転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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超難産!

盛大に遅れてしまい、申し訳ありません!


そして日常へ

時の庭園での決着がついてから数日が経過した。

その間俺を含めた転生者達は、地球を離れる皆との思い出作りに色々な事をした。

話をしたり、ゲームをしたり、フェイトにリベンジを申し込んだ転生者も何人かいた。…全員漏れなく返り討ちにあっていたが。

一番迫っていたのは神場だった。対象を指定する広範囲のバインドと言う新魔法はフェイトの動きを確かに捉える事が出来たのだが、直後にアリシアに切り替わった途端に振り払われてそのまま倒されてしまった。どうやら魔力波動で対象を選んでいたらしい。

神場は「そんなんチートやん!?」と言っていたが、それを言うならお互い様だと思う。

 

本当に色々楽しい時間だったが、そう言う時間は得てして早々に過ぎ去ってしまう物。…今日は皆との別れの日だ。

 

 

 

待ち合わせは海鳴臨海公園。幾度と無く待ち合わせに使われ、時に決戦の舞台にもなったこの公園はもうある種のパワースポットなんじゃないかと思う。

 

「本当に行っちまうんだな…神宮寺。」

「あぁ…前にも言ったように例の変化によって一悶着起きるかもしれないしな。

 それに、純粋に向こうの生活にも興味はある。」

 

俺にとって何より衝撃的だったのは、神宮寺も向こうについて行くと言った時だ。聞けば温泉旅館に行った時には決めていたらしい。

プレシアの生存によってフェイトの未来が変わるかもしれないからだと、ユーノから教えてもらった。学校への手続きはもう済んでいるらしく、表向きには海外への転校と言うことになるらしい。

 

「…案外寂しいもんだな。幾つになってもこういうのは。」

「お前が管理局に入った時にまた会えるさ。多分その時は俺が上司になってるがな。」

「神宮寺…皆で話したんだけどよ、お前の王の財宝に俺達の魔法存分に詰めて持って行ってくれよ。…そうすりゃ俺達は向こうでも一緒に戦えるだろ?」

「神場…へへ、ありがとよ。」

 

神宮寺はそう言って空間の揺らぎを作り出し、皆がそれぞれの魔法を放つ。

相変わらずの銀一色だが、魔力刃ばかりだった以前とは違い砲撃魔法や属性が付与された物、オリジナルの魔法…そして『謎の銀色の玉』まで様々だ。

 

「おい、神場! それはもう要らねぇって何度も言っただろうが!?」

「バッカお前、代替の効かない物程『あの時貰っておけば良かった』って後悔するんだよ!」

 

 

 

「皆は相変わらずだね。…最後の数日間、一緒に過ごして皆そんなに悪い人じゃないって思えたよ。やっぱり直接話さないと分からないものだね。」

「…うん、そうだね。私もそう思うよ。」

 

こんな時までいつも通りにバカ騒ぎをしている奴らをよそに、俺もフェイトと別れ前の最後の会話をしていた。

 

「なのはは皆のところに行かなくて良いの?」

「うん…神宮寺君とはちょっと前に話したの。その時に私も魔法をプレゼント…やっぱり考える事は皆一緒だったみたいだね。」

 

どちらからともなく、二人揃って海を眺める。

ジュエルシードの捜索中、待ち合わせの際にはよく海を眺めて待ったものだ。

 

「…こうして海を見ていると、なのはとの決闘を思い出すよ。」

「フェイトちゃんも? …うん、私もちょうどそう思ってたんだ。」

 

こうして二人で海を見ていると、あの決闘を思い出す。

数日前…俺とフェイトは、今眺めている海の上で戦ったんだ。正真正銘、お互いに出せる全力を出して。

最後の一瞬、どっちが勝ってもおかしくなかった。例えば今もう一度戦ったとして、もう一度俺が勝てるかは分からない。

フェイトはあれからまた強くなっているのだから。

 

「…なのは。」

「…何?」

「最後の戦い、負けた事は悔しいけれど…それ以上に、私は楽しかった。

 自分の出せる全部を出せて、なのはの出せる全部を見せて貰った。…スターライトブレイカーは、正直怖かったけどね。」

「あ、あはは…

 …うん、私も楽しかったよ。

 フェイトちゃんが次にどんな魔法を使うのか分からなくて…一瞬も気が抜けない戦いだった。

 でもその一瞬一瞬毎にだんだんフェイトちゃんの事が分かっていって…それが凄く嬉しかった。

 …スターライトブレイカーの事は、ごめんなさい。」

「い、良いよ!? 気にしてる訳じゃないから!

 何度も言ったけど、なのはのおかげで姉さんと会えたんだから。」

「…うん、じゃあ私ももう気にしないようにするね。」

「うん。…」

「…また勝負したい?」

「…そうだね。やっぱり、負けっぱなしは嫌かな。」

「だったら…」

「でも、今は我慢するよ。

 裁判に向けてやる事がいっぱいだからね。」

「フェイトちゃん…」

「…その代わり、色々終わったらきっとまた勝負しよう。

 今度は私と姉さんのタッグマッチ。きっと今よりも、もっともっと強くなるから。」

「うん! 私ももっと強くなるよ…()()()()ね。」

「…うん、楽しみにしてる。」

 

フェイトと次に会えるのはいつになるのだろうか。…闇の書事件が起きたとしても裁判の状況や管理局のやり方次第では地球で再会できるとは限らない。フェイトだってわかっているはずなのにまた勝負しようと言ってくれるのは、やっぱり優しさなんだろう。

 

「あ…そうだ、フェイトちゃん。はい、コレ。」

「紙袋…? これって…」

「うん、翠屋のシュークリーム! お母さん達にフェイトちゃんの事を話したら持って行ってあげてって!

