転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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遅れました! ごめんなさい!


困惑、混戦、大混乱

「アリシア! 伏せろ!」

「っ!」

 

咄嗟に伏せた私の上を魔力弾が通過し、直後に至近距離で爆発。振り向くと、いつの間にか迫っていたのであろう機械兵がふらついていた。

 

「チッ、流石に硬いな!」

「私は大丈夫、神宮寺は自分の相手の対処を!」

 

体勢を崩している今がチャンスだ! バルディッシュの光刃を振るうと今度こそ機械兵は切断され、爆発した。

私達は時の庭園に突入後、連戦を強いられていた。プレシアが次元断層を起こすまでの時間稼ぎか、大量の機械兵に進行を邪魔されているからだ。

 

「アリシア、ちゃんと周りを見て戦うんだよ!」

「分かってる! …つもりだったんだけどね。」

 

…私は今までフェイト程ではないにせよ、ある程度は戦えると思っていた。

生前は最期まで戦闘を経験する事は無かったが、死んだ後はフェイトの中から幾つもの戦闘を見ていたのだ。感覚もある程度共有していた事もあって、そこそこは動けるのではないかと…正直、甘い考えだった。

久しぶりに動かす身体は未だに慣れず、初めて振るう魔力は安定しない。目の前の機械兵にとどめを刺し、少し気を緩めただけで先ほどの体たらく。どうも魔法の使い方だけを学んだだけでは戦闘は熟せないらしい。

フェイトに代わりたいところだが、フェイトの意識が有るのか無いのかすら分からない始末だ。

 

「これで、とどめだ!」

 

一際大きな爆発が起こり、振り返ると神宮寺が受け持ってくれていた大型の機械兵が崩れて行くところだった。

 

「こっちもあらかた終わったよ!」

 

アルフの声に周囲を見回せば、私達を取り囲んでいた機械兵は一体残らず破壊されていた。

…二人とも凄いな。私は我が儘に付き合ってもらっているだけで、足を引っ張ってばかりだ。

 

「何考えてるんだい、アリシア?」

「アルフ…」

「…大方、自分が足を引っ張ってるとか考えてたんだろ?」

「…私は二人を自分の我が儘に付き合わせて…それなのに二人に守って貰って…」

「魔法に関しては初心者なんだ、しょうがないよ。…それよりも、急ぐんだろう?

 申し訳無いって気持ちはね、終わってから考えれば良いのさ。

 今はとにかく目の前の事に専念しなきゃね?」

「うん…そうだね。ありがとう、アルフ。」

「うんうん、お姉さんに任せときなって!」

 

…私の方が年上なんだけどね。

でも、アルフの言うとおりだ…今ここでうじうじ悩んで、それで間に合わなかったんじゃあそれこそ何の為に二人を付き合わせたのか分からなくなる。

 

「アリシア、目的の場所は玉座の間で良いんだな?」

「うん…ママは多分、そこに居る。」

 

今は進もう…ただ、前に。

 

 

 


 

 

 

「…先ほどから随分と大きな揺れが続いていますが、訳を聞かせてくれますよね?」

「勿論です。実は、プレシアの計画がいよいよ大詰めの段階に入りました。

 内容と現状についてもこれから説明いたしますので、先ずは急ぎ移動を開始しましょう。」

「良いでしょう。しかし、プレシアの計画ですか…」

 

断続的な爆発音から考えて、プレシアは計画の為にこの時の庭園すらも使い潰す心算なのでしょう。…恐らくはプレシアにとってもたった一度きりのチャンスのはず。そう簡単に移動させてもらえるかどうか…

 

「おっと! 機械兵ですか…我々は急いでいるので、ご退場願いましょうか。

 …リニス先生、お願いします!!」

 

…この執事、もしかして…いや、間違いなく戦えないのでしょうね。表面上は取り繕っているようですが、精神リンクから伝わってくる感情で丸分かりです。

 

「…はぁ、まあ良いでしょう。今の私は曲がりなりにもあなたの使い魔ですからね。

 この一件が終わったらあなたを徹底的に鍛え直したいところですが。」

「すみません! 多分どう鍛え直してもらっても使い物にはならないので勘弁してください!」

「大丈夫です、誰でも最初はそう言う物ですよ。『Photon Lancer multi shot』…っ!」

 

…少し多めに魔力を込めただけで、通路全てを埋め尽くすほどのフォトンランサーが出現した事に驚く。

供給される魔力量があのプレシアと比べても規格外なのが理由だろう。これだけの魔力を持っているにも拘らず、使い物にならないとは…なんて勿体ない…

 

「『fire』!」

 

大量に展開されたフォトンランサーの一つ一つが機械兵を貫き、壁面を抉り、破壊の波を作り出して行く。ほんの数秒で機械兵が破壊されたばかりか、奥の壁にまで大穴が開いてしまうとは…どうやら、魔力の配分を考えないと私自身が時の庭園を破壊してしまいそうですね…

 

「…決めました。貴方を必ず一人前の魔導士にして見せます!」

「本っ当に勘弁してください!!」

 

これほどの魔力を持っておきながらそれを腐らせるなんてとんでもない!

魔法の訓練が厳しいと思っているのなら心配ご無用です。フェイトも魔法を楽しんで覚えたのですから…!

 

 

 


 

 

 

「クロノくん…! 今の振動って!?」

「あぁ…どうやらオペレーターが算出した程の猶予は無いかも知れない!」

 

今、ほんの数秒だけだが凄まじい魔力波動を感じた。それと同時に轟音と振動…急いだ方が良さそうだ!

