転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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次回でとりあえず八神家サイドは最後になるかと思います。
その次からは久しぶりのなのはさんサイドに戻ります。…多分。


早速の乖離

「今日のお夕飯は何にしようなぁ…ヴィータは何か食べたいもんとかある?」

「…えっ?」

 

スーパーの生鮮食品売り場でのはやての問いかけに、少し遅れてヴィータが返す。

この直前に衣服も買ったのだが、その時からヴィータは何やら考え込んでいてはやての言葉にも上の空だった。

 

≪『今日の夕飯何が食べたいか』…だ。ヴィータ。≫

「あー…そうだな…はやてに任せる。」

「うーん…何にしよか。まだ皆がどれくらい食べるかも分からんしなぁ。」

≪…サンキュー、ザフィーラ。≫

≪ヴィータよ、今の返しははやてが一番困る奴だぞ? …転生者達の事を考えていたのか?≫

≪うっ…咄嗟に思いつかなかったんだよ。それに、今のあたし達が地球の料理を知ってるのも変だろ?

 …それで転生者の事だけどよぉ、確かに今感じている魔力は襲撃者(アイツ)程の脅威じゃねぇ。だが、だとしてもこの数はやっぱり厄介だ。

 今のあたし達はまだはやてから騎士甲冑も貰ってねぇ状態だし…いざ戦闘になった時の事を考えると、流石に武器だけじゃ不安なんだよ。≫

≪…ふむ、一理ある。≫

 

ヴィータの懸念は最もだ。魔法戦にしろ白兵戦にしろ、集団で囲まれればどうしても戦いの中で隙が生まれる。1対1の近接戦闘に特化したベルカ式ならそれは猶更の事だ。

そういう意味では騎士の身を守る騎士甲冑の重要性は、ミッド式のバリアジャケットよりも大きいと言えるだろう。

 

≪ならばこの際、この場ではやてに騎士甲冑の話をしてみるのも良いかもしれないな。

 これだけの数の魔導士が居る街だ。仮にここに居るのが本物のヴォルケンリッターだとしても、装備を整える事を優先とするだろう。≫

≪…バレねぇか?≫

≪恐らくは大丈夫だろう。騎士甲冑を欲する理由(言い訳)なら掃いて捨てるほどある。≫

≪…そうだな。これだけの数に囲まれて鎧の一つも欲しがらない方がおかしいもんな。≫

 

まぁ、最悪ヴィータが転生者に疑われそうならその時は『転生者である俺が提案した』と奴らに打ち明ければ良い。…これはヴィータに言うつもりは無いがな。

 

 

 


 

 

 

「…騎士甲冑?」

 

食材の買い物を終えた頃、突然ヴィータに騎士甲冑の話を持ち掛けられた。

 

≪あっ…これは思念通話って言って、心の中で答えてくれれば大丈夫だ。それであたしにも聞こえるから。

 それで、騎士甲冑ってのはあたし達の身を守る為の鎧の事だ。

 …武器は最初から自分達の分を持ってるけど、こればかりは主であるはやてから貰わなくちゃダメなんだ。≫

 

しまった…つい声に出してしまった。…これが思念通話か。頭の中で声が聞こえるって変な感じ…

! そう言えば頭の中で考えるだけで声が届いちゃうんだったら今考えてる事も聞こえてる!?

 

…もしもし、ヴィータ?

…ヴィータさん…聞こえてましたか…? 

 

もしもーし…

 

…聞こえてないのかな。やっぱり『伝えよう』って意識した言葉じゃないと聞こえないのかな…?

 

やっぱりこちらの声は聞こえてなかったんだろう。ヴィータからしてみれば私の沈黙と取れる『間』は私が判断を迷ってると思われたのか、騎士甲冑を求める理由を教えてくれた。

 

≪…実はさ、今あたし達は包囲されてるみたいなんだ。

 はやてには言ってなかったけど、このスーパーに入る前からずっとあたしはそいつ等の魔力を感じ取ってる。≫

≪えぇっ!?≫

 

ヴィータから聞かされたその衝撃的な内容に驚く。

騎士甲冑については知ってるけど…何でこのタイミングで? と思ってはいたが、まさか私の知らない内にそんな事になっていたとは…

 

しかし包囲って…ずっと監視されてたって事? …誰に?

 

…なんか思い当たる顔が数人思い浮かぶけど、もしかしてここに来る途中でヴィータがずっとキョロキョロしてたのもその所為…?

