何度も書き直したせいで文章の繋がりが変になっていたらごめんなさい!
指摘していただけると嬉しいです!
「リニス先生! お願いします!」
「『Photon Lancer』!」
玉座の間に向かう途中で立ち塞がる機械兵に放たれた光の筋は機械兵を穿ち、なおも勢いを減らす事無くその奥の壁に炸裂し爆発を起こす。
…今のでも結構威力を抑えた方だったのですが、予想以上に魔力コントロールが難しい。相手が機械兵だからこそ躊躇なく撃てるものの、魔導士や使い魔相手にはあまり撃ちたくはないですね。
「流石っす、先生!」
この執事はあれから『自分が如何に魔力の扱いが下手なのか』を私に懇切丁寧に、且つ具体的に語って来た。
それ程訓練が嫌なのかと少し情けなくも思ったものですが、プレシアの計画を止める為にはそんな話に時間を割く余裕はありません。仕方なく納得して見せ、現状について聞きだして見れば…プレシアは自らの研究の全てを永遠に秘匿する為に今回の騒動を起こしたのだとか。
あの日…フェイトの教育が完了し、姿を消そうとした私にフェイトが語った真実…
それによればプレシアは自らの一人娘である『アリシア』の蘇生の為に次元震を引き起こし、その果てに虚数空間に落ちて行くとの事でしたが…いえ、今は気にしている場合ではありませんね。
フェイトと執事、どちらの言葉が正しかったとしても『プレシアが最終的に虚数空間に落ちる』と言う点では共通している…どちらにしても急ぐしか無いのですから。
「『Photon Lancer』!」
先程よりも魔力量を控えめに調整した魔法は機械兵の装甲を貫き、狙い通り内側で炸裂し…機械兵は内側から弾けるように木っ端微塵に砕け散った。
「よっ、次元世界一っ!」
「はぁ…全く、貴方と言う人は…」
戦闘が熟せない事は仕方がないとはいえ一応
「…そう言えば、この一件の後貴方はどうする心算なのですか? これほどの事件ともなれば、例え時の庭園が無事に残ったとしてももうここには住めませんよ?」
…ほんの些細な疑問でした。時の庭園に長年住んでいる執事の…私の主の未来を案じて投げかけただけの問いでした。
「あぁ、ご心配はいりませんよ。この一件の後は私の
その言葉に思わず足を止める。
「…本来の上司?」
「? えぇ…」
≪っと、すみません、ここからは念話でお願いします。ジェイル・スカリエッティです。…あれ、確か最初にここに来た時に説明しましたよね?≫
その言葉で私は、初対面の時のセバスチャンの言葉を思い出した。
『わっ、私はジェイル・スカリエッティの紹介で
セバスチャンと申しますっ! これがその紹介状でありますっ!』
最初にここに来た時の執事の言葉を思い返せば、確かにそう言っていた記憶がある。
だが当時『研究の助手』として捉えた言葉の意味は、ここに来て全くと言って良いほどに変化したと言って良い。
≪…貴方の、
≪私の目的は最初にも語ったように、貴女とプレシアを助ける事です。…先を急ぎましょう、虚数空間が開いてしまえば全てが手遅れになってしまいます。≫
今は一刻も早く玉座の間に向かわなくてはいけない…そんな事は解っている。
だが、プレシアが『フェイトを兵器にされる可能性』を消したかったように、私にも消しておきたい可能性が
≪今の内にこれだけでも確認したいのです…貴方
≪…なるほど。あの人の存在が気がかりだったと言う事ですね?
はい、それだけは断言します。プレシア様の目的を…『フェイト様の安息』を邪魔する類の目的で動いては居ません。≫
≪…良いでしょう、一先ずその言葉を信じます。
貴方にはまだいくつか聞いておきたい事があります。…ですが、それはこの件が一段落した時に必ず聞かせて貰いますね。≫
≪私が答えられる事であれば…≫
≪…まぁ、今は良いでしょう。呼び止めるような真似をしてすみませんでした…『私が送り届けた貴方が実は敵だった』と言う状況だけは避けたかったものですから。≫
≪…まぁ、当然の心配事ですね。私の状況って傍から見ればスパイと思われても仕方ない立ち位置ですし…≫
今ここで確認した理由は他でもない。玉座の間が近いからだ。
勿論いざとなれば私の手で止める事も考えているが、どうしても確かめておきたかった。
≪リニスさん、玉座の間に入ったら手はず通りにお願いします。
…チャンスは一度、合図は私が送ります。≫
≪分かっています。貴方も気取られないようにお願いします。≫
≪任せてくださいよ! ここまで護衛までしてもらって役に立たないんじゃ、何の為に居るんだって話になっちゃいますからね!≫
≪…そう言えばそうですね。玉座の間の場所は解っていますし、貴方を置いて行った方が早かったかもしれないですね。≫
≪ちょっ!?≫
≪冗談ですよ、緊張が解れたでしょう?≫
≪貴女そんなキャラでしたっけ!?≫
≪私も色々と変わったのですよ。
…そう、私が今いるのは間違いなく貴方のおかげなんです。
だから信じさせてください。私があの時、貴方の魔力に縋った事は間違いじゃなかったのだと…私は、生き残っても良かったのだと。
機械兵を破壊しながら辿り着いた玉座の間。
私が部屋の中からは見えないであろう死角に立った事を確認すると、セバスチャンは玉座の間の扉を勢い良く開き、開口一番に叫んだ。
「プレシア様あぁぁッ!!」
「消えなさい。」
「ええぇぇぇええッ!?」
…本当にこの主に任せて大丈夫なんでしょうか?
