転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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マギア・レコードと言うアプリで5/1までの間、リリカルなのはのコラボが復刻中です。
良く動く必殺技や、新しく描き下ろされた専用の変身バンク等も力入ってますよ!
(新しく始めなくても動画を調べれば全部見れるって言うのは内緒だ!)


遅れて生まれてきた双子

アースラに転送された俺とフェイトはブリッジまでの通路を歩いていた。

時々すれ違う搭乗員達の様子は慌ただしく、緊張した表情が事件のクライマックスを再認識させる。

 

「フェイトちゃん…大丈夫?」

「…うん」

 

フェイトの様子はあれからずっとこの調子だ。ちゃんと俺の後について来てくれているが、ずっと考え事をしているように上の空で返答も一言のみ。こちらの言葉が届いているかも怪しい。

 

「ここだよ、フェイトちゃん。」

「…うん」

 

…これは聞こえてなさそうだな。扉を開ける前にフェイトの調子を戻しておいた方が良いかも知れない。そう思い手の平をフェイトの目の前でひらひらと揺らしてやると、ハッとした表情をした後にようやく俺と目が合った。

 

「ここは…?」

「やっぱりクロノくんの声も聞こえてなかったんだ…アースラのブリッジ前だよ。」

「アースラ…」

 

とりあえず意識はしっかりしたようなのでブリッジの扉を開けると、平常時とは違い慌ただしくパネルをタイプする音が響いてきた。

 

「フェイトォ~!」

「アルフ…」

「大丈夫だったかい!? 怖かっただろう、()()()()を正面から受ければ仕方ないよ! 恥ずかしがる事じゃない!」

 

部屋に入ると、早速アルフがフェイトに駆け寄り抱き締める。…あんな物って…いや、確かにあの絶叫を聞けばそう呼ばれても仕方ない気もするけどさぁ…

 

「あんた…高町なのはって言ったよね?」

「は、はい…えっと…スターライトブレイカーを撃ったのは…」

「…あんたは約束通りに1対1の決闘を守った。使われた魔法にケチ付けるのはお門違いさ…それぐらいあたしだって分かってるよ。あたしが言いたいのは最後の…雷の次元魔法さ。」

「次元魔法…」

「…薄々感づいてるとは思うけど、あれはプレシア…この子の母親の魔法だよ。約束を破っちまったのはこっちなのさ…済まないね。この子のバカ親がさ…」

「アルフさん…」

「アルフ…」

 

過保護な彼女の事だ。文句の一つや二つも出るだろうかと思ったが、アルフの口から出てきた言葉は謝罪だった。

原作であれほどプレシアを毛嫌いしていたアルフが、プレシアの事で謝るなんて…一体プレシアはどうなっているんだろうか…?

 

「…少し良いかな?」

「クロノくん?」

 

考えているところに、クロノから声がかかる。

 

「先ほどの次元魔法とジュエルシードの転送から、相手の…プレシア・テスタロッサのいる座標はもう直割り出されるだろう。」

「…待って…」

「…直解る事だから、包み隠さずに言わせてもらう。彼女にはロストロギアを管理外世界にばら撒いた事に加え、違法研究等複数の嫌疑がかかっている。座標を特定出来次第、踏み込む事になるだろう…」

「…お願い、待って…」

「フェイト…君はこの一件に於いて主犯と思しきプレシアの親族だ。だが、その一方で我々の方針を重視してくれた協力的な姿勢を考えると、何かしらの事情があるものとうかがえる。先ほど話した通り拘束はしないから、今は別室で…」

「待って! お願いだから、もう少しだけで良いから!」

「フェイト…?」

「フェイトちゃん…?」

「…話すから…全部、話すから。もう少しだけ…」

 

…これは、どう言う事だろうか? 思わず目線をクロノにやると目が合う。フェイトに詳しく尋ねようとした瞬間…

 

「…座標の特定できました! 映像来ます!」

「…済まないが、我々も仕事だ。事情については後でしっかり聴こう。」

「待って…! 私は…アリs…」

「…えっ!? 何この反応、逆探知…? 時の庭園から通信が来ます!」

「何だと…!?」

 

プレシアの方からアースラに…? 今プレシアの最優先目標はアルハザードへの道を開く事のはず。ジュエルシードの並列起動以外に優先する事なんて…

 

『ごきげんよう、時空管理局の皆さん。』

「プレシア・テスタロッサ…!」

 

