転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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ヤバいです。

日々増えていくUAでプレッシャーが凄いです。
こんなプレッシャーをみんな感じていたんだなぁ…


ズレていくもの、ズレていたもの

間に合った…!

 

いつもの時刻。

 

いつものバス停。

 

いつものバスに乗り込んだ。

 

いつものじゃないのはその人数。

 

俺と19人の銀髪オッドアイ達、それとユーノ。

 

合計20人と1匹。

正直乗れるのか不安だったが、問題なかった。

 

「なのはー!こっちこっちいぃ!?」

「えっ!?ユーn…フェレット!?」

 

はい、アリサとすずかにユーノがバレました。

しょうがないよね、腕に抱えてるんだもん。

 

「おはよー、アリサちゃん、すずかちゃん!」

「えっ、うん。おはよう…じゃなくて!」

「な、なのはちゃん、どうしたの?そのフェレット?」

「いや、そっちもだけど!なによその人数!しかも何人か寝てるし!」

 

そう、ユーノを家に置いて来れなかった理由がそれなのである。

 

「…」

 

封時結界を使える神谷くんが、バス停に着いた途端にダウンしてしまったのだ。

気絶した彼の顔は、何かをやり遂げた漢の顔だった…

 

流石にそんな彼にこれ以上の負担はかけられず、

残りの二人に封時結界が使えないか聞いても無理だと言う。

 

結果、ユーノには学校に着いたらカバンの中に隠れてもらう事になった。

 

 

 

「ふぅん、バス停に来るまでの間に拾ったのね…」

「朝から大変だね、なのはちゃん…」

 

ユーノはバス停に来るまでの間に拾った。嘘は言ってない。

 

「うん、怪我をしているみたいだから放って置けなくて…」

 

怪我といっても、残ってるのはかすり傷位だ。

ここに向かうまでの間、魔力を治療に回していたらしい。

 

「ふぅん…なんか見た感じ、思ったほど酷い怪我じゃなさそうね…」

「思ったほど?」

「ううん?何でもない」

 

アリサは早くもユーノを疑っているようだが、特に敵意は感じない。

やっぱり、この二人なら…

そう思うが、やはりまだ言い出す決心はつかない。

 

実際にユーノは襲われたのだ。

その事実が前以上に俺の心を縛り付けていた。

 

 

 

教室に着くと、今日も朱莉は眠たげに机に突っ伏していた。

この子もやっぱり転生者だったようだが、

今日は随分と助けられた。

 

「朱莉ちゃん、おはよう。」

「やー、なのはちゃん。おはよー」

 

やはりいつも通りで、さっきの騒動を微塵も感じさせない。

 

「さっきはありがとね。」

「んー?あぁ、フェレットくんの事かー。

 いーよ、いーよ。これからもどうぞ頼ってくれたまえ~」

 

いつものやり取りに少し癒される。

今日はいろいろありすぎて、早くも疲れ気味だ。

 

 

 

「えー、今朝の事なのですが、

 ○○の辺りで不審な光が確認されており、

 警察の方々が捜査に入るとのことなので皆さんは近付かないように!」

 

HRで担任の先生にそう告げられた時は思わず目を逸らしてしまった。

 

 

 

学校の昼休憩。

当然アリサとすずかに質問攻めにあった。

内容はもちろんユーノの事だ。

 

「さて、話してもらうわよ~色々と!」

「ふふふ、覚悟してよ~?」

「お、おてやわらかに…」

 

聞かれたのはズバリ、ユーノとどこで出会ったのか?

 

一番聞かれたくない所だ。

正直に答えればなんでユーノの場所に向かったのか?と言う疑問が生まれる。

それは朝に声が聞こえて、声の主を探していたら銀髪オッドアイに見つかって…

…それで案内されて…

 

…あれ、これって答えてもなのはの行動としてはそこまで違和感があるわけでもないな。

 

答えたとしても『なのはが転生者』と言う真実に直接結びつかないはずだ。

 

いや、ここで重要なのは『原作のなのはならこの場合どう答えるか』だ。

誤魔化すにも答えるにも『なのはなりの』理由が必要になる。

 

原作において、なのはは二人を巻き込まないように自分の悩みを内に秘めていた。

ただしこれはなのはが魔法少女として活動し、

その苦労や危険性を知っていたことが大きいように思える。

 

現時点のなのははまだ『魔法の存在を知っただけ』で、

『ジュエルシードの危険性』どころか、その存在すらも聞いていないのだ。

 

魔法にしたって遅刻を回避するために空を飛んだだけで…

いや、待てよ。

既になのはは魔法戦を目撃している。主に銀髪オッドアイ達のおかげで。

 

…誤魔化す理由にこれは弱いか?

いや、魔法は時に危険なものだと言う事実を知っているなのはが魔法の情報を軽々に話すだろうか?

危険な事ならば誤魔化してもおかしくはないだろう…

 

「…あたしたちに話せない事なの?」

 

長考による沈黙を拒絶と捉えたのか、アリサの眉尻が下がる。

 

「えっと、私…」

 

どうする?

 

「…話しにくい事なのね。解った。

 今は深くは聞かない。

 けど、話せるときになったら話しなさいよ?」

 

アリサは仕方ないと言った感じに話を切り上げた。

…なんで急に納得したんだろうか?

なのはなら誤魔化すと思ってたとかだろうか?

 

「うん…ごめんね?