 

≪…私が甲冑を皆にあげたら、皆戦ってまうんか…?≫

≪はやて………まだ、それは分かんねぇ。でも…あたし達が戦うんなら、それははやてを守る為だ。

 それにそいつ等がはやてやあたし達に危害を加えようってなった時に、守護騎士であるあたし達が何も出来ないんじゃそれこそ騎士の名折れだしな。≫

 

めっちゃ警戒してるやん。思わず素で関西弁になるわこんなん。

多分顔見知りなんだよなぁ…今私達を包囲してるのって。いや、管理局員の可能性もあると言えばあるから下手な事は言えないんだけど。

それにあの時のヴィータの様子は今にして思うと凄い不安そうだったし、やっぱり騎士としては鎧が無いと心細かったりするのかな…?

 

≪…うん、分かった。その騎士甲冑って言うんをあげれば、皆は安心できるんやな?≫

≪! はやて…!≫

≪でも! …人様に迷惑かけたり、無暗に喧嘩したりせえへんって約束できるか?≫

≪…ああ、約束する!≫

 

…ちょっと原作とは違う流れになるけど、襲われる事なんてそうそう無いだろうしこういう約束をしておけば大丈夫だよね。

 

≪それで、私は何をすればええんや?≫

≪甲冑自体は自分の魔力で作れるから、はやては見た目だけ考えてくれれば大丈夫!

 外見で強度が変化するような事も無いし、気楽に考えてくれれば良いぞ! …あまり変なデザインじゃなければ。≫

≪ふーん…ほんなら、かっこいい感じの服でも良えか?

 甲冑言われてもデザインなんて思いつかへんし…≫

≪ああ、それで大丈夫だ!≫

≪それじゃあちょうど服も買うたし、家帰ったら今度はデザイン考える為に皆でお出かけしよか。

 そろそろ皆もお腹空く時間やろし、お昼食べた後でな。≫

≪おう!≫

 

何か思ってたよりもやる事が増えちゃったけど…うん、偶にはこういう一日も良いかな。

 

 

 


 

 

 

「聞いたか?」

「あぁ、騎士甲冑って言葉の事だろ? 多分思念通話で細かい事は話してたんだろうが、シグナムとシャマルの代わりにヴィータが言ったんだな…」

 

本来の流れとは明らかに違う。正確な日時こそ不明だが、あれはシグナムとシャマルが私服を持ってからの出来事である事だけは確かだからな。

 

「…なんで?」

「原作キャラの行動が変わるって事は、その前提条件が変わったって事だろ?

 直ぐにはやてを守らなきゃいけないって判断する何かがあったんじゃねぇか?」

 

俺も神野と同意見だな。少なくともヴィータを焦らせる何かがあったから、あんな提案をしたんだろう。

 

「なに!? 敵か! 敵が居るのか!? こんな朝から!?」

「何処だ!? 魔力探知しても見つからねぇぞ!?」

「大型スーパーを選ぶとは敵も中々厄介な事をしてくれるな…ここは特に人が多いから隠れやすいし逃げやすい。

 加えていざとなれば盾にも出来る…か、下衆め…」

 

神井の言葉に釣られるように神路と剣崎が怒りを露わにする。…誰も敵が要るなんて言った覚えは無いんだがな。まぁ…確かにその可能性はあるけど。

 

「でもよ…ここで俺達が敵を先に見つけて捕縛したら、ヴォルケンリッターとも友好的な関係を構築できそうじゃねぇか?」

「…なるほどな。そうすれば蒐集ペースや蒐集対象をある程度コントロールして『闇の書の意思』の対策も練られるかもしれん。」

「っしゃぁ! 見つけ出してボコしてやろうぜ! この時期に動くって事はグレアム一家じゃねぇ事は確かだろうしな!」

「…へっ、良いねぇ。誰に喧嘩売ったのか教えてやろうぜ!」

 

敵が居ると思うんなら無暗に声を出すなよ…本当に敵が居たら俺達もうもろバレだぞ。

っと、そんな事を言っている間にはやて達が動いた。

…この方向からして、そろそろ帰るらしいな。確かにもう11時は回ってるし、昼食も作る事を考えると頃合いだろう。

 

「あ、待って…はやて達が帰るみたいだぞ。」

「…じゃあ追うか。敵の狙いがはやて達ならどっかで尻尾出すかもしれん。」

「「「「「異議なし!」」」」」

 

…別に家の場所を突き止めようって訳じゃない。単純に心配なだけ…うん、それだけ。




この後特に何も起こらず八神家に帰った。
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