モニターに表示された玉座に深く腰かけ、不敵に笑っている人物は間違いなくプレシア・テスタロッサ本人だった。

 

『そこに居るフェイトに集めさせたジュエルシード6個、確かに頂いたわ。』

「そのジュエルシードで、何をするつもりだ!」

『そうね…目的を話しても良いけれど、その前に一つ…フェイトに話があるわ。とても大事なお話なの。』

「フェイトに…まさか! エイミィ! 直ぐに通信を切って、武装局員を転送するんだ!」

「だ、ダメ! 通信が切断できない!」

「そんなバカな…! プレシア・テスタロッサ!!」

『大事なお話と言ったでしょう? …邪魔して欲しくないのよ。』

 

プレシアが話す内容…間違いなくフェイトの真実の事だろう。

だが、フェイトを絶望させるためにここまでするのか!? それほどにフェイトを憎んでいたのか…?

…フェイトが少しだけ声を弾ませながら話していた魔法の授業も、全てただ利用する為だったのか!?

 

「お前はフェイトを何だと思っているんだ!」

『貴方にももう予想はついているんじゃないかしら?

 私の事を知っているのなら…ね。』

「…っ!」

『フェイト、教えてあげるわ。貴女は私が研究の末に生み出した人造魔導士…

 貴女の持つ記憶は私の娘、アリシアの記憶よ。貴女は私の血の繋がった娘ではないわ。

 こうしてジュエルシードが手に入った以上、貴女は用済みよ。どこへなりと消えなさい!』

 

横目でフェイトの様子を窺うと、俯いて硬直しているのが分かった。

転生者とは言え、元々分かっていたとは言え、それでも肉親から拒絶されると言うのはやっぱり堪える物なのだろうか。…一瞬そう思ったが、どうも違うようだ。

見開いた目、固く結ばれた口元、小刻みに震えている握り締められた拳…フェイトが抱いているのは明らかに()()だった。

 

「…もう一度聞く。何故ジュエルシードを求める? どうしてスクライア一族の運搬船を襲撃し、ジュエルシードを管理外世界にばら撒いたんだ!?」

『忘れられた都…アルハザード。』

「…!」

『貴方も名前くらいは知っているでしょう?

 あらゆる魔法が究極の姿へと至り、叶わぬ望みは無いと謳われた伝説の都…』

 

プレシアが手を振ると、巨大な試験管の様なカプセルが映った。

中に浮いているのはフェイトと瓜二つの女の子…アリシア・テスタロッサの遺体だ。

フェイトは映像を見ると、見る見るうちに顔を赤くし、映像から目を逸らす。

 

『私とアリシアは過去を取り戻すの。

 この6つのジュエルシードで…この魔力を以て旅立つのよ!』

 

それだけ告げると映像は途切れた。

 

「勝手な事を…! エイミィ! ポートを開け、僕も出る!」

「わ、分かったよ! でも無茶はしないでね!」

「あぁ、分かってる!」

「クロノくん! 私も行くよ! このまま放っておくなんて出来ない!」

 

クロノとエイミィが話しているところに割り込む。

原作同様に時の庭園に乗り込むためだ。だが…

 

「なのは…いや、この件に関して君達は本来無関係だ。今はおとなしくしていてくれ。」

「でも…!」

「危険なんだ! ここから先は、正真正銘『命懸け』になる! 君がここで命を落としたら、僕は君のご家族にどう伝えればいいんだ!?」

「そ…それは…」

 

言葉が出ない。どう考えても現状クロノの言い分が正しいからだ。

あくまで一般人である俺には、この先について行くだけの動機が無い。

何とか説得する材料が無いか考えているその時、船が大きく揺れた。

 

「この振動は…!」

「ジュエルシードが6個全て起動しました! 次元震です!」

「プレシア…!」

「待って、クロノくん! 新しく多数の魔力反応! 何れもAクラス以上!」

「まずいわね…このままだと…!」

「魔力反応、さらに増大! 次元断層が発生する可能性があります!」

「クロノくん…!」

「…クロノ、ここは彼女の力も借りましょう。次元断層が発生すれば、彼女達の世界も危険に晒されるわ。」

 

そう、どっちみちこのままじゃ地球も危ない。

俺自身次元間の座標関係について詳しくはないが、原作で次元震が地球にも届いていた描写は確かにあったのだ。

 

「…分かりました。」

「クロノくん…!」

「ただし、先ほど言ったように君はあくまで一般人だ。

 作戦行動中は僕の指示に従ってもらう!」

「うん!」

「クロノ、私も後で現地に向かいます。それまではくれぐれもなのはちゃんの事をお願いね。」

「分かりました。なのは、先ずはフェイトを休憩室に…!? なのは! フェイトは何処だ!?」

「えっ!?」

 

見回すと、いつの間にかフェイトの姿が消えている。アルフも居ない!

