12月1日 AM 6:35 海鳴市 桜台
「ふぅ…行くよ、レイジングハート。」
≪All right.≫
最近発音が良くなった
「ディバインシューター…シュート!」
空中に弧を描く空き缶を追うようにディバインシューターを放ち、リフティングの要領で何度も弾きながら上空へ持ち上げて行く。
操作している光弾は5つ。全てレイジングハートの補助無しで作られた物だ。
数ヶ月前にビデオレターで神宮寺から教えて貰ったのだと言う訓練法を試してからというもの、俺を含めた転生者全員の魔力操作技術は著しい成長を遂げていた。
≪
「
≪Sorry,My master.≫
こっちは集中してるんだからツッコミさせないでくれ!
大方100以降の数え方に自信が無かっただけだったのだろう。その後は普通にカウントアップが進んで行き…
≪
丁度1000回のリフティングを終え、全てのシューターを自分の目の前まで戻す。
そして自由落下により高速で落ちてきた5つの空き缶に狙いを定め…
「スナイプ!」
高速で射出されたシューターがそれぞれの空き缶の中心を捉え、弾く事無く貫いた。
「…ちょっと力みすぎちゃったかな。」
≪Don't mind.
「…レイジングハートは私にどんなイメージを持ってるのかなぁ…?」
≪Sorry!≫
いや、そこまで怒ってはいないけどね?
とりあえず穴の開いた空き缶を放置するのもアレなので、さっさと回収して…
「…」
穴の開いた空き缶か…心配し過ぎな気もするけど、万が一これを見られてまた「魔法だ!」とか騒がれる切っ掛けになるのも拙いかな。
「レイジングハート。」
≪All right.≫
未だに『魔法ブーム』と言う奴は勢いが衰えていない。まぁあれからまだ半年しか経過していないと言うのもあるが、やっぱり『実際の事件と紐づいた映像』が出回ってしまったのが痛手だったな。
そんな事を思いながら、再び缶を空中に放り投げ…直径50㎝の魔力弾2つで上下から挟み込むように潰した。
別にストレス発散と言う意図がある訳じゃない。単純に今の俺の体重と脚力ではアルミ缶も満足に潰せないというだけだ。
「…うん、これなら穴は目立たないね。」
空き缶の穴がパッと見では分からない程潰れているのを確認してからごみ箱に放り投げる。まぁこんな感じで俺達は魔法の存在を隠蔽する為に日々の意識を求められている訳だ…主に管理局に。
さて、日課のトレーニングも一段落したし…
「そろそろ帰ろうか、レイジングハート。」
≪All right.≫
そう言って広場から少し歩き、林の中に入る。
「…うん、この辺りならあまり人も来ないかな…?」
…念の為に木の上に登っておくか。
「…結界、解除。」
さっきまで張っていた結界を解除する。結界と言っても封時結界の簡易版で、頑丈さで言えばかなり脆い。単純に魔法の訓練が誰かに見られないようにする為だけの物だ。
俺達魔導士がこれだけ人目を気にして訓練しているのには当然ながら理由がある。世間にこれ以上魔法の目撃例を出さない為と言うのも勿論だが、一番の理由は『ヴォルケンリッター』の存在だ。
彼女達は既に小規模ではあるが蒐集活動を開始しているらしく、銀髪オッドアイの中にも襲撃された者が居る。襲撃を受けた本人は一応無事だが戦闘に負けて蒐集されてしまった為、現在は訓練もまともに出来ないありさまだ。
今回の蒐集でどれほど闇の書のページが埋まってしまったかは不明だが、実力の有無に関わらず魔力量だけは一級品なのが銀髪オッドアイの特徴だ。10ページや20ページで済む保証はない。更に蒐集された魔導士の魔法は『闇の書』も使えるようになる為、収集対象によっては最終的な脅威度まで引き上げてしまう。
こんな状況で結界も張らず訓練なんて『どうぞ蒐集しに来てください』と言っている様な物。だが鍛錬を怠っては最終的に勝てるかどうかも怪しくなる。そこで結界魔法の知識を持っている神谷が簡単な結界魔法を全員に教え(使えるようになったかどうかは素質次第だったが)、訓練を行う時は結界魔法の使用を前提としたのだが…
「はぁ…やっぱ面倒だよなぁ。見られないようにするのって…」
「そうだなぁ…でも蒐集されるとそれはそれで面倒だし、仕方ないだろ。」
こんな話題が連日学校の昼休みに上がる程度には大変なのだ。
「いや、それは分かってるんだけどな…って言うか、襲撃された奴…神尾だっけか? 今はどんな感じだって?」
「今はある程度魔力を扱えるようになって来たらしい。やっぱりしばらく安静に過ごせば回復するっぽいな。」
「そうか、それなら良かった。」
やっぱり向こうもリンカーコアを破壊しない様に気を付けてくれてはいるのだろうか。今のところは訓練で周りから遅れる以上の被害は無いようだ。
「なのはは訓練の調子はどうだ?」
「順調だよ。空き缶のリフティングも200回を超えたかな?」
「すげーな、おい…ゴミ箱には入るようになったか?」
「ううん、今回はダメだったよ…中々上手く行かないね。」
「まぁ、そうだよな。」
「皆はどう?」
「そうだな…俺は魔力刃の遠隔発生の精度に最近力を入れてるな。魔力量はボチボチだ。」
「俺はなのはと一緒でコントロール重視だな。…まぁ、リフティングは80回くらいだけどな。」
「最近は新しい魔法…って言うか、魔力変換のリベンジかな…?