 プレシアさんやクロノ君達の分もちゃんと入ってるから!」

「なのは…ありがとう。

 私も何かお返ししたいけど、ゴメンね…今は何も…」

「だ、大丈夫だよ! 何かが欲しくて渡すんじゃないんだもん!」

 

こう言うのはリターンを期待してする事じゃない。

強いて何かを望むとしたら、ここであった事を忘れないで欲しいというくらいだろう。

 

≪…なのは、私にできる事一つだけあるけど…≫

≪え?≫

≪…リボンの交換、する…?≫

≪うっ…≫

 

…フェイトには俺が転生者である事は話してある。俺がなのはのRPをする事になった顛末も含めて全てだ。

だが、フェイトはそもそもこう言う『原作』を意識した行動を取る事にあまりいい感情を抱いていなかった。

つまり、今フェイトは俺にこう言っているのだ。「お返しに『なのはRP』に付き合おうか?」と…

 

≪…いや、大丈夫だ。友達に送るプレゼントにリターンを求めるなんてナンセンスだろ。≫

≪本当に? 皆は何か期待してるみたいだけど…≫

≪ああ、大丈夫。フェイトも言ってくれただろ?

 『高町なのは』が『高町なのは』であり続ける必要は無いって。

 『高町なのは』と違う経験を積んで、俺は俺なりの『なのは』になるよ。≫

≪…ふふ、そっか。≫

「…ありがとう、なのは。」

「ううん、どういたしまして。」

 

…そして別れの時がやってきた。

目の前に並んでいるのはフェイト(アリシア)、アルフ、リニス、プレシア、ユーノ…そして神宮寺。

原作よりも随分増えたものだが、その増えた人数の大半は誰かの努力によって助けられた者達だ。

こうして誰かが救われる度に未来は変化して行く。それが純粋に良い方向へ近づいて行くのか、それとも災いを呼び寄せるのか…今もその不安はあるし、きっとこれからも長い付き合いになるだろう。

だとしても…

 

「…皆、ありがとう。

 皆のおかげで母さんを助ける事が出来たし、姉さんにも会えた。…本当に感謝してる。

 …もちろん、()もね! ありがとう!」

「フェイトが随分賑やかな事になっちゃったけど、こう言うのも悪くないねぇ。

 …フェイトとアリシアが今もこうして笑えてるのはあんた達のおかげさ。…ありがとよ。」

「皆様にはフェイトがお世話になりました。私も貴方方に最大限の感謝を…

 …いつか、私の現主にもこうしてお礼を言いたいものですね。」

「貴方達には感謝の思いでいっぱいよ。

 まさかフェイトばかりか事件の主犯である私まで助けて貰えるなんて思わなかったわ…

 いつか私が罪を償い終えたら、その時は何でも言ってちょうだい? 出来る限り力になるわ。」

 

こうして誰かが新しい幸せを手にしていくのを見られるのなら、未来を変える恐怖とも戦える。

それにこうも思うのだ。

いつか未来を変えて行った先に絶望が待ち受けていたとしても、今のように新たに芽吹いた希望の力がそれを打ち破る助けになってくれるんじゃないかと。

 

「…なのは、皆。本当にありがとう。

 皆のおかげで大きな被害が出る前にジュエルシードを回収できて、僕もスクライアとしての使命を果たせるよ。」

≪特になのは。…最初の()()()、貴方が来てくれて助かったわ。

 もしあのままだったら今頃私は何処かに閉じ込められていたかもしれない。ありがとう。≫

≪こちらこそ、ユーノにはたくさん助けられたよ。

 ユーノとこうして念話してる時は俺は俺で居られた。…本当にありがとうな。≫

「じゃあな、お前ら。 俺は先に管理局で頑張るからよ、お前らも()()()()()ぞ。」

 

そして、

 

『…別れの挨拶は済んだだろうか。

 今回の事件、君達には大いに助けられた。

 僕も執務官として、一人の魔導士として礼を言わせてもらおう。ありがとう。』

 

事件は解決し…

 

『そして、クロノ・ハラオウンと言う一人の人間として言わせてもらおう。

 君達のマナーの悪さには目に余るものがある。君達が管理局に入ったあかつきには徹底的に扱いて貰うから覚悟しておけ!』

「ちょ、おまっ…」

『クロノ君…』

 

 

 

『…ではこれにて失礼する。いつか君達が管理局を志した時、また会おう。』

 

 

 

…日常が帰ってきた。

 




第1部、完!

そして神宮寺君は管理局へ…
ほかの転生者にも活躍させてあげたいので強キャラには一時離脱して貰おう…!
因みに他の銀髪オッドアイがついて行かない理由ですが、そもそも温泉旅館に行った6名以外はスカウトの話を知りません。
6名の内2名は親がおり、相談の結果義務教育が済むまでは地球に残る事になりました。
残り4名…神宮寺を除く3名は闇の書事件が終わるまでは残るようにしたという感じです。

なのはがフェイトにカミングアウトした件は短編で書こうと思います。
と言うのも本編に入れようとしたところこの回の文章が倍近く伸びた上に時間が飛びまくってしまい、今よりも更に読みにくくなってしまったのです。

と言う訳で、A's編までの間に1話完結の短編をいくつか書きます。
書く事が決まっているのは、
「なのは、カミングアウト」
「セバスチャンの秘密」
「はやてさんとヴォルケンリッター」
の3本です。
文章量が短く出来ればもしかしたら上2つは纏めるかも? そして3つ目は分割するかも?
後、そろそろ忘れられそうな『予言』関係の事もちょろっと書く予定です。

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