転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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更新が遅れてすみません…

はやてさん転生前の内容を何度も書き直したりしていました。…後は、その…古戦場とか…



A's編
八神はやての新しい家族


私の前世は病との戦いの人生だった。

 

幼い頃から体は弱く、物心ついた時から病院の個室が私の世界。

自由に表を出歩く事も出来ない私にとっては勉強も娯楽も、両親が買ってくれたパソコン越しに行うものだった。

 

ネット小説の中では王子と結婚するお姫様にだってなれたし、アニメや漫画で色んな外の世界を見れた。ゲームの中で顔も知らない友人と何度も冒険をした。

でもそうやって色々な事を知れば知る程、自分のいる世界に何もない事が分かっていく。

 

それでも…例え仮初だとしても外の世界を感じられる娯楽を手放せず、決して触れる事が叶わない憧ればかりが増えていく日々…そんな憂鬱なループに陥ってしまった私を神様は救ってくれた。

 

転生…あぁ、何と言う素晴らしい響きだろうか。

「生きていれば良い事が必ずある」…両親が言ってくれた言葉が思い起こされる。本当にその通りだった。

…いや、まぁ厳密に言えば死んでいる訳だけど。

 

何はともあれ、神様が言うには『行きたい世界』と『望み』を言えば叶えてくれるらしい。

その言葉を聞いた時、私が思い描いたのはネットで見たあるアニメの登場人物だった。

私のように体にハンデを抱えていて、私のように孤独を感じていて…何となく親近感を抱いていた彼女はそれでも私と違って悲観的になる事は無く、優しさを失う事もなかった。だからなのか、彼女の周りには家族が…友達が増えていき、そんな繋がりが彼女に自由に羽ばたく翼を与えた。

 

私は神様に願った。

『八神はやてのようになりたい』と。

彼女のように強い心が、決して褪せない優しさが…ずっと一緒にいてくれる家族が、顔を合わせて笑い合える友達が私も欲しいと望んだ。

 

身体的ハンデを克服した姿に、世の理不尽を前にしても優しさを失わない精神に私も近づきたいと…

どうやら私は心の奥底で、どうしようもないほど八神はやてに憧れていたらしい。

 

神様は私のそんな自分勝手な願いを聞き入れてくれた。

 

そして願いは叶い、私は転生を果たした。…想像していた形とは少々違ったけど。

 

 

 


 

6月3日 PM 7:43 海鳴市 中丘町

 

 

 

「ごちそうさまでした。はやてちゃんの作るお料理は本当に美味しいですね。」

「そんな、美香さんの教え方が上手なだけです。私は少しでもお返しになればと…」

 

美香さんはヘルパーとして私の生活を支えてくれる他、私が教えて欲しいと言った料理を教えてくれたりもする親切な女性だ。

最初は一切料理が出来なかった私も美香さんのおかげで色々な料理が作れるようになったし、美香さんには本当に頭が上がらない。毎日の料理もそんな日頃の感謝を形にしたくてふるまっているだけなのだ。

 

「それじゃはやてちゃん、また明日来ますね。」

「あ、うん。美香さんも毎日おおきにです。」

 

時計を見るともう美香さんが帰る時間だ。明日の料理はどうしようかなと意識が明日のご飯に向いた時だった。

 

「あっ…そう言えば、()()()()()()()()()()()()()でしたね!

 プレゼントは何が良いですか?」

「…えっ、あ! だ、大丈夫ですよ! そんなに気を遣わんでも…」

 

そうか、明日は私の誕生日…()()()()()()()()()だ。

 

「そうですか? …ではケーキだけでも一緒に食べましょう! 折角の誕生日…おめでたい日なんですから!」

「あ、ありがとうございます!」

 

それから少しばかり話をした後、美香さんは帰っていき…私は急いで思考を巡らす。

そうか、もう転生してから9年になるのか。…これまで本当に色々な事があった。

 

数年前の事だ。この世界に産まれた私を祝福してくれた新しい両親が、突然の交通事故で亡くなった。

勿論私は前世の知識から両親が事故で亡くなる事は知っていたし、可能であれば助けたかった。だが無理だった。

事故が起きたのは私が病院で検査を受けている間で、家にちょっとした忘れ物を取りに行く途中の事故だった。突然かかってきた電話の受話器を手に、青褪めた表情で話す看護師さんの顔は今でも覚えている。

…その後孤児となった私が施設に引き取られそうになったところに親戚を名乗る『グレアム提督(おじさん)』が介入し、私は今まで通りの家で暮らす事になった。今にして思えば『闇の書』の暴走になるべく人を巻き込まない為だったのだろう。

そしておじさんが雇ったと言う通いのヘルパー(美香)さんに料理を教わったり、図書館に連れて行ってもらったり…図書館で付きまとわれたり、魔法の石(ジュエルシード)がテレビに映って唖然としたりと色々あったけど前世に比べたら随分楽しい…平穏な毎日を送っていた。

