)

≪Round Shield.≫

 

「うぐっ…!」

 

途端にプロテクション越しに伝わる凄まじい衝撃。砲撃の威力は俺のディバインバスター程では無かったようだが…6つのジュエルシードが先ほどの次元の歪みに吸い込まれて行くのが見えた。

 

「フェイトちゃん、大丈夫!?」

 

フェイトに目線を向けると、バルディッシュを持っていない方の手…()()を掲げた姿が見えた。

…どうやら、フェイトの方には元々砲撃が飛んでいなかったらしい。

 

ママ…」

 

何事か呟いたようだが、雷の音が大きくて聞き取れない。ただ、妙な胸騒ぎだけが俺の心に残っていた。

 

 

 


 

 

 

「ジュエルシードが…!」

 

6個のジュエルシードが次元の歪みへと回収されて行く。…時の庭園の座標を手に入れるチャンスはここしかない!

フェイト・テスタロッサの行動の背景に、プレシア・テスタロッサが居る事は既に調べが付いていた。だが今までプレシアが何のアクションも起こさなかった為、時の庭園の座標をどうやって観測しようかと困っていたところだったのだ。

 

「座標の逆探知は!?」

「大丈夫、ちゃんと追えてるよ!」

「でかした! エイミィ!」

「ふふん、物質転送は追いやすいからね! もっと頼ってくれたまえ!」

「オペレーターは転送ポートを何時でも使えるように準備しておいてくれ!

 武装局員はポート前にて待機、直ぐに出られるように通達しろ!」

「「「了解!」」」

 

突如として現れた次元の歪みにアースラ内部は一気に慌ただしくなる。

…と言ってもアースラの職員はほぼ全員が銀髪オッドアイ(転生者)なので、心境を表すと「やっと来たか、プレシア!」と言った感じだろうか。

 

「後は…なのはとフェイトに通信を繋いでくれ。」

「ほい来た!」

 

「なのは、フェイト。先ずは無事で何よりだ。」

『クロノくん!? ジュエルシードが!』

「大丈夫、ジュエルシードの行き先はこちらで追っている。とにかく一度、君達をアースラに転送させる。」

『フェイトちゃんも…?』

「あぁ、この一連の事件に関わっている事は明らかだからね。…とは言え、ここまで協力的に動いてくれたことも確かだ。一応行動に制限はかけさせてもらうが、拘束する事は無いと約束しよう。」

『うん…フェイトちゃん、それで良い?』

『…あ、うん。』

 

…フェイトの様子がおかしい事が気になるが、まぁ問題は無いだろう。こちらとしても大人しいに越した事は無いからな。

 

「じゃあ、二人の転送を頼む。」

「はい!」

 

フェイトが使用した魔法然り先程の砲撃然り、どうやら二人の関係性も原作とは随分違うようだが…スクライアの輸送船を攻撃し、ロストロギアを管理外世界にばら撒いた事は立派な犯罪だ。

観念してもらうぞ、プレシア・テスタロッサ!

 




フェイトさんの状況はもう殆ど察していると思いますが、正確な答え合わせは次回と言う事で…

前回のトラウマは実はがっつりシナリオに絡みます。
と言っても今回の為の伏線?ではありますが…

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