「プレシア様あぁぁッ!!」
「消えなさい。」
「ええぇぇぇええッ!?」
思わず反射的に答えてしまったが、冷静な状況でも同じ返しをしただろうから良しとしよう。
…問題は、なぜおまえがまだ時の庭園に居るのだ?
「…私は確かにお前を解雇したと思ったが?
なぜまだ時の庭園に居る? なぜここに来た?」
もう直ぐ次元震の影響で虚数空間が開く…早いところ管理局にでも保護して貰えば良かっただろうに。
「貴女に考え直してもらいたくて戻ってきました。」
「説得は無駄よ。…貴方には本来の目的も話していたと思ったのだけれど?」
…だが、思えば丁度良かったのかもしれない。茫然自失としてしまっているアリシアを管理局まで連れて行ってもらえば、体に負担のかかる次元魔法を使わなくて済む。
「…アンタ、確か執事の…」
「…セバスチャンです。…アルフ、フェイト様!? 何故ここに!?」
うなだれるアリシアと、寄り添うアルフに漸く気付いたのか大袈裟に驚いている。
…二人から事情を聴けば説得の意味は無いと知るだろう。
「プレシアを説得する為さ…こんなこと止めてくれってね。尤も、失敗しちまったみたいだけどね…」
「…」
「フェイト様…」
「説得が無意味だと分かったでしょう? 解ったなら、早くその二人を連れて管理局の船に保護して貰いなさい。」
私の言葉にセバスチャンは何かしら考える仕草をした後、覚悟を決めたような表情を見せる。
「…フェイト! よく聞け、プレシア様はお前を本当は大切に思っている! 今回の事だって、お前の事を守る為に起こした事件なんだッ!」
「ゴメンね、もう知ってるんだよ…」
「えッ!?」
「何時私が娘を呼び捨てにしても良いと言ったかしら? 潰すわよ?」
「えぇッ!?」
「あー…後、今のこの子はアリシアなんだよ。」
「ええええッ!?」
本当に騒がしい奴だ。研究室でも何度騒がれた事か…
コイツが居ると、あの騒々しい研究の日々に未練が生まれる可能性が無くはないかも知れない。早々に追い返すとしよう。
「元執事、早くアリシアとアルフを連れて管理局の元へ行きなさい。
私の魔法を受けたくはないでしょう?」
「っ!」
セバスチャンの表情に恐怖が色濃く表れる。こいつは奇妙な体質の所為で魔力を上手く扱えない。それはつまりバリアジャケットの性能も安定していないのだ。
その為か魔法の攻撃を向けられる事を過剰に恐れる。経験上、この脅しで言う事を聞かなかった事は無かった…ハズなのに。
「こっ、断ります! まだ私の言い分を耳に入れて貰っていません!」
「…貴方にはこの一件に関わる権利は無いわ。これは私達『家族』の問題なのよ。」
「貴女の家族の中に、貴女が虚数空間に落ちる事を望む者は、居ません!
もっと家族を見てください!」
「現実に目を向けなさい。私の命はもう数ヶ月と持たず尽きるわ。
取り残される家族を思えば、最悪の兵器が生まれる可能性は確実に摘むべきなのよ!
私が生きている内に!」
何故こうも引き下がらない。こいつがここまで粘る事が出来る理由は何だ?
…ん?
「…そこの扉の影、誰か居るわね?
まさか、アンジュも残っているの?」
「あっ、アンジュは真っ先に管理局に保護されました…」
「…そう。」
アイツはアイツで良く分からない奴だ。常に一線引いているのは使用人として理想的だが、その目が全く別の物を見ているような…まあいい。
「隠れている奴、出てきなさい!