 

「なのは、ユーノ、二手に別れよう。…君達は時の庭園の動力炉を封印してくれ。デバイスに座標を送る。

 …それと今はまだ出現していないようだが、もし地面や壁面が割れて『黒い靄の様な空間』が覗いていたら絶対に近付くな。虚数空間と呼ばれるもので、次元震や次元断層を切っ掛けに出現する『あらゆる魔法がキャンセルされる空間』だ。飛翔魔法も使えなくなるから落ちたらまず戻って来れないぞ。」

「勿論!」

「うん! 気を付ける!」

 

S2Uを機械兵の大軍に向けて、魔法を行使する。

 

≪Blaze Cannon≫

「行け!」

「クロノくん、気を付けてね!」

「急ごう、なのは!」

 

ブレイズキャノンで強引に開いた包囲の穴から、なのはが時の庭園の奥に向かったのを見送り一息つく。

 

「さて、僕も早いところこいつらを片付けないとな…」

≪Stinger Snipe≫

 

エイミィ達によれば、こいつらも次元震発生の為の魔力共鳴を補助しているらしい。防衛機構も兼ね備えた燃料と言う訳だ。破壊しておくに越した事は無い!

 

「一体も残さん、殲滅戦だ!」

 

 

 


 

 

 

「俺達は行けないってどう言う事だよ!?」

「だから! いざと言う時の回収を考えたらサポートしきれないって言ってるの!」

 

あぁもう! 本来なら頑張ってるクロノくんを眺めながらクロノくんのサポートが出来る至福の時間だったのに…!

地球の転生者は緊張感ってものが無いんだから!

 

「でも神宮寺だって向こうに居るじゃねぇか!」

「それはこっちだって把握してなかったって言ってるでしょ!?

 フェイトちゃんが連れてっちゃったんだから!」

「もう既に一人増えてるんだから少しくらい良いだろ!?」

「少しじゃないから言ってんの!」

 

そう、こうなったのも全てはフェイトちゃんが連れて行った神宮寺って銀髪オッドアイが原因だ。

クロノくんの補助の為にアースラの探査機能で時の庭園内部の映像を表示したのが運の尽き。

フェイトちゃんと助け合いながら時の庭園を突き進む彼の映像を見るや否や、事もあろうか『ずるい!』と声を上げだしたのだ。

あの場にいる皆は命懸けだと言うのにずるいとはなんだ! ずるいとは!

クロノくんは一人で戦ってるんだぞかっこかわいい!

 

「エイミィ…ちょっと良いかしら。」

「っ! はい、艦長! 何でしょう!」

「時の庭園内部に未確認の魔力反応が複数あるみたい。それぞれ移動しているわ。」

「えっ、そんな!? プレシアの作り出した機械兵では…?」

「いえ…信じられない事だけど、あの巨大な魔力反応…アレもどうやら魔導士のようね。近くにも大きな魔力を持った魔導士らしき反応があるわ。」

「アレが魔導士…!? そんな規格外の相手が時の庭園に…!?」

 

時の庭園の魔力反応をサーチした際に見つかった巨大な魔力反応…当初は6個のジュエルシードでは足りない分の魔力を補う為のロストロギアだと思われていた反応だ。

その魔力値はプレシア・テスタロッサのそれを大きく上回っており、人一人に収まるとは思えない程の規格外…故にそれが魔導士の物だと思う者が居なかったのだ。

 

「…私が出ましょう。あれほどの魔力を持った魔導士ならば戦えば噂が立つはず…それが無いと言う事は実戦経験が乏しい証明よ。

 勝てるかどうかは分からないけど、時間は稼げるはず。

 …クロノにはこの事は秘密よ? 心配させたくはないもの。」

「艦長…!」

「エイミィ…対象の映像をお願い。」

「…っ。はい!」

 

リンディ提督の戦う相手…せめて、何か戦闘に癖でも見つかれば…!

 

「準備出来ました! 映像、出ます!」

 

もしリンディ提督に何かあれば…きっと、これが仇の顔になる! 緊張の一瞬、表示された姿を目に焼き付けて…えっ!?

 

「ぅぐぅ…っ!」

「か、艦長! まだあの騒動の古傷が!」

 

不意打ち気味に新手の銀髪オッドアイの顔を見てしまったせいだ! デスマーチに巻き込まれた方々に対してあの顔は拙い!

 

「艦長、相手が悪すぎます! 艦長の()が持ちません!」

「ダメよエイミィ…この場で対処できる可能性があるのは、きっと私だけ…!

 あいつをクロノに会わせる訳には…!!」

 

そうだ! クロノくんと遭遇したらクロノくんだって…!

拙いよ、どうしよう!

 

「おい! 何でリニスが生きてるんだ!?」

「え…リニスつっよ…って言うかあの銀髪オッドアイ全然戦ってねぇじゃねえか!」

「…これって、もしかしてアイツがリニスの契約者に…?」

「…いや、なんかリニスにめっちゃペコペコしてるし違うんじゃないか?」

「あっ…土下座…」

 

…こんな状況、どうすれば良いのさ!?




アリシアは戦い方を二人に教えて貰いながら玉座の間を目指す。
似非執事はリニスにペコペコしながら玉座の間を目指す。
クロノは真っすぐ玉座の間を目指す。
…最終的には必ずエンカウントするんですよね。(無慈悲)

リンディさんの出撃は遅れますが、ジュエルシードの個数も少ない為次元断層発生までの猶予も伸びています。…それでも数十分程度ですかね。

今回は各キャラクターの動きをお見せするために視点切り替えを多用しましたが、次回からは一人か二人に絞る予定です。
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