ギャグは無しです。
第97管理外世界…地球を離れてすぐの事。
クロノに呼び出された私達は会議室に集められていた。
「さて、君達にはこの後行われる裁判についての打ち合わせがある。
先ずは事件の流れについて改めて確認をしよう…と、これでは資料が足りないな。
ちょっと取って来るからしばらく待っていてくれ。」
そう言ってクロノが席を外したところで、アルフが口を開いた。
「事件の流れって言ってもねぇ…正直あたしとフェイトはジュエルシードを集めただけだし、あまり詳しくないんだよねぇ。」
「私もユーノの輸送船への攻撃とか、ジュエルシードを集める理由とか何も聞かされてなかった。」
「…そうね、あの時の私はそう言う情報を意図的に隠していたもの。
知っているのは私と
「セバスチャン…確か、プレシアさんの研究と計画の両方に関わっていたって聞いたけど…」
セバスチャン…消滅する筈だった私の新たな主にしてプレシアの研究の助手。そして、プレシアの計画に深く関わったと言う魔導士。
彼は時の庭園から救助された数日後、このアースラから忽然と姿を消した。
クロノが言うには正体不明の魔力反応が計測された事から何らかの魔法により転送されたのは確からしいが、転送先に関しては依然不明のままとの事だ。もう一つ解っている事があるとすれば、私が今も存在できている以上、彼もまた生きているという事だけだろう。
「…彼の捜索に関してはこちらも続けている。実行犯ではないにしても、全くの無関係でもないからな。
まぁ、彼に関しては一度置いておこう。先ずは目前に迫った裁判が最優先だ。」
いつの間にか戻ってきていたらしいクロノがそう締めくくり、テーブルに様々な資料が広げられていく。
その様子を見ながら、私は数日前の彼との会話を思い出していた…
「おや、リニスさん。こんなところに居たのですね。」
「セバスチャン…私に用事という事は、例の?」
「えぇ、約束でしたからね。」
約束と言うのは時の庭園でのことだ。ちょっとした会話を切っ掛けに彼が時の庭園にやってきた時の事を思い出した私は当時の彼の言葉に違和感を覚え、問いただそうとした。
しかしその時は一刻を争う状態だった為、あれこれ聞き出すのは後回しに最低限必要な事だけを聞き出しただけで終わったのだ。
≪そうですね…先ずは何からお話ししましょうか。≫
人目に付かない場所が良いと言う事で、私に貸し与えられた部屋に場所を移したところで彼がそう切り出した。
≪では先ず…貴方を時の庭園に送り出した『ジェイル・スカリエッティ』の目的は何ですか?≫
≪そうですね…私も彼の目的についてすべてを知っている訳ではありません。
なので私が知っている部分…私を時の庭園に送り込んだ目的に関してのみお答えさせていただきます。
≪
彼の言葉で脳裏を過ったのは、私を契約魔法で助けた後のフェイトと彼のやり取りだ。
彼が話す言葉の中で妙に心に残ったフレーズ…フェイトも詳しく聞こうとしていたが、最後まで誤魔化し続けたフレーズ。それが『より良い未来の為に』だった。
≪…あれは本当に口を滑らせました。貴女を救う事が出来た事で舞い上がってしまって、つい…≫
≪あの時の貴方の言葉からは、何かしらの組織の存在を感じました…その言葉について詳しく聞かせてもらう事は出来ませんか?≫
≪…そうですね、彼らについては教えておきましょう。きっとフェイト様ももう直彼らの存在を知る事になりますからね。≫
≪なんですって…?≫
≪『ハッピーエンド教団』…第1管理世界ミッドチルダにのみ拠点が存在する『幸福な結末』を目指す、一種の宗教のような物です。
『より良い未来の為に』と言うのは、彼らが共通して掲げるスローガンなんですよ。≫
≪…宗教?≫
≪あくまで『宗教のような物』ですね。コレと言って何かを崇めている訳ではないようなので…
なんでも私がこの世に生まれる前は別の名前の教団だったとか、前身となった組織は古い歴史を持っているとか噂には事欠きません。