出て来なければ魔法を撃ち込むわよ! この元執事に!」
「いぃッ!?」
物陰で息を呑んだのが分かる。やはり仲間だったようだが…何者だ?
セバスチャンには管理局との繋がりは無いはず…となると第97管理外世界から付いてきた?
いや、それこそ接点があるはずもない。
「セバスチャン、貴方の仲間でしょう?
貴方が出てくるように頼めば出てきてくれるかもね?」
杖を向け、再度脅しをかけ…
「出てきて下さい! お願いします!」
…自分で脅しておいてなんだが、こいつにはプライドが無いのか?
「はぁ…本当に、貴方と言う人は…」
「な…リ、ニス…?」
頭を抑えるような仕草で表れたのは、もうとっくに消滅している筈の私の使い魔…リニスだった。
「何故…貴女が居るのかしら…?
貴女との契約は満了…使い魔のパスも切れていると言うのに…」
「…お久しぶりです、プレシア。
少し色々ありまして…今はそこの
「貴方…契約を満了したとはいえ、人の使い魔を奪ってどう言う心算かしら?
それで私と対等になれると思ったの? だから、一歩も引かずにいられたのかしら?」
もしそうだとしたら、とんだ下衆だ。少しばかり見直したところもあったが、所詮は上辺通りのお調子者だったか。
「ち、違います!
これは可能性の提示なのです!」
「可能性?」
「はい! 未来は変えられると言う可能性です!」
コイツは何を言っているのだろう?
消滅する使い魔を何かしらの方法で奪っただけの癖に。
確かにリニスは消滅を免れたが、『未来を変える』など誇張表現も良いところだ。
「貴女が今、その身を虚数空間に落そうとしている理由の大半は貴女の死が近いからです!
貴女の体を治す事が出来れば、貴方の知識も、フェイトやアリシア、アルフもリニスも
セバスチャンの言いたい事が分かった。大方、リニスが消滅を免れたように『私の体も治せる』と言いたいのだろう。
…だが不可能だ。事故の当時ならまだしも、既にこの病は私の体に定着してしまっている。
「もう良いわ…貴方と話しても疲れるだけね。
魔力ダメージの気絶で済ませてあげるわ…感謝しなさい。」
これ以上セバスチャンが魅力的な未来を語る前に手を打とう。…自死を選ぶ者に未練は邪魔なだけ。
こんなやつでも長年付き合った仲だ、せめて苦痛を感じる間もなく意識を奪ってやろう。
そう思い、杖に魔力を込めるが…
「お待ちください! プレシア!」
「次から次に…今度は貴女なの? リニス…」
リニスが私とセバスチャンの間に立ち、セバスチャンを庇う。
「アルフとフェイト…いえ、今はアリシアでしたね。二人が頑張っているのに私が何もしない訳には行かないでしょう?」
「え、私は!?」
「…貴方は今は黙っていてください。」
「はい…」
「リニス…貴女はもっとお利口な使い魔だったと思ったのだけれど…?」
「…多少、影響は受けたかもしれません。」
「…使い魔って、悲しいわね…」
「ですが、今の私は幸せですよ。
朝食を作りながらフェイトとアルフの目覚めを待ち、昼食を三人で食べながら夕食の献立を考える…
夕食を共にしながらフェイトの一日の成果を聞き、アルフも一緒に明日の事を考える。
地球での毎日は非常に充実しています。」
「…人を煽るのが上手くなったわね、リニス。
死に逝く者に生の幸福を語ってどういう心算かしら?」
「貴女がこの先に享受出来るかもしれない未来の話です。
…もっとも、このままでは私の未来のままですが。」
そうやって私を煽り、時間を稼ごうと言うのだろう。
見え透いた考えだが…なるほど、
「…良い度胸ね。丁度死出の道連れが欲しかったところよ…」
「おや、プレシアは寂しがり屋さんですね。
そんなに寂しいのなら私達と一緒に暮らすと言うのはどうでしょうか?」
「フッ…フフフフフ…貴女がここまで命知らずとは思わなかったわ…!」
「…これは、少々やり過ぎましたかね…?」
…やっぱりこうなりましたか。
杖を向けられ恐怖に竦み上がる
――≪先ずは私がプレシア様を説得してみますが…恐らくは通用しないでしょう。≫
≪…諦めるの早くないですか?≫
≪えぇ、私のプランは説得ではないですからね。≫
≪では…やはり?≫
≪多少乱暴ですが、プレシア様を拘束して強引に連れ戻します。
計画の詳細はプレシア様から聞いておりますが、あの方は生を諦めています。
多少の説得では意味をなさないでしょう。≫
≪…ですが、納得していないプレシアを強引に連れ戻したところで意味は無いのでは?
