転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ヴォルケンリッター登場です。

ただ、古代ベルカなのでギャグは少なめ。


短編その3

『地球最後の日』…創作の界隈では割とよく見るテーマだ。

古くは宗教で、最近では映画やゲームでその崩壊の後を描かれる事も少なくない。

だがそれを人類が体験するのはもっと『後』だと思っていた。…少なくとも、私が生きている内は訪れる事は無いだろうと。

 

突然だった。時刻は午後の7時を少し回った辺りだろうか? 帰宅の為に会社を出て歩き出した直後、遠くに見えたビルが砕けるのが見えた。

気付けば夜の筈なのに昼間よりも明るく、破壊の波はあっと言う間に私を飲み込み…最後の審判は訪れた。

…最も、私の知っているそれとはずいぶん違ったが。

 

 

 

その後告げられた主の言葉を心の中で反芻する。

 

素晴らしい! 何という事だ! 私達は罰を受けた訳ではなかったのだ!

心に残ったのは感動だった。

 

 

 

私は願った。遠く海を越えた先、日本のアニメーションの世界に行きたいと。

私は求めた。かつてその国で武を競ったと言うサムライのように戦いたいと。

私は祈った。彼らの言葉を理解し、私もまたそれを話したいと。

 

主は全てを叶えてくれた。

多少思っていたシチュエーションとは違ってしまったが、腰に()いた刀はまさに私が求めた得物だ。前世において侍が振るったと言う《それ》に比べて少々形は違うが、それでもかの侍のように戦えると思うと興奮が冷めやらない。だが、冷静に周りを観察すればどうやら感動ばかりもしていられないらしい。

周囲には破損し、煙を吐き出すばかりとなってしまった端末の数々。目の前には敵の壁…そして、振り返れば5人の仲間達。その内の一人、白銀の長髪が美しい女性が口を開いた。

 

「『夜天の魔導書』の起動を確認しました。現在緊急時につき、戦闘を優先します。

 夜天の主に集う雲、ヴォルケンリッターよ。敵性勢力の無力化を。」

 

私は彼女の話した日本語に心躍らせながら、同じく流暢な日本語で返した。

 

「うむ、心得た! 私の名前はシグナム。烈火の将、シグナムだ! 尋常に、勝負!」

 

 


 

 

…あれ、シグナムってこんなキャラだったっけ?

一瞬疑問に思ったが、一度冷静に考えてみる。もしかしたら長い年月であんな感じのクールさを獲得しただけで、昔はブイブイ言わしてたのかもしれないと…

とりあえず目の前のシグナムは「次はそちらの番だ」と言うように俺を見てるし、ここは俺もシグナムに倣って名乗りを上げるとしよう。ここは…そうだな。

 

「…俺の名はヴィータ。紅の鉄騎だ。…その、参る。」

 

…くっ、シグナムの何故かキラキラした眼差しが辛い。

名乗りの途中で妙に照れくさくなって目を逸らしてしまった。

意図的に口調を『俺』に変えたのは周りの反応を見る為だ。俺と同じ境遇ならこれで分かるだろうし、そうじゃなければ若気の至りって事で後で治せばいいからな。

そもそも何で俺がヴィータなんだ…? 俺って転生の時になんて言ったっけ…

 

―『デバイスは変形する武器とか使ってみたいです。『それどうやったらそんな変形するの?』みたいなやつ。』

―『武器の指定を細かくですか? うぅ~ん…ロマンがあるって言ったら、ドリルかなぁーやっぱ。』

―『ちなみに不老不死って出来ます? …あ、やっぱり無理? えっ、不老だけなら出来るんですか!?』

 

あっ…はい。原因俺でしたね、すみません。

謎変形機構のドリル付きデバイスをぶん回す永遠の幼女(エターナルロリータ)かぁ…

まぁ、良いや。これくらいの事はささっと割り切らないとこの先はかなり大変そうだしな。

 

…で、次の自己紹介はどっちだ?

 

 


 

 

「…蒼き狼、ザフィーラ。参る。」

 

…なるほど、こうなったか。

徒手空拳で戦うと言うのなら、確かに『前世の戦いのノウハウ』は活かせそうだ。

『ワイルドな風貌』…まぁ、確かにワイルド(野性的)と言えばワイルド(野性的)だな。狼だしな。

とは言え前世でコンプレックスだった童顔でもないし、有りと言えば有りだが…ザフィーラとして生まれるのは予想外だった。

正直ザフィーラとは徒手空拳同士で組手とかしたかったんだが、なってしまったのは仕方ない。

見た感じじゃ、シグナムとヴィータも俺と同じ境遇臭いな。特にヴィータは同じ境遇の者を探す事に精力的らしい。

俺もこういう場合は拗れる前にさっさと話してしまった方がいいとは思うが、それもシャマルの様子を見てからだな。

 

 


 

 

「風の癒し手、シャマル…です。皆よろしくね。」

 

どうしよう…まさかこんな事になるとは。

『魔法は使いたいけど前線には出たくない』とか願ったからか?

それとも『みんなに頼られる人になりたい』って言ったからか?

 

とにかく転生者っぽいシグナムとヴィータには後で話すとして、ザフィーラはどっちだ!?

