転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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遅れると予告はしていましたが、想定以上に遅れてしまいました! すみません!

次回以降は通常時のペースに戻れるかなと思います。


時空管理局と闇の書

「映像は! まだ出ないの!?」

「すみません! 使用されている結界の解析に手間取っており、もう少し時間がかかるかと!」

 

次元間航行船アースラ…長期間の航行を終えた艦は、その期間の長さに応じて整備が入る。

しかし本来整備の為に本局にあるはずの筈のアースラは今、『第97管理外世界』付近にて停滞していた。

 

切っ掛けはフェイトとプレシアの裁判が終わった直後…

プレシアとフェイト(アリシア)がしばしの別れの前に裁判官の恩情により許された時間を過ごしている最中、リンディ提督の元にレティ提督から通信が入った事だった。

 

 

 


 

 

 

「…なんですって!?」

『私にも納得できない部分はあるけれど、どうやら上は貴女が随分とお気に入りみたいね。

 …今夜はお酒が進みそうよ。』

 

『第一級捜索指定遺失物』に指定された危険極まりないロストロギア『闇の書』が『地球』に現れた!?

更に、『闇の書』の捜査をリンディ提督()に引き継ぐよう上層部からの指示があったですって!?

 

「そんな急にどうして…っ! まさか…」

『…何、心当たりがあるの?』

「…ええ、一つだけ…ね。」

『良ければ聞かせてくれない?』

 

多分、予言の光(なのはちゃん)よね…

確かに私は個人名は伏せたけれど、『予言の光』に該当する可能性が高い魔導士に関する報告をしていた…

その事実を元に彼女(なのはちゃん)に対する干渉の裁量権を得る為だ。

未だに正体が掴めない『滅び』に対抗する為に彼女の協力は欲しい…だけど強引なスカウトや、予言の『滅び』をちらつかせた半ば脅迫のような勧誘が行われる事は避けたい。だからこそ、私がその権利を手にする必要があったのだ。

…それがまさかこんな事態を招くとは。

 

「…ごめんなさい、言えないわ。」

『そう…そう言えば少し前に貴女も地球の事件に関わっていたわね。もしかしてそれ関連だったりするのかしら?』

「えぇ、そんなところね。」

『はぁ…運が無かったわね、お互いに…』

「…えぇ、そうね。」

 

レティが『闇の書』を追っていた事はなんとなくわかっていた。

最近のレティは普段から自分の仕事の話をぼかす様になっていたから…

それもきっと私が『闇の書』との間に抱える因縁を思っての事。だから今回の引継ぎには心底悔しい思いをしたのだろう。

 

『…私が持っている情報を渡すわ。どれも()()()()が必死に集めてきた情報よ。

 きっとあなたの役に立つわ。』

「えぇ…………ありがとう、レティ。」

『あはは…まだ苦手意識は抜けてないのね。』

「ごめんなさいね、まだもう少し引きずりそうよ。」

 

レティの部隊って言うと、やっぱり『あの部隊』よね…幾つも多大な成果を上げ、その素行や統率に於いてもほぼ完璧と称される『管理局の最高戦力』。

『管理局の銀剣』『銀翼部隊』…巷じゃそう呼んでいる人も居るみたいだけど、局内…特に一定以上の地位に居る者に於いてはもう一つの通り名の方が有名だ。

…『悪夢の元凶』。全員が『銀髪オッドアイ』と言う共通の特徴を生来有する曰く付きの部隊。悪い人達じゃないって言うのは分かっているんだけどね…

 

『いや、貴女の部隊も似たようなもんでしょうに…』

「…それもそうね。やっぱり一緒に居るうちに慣れて来るものなのかしら?」

『多分ね…っと、送ったわ。どう?』

「えぇ、こちらも確認したわ…って、これ…っ!」

 

この情報…ベルカの騎士が使う魔法や特性に至るまで事細かに書いてあるうえに、出没パターンや頻度から潜伏個所をかなり限定している…!

私に捜査の引継ぎをしていなければ、きっともう一週間かからない内に…

 

「確かに貴女の部隊、噂に違わず優秀なようね。」

『でしょ? それに美味しいお土産まで買って来てくれたりもしたのに…

 …はぁ、シュークリーム…』

「…お疲れ様、レティ。」

 

私達にとっても思い出深い『第97管理外世界』…『地球』。それもよりにもよって()()海鳴市近辺か。

 

…丁度なのはちゃんの住んでいる地域って言う辺り、嫌な予感がする。急いで確認しないと…!

