転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ちょっと長めです。

文章が荒いところもあると思いますが、指摘していただければ一期分が完結した後に短編投稿と並行して直して行きたいと思います。
あと、サブタイトルも結構勢いで付けてたりもするので修正するかもです。


封印

「隙ありっ!」

 

機械兵の攻撃をブリッツアクションで回避してからの一閃。バルディッシュの光刃は狙い通りに機械兵の右腕の関節部分を捉え、切断した。

 

「ここで…追撃!」

 

突然重心が偏った事でバランスを崩した機械兵の左足を薙ぎ、転倒させると同時に跳躍。残った左腕を支えにした事で防御が出来なくなった機械兵の頭部にバルディッシュを振り下ろすと、機械兵は完全に沈黙した。

 

「…ふぅ。」

「良い動きだったよ、アリシア!」

「ありがとう、アルフ達のおかげだよ。」

 

私は玉座の間を目指す傍ら、二人から戦闘の運び方を教わっていた。

 

「しかし、やっぱりフェイト程の速度は出せないみたいだな。

 雷の尾も出ていない様だし…」

「雷の性質変化は出来るみたいなんだけどね…

 でも、そのおかげでブリッツアクションも安全に使えるからトントンかな?」

 

そう、私の出せる速度はフェイトにはまるで及ばなかった。これは多分フェイトが転生の際に受け取った神様の特典? が私には無いからだろう。

あの速度を引き出す事が出来るのはあくまで『フェイト』なのだ。

 

「…性質変化はリンカーコアに依存するって事なのかね?」

「さあな…興味はあるけど、今はプレシアが優先だ。後で考えようぜ。」

「うん。玉座の間まではあと少しだよ!」

 

時々私達以外の魔導士が戦闘しているらしい音や振動があった。

私達より先にママの元へ辿り着かれた場合、ママを無事に確保してくれるかは分からない…早く着くに越した事は無いのだ。

 

 

 

 

 

 

「…そう言えば神宮寺…だったよね? あんたって自分の…なんて言うか、『コレ』って言う魔法は無いのかい?」

「『コレ』…?」

「なんて言うか…フェイトのサンダーレイジとか、ファランクスシフトみたいな?」

「あー…切り札って事か。」

「そう、それ!」

「そう言えば神宮寺って、いつも空間から出す大量の魔力刃で戦ってるね。」

「一応無い訳じゃないんだけどな? どうしてもこっちの方が発動早いし火力も出るし…自分の魔法は基本的に『収納用』になっちまうな。」

「ふぅん? じゃあ一応あの空間の中には入ってるんだね?」

「まぁな。ただ、魔力刃の方が使い勝手が良いってだけだ。」

 

そんな会話を交えながらも私達は時の庭園の深部へと進み続け、ついに玉座の間へと辿り着いた。

 

 

 

「…この扉を開けたら玉座の間だよ。そして、多分ママもそこに居る。」

 

扉を目の前に、私達に緊張が走る。フェイトも私も見慣れたはずの扉からは、今はまるで異界にでも繋がっているかのような…そんな不穏さを感じた。

 

「…見た感じ、俺達が一番乗りって感じか? 部屋の中から声は聞こえないが…」

「あたしの耳にも特に会話の類は聞こえてこないね。私達が一番乗りで合ってる筈さ。」

「それならここでプランを練る時間も少しはありそうだな。アリシア、ここからのプランについて教えてくれ。」

「私は…ママを説得したい。強引な確保の結果じゃなく、ママ自身の意志でフェイトと一緒に居て欲しい。

 …でも、普通の説得じゃママは耳を貸してくれないって事は解ってる。だから…」

 

 

 

「…まぁ、やりたい事は解ったが…」

「…あのプレシアにその説得は一種の賭けだよ?