 いつか、話すから。」

 

そういえば、すずかはやけに静かだ。

こういう時アリサが主体になって話すのはいつもの事だが、

それにしても静かすぎる。

 

ふと見てみると、何やら深く考え込んでいるようだ…

二人の真意は分からない。

もしかしたら、二人の周りでもなにか起こっているのだろうか?

 

そう言えば、原作ならここで『将来の事について』話すんだったな…

少し、原作との乖離を実感した。

 

 

 

 


 

昼休憩が終わって教室に戻る途中。

朝のすずかの言葉を思い出していた。

 

 

 

「アリサ、昨日家の敷地を探してみたんだけど…

 やっぱりそれらしいものは見つからなかったよ…」

 

『それらしいもの』と言うのは『ジュエルシード』の事だ。

 

俺もすずかも、互いに転生者であることは既に伝え合って知っている。

 

なのはに喧嘩を仲裁された時の反応に違和感があり、

人気の少ない場所でこっそりカミングアウトしたのだ。

 

その後、俺達は原作の開始のタイミングをなのはに()()()()()探っていた。

主に夢の内容とかでだ。

 

そしてその一環として『すずかの家の庭にジュエルシードが無いか』と言うのも並行して確認していた。

 

原作の流れからして『お店探し』があった日の夜には、庭のどこかに落ちていないとおかしいはずなのだ。

それが無い…

そして今朝ユーノの近くで光が発生し、そのユーノがなのはに抱えられてバスに乗ってきた。

 

何かが起きている可能性がある。

多分、原作の知識はもう当てにならない。

 

俺が心配しているのは『銀髪オッドアイ達の誰かが欲望のままにジュエルシードを使う事』だ。

ジュエルシードは曲がりなりにも願いを叶える。

転生後、自分の能力や魔力に不満があるとき唯一それを覆す事が出来る可能性がジュエルシードなのだ。

 

だからなのはに確認をした。

そして求めていた答えをくれた。

 

なのはが何も答えない事――。

それが俺の期待した返答だった。

 

今朝の光はなのはの変身の際に発せられた魔力でほぼ間違いない。

それならあの場所でジュエルシードが発動したわけじゃないし、

もしそうだったとしても封印済みのハズだ。

 

多分、なのはは今朝魔法少女として目覚めた。

朝に何かあったんだ。

それで、ユーノが念話を飛ばすなどしてなのはを呼んだ。

銀髪オッドアイ達はその時合流したんだろう。

 

この後の事は…

後でまたすずかと相談だな…

 

 

 


 

昨日と今日の朝、庭を調べてみたがジュエルシードは無かった。

もちろん猫だけが知っている場所や入れない場所もあるだろうけど、

原作の描写から考えてそんな特殊な場所には落ちていない筈なんだ。

 

アリサが言っていたように、既に原作を知っている誰かの手により持ち出されてしまったのか?

わからない。

ただ、今朝の光はなのはの変身で良いと思う。ユーノも連れていたし…

 

なんで変身したんだろう?

やっぱりもう原作の流れは外れているのかな…

 

こういうことを考えるのはアリサの方が得意だし、

後で相談しよう。

 

 

 


 

放課後、塾に行こうとしたら近道が封鎖されていた。

 

今朝のHRで警察の捜査が入ると言っていたからおそらくそれだろう。

そう言えば原作ではこの後ユーノを拾って、結局塾には行かなかったのか…

どんどん原作の行動とずれていく…このままだと、今夜あの怪物を見つけられるのかも怪しいな…

 

塾を終えて帰宅。

ここまでズレていたらもう隠しても意味がないので、家族にユーノを紹介。

 

当然家族はビックリしていた。

士郎さんもビックリしていたが突然娘が小動物を拾って来たら驚くだろうし、まだ転生者かは不明。

 

桃子さんも士郎さんもユーノを可愛がっているが、恭也と美由希は複雑な表情だ。

正体(魔導士)を知っているからね…仕方ないね。

 

夜、夕食を終えて風呂の時間。

原作同様ユーノを風呂に連れて行く。

中身が女性だからか、着替え中も堂々としていた。

 

さて、ここで一つ考えている事がある。

ズバリ、ユーノには正体をバラしても良いのではないかと言う事だ。

 

と言うのも、なのはが転生者であるとバレて一番怒りを露にしそうなのは断然男だ。

よく言う『俺の嫁に手を出すんじゃねぇ』と言うやつだ。

 

反面女性ならばそこまで激情せず、話を聞いてくれるのではないか?

更に言えばユーノは既に転生者に襲われた後。こちらの事情も汲んでくれるのでは?

そう思ったのだ。

 

湯船に浸かりながらユーノに向き合う。

 

「…?どうしたんだい?なのは?」

 

…いざ、伝えようとすると言葉にならない。

やはり、万が一を考えると腰が引けてしまう。

八年間隠し続けていたのだ。無理もないだろう。

 

…良し、

 

「ねぇ、ユーノ君…」

 

言うぞ…

 

「…」

 

ユーノもこちらをじっと見つめている。

 

 

 

「朝のテレパシーみたいなの教えて欲しいな?」

 

 

 

 

 

 

…いや、ほらアレだ。

家族も転生者だし、誰にも聞かれないようにするには…ね?

 

 

 

その、なんだ…

 

 

 

…ヘタレたぁーーーっ!!

 




ストックが尽きました。

ペースは少し落ちるかもです。
皆はどれくらいストック作ってから投稿するのかなぁ…

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