何か『水』に続いて『地』も『風』もダメみたいで変なのがどんどん量産されてっけど…」
「俺前にも言っただろ!? 純粋な『エネルギー』じゃないと変な感じになるんじゃねぇか? って!」
「いや、だって『炎熱』『電気』『氷結』以外に何か思いつくか? 純粋なエネルギーって…」
「…『光』もエネルギーだろ?」
「……やるじゃん。」
「うるせぇよ。」
その後もそれぞれの進捗を報告しあい、まだ比較的平和な一日は過ぎ去っていった。
12月2日 AM 1:43 海鳴市 オフィス街
真夜中の市街地…街灯を含め、全ての灯りが消えた暗い街に光が瞬く。
「ちぃっ…! 何でただの武装局員程度にここまでてこずらなきゃいけねぇんだ…!」
ヴィータが空中に浮かぶ魔力弾をグラーフアイゼンで打ち払いながら苛立つ。
「油断するな、ヴィータ…奴らもまた戦士だ。
それに、
「…解ってる。済まねぇ、シグナム…ちょっと頭に血が上ってた。」
戦闘は2対2…片や銀髪オッドアイに加え、バリアジャケットも統一された管理局員。対するはヴォルケンリッターの2人、シグナムとヴィータだった。
「はぁっ…はぁっ…! くそっ、やっぱり滅茶苦茶強いな…こいつら…」
銀髪オッドアイの武装局員の一人…リヒトは肩で息をしながらも杖を構える。
杖の先から比較的ゆっくりとした速度で撃ち出された魔力弾は、周囲の魔力の残滓を吸収しながら少しずつ肥大化していくが…
「
「あぁん!?」
「落ち着けヴィータ…まだ、
「…チッ!」
ヴィータの放つ鉄球に
「そっちも厄介だが、あの
リヒトとツーマンセルを組んでいる武装局員…フォグもまたシグナムの間合いに入る事が出来ず、苦慮していた。
フォグの持つ杖は眩い光を放っており、至近距離で放つ事で最大の火力を発揮する魔法のチャージを終えている事を主張しているが、レヴァンティンを鞘に納めたシグナムの居合い切りを警戒して近づけない。…勿論フォグも一つの戦い方に拘り、足踏みをする程愚かではない。だがここで距離を取り、魔力弾や砲撃を中心にした戦法に切り替えたが最後…シグナムのレヴァンティンが蛇腹剣へと姿を変え、自分だけではなくリヒトにも襲い掛かって来るだろう事は容易に想像できた。シグナムが近距離戦闘用のモードだからこそ
「…ふふん」
「何でにやけ面してんだ…なぁ、シグナム?」
「…
もっとも『サムライ』と呼ばれ気を良くした瞬間に懐に飛び込めば、『或いは』と言う可能性はあったかもしれないが…
「…で、どうするんだリヒト?」
「俺としては撤退したい。けど…」
「あたし達がただで逃がすと思うか?」
「…だよな。」
「我々が欲しいのは魔力だ。おとなしく収集されてくれれば、それ以上はしない。」
「ははっ…まるで管理局の投降呼びかけだな…」
既に管理局員は絶体絶命、リヒトかフォグのどちらかが拮抗を維持できなくなった時点で敗北が確定するだろう。特にリヒトは絶えず魔法を放ち続けており、魔力の消耗が激しい…持って10分程だという事はフォグにも分かった。
…そんな時だ。
『リヒト、フォグ…まだ大丈夫なようね! 貴方達が持ちこたえてくれたおかげで転送の準備が整ったわ、直ぐに退避させる!』
「レティ提督…待たせすぎッスよ…」
「直ぐお願いします。多分リヒトがもうそろそろ限界なんで…」
管理局からの通信により、撤退の準備が出来たという報告が入った。
「! させるかっ!」
「仕方あるまい…参る!!」
獲物を逃がすまいとシグナムとヴィータ、それぞれのデバイスがカートリッジをロードするが…
「最後の踏ん張りどころぉ!!」
「やっと近づいて来てくれたなぁ!」
リヒトが同時に大量の魔法を放つ事で壁を作り出し、フォグの持つ杖の数十㎝前に光の玉が現れた。
「くそっ!! 往生際の悪い!!」
「! この魔法は…ッ!!」
ヴィータは大量の魔力球に近付けず、シグナムは眼前の脅威に思わず身を引いた。
その一瞬がリヒトとフォグを救った。
二人の局員が転送され、街には二人の騎士のみが残される。
「~~~ッ!! ァァアアアアアッ!!」
「…」