 上手く行けば狙い通りになるかもしれないけど、失敗すればプレシアは今度こそフェイトを切り捨てにかかるはずさ。」

「…うん。でも、この方法以外だとママは聞く耳も持ってくれないと思う。

 それに、私はママを信じたい。私のママはやっぱり優しい人なんだって…私に信じさせてくれるような、そんなママを信じたい。」

 

ママは今回の計画の目的が(アリシア)を蘇らせる事だと言った。それならばきっと、説得にはこの方法しか無い。

 

「この説得の成否はプレシアの考えにかかっている。

 …だが正直、俺は今のプレシアの事を良く知らない。だからこの説得に対して賛成材料も反対材料も持っていない。

 持っているのは…」

「…あたしかい!?」

 

神宮寺は判断をアルフに委ねるらしい。確かに今のママについて贔屓目抜きで見れるのはアルフしかいない。私ではどうしてもママを贔屓してしまうから…

 

「う…うーん、プレシア…プレシアかぁ…」

 

目を瞑り、腕を組んだ姿勢で悩むアルフが出す答えを私達はじっと待つ。これからの動き方が変わるような重大な決断を委ねてしまって申し訳無いが、アルフの客観的な意見が一番の判断材料になる…

 

「あたしが知っている限り、プレシアは育児も教育もリニス…使い魔にぶん投げて、研究室に引き籠ってるような奴だったよ…

 あの頃は一緒に食事をとる姿も見た事無いし、会話だって碌に無かったねぇ…」

 

アルフがまさに客観的な事実を述べ始める。…こうして聞くと本当に酷い母親像だ。

 

「…なるほどな。じゃあ、」

「ただ、最近はちょっと変わって来たんだなって…あたし自身、ちょっとだけ見直してたんだよ。」

「最近変わった?」

「うん…まぁ最近って言っても、以前に一度時の庭園に帰って来た時だけどね。

 あの数日間、フェイトに魔法を教えてるとこをあたしも見てたんだけどさ、普通の母親に見えたよ。

 魔法の練習に一喜一憂するフェイトを見て、目を細めてさ…

 あたしも正直、今になって突然フェイトに『消えろ』なんて言った事の方がちょっと信じられないくらいさ。」

 

アルフはそう締めくくり、目を開いた。

 

「アルフ、じゃあ!」

「うん、全然分からないねぇ!」

 

思わず身を乗り出したところで変な結論を出され、思わずコケそうになる。

 

「って言うのもさ、急に心変わりして優しくなった時もあたしは『信じられない』って感じだったし…

 あんな急に態度が変わったんなら、また同じ感じで心変わりしたって可能性もあるじゃないか…」

「う…」

 

アルフの言いたい事は解る。私自身、あの時信じられない気持ちだったからだ…勿論、いい意味で。

 

「だが、そうなると…どうする?」

「…どうしようね? あたしとしても『信じたい』って気持ちは有るんだけど…」

 

ここに来て初めて私達の脚が止まってしまった。…絶対に失敗できない作戦であるが為に。

 

「…考えている時間もあまりない。ここは折衷案と行くか…」

 

ふと、神宮寺が折衷案を切り出した。内容を聞く限りでは、あまり悪くはないように思えるが…

 

「良いの? 私の説得の内容を変えなくても…」

「…この案は『プレシアの計画を止める』事が主題だ。アリシアの言った内容の説得ならこの計画が止まる事だけは保証されているからな。

 それでプレシアがフェイトじゃなく、アリシアを選んだ場合の為の折衷案だろ?」

「プレシアが例えアリシアを選んだとしても…アリシアさえプレシアに捕まらなければ問題無い、か…

 まぁ、これしか無いだろうね。

 確かにプレシアの計画を止める事が最優先だ。」

「…ありがとう、アルフ、神宮寺…」

「感謝は説得が成功したらで良いよ…漫画の受け売りだけどな。」

「…うん、じゃあきっと後でもう一度言うね。」

「その意気だよ、アリシア! …行こう!」

 

…私がフェイトの記憶を知ってしまってから抱き続けた望み…その結果がこの扉の先にある。

私の望みは、ママとフェイトが本当の親子になる事…ママがいつかアルフとリニスとフェイトと一緒に、毎日一緒の食卓を囲む事!