他の二人と違って違和感が無いから判別しづらい。

…丁度敵がいるし、戦い方を見ていれば分かるだろうか。

しかし古代ベルカ…想像してたよりも相当物騒な時代みたいだ。

目が覚めてすぐに戦闘なんて…

 

「我らヴォルケンリッター! 夜天の主の命に従い、敵を討つ!」

 

シグナムの号令と共に皆が敵陣に突撃を…

…ちょ、誰かフォーメーション意識して!? 全員突っ込んだら誰が後衛職の俺を守るのさ!?

特に『盾の守護獣』おいコラ!! ザフィーラお前絶対転生者だろ!?  

 

 


 

 

…た、助かった。

何とか間一髪のところで『夜天の書』が無事に起動できたのは不幸中の幸いだった。

守護騎士達の実力は私の想定を遥かに超えており、研究エリアまで侵入してきた敵国の騎士達をあっと言う間に鎮静化して見せた。

…ただ、やはり慌てて起動させた為か少々不具合があるようだ。

守護騎士達が明らかに個々の感情を獲得してしまっている…永遠を生かされるプログラムが感情を持ってしまっては、いずれその境遇に悩まされる日も来るだろう。しかし、その不具合を修正するにしてもここの設備はもう使えそうにない。

国の深部であるこの施設に敵の騎士が居る以上、もう我が国の敗北は決まったようなものだ。

長時間ここに居続けるのは拙いし、何より先程の戦闘で一部機材が破損してしまっている。

今はこの夜天の書の力を以て何処か安全な拠点を探す事に専念しよう。不具合の修正は…出来るようになってからかな。

兎にも角にも、今は私を助けてくれた彼女達を労ってあげよう。

想定外ではあるが一応は主となってしまったのだし、きっとこれからそこそこ長い付き合いにもなるだろう。

えっと、とりあえず…

 

「助かったぞ、雲の騎士ヴォルケンリッター達よ。」

 

こういう時はとりあえず主っぽい言い方で貫録を…

 

「む?」

「あん?」

「…」

「えっと…?」

 

だが帰ってきた反応はまさに『誰だお前?』とでも言いたげに訝しむ4対の眼だった。

…いや、待って? もしかして私の事を主とも認識してない?

不具合ってここまで深刻な感じ!?

 

「え、えっとぉ…私が、その、『夜天の主』…みたいな?」

 

…頼む! 伝わってくれ!

 

「…あぁ! 貴女が今代の我らが主か!」

 

えっ、()()って何!? 初代だよ!?

 

「えぇ…こいつが? なんか騎士って感じじゃねぇな。」

 

だって研究者だもん! 軍事国家って言っても誰もが戦える訳じゃないんだよ!

 

「言葉を慎め、ヴィータ。夜天の書を所持している以上、例え我らに劣っていようとその者が主だ。」

 

…どうしよう。夜天の書を手放した途端に襲われそう…

 

「…えっと、頑張ってくださいね!」

 

シャマル…何を頑張ればいいのか教えてよ…

 

「主よ。敵性勢力の無力化を確認しました。次の指示を。」

 

管制人格の言うとおりだ。悩むのも話し合うのもここじゃ拙い…

 

「…とりあえずここに居続けるのも危険なので、先ずは何処か安全な場所まで移動します!

 道中の護衛をお願いします!」

 

そして私は慣れ親しんだ国と研究に別れを告げたのだった。

 

 




ヴォルケンリッター全滅(全員転生者的な意味で)

Q.プログラムであるに転生できるの? と言う疑問が出ると思いますので、あらかじめ返答を置いておきます。

A.レイハさん「…」


唐突なキャラ紹介

○シグナムさん

前世はアメリカ人。魔法少女とサムライが大好きだった。
願いが反映された結果、レヴァンティンの見た目が若干刀に近くなっている。


○ヴィータ

変形とドリルが大好き。何故グレンラガンの世界に行かなかったのか…コレガワカラナイ。
旅の途中、夜中に一人アイゼンのドリルを指で撫でながら悦に浸っている姿が確認されている。


○ザフィーラ

前世はプロの格闘家。プロとは言ってもトップではない。
戦い方は耐えて反撃よりも躱してカウンタータイプ。


○シャマル

元々前に出るタイプではないが、たまには頼られたいと言う欲求の狭間で揺れ動いた結果こうなった。
旅の中で自分の戦闘能力の無さに悩んだ結果、
クラールヴィント・ペンダルフォルムの『紐』の部分を使って暗器のワイヤーのように絞め落とすと言う戦い方を編み出したが絵面がヤバく、更には半ば『質量面』に足を踏み入れている為封印指定になった。
振り子部分を魔力で巨大化させてぶん殴る戦い方も編み出したが、やはり絵面が(ry


○研究者のAさん(初代夜天の主)

とある国の研究所に勤めていた女性。当時24歳。
夜天の魔導書の開発には末端として参加していたが、なんやかんやで初代夜天の主になった。
旅の途中で
『感情を持つ事がこの先苦しくなるかもしれない。今の設備ならば感情を取り払う事も出来るぞ』
とヴォルケンリッターに問うが『この感情があるから今笑えるのだ』と言われ、以降その話はしなくなった。
30代の頃旅の途中で見つけた平和な国に定住し、その後はヴォルケンリッター達と割と楽しい人生を送った。


没案
シグナムの自己紹介
「ワタシの名前はシグナムデース! よろしくお願いしマース!」
理由:これは流暢な日本語じゃない。
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