はやてさん、はやて派の転生者(一部)、リーゼアリア、グレアムが登場します。
前世より近く感じる歩道。遠く感じる歩行者用信号機…
こうしてのんびりと街を歩くと言うのも随分と久しぶりだな…そんな事を考えながら手元の地図と周りの光景を見比べつつ、6歳児には少々遠い目的地へと足を動かす。
何故俺がこんな真昼間から一人でこんな事をしているのかと言うと、『とある施設』を探しているからだ。
今の俺の年齢では自動車の免許なんて取れないし、スマホも無いこの時代に地図アプリなんて便利な物は無い。
それどころか転生した時から親もいない…と言っても、これは俺がおむつ交換に始まる数々の羞恥プレイを拒否した為だが。…話がそれたな。
ともかく、俺はこうして初めてのお使いを見守るような数多の視線に晒されつつも漸く目的の施設に辿り着いたのだ。
「風芽丘図書館…ようやく見つけた。」
そう、数多ある転生モノ二次創作に於いても八神はやてとのファーストコンタクト率No.1…俺の求める出会いの地…それがここ、風芽丘図書館なのである!
「お、また一人増えたぞ…しかし、やっぱり目立つなこの顔は…」
「…最初は要望通りのイケメンでラッキーって思ったんだけどなぁ…」
「そうか…? 俺はもう最初から絶望してたぞ…踏み台系のテンプレみたいなものだし…」
…まぁ、俺だけじゃないわな、こんな事考えるのは…
って言うか、
「まぁ、こっち来いよ。ここに来る奴の目的なんて、みんな同じだろ?」
「…そうだな。」
とりあえず話くらいは聞いておくか。
…ありえない。私が最初に抱いた感想はその一言に尽きる。
これは現実なのか? AAクラスの魔導士に匹敵する少年が6人…それもほぼ同じ顔。
そんな光景は本来この世界にあってはならない筈なのだ。
この第97管理外世界では魔法の素質を持って生まれてくる人間は極端に少ない。勿論
…過去形なのには理由がある。今のこの世界は管理外世界とは思えない異常事態の真っただ中なのだ。
最初に気付いたのは父さまだった。
ある因縁が父さまとこの世界を再び引き合わせ、父さまの計画が動き出したその時…私達が監視している少女の家の周辺をうろうろしている少年が見つかり、それは発覚した。
一部の地域、特定の年齢層を中心に異常な魔力値を持った人間が急増している…調査の結果明らかになったこの異常は父さまを大いに悩ませた。
管理外世界が管理世界からの何らかの干渉を受けていると取れるこの事態は、時空管理局に所属している身として本来本部に報告すべき物…しかし、それをする訳にはいかない事情も同時に存在していた。
この状況を報告すれば、この異常に気付いた経緯に関しての説明を求められる事は必至…だが私達の動きは管理局にも…いや、管理局にだけは知られてはならないのだ。
父さまは悩んだ。心の中で二つの正義がぶつかり合い、そして結論は下された。
初志貫徹…即ち、全てを隠蔽する。
私達の動きも、地球…
父さまは故郷すら天秤に乗せ、選択したのだ。計画の確実な達成を。
ならば私達は添い遂げる。父さまを支える為に。そして私達も背負うのだ。父さまを苦しめる因縁を、共に。
…とりあえず、今回の事態は父さまに報告しよう。私一人で判断するには些か荷が重い。
アリアからの報告に、ここ最近持ち直して来た胃が痛む。どうやら私の故郷はすっかり魔境へと様変わりしてしまったらしい。
報告書を持ってきたアリアをさがらせ、席を立つ。
…さて、と。
「今日の気分は…うん、ケアストMAX/ACEだな。」
棚から取り出した胃薬を取り出し、服用する。最近ではこのケアストシリーズ特有の苦みの良さも分かってきて、お気に入りの一品となっている。
即効性に加えて持続時間も中々に優れている為、きっとリピーターも多い事だろう。…流石に胃薬を語り合う友は居ないが。
…しかし、アリアが持ってきた情報はなかなかの爆弾だった。
6歳にしてAAクラスの魔導士に匹敵する魔力…これそのものは今の地球ではそれなりに確認されている。…本来これもおかしいのだが、今はそれ以上の異常事態が発生している為置いておこう。
アリア曰く、今回確認された6名の魔力波動は数日前まで確認されていなかったのに加えて、全員似たような風貌で親が居ないと言う共通点まであると言う。…これは明らかにおかしい。