きっと説得を成功させて見せる。それが私の計画の第一歩…

 

神宮寺から準備が出来たと言う念話を受けて、私はドアノブに手を伸ばした。

 

 

 


 

 

 

ガチャリと扉を開く音に振り返ると、そこには私のもう一人の愛娘とその使い魔の姿が有った。

 

「フェイト、アルフ…どういう心算でここに来たのかしら?」

 

冷たい言葉を浴びせる声に、震えが混じらないだろうか。私の心に迷いが生まれないだろうか。

計画の最終段階にあって、なおも私の道を阻む運命に悪態の一つでも吐いてやりたい気持ちになりながら言葉を続ける。

 

「フェイト…私は『消えろ』と言ったはずよ。直ぐに出て行きなさい…二度と私の前に現れないで。」

 

それだけを告げると、拒絶を表すように背を向ける。

私の最期の願いだ。嫌われても良い、恨まれても良い。だから帰ってくれ。私と同じ最期を選ばないでくれ。

 

「…ママ。私は…」

 

その声に、思わず振り返る。

バカなと思った。フェイトがただ、記憶にあるその言葉を真似ただけだと思いたかった。

だが、分かってしまった。私の古い記憶が、母親としての本能が無慈悲にも答えを導き出した。

 

「アリ…シア…!?」

「! ママ…分かるんだね…?」

 

当たり前だ。今でもあの日々は脳裏に焼き付いている。

片時も忘れた事のない記憶のアリシアと、今目の前に居る少女の姿が完全に一致する。

声のイントネーション、表情や仕草…よく見なければ分からないような細かい癖まで、全てあの子そのものだった。

 

「分かるわ…勿論よ。私は貴女の…貴女()の母親なんですもの…」

「ママ…分かったでしょ? アルハザードなんかに、研究の果てなんかに私は居ない…私はここに居る!

 …こんな意味のない計画、もうやめよう…?

 今すぐにジュエルシードを止めて、一緒に来てくれればママの罪もきっと…」

「ダメよ。」

「! …ママ…?」

 

アリシアは確かにアルハザードには居ない。…そんな事は初めから解っていた。

例え究極の形として完成された魔法だろうと、アリシアの魂はアリシアただ一人の物…せいぜいがアリシアと同じ才能や特徴、記憶を持ったフェイトが生まれるだけだろう。

そうじゃない…この計画の目的は、そんな事じゃないのだ。

 

「…アリシア、フェイトはどうしたの?」

「…私の中に居る。今は意識が無いみたいだけど…ちゃんと私の中に居るよ。」

「そう…良かった。」

「ママ、どうして!? 私を蘇らせなくたって、フェイトが居るじゃない!

 フェイトと一緒に地球で暮らそう!?」

 

優しいアリシアはきっと、ずっと私を見ていたのだろう。アリシアを失って変わって行く私を、変わらないままずっと見ていてくれたのだろう。

言葉を少し交わしただけでそれが分かった。

このアリシアは魔法が造り出した人格なんかじゃない…あの日私が永遠に失ったと思っていた本物のアリシアなのだと確信した。…それならば、私の出す答えは一つしかない。

 

「アリシア、最期のお願いよ…聞いてくれる?

 …直ぐに来た道を引き返して、管理局に保護して貰いなさい。

 この計画は私一人が進めて来た物…罪の無い貴女は、きっと管理局も悪いようにはしないわ。」

 

本物のアリシアとフェイト…二人を時の庭園の崩壊に巻き込むなんて、それこそ最も避けなければならない事態だ。

時間が無い。今も刻一刻と共鳴した魔力波動は増幅している。

虚数空間に飛び込むのは私だけで良い…私と、アリシアの身体だけで良い。

 

「…やっぱり、ママは優しいママのまんまだ。

 私、フェイトの中から見ていた時も信じてた。ママは悪い人なんかじゃないって…」

「アリシア…」

「だから、ゴメンね…ママ。そのお願いだけは聞けない。」

 

…何と無く分かっていた。アリシアならきっと、こう言うだろう事は。

 

「…そうよね。貴女は優しい子だもの…きっと、そう言うと思っていたわ。」

「うん…ママが一緒に来てくれるまで、私はここを動く気は無いから。」

 

こうなったら私に出来る事は一つだ。

 

