転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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『位置はそこでオーケーだよ! クロノくんが今向いている方向から9時の方向!』

「了解! 距離は!?」

『およそ14m! 間に魔力反応は無し! 全力で撃っちゃって!』

「了解!」

 

エイミィの案内の元、幾つかの壁をぶち抜いて最短距離を進んできたが…結構な魔力を消耗してしまったな。

だがこの壁を撃ち抜けばいよいよ玉座の間まで直通だ。逸る気持ちを理性で押しとどめ、あくまで冷静にS2Uを構える。

 

≪Blaze…≫

 

そしてブレイズキャノンを放とうとしたその時、時の庭園がこれまで以上に激しく揺れた。

 

「この揺れは…! エイミィ!」

『…うん、局地的だけど…中規模の次元震…次元断層も発生したみたい…!』

「くっ、間に合わなかったか…!」

『大丈夫、まだ最悪の状況じゃないよ!

 周辺の次元世界への影響はあまり大きくないし、リンディ提督も既に向かってる。』

「…そうだな、被害が広がらない内に手早く鎮静化しよう!」

「クロノくん!」

「! なのは!」

 

丁度良いタイミングだ! 俺の魔力だけでは多少の不安もあったが、なのはなら…!

 

「クロノくん、さっきの揺れって…」

「すまないが、詳しくはエイミィから聞いてくれ! 今からプレシアのところへ踏み込む!」

「えぇっ!?」

 

説明はエイミィに任せ、改めてS2Uを構えて魔法を放つ。

 

≪Blaze Cannon!≫

 

さぁ、いよいよ対面だ。プレシア・テスタロッサ!

 

 

 


 

 

 

≪リニス、大変だよ! 虚数空間が…!≫

 

瞬きすら迂闊に出来ない攻防…いえ、正確には防戦一方ですが…

その最中、アルフからの念話で私はもう時間が無い事を知った。

咄嗟にプレシアの顔を見ると、先ほどまで浮かべていた鬼気迫る雰囲気は何処へやら…まるで別れを惜しむかのような悲し気な表情を浮かべていた。

 

「リニス、ここまでよ。」

「何を…」

「貴女も気付いたのでしょう? 既に虚数空間は開いた…後はただ崩壊があるのみよ。」

「…っ、貴女には未練は無いのですか!? フェイトが、アリシアが居るこの世界に思う所が無いのですか!?」

 

魔法が届かない今の私がプレシアに届かせられる物があるとするなら、それは言葉くらいだ。せめてプレシアの心に未練を産む事が出来れば…そんな思いで言葉をひねり出す事しか出来ない。

 

「私がこの世界に何の未練も無いと…本当にそう思っているのかしら?」

「…え?」

 

だからプレシアの言葉に一瞬、全ての思考が飛んでしまった。

大き過ぎたその意識の空白は私に致命的な隙を生み出し…

 

「…あぐっぅ!」

 

プレシアのフォトンバレットをまともに受けてしまった。

腹部に受けた魔力ダメージの重さに思わず膝をつく。初歩的な魔法でこれほどの威力…! ここに来て再び実力の差を痛感する。

 

「私がようやく振り切った思いを散々引っ掻き回しておいて…」

 

先程よりも近くから聞こえる声に、プレシアの接近を気付かされた時には既に首元に杖を突きつけられていた。

 

「よくそんな無責任な口を利けたものね?」

「…だったら、何故方法を探そうとしないのですか…?

 何故、彼の提示する可能性から目を背けるのですか!」

「時間が無いのよ。不確かな生存よりも確実な抹消を取る…それが研究者()の取るべき選択よ。」

「逆です! 安易な死よりも、一縷の生存の可能性に賭ける事こそ子を思う母親(貴女)の取るべき選択です!」

「っ! …減らず口を。」

 

漸く分かりました。プレシア(貴女)は研究者に徹する事でこの世への未練を振り切ったのですね…

ならば尚更死なせる訳には行かない! 母親としてではなく、研究者のまま死ぬなんて…母親(貴女)に憧れた私の心が許さない!

プレシアの一瞬の隙を突き、杖を腕で弾いて距離を取ると今まで使用を控えていた魔法を…

 

「『Thunder …』…なっ!」

「…!」

 

その瞬間、玉座の間に爆音が響く。

私の魔法ではない。爆発は私の左後方から…

振り向いた私の目に映ったのは、待ちに待った最後の条件…

 

「プレシア・テスタロッサ! 管理局法違反の疑いで…ウグゥ!!」

 

時空管理局員の到着だった。…何故か腹部を抑えてうずくまってしまいましたが…。

 

 

 


 

 

 

魔法で拓いた道を駆け抜けると、プレシアがリニスらしき人物と対峙している光景が見えた。プレシアが交戦していた人物はどうやらリニスだったらしい。何故かは不明だが…詳しい事情は後回しだ。

 

「プレシア・テスタロッサ! 管理局法違反の疑いで…ウグゥ!!」

 

向上を述べながら周囲の状況を把握しようとして…嫌なものが見えた。

再び開いた古傷の痛みに思わず呻く。

…くそ、この世はこんなはずじゃない事だらけだ!!