…気のせいか、銀髪オッドアイも少し少ない様な…?

 

「もしかして、フェイトちゃん…」

「…くっ、時の庭園か!」

 

 

 


 

 

 

ママの言葉をフェイトの代わりに聞きながら、私は思った。

 

…ふざけるな。

 

あれだけ頑張ったフェイトを見て、何も思う所が無かったのか!?

見方を改めたからフェイトに魔法の授業を行ったのではなかったのか!?

魔法の授業の事をフェイトがどれだけ喜んでいたのか、気付かなかったのか!?

 

しかも最後のアレは何だ! 死体とは言え、私の裸体をこれだけの衆目の前に晒すなんて…それでも母親か!?

 

…ママはそんな私の内心に気付かないまま通信を切った。

このままママの思うようにはさせない。例え無理やりにでも連れ帰って、せめてフェイトと話をさせる!

 

≪神宮寺、聞こえる…?≫

≪…フェイトか?≫

≪…うん、そうだよ。≫

 

神宮寺に念話をしながらアルフに合図してこっそりと移動する。

幸いな事に、クロノはなのはと会話中でこちらの動きには気付いていない。

周りの皆も二人の会話に集中しているようだ。

 

≪…行くのか?≫

≪いつか言ってた協力…力を貸してくれるんだよね?≫

≪あぁ、力づくでもぎ取った権利だ。使わない手は無いな。≫

≪…時の庭園には機械兵が居ると思う。道を開いて。≫

≪それくらいならお安い御用だ。≫

≪ありがとう。じゃあ後でこっそりついてきて。通路の最初の角で待ち合わせ。≫

≪了解。≫

 

念話をしている間にブリッジを抜け出し、静かに少し歩いて移動する。

最初の角を曲がり、通路の淵にある斜めの壁の様な装飾の陰に身を隠すと、慌てて駆けて行くクロノとなのはの様子が見えた。

そのしばらく後に神宮寺が合流する。

 

≪来たぞ。…()()()()。≫

≪! …気付いてたんだ。≫

≪…はぁ。まぁ、半分はカマかけだったよ。

 何度か左利きになってたからもしかしてってな。≫

≪…フェイトじゃないと、嫌…?≫

アリシア()が大事なフェイト()の体を使ってまでする無茶だ。

 …フェイト()の為なんだろ?≫

≪少なくとも、私はそのつもり。≫

≪だったらいくらでも付き合ってやるよ。さっさとプレシア引き摺って、アースラに帰ってこようぜ。≫

≪…うん…! 直ぐに時の庭園へ転移するね!≫

 

一瞬光に包まれたと思ったら、そこはもう時の庭園だ。二人も一緒に来ている事を確認し、作戦を話す。

 

「アルフも分かってると思うけど、これからママを止める。道を開く手伝いをお願い。」

「…ママ?」

「アリシア…アルフに話してないのか…?」

「…!? ア、アリシア!?」

 

と言う所で地面が、時の庭園が激しく揺れる。

 

「ぅおっと…!」

「こりゃあ、悠長に話しているだけの時間は無いかもな…」

「アルフ、神宮寺…急ごう! 作戦は動きながら話す!」

「えぇ!? …ったく、道中で詳しく教えてもらうからね!?」

 

 

 


 

 

 

≪お久しぶりです。至急、私の部屋へ来てください。…転移魔法は使えますよね?≫

≪えぇ、もちろんです。今直ぐに向かいます。≫

 

…突然掛かって来た念話の相手は、今は懐かしい相手からだった。

詳しい事は分からないが、ようやく私も動く事が出来るようだ。

 

「…時の庭園に来るのも久しぶりですね。…セバスチャン、貴方とこうして会うのも。」

「そうですね、それほど長い時間は経っていない筈なのに随分とお懐かしゅうございます。リニス。」

 

久しぶりに使った転移魔法の光を抜けて、私は懐かしの庭園へ足を踏み入れるのだった。




割と最後まで内容を考えてました。
主にプレシアの発言内容についてですね。
結局原作のセリフをかなりマイルドにした感じに落ち着きましたが…


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