「ごめんなさい、アリシア…最期に貴女と話せて良かったわ。」

 

…強制転移の次元魔法で、強引に時空管理局の船まで転送する。

アリシアに杖を向ける日が来るなんて考えた事も無かったけれど…たった一度の親子喧嘩。大目に見てちょうだいね。

 

「この魔法陣…強制転移かい!?」

「そんな…!? ママ!」

 

そんな顔で見ないで頂戴。私に迷いが生まれたら、手元が狂ってしまうわ。

 

「さようなら…アリシ…ッ!!」

 

そんなッ…! こんな時に発作が…次元魔法を短時間に連続で使おうとしたから!?

 

「…ゲホッ、ゲホッ!!」

 

咄嗟に口を手で押さえたが遅かった。

咳と共に吐き出された血が、指の隙間を通り抜けて床に滴る。

 

「…マ…ママ…?」

「プレシア…あんた、やっぱり…」

 

なんて…事…

アリシアに、こんな姿を見せてしまうなんて…

 

「ママ! 直ぐに管理局の船に…! お医者さんに診て貰えば…」

「ダメよ…アリシア。この病は治らないわ…もう、手遅れよ。」

 

…知られてしまった以上、全て話そう。

 

「…アリシア、私は何もしなくてももう直死ぬわ。

 けど私はね…死ぬ前に、時の庭園の研究全てを消し去らないといけないのよ。

 …私自身も含めてね。」

「研究…? そうかい…プレシア、それがアンタの本当の目的かい。」

「アルフ…?」

「アリシア…プレシアはね、元々アルハザードに行くつもりなんて無かったんだ。

 ただ虚数空間に身を投げる事が出来れば、それでプレシアの目的は達成されるんだよ。」

「アルフ…ふふ、意外に勘が良いのね…」

「…こんなの、ちょっとしたズル技だよ。」

「アルフ、どう言う事…!? ママは何で…!」

「それはこれからプレシアが話してくれる筈さ。そうだろ?」

「…アリシア、フェイトの中に貴女の記憶があるのは知っていたかしら?」

「うん…」

「あの記憶は正真正銘()()()()()()()よ。…設備さえあれば、遺体から()()()()()を抜き出すなんてそう難しい事じゃないの。…私達、研究者にとってはね。

 …そしてそれは私に対しても同じ事よ。

 私は大魔導士としても研究者としても名が知れ過ぎたわ…私の死体が回収されれば、この知識を目当てに記憶をサルベージしようと考える者が出るでしょうね。

 …問題は、私の最期の研究だけは知られる訳には行かないのよ。」

「! それって…」

「『プロジェクトF.A.T.E』…フェイトを生み出した研究よ。公になっている内容は人造魔導士を生み出す事だけど…私の記憶を読めば、『その先』までわかるでしょうね。

 …()()()()()()()()()()が…」

「!!」

「これで解ったでしょう? 私の死体は遺せないのよ。『フェイト』が兵器として大量に生み出されるなんて…研究者としても、母親としても絶対に許せない可能性なのよ。

 …私を説得する心算なら諦めなさい。」

 

アリシアは私が管理局に語った計画を聞いて、私を説得できると踏んだのだろう。

だが、元々それはカモフラージュだ。この事件の後に行われるであろうフェイトの処遇を決める裁判に於いて、フェイトが少しでも有利になるように…私と言う元凶との繋がりを断つ為だ。

 

「アリシア…プレシアは元々()()()()()()()()だったんだ。時の庭園も、自分の記憶も完全に消し去る為に。」

「私の研究とアリシアの遺体を虚数空間へと()()()()()()()…これが私の本当の目的よ。」

「…そんな…じゃあ、私は何のために…」

 

アリシアが膝から崩れ落ちる。

…ごめんなさい、アリシア。私も可能ならば貴女達と生きたいけれど、その可能性は既にあの日に断たれていたのよ。




今回の纏め

アリシア「研究意味無いよ! 私ここに居るもんね!」
プレシア「済まん、それブラフや。」
アリシア「」

何処かに居る神宮寺(えっ? プラン全部飛んだんだが…?)
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