 

「クロノくん、どうしたの!?」

『クロノくんごめん! そう言えば説明するの忘れてた!!』

 

二人の心配する声が…待て。

 

「エイミィ、知っていたのか…?」

『ご、ごめん。教えようとは思っていたんだけれど、その時に丁度小規模な次元震が起きちゃってつい…』

 

…いや、これは仕方ないか。うん。次元震を優先して対処しようと言う思考は管理局員として当然の事だからな。うん。

 

「…次からは、気を付けてくれると助かる。」

『う、うん! 本当にゴメンね!』

「えっと…?」

 

なのはが不思議そうに見つめてくるが、あくまで一般人。内部事情は伏せる他無い。

 

「気にしないでくれ、古傷が疼いただけさ。」

「う…うん…?」

 

既に折れそうな心と身体に活を入れ、可能な限り()()()()を視界に入れない様にプレシアを見据える。

…アイツ、今までにあった事が無い銀髪オッドアイだったよな…成人だったし。…管理局に入ろうとするのかな…いや、考えるな!

 

「プレシア・テスタロッサ! 貴女には違法研究を始めとして、複数の容疑がかけられている。

 …同行して貰おうか!」

「おーい、クr…管理局員さーん!!」

「何でよりにもよってお前がこっちに来るんだッ!!」

「え、俺なんかやっちゃいました!?」

 

折角目を逸らしていたと言うのに! いったい何の用だ!?

 

「…要件は何だ。」

≪あっ、プレシア様の事なんですけど…≫

 

プレシア…()…?

 

≪お前、プレシアの関係者か?≫

≪あ、元執事ッス。≫

≪プレシア・テスタロッサを見逃せと言うなら聞けん頼みだ。≫

≪いえ、そうではなく…確保は任せて欲しいんです。≫

≪何…?≫

 

 

 

聞けばプレシアの計画から目的まで嘘っぱちだったようだ。…嘘を吐いた理由はなんとなく察しが付く。

それもまた娘の為、か…

だがそれはそれとして罪は罪だ。不幸中の幸いか今回の事件では被害がほぼ0にまで食い止められていた為、極刑になるような事は無いだろうが…余罪を含めて考えれば、どの道プレシアの体は釈放までは持つまい。

 

≪それでも良いんだな? 後で判決を聞いて文句を言うんじゃないぞ。≫

≪プレシア様の体を治す当てはあります。…せめて、逮捕は体を治してからって訳には行かないですかね?≫

≪…どれくらいかかる。≫

≪遅くても一ヶ月…偶然が重なれば、今日中にでも。≫

 

…極端だな。いや、なるほど…そう言う事か。

 

≪良いだろう、作戦があるのなら手短に話せ。≫

 

 

 

≪…なるほどな、アースラにはこちらから連絡しておこう。≫

≪あざっす!≫

 

リニスのバインドで拘束した瞬間にアースラへ転移…そのまま時の庭園が虚数空間に沈めば、プレシアの計画は潰える。…なるほど、確かに筋は通っている。

だが、果たしてプレシア程の大魔導士がその弱点に気付いていないものだろうか…?

…まぁ良い、こちらにも大いに利のある話だ。乗っかってやろう。

 

≪エイミィ、そう言う訳だ。いつでも転送できるようにしておけ。≫

≪う、うん…≫

 

プレシアの事を誰より長く見てきた使い魔と転生者のお手並み…見せて貰うとしよう。




クロノくんの胃袋に痛恨の一撃!

あ、クロノくんの『プレシアの体は釈放までは持つまい』と言うのはあくまで
『プレシアの死が近い』と言う意味です。『何十年も出られないような重罪を犯した』と言う意味じゃないです。(重罪が無いとは言っていない)

実際プレシアさんの余罪ってどれくらいあるんでしょうね?

アニメで出てきた分だと確か『違法研究』とか『管理局法違反』とか大雑把な感じだったと思うので、私は『プロジェクトF.A.T.E』と『ジュエルシードをばら撒いた一件』と言う感じで進めているのですが…アリシアに関わる事以外で罪を犯すとは思えないですし…
ヒュードラの一件はアニメではあまり触れてなかったはずですし、小説版の設定流用するしかないのかな…
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