 

だがそれも今日までのようだ。

明日…と言うか今日の深夜、ヴォルケンリッターが家に来る。それが私の平穏な日々の終わりであり、かつて望んだ未来の始まり。

既に多くの転生者が動いている事は知っている。テレビでやってた。これからもきっと原作の通りにはならないだろう事も何となくわかる。

 

…でもそうなると色々考えないといけないな。

なにせ原作通りになる保証が無いという事は地球が滅ぶ可能性があるという事であり、リインフォースと一緒にヴォルケンリッターも消える可能性があるという事でもある。そしてそれは地球もリインフォースも救い出す事が出来る可能性も秘めているのだ。こんな可能性を示されては、頑張らないと言う手はないだろう。

 

…とは言ったモノの、どう頑張るべきだろうか?

A's編でも終盤まで魔法の力が手に入らないと言うのが今の私こと、八神はやてだ。それは転生したからと言って変わることはない。コレは正直どうする事も出来ないし、下手に闇の書の完成を速めればそれこそ地球が滅んでしまう可能性だってある。

 

やはり銀髪オッドアイ達に頼むべきだろうか…? 彼らはまず間違いなく転生者だし、『はやて』の頼みであれば多少なり動いてくれるだろう。…あれ? 下手に介入されて蒐集されたらもっと厄介な事になるような…?

…そうだ、思い出した! 蒐集した魔法は『闇の書の意思』も使えるようになるんだから、下手に転生者をけしかけたら余計に拙い事にもなりかねない!

 

…え? あれ? …もしかして、私が出来る事って本当に何も無いのでは…?

 

…とりあえず翌日ヘルパーの美香さんが来た時に彼女達が変な行動を取らない様に、今夜中に釘を刺しておかないと…

 

 

 

 

 

 

6月3日 PM 11:58

 

「23:58…もうすぐやな。」

 

うわ、ドキドキしてきた。原作では確か読書していたと思ったけど、もうそんな気分ではない。緊張と不安で心臓がばっくばくだ。

本棚の闇の書に目を遣る。…鎖で縛られたタイトルも書かれていない分厚いその本は未だに沈黙したままであり、この後あんなにハッスルする本とは思えない。…ちゃんと浮かぶよね? 既に『夜天の書』になってたりしないかな…しないよね。私の足動かないもんね。

そうこう言っている間に時計の示す時刻は『23:59』になってしまった。

 

「…ふぅー…ふぅー…」

 

思わず息も荒くなる。なんだろう、もしかしたらホントに気絶するかもしれない。こんな調子でヴォルケンリッターを前に何か言えるのか私!?

あぁ!? もう10秒切ってる!?

 

「…5…4…3…2…1…コイヤァ!! うわぁ!?」

 

緊張と夜更かしの深夜テンションで何故かケンカを売ったと同時に地震が起き、闇の書が光を放ちながら浮かび上がる。

それはそのまま私の方に近づいてきて…

 

「うゎ…血管みたいに脈打ってる。」

 

実際に見ると凄い違和感だ。材質は紙の筈なのになんで血管みたいなのが浮き上がるのだろう。…ネクロノミコンみたいな材料使ってないよね?

そのまま『闇の書』は内側からの圧力で鎖を引き千切り、白紙のページがパラパラとひとりでに捲られて行く。

 

Ich entferne eine Versiegelung.(封印を解除します)

 

わー、凄い…なんて言ってるか解る。確かドイツ語の筈なんだけどなー…

 

Anfang(起動)

 

そして私の中からリンカーコアが浮かび上がり、『闇の書』が一際眩く光り輝いたかと思うと…

 

目の前に傅く4人のヴォルケンリッター…私の新しい家族が居た。

 

 

 




はやてさんの前世は関西人ではないです。関西弁を話しているのは今生の両親が話していた関西弁に影響を受けたのも一因ですが、それ以上に本人が『標準語のはやて』に強い違和感を覚えた為です。

はやてさんの前世の病については意図的に描写しないようにしました。あまり本編に影響しない部分ではありますし、あまり詳しく書いたりすると鬱要素が増えてしまうので…

それと、はやてさんの幼少期の設定に関しては大半が捏造設定です。はやてさんの幼少期の情報って結構謎なんですよね…なんで一人暮らしになったんだろう?

あとお察しの方もいるかと思いますが、ヘルパーの美香さんは天使です。ただ名前のモチーフになった天使のような上位存在ではないです。あくまで名前のモチーフにしただけです。
天使も天野朱莉(天の明かり)しかりアンジュ(Angel)しかり何処となく天使をイメージした名前にしているのですが、日本人っぽい名前がこれしか思い浮かばなかった…!
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