プレシアの病が事実であれば、それはあまりにも残酷な結末しか生みませんよ。≫
≪簡単な話です。
貴方の言った『治す当て』…信じてますからね!?
「お待ちください! プレシア!」
「次から次に…今度は貴女なの? リニス…」
怒気を孕んだ目で睨みつけられ、息を呑む。その目に深い死への渇望を見たからだ。
前に出て目を見なければ分からなかったが、今のプレシアは正気とは言えなかった。
『フェイトを守る為』の死と言う手段が目的にすり替わりつつある。…このまま逝かせるのはやはり駄目だ。
――≪で、拘束とは言いましたが厳密な方法はどうする心算ですか?
相手は病の身とは言え、正真正銘の大魔導士『プレシア・テスタロッサ』ですよ?≫
≪そうですね…この作戦に於いて肝心なのは方法よりもタイミングです。
必ず『虚数空間が開いた後』、且つ『管理局員がその場に居る事』…この二つの状況を満たす必要があります。≫
≪時の庭園は残せないから…そして、迅速な回収の為ですね?≫
≪そうです。魔力ダメージによる気絶でも、バインドによる一時的な無力化でも良い。
少しでも動きを封じる事が出来れば、プレシアを玉座の間から引き離せる。
プレシアが虚数空間に飛び込む事が出来なくなった時点で、私達の勝ちです。
後…管理局の船に乗っている人材によっては、もしかしたらプレシア様の治療が想定よりも早く出来る可能性もあります。≫
≪ではその条件を満たすまでは時間稼ぎを?≫
≪えぇ、まぁトークで間を持たせられればそれに越した事は無いですが…ダメだった場合はお願いします!≫
≪はぁ…まあ、その為の魔力だと解釈しましょう。≫
先ずはトークで間を持たせなければ…
「アルフとフェイト…いえ、今はアリシアでしたね。二人が頑張っているのに私が何もしない訳には行かないでしょう?」
「え、私は!?」
「…貴方は今は黙っていてください。」
≪今は私が時間を稼ぎますから、例のタイミングを計ってください。≫
「はい…」
≪すみません、お願いします!≫
途中で元執事が割り込んできましたが、彼も少しでも会話を引き延ばそうと協力してくれているのでしょう。
「リニス…貴女はもっとお利口な使い魔だったと思ったのだけれど…?」
「…多少、影響は受けたかもしれません。」
「…使い魔って、悲しいわね…」
話の内容…出来れば長く話せて、プレシアの興味を引ける物…
と、なれば…やはりあれしかないでしょう…
「ですが、今の私は幸せですよ。
朝食を作りながらフェイトとアルフの目覚めを待ち、昼食を三人で食べながら夕食の献立を考える…
夕食を共にしながらフェイトの一日の成果を聞き、アルフも一緒に明日の事を考える。
地球での毎日は非常に充実しています。」
≪リニスさん!? 何でプレシア様にそんな話題を!?≫
話している途中で気付きましたが、これは挑発以外の何物でもないですね…
ですが、プレシアの興味を引ける話題が他に無いのです。仕方ないでしょう!?
「…人を煽るのが上手くなったわね、リニス。
死に逝く者に生の幸福を語ってどういう心算かしら?」
「貴女がこの先に享受出来るかもしれない未来の話です。
…もっとも、このままでは私の未来のままですが。」
もうこうなったらこの方針を貫くしかないですね。
恐らく戦闘になると思いますが、それで時間を稼げるのならばそれも良いでしょう!
「…良い度胸ね。丁度死出の道連れが欲しかったところよ…」
「おや、プレシアは寂しがり屋さんですね。
そんなに寂しいのなら私達と一緒に暮らすと言うのはどうでしょうか?」
「フッ…フフフフフ…貴女がここまで命知らずとは思わなかったわ…!」
「…これは、少々やり過ぎましたかね…?」
プレシアから向けられる怒気に魔力と殺気が混じり始める。
向けられる視線は射殺すように鋭く、その中に羨望と嫉妬が見え隠れする。
…どうやら意図せずとは言え、散々煽った甲斐はあったようだ。
私を羨ましい、妬ましいと見てくれると言う事は、ほんの少しでも生に興味を抱いたと言う事…
後は条件が揃うまで私が時間を稼ぎましょう。敬愛するプレシア…貴方の為に。
一期分を書き終えたらしばらくは過去の文章の添削&短編投稿に充てる心算です。
よろしくお願いします。