更に言うと勢力としては小規模ですが、布教に関しては随分と精力的でして…何を隠そう私も勧誘された事があるんですよ。
まぁ、結局私は入信しませんでしたけどね。その時私はジェイル・スカリエッティの下で猛勉強してましたし。≫
≪何故所属していない組織のスローガンが貴方の口から出てくるんです?≫
≪…彼らは接触してきたんですよ。『ジェイル・スカリエッティ』に。≫
≪!≫
彼らは誰も知らない筈の研究所に突然現れたのだと言う。
恐らくは尾行でもされていたのだろう。彼らは勉強中だったセバスチャンには目もくれず、ジェイル・スカリエッティに目を付けた。そして…
≪彼らはジェイル・スカリエッティの研究費の大半を負担する代わりに、ある契約を持ち掛けてきました。
その内の一つが…≫
≪『未来を変えられるか』の確認…≫
≪そう言う事です。
もっともジェイル・スカリエッティは別件で何かしらの依頼を受けていたようでしたが、そちらについては不明です。知っているのは当事者だけでしょうね。≫
≪…そうですか。≫
ミッドチルダに存在する謎の団体…その目的から察するに、恐らくはフェイトやセバスチャンと同じ出自の者が立ち上げた物と考えて良いでしょう。
元々存在していたという教団を乗っ取ったのか、その前身からそうだったのかは不明ですが…
そして恐らくはプレシアよりも格上の研究者であるジェイル・スカリエッティが彼らと交わした契約。
…自分で聞き出した事ですが、随分と考える事が増えてしまいましたね。
≪他には何かありますか?≫
≪…では、最後に一つ。
貴方が未来を変えるために時の庭園に来たのは『貴方自身の意思』でしたか?≫
≪勿論です。
確かに私には未来を変える事が可能か確かめると言う使命がありましたが、貴女方を助けたいと思った事に嘘はありません。≫
この質問に深い意味は無い。
ただ、セバスチャンが私達を助けた理由が何処にあったかを確認したかっただけだ。
…それでも、
≪…分かりました、その言葉を信じましょう。≫
精神リンクから伝わって来る真摯な思いは…なかなか悪くはないものですね。
≪確かめたかった事は以上です。≫
≪いえ、私としても貴女達とは良い関係で居たいですからね。
…では私は一足先に私の部屋へ戻らせていただきます。≫
そう言って部屋を出ていく彼に、僅かな違和感を覚えた。
≪? はい、答えていただきありがとうございました。≫
しかし当時の私はそれを深く考えず、ただ見送った。…兆候は確かにあったのに。
…そして彼は私達の前から姿を消した。
私の部屋に
『管理局員に何か聞かれたら『ジェイル・スカリエッティ』以外の事は話してしまっても構いません。
-P.S.
この紙とインクは食べられる素材で出来ているので、読み終えたら食べてしまってください。
ラムネ味です。』
と言うメモ書きを残して。
「…と、裁判ではこういう流れになるだろう。
プレシアへ下される処罰としては恐らく、十数年間の懲役刑辺りに落ち着くと想定されるな。」
色々と思いに耽っている間に裁判の話は随分と進んでいたようですね。
とは言っても、勿論マルチタスクでしっかりと内容は把握していますが。
「あら、想像していたよりも随分と軽いわね?
最低でも30年はお世話になるかと思っていたのだけれど。」
「今回の事件で被害者らしい被害者がいないと言うのが幸いだった。
…地球で巻き込まれてしまった子は居たが、彼女についても無傷だったのが救いだな。」
「そう…その子にもいずれ何かお詫びしないといけないわね。」
「一応言っておくが、裁判のこの結果はあくまで想定だ。
これ以上悪くなる事はあっても、正直これよりも軽くなるという事は無いだろう。
管理外世界へ意図的にロストロギアをばら撒いた事は事実なんだからな。」
「えぇ、覚悟しているわ。」
その後も様々な想定に合わせた証言の内容や注意する点についてのおさらい等を繰り返し、
時間は過ぎて行った。
教団の名前については割と雑に決めました。
ネーミングセンスの無さが光るぜ…設立者のな!(とんでもない責任転嫁)