やり場のない怒りと魔力を撒き散らし憤懣やるかたないと言った様子のヴィータと、先程の光の玉が現れた位置をただ眺めるシグナム。
一部とはいえ戦い方を調べられ、あまつさえ獲物を逃したこの戦闘…勝者か敗者かで分けるとするならば、彼女達は敗者だった。
「…はぁっ、はぁっ!!」
「…落ち着いたか、ヴィータ?」
「…あぁ…一応な…」
「今のお前は、ちゃんとお前か?」
「…あぁ、一応まだあたしだ。」
「なら良い。早く帰ろう…」
二人の姿が宙に浮かび、しばらくして街が灯りに包まれる。ヴォルケンリッターの張った結界が解除された街は、今日も変わらず賑やかだった。
リヒトとフォグは今後多分登場しないです。(名前は自動生成ツール)
リヒトの魔法は発射後にチャージが始まり、一定量の魔力を溜め込むと爆発する魔法。魔力弾で迎撃しようとすると吸収される為、砲撃で核をいちいち撃ち抜かないといけない面倒な奴。
フォグの出した光の玉は簡単に言うと『螺旋丸』みたいなもの。力を溜め込み、乱回転により循環させ続けて触れた対象に内包する全ての魔力を叩き込む怖い奴。参考元は勿論『NARUT〇』
シグナムさんは前世で『NARUT〇』が好きだった為、一発で危険性を把握した。
なのはさん…魔力コントロールがえげつない事になっている。
レイハさん…発音が良くなっているが、色々不安が残っている。
でも魔法名は流暢に発音できるのでオッケーです。
オッドアイズ…それぞれ訓練の成果は出てる。魔力量の上昇はそこそこだが、
魔力操作や技のレパートリーが増えた。
ヴォルケンズ…収集が進んだ事で若干影響を受けやすくなっている。
転生者からの蒐集は避けたかったが、結局蒐集対象になる魔導師が
転生者しかいなかった。
以下補足(裏設定)です。
今回登場した管理局員は『闇の書』を捜索する『レティ提督』率いる部隊です。
原作の序盤でヴィータに蒐集されていた二人の捜索班のポジションですね。
彼等が『地球』にきた経緯ですが、ヴォルケンリッターが『意図的に』地球の周辺次元世界(無人)で魔法生物を蒐集した事で『レティ提督』(本人)が突き止めました。
ヴォルケンリッターが管理局を釣ろうと考えた理由は二つ。
1.『闇の書の闇』を消し去るのには管理局の『デュランダル』と『アルカンシェル』が必要と判断したため。
2.魔法生物からの蒐集では『間に合わない』ので魔導士のリンカーコアを蒐集したかったが、地球には蒐集にリスクが伴う『転生者』しかいなかった為。
『1.』の理由は言わずもがななので『2.』の理由について説明します。
蒐集したリンカーコアの持ち主の魔法をコピーできる闇の書の特性上、『未知の魔法』を使える可能性がある『転生者』を蒐集すると『闇の書の暴走時』に響く可能性があります。
その危険性ははやてやヴォルケンリッターも理解していた為、先ず目を付けたのが『管理局の武装局員』。
地球から離れた次元世界に拠点を置く管理局になら転生者は少ないと考えたからですね。(なお現実)
しかし、真っ先に遭遇した局員は銀髪オッドアイ2人組(リヒトとフォグではない)と言うあからさまな転生者。(蒐集を警戒して最低でもツーマンセルで行動している)
嫌な予感がしつつも「双子か?」と聞いてみれば、返って来たのは「銀髪部隊」と言う一番聞きたくなかった答え。
蒐集対象にするかを迷っている間に逃亡されます。その後はやて+ヴォルケンズで一旦会議を開き、『はやての命+ヴォルケンズの自我』と『暴走時のリスク』を天秤にかけた結果前者を選択。転生者の蒐集も致し方無いと言う結論に。
その後普段から周辺をうろついていた神尾が真っ先に蒐集され、その次に遭遇したのがリヒトとフォグでした。
ヴォルケンズの対人に関するアレやコレは『古代ベルカ』の戦争で全員一通り経験済みです。(一応古代でも非殺傷でやろうとはしてたり、止むを得ない場合は比較的覚悟が出来ているシグナムさんが優先して対処したりしてました。)
2020/07/21 22:34
今回登場した銀髪オッドアイの一人の名前がナンバーズの方と被っていたので修正しました。
2020/08/30 17:23
後書きの内容一部修正。
補足の追記。