まるで虚空から大量のクローンが突然現れたと言わんばかりでは無いか。
嗚呼…我が懐かしき故郷よ、何故そうなってしまったのか。
…数年前のあの日、やはり計画の露見を覚悟してでも地球の異常を報告するべきだったのだろうか? いや、きっとあの時に戻る事が出来たとしても私は同じ決断を下しただろう。『闇の書』との因縁がある限り。
…この日から約1年後の事だ。
報告にあった『銀髪オッドアイ』の特徴を持った500名以上の優秀な魔導士達が一斉に入局する事になり、地獄のデスマーチにリーゼ達共々巻き込まれたのは…
まさか地球の異常事態がこのミッドにまで及んでいるとは思わなかった。…私はあの日、選択を間違えたのだろうか。
あぁ、時が戻るのであればあの時の選択を…いや、だが闇の書は…いや…しかし…
図書館に入ると同時に感じる特有の匂いを、私は目を閉じて堪能する。
読書好きにとってはまさに癒しとなるこの匂いは、多くの書物を収蔵している図書館ならではの雰囲気を感じさせてくれる。
…一通り堪能して目を開くと、案の定この雰囲気を台無しにしてくれる
「よお、はやて! 今日もいい天気だな!」
会う度に天気の話題から切り出す『天気アグロ』の天気君。
「よお、はやて! 髪型変えたか? 似合ってるぜ!」
毎日のように変化してない私の髪型の変化を見抜く『髪型ミッドレンジ』の髪型君。
「よお、はやて! ジュース飲むか? 偶然自販機で当たりが出てよ!」
自販機で飲み物を買う度に当たりが出ると言う『当選コントロール』のラッキー君。
「よお、はやて! どんな本が読みたい? 取って来るぜ!」
私と話を合わせるためこの図書館の本の配置をほぼ暗記した『注文ランプ』のライブラリ君。
「よお、はやて! 今度の日曜暇か? 俺は空いてるぜ!」
毎週日曜日が暇であることをアピールし、予定を取り付けようとする『ナンパコンボ』使いのナンパ君。
「よお、はやて! えっと…髪型変えたんじゃないか? 似合ってるぜ!」
毎回話題を変えるけど、毎回誰かと話題が被る『ミラーコントロール』の鏡君。
彼等は『声が煩い』と司書さんに叱られた事で『小声で叫ぶ』と言う微妙に器用な技術を身に着け、大きな声を出せない分奇妙なポージングで自らをアピールする愉快な人達だ。
原作キャラ以外に転生すると皆銀髪オッドアイになるのか、顔では見分けがつかないので話の内容で見分けるようにしている。…もしかしたら何度か間違えていたりするかもしれない。
一見すると彼らは時と場合を考えずに付きまとって来る厄介者に見えるが…実際割とその通りである。
正直話をする事を拒むつもりは無いし一緒にいて楽しいと思う事も多いが、今私達が居るのは図書館の入り口。そんなところに車椅子1人と
「えっと…先ずは場所を変えませんか? ここでは他の方の邪魔になってしまいますし…」
「それもそうだな!」
こうして一言言えば直ぐに従ってくれる辺り、根は良い人達なのだろう。きっと八神はやてに会えた喜びで舞い上がっているだけなのだ。…中身は私だが。
まぁ要するに私が上手く手綱を握ってやれば良い。前世は自由に外も出歩けなかった私にとっても、彼等は大切な友達なのだから。
「よし、じゃあ行くか!」
「やはりここでは邪魔か。どこに行く? 私も同行する。」
「銀髪オッドア院。」
「ぶふっ! …クッソ、こんな事で…」
…まぁ、一つだけ彼らに言いたい事があるとすれば…
そう思って顔を向けると、彼らの後ろに修羅もかくやと言う形相を浮かべる司書さんの姿が…
彼女は彼ら全員の肩をグイっと一度に抱き、至近距離で私の言いたい事を言ってくれた。
「動きも、静かに…! ね?」
「「「「「「ハイ…」」」」」」
「…ふふ。」
あぁ、やっぱり彼らは面白い。
はやてさんの前世についてはA's編の1話目で書くつもりです。
以下いろいろな補足
・最後のはやてさん視点は1期開始ちょっと前の出来事です。
他は親無しパターンの転生者が転生して来て直ぐの出来事です。
・グレアム提督及びリーゼ姉妹は本人です。
・はやてさんのヘルパーは天使です。当然女性で名前は考え中…
・『当選コントロール』デッキのラッキー君の特典は『幸運』に関係無いものです。
『幸運』系の特典は程度によっては制限に引っかかる場合があり、強力な能力にはならないです。
更に言うと、彼は毎回自腹で2本目のジュースを買っています。