 

 

 


 

 

 

「レティ提督がくれた情報は確認したが、古代ベルカの術式か…

 どうも一筋縄ではいかないらしいな。」

「うん…現代の術式とは根本から違うところもあるし、何よりもこの結界そのものがかなり頑丈だよ。

 相手の騎士もかなりのやり手だね…」

「『闇の書』の騎士…『ヴォルケンリッター』か…」

「…フェイトちゃん達、大丈夫かな。

 折角お母さんと話せる時間だったのに、こんな…」

「…きっと大丈夫だ。フェイト達はこの数か月間で格段に強くなった。

 スタミナにはまだ改善点が残るが、あの速度と特異な魔法に対処できる者は多くは無いはずだ。」

 

それに彼女達の時間を邪魔してしまった事は不本意だが、今回の事件を上手く解決に導く事が出来れば『恩赦』を得られるかもしれない。

『闇の書』事件の()()()()()()…それにはそれだけの価値があるのだ。

 

「いざとなったら僕が出る。まだ手続きは終わっていないが、元々が上層部からの指令だ。

 許可が出る前に動く事も出来るはず…」

「セキュリティ強化の弊害だね…動きが遅くなっちゃうってのは。」

「仕方ないさ。あれだけの人員の急激な登用…それもあの面子では、スパイを警戒しない方がどうかしている。」

 

もどかしいが、あの一件で管理局が戦力的にもセキュリティ面にも強くなったのは事実。

多少の弊害は仕方ないと割り切らないと…

 

「解析が終了しました! 映像、いつでも出せます!」

「直ぐにお願い!」

「了解しました!」

 

そしてモニターに幾つもの映像が現れた。

『盾の守護獣』ザフィーラと、インファイトで殴り合う『ヒーロースーツの男』。

『鉄槌の騎士』ヴィータと、向かい合うなのはと数人の…銀髪オッドアイ。

『剣の騎士』シグナムと、それを包囲する大量のフォトンランサーを設置しているフェイト。

『湖の騎士』シャマルと、それに猛攻をかけるアルフ。

 

「良かった、全員まだ無事みたい!」

「…あぁ。」

 

取りあえずは全員の無事を確認してホッとする。どうやら解析も間に合ったようで何よりだ。

 

「エイミィ、とりあえずいつでも転送ポートを開けるようにしておいてくれ。」

「了解!」

「それと、結界が解析できたのならこちらからの干渉で穴をあけられるはずだ。

 その準備も頼む。」

「任せて!」

 

後は頃合いを見て結界を破り、全員を転送させてやればこの場は収まる。

…そう、気を抜いたのが悪かったのだろうか。

 

「あっ…嘘っ!? フェイトちゃん!!」

「…なんだと…?」

 

ブリッジに数人の悲鳴、ざわめきが広がる。

フェイトがシグナムの攻撃を受け、墜とされたのだ。

 

「くっ…! エイミィ、至急転送ポートを開いてくれ! 僕が時間を稼ぐ!」

「わ、分かった! 気を付けてね!」

「あぁ!」

 

 

 


 

 

 

「フェイトちゃん!」

 

思わず足が動きそうになり、寸前でこらえる。

ヴィータとシグナムがこちらの隙を窺っている以上、目を離す事は出来ないからだ。

 

「案ずるな、命を奪うような真似はしない。

 ただ、魔力を少しばかりいただくだけだ…ヴィータ、蒐集を。」

「あいよ。」

 

ヴィータが『闇の書』を片手にフェイトに近付いていく。

 

「させるか!」

「無駄だ。」

 

銀髪オッドアイ達もそうはさせまいと魔力弾や砲撃魔法で牽制するが、シグナムの一刀で全て切り払われた。

 

「嘘だろ!?」

「魔力弾は分かるけど、砲撃もか…」

「術式の構築が甘い、魔力の密度が低い、出力が足りない…あまりにも粗が多い魔法だ。

 …そうだな…一つ、お前達を鍛えてやるとしようか。」

 

シグナムが俺達とフェイトの間に立ちふさがり、レヴァンティンを構える。

…拙いな。シグナムは少なくともフェイトを正面から倒せるほどの強者だ。正直俺が全力を出したところで勝てる保証は無いし、そもそも今のレイジングハートでそんな事したら流石に壊れてしまうかもしれない。

どうするか…

 

「…なっ!? お前、起きて…ッ!」

「なに…?」

「フォトンランサー!」

 

ヴィータの驚く声に目を向けると、いつの間にか起き上がっていたフェイトが()()()()()()()()()()をヴィータの足元に放っていた。

 

「ッ…チィッ!」

「ほぉ…」

 

床に着弾したフォトンランサーが土埃を巻き上げてヴィータの視界を遮った一瞬でフェイトは距離を取り、直ぐに俺達のそばに飛翔魔法で降り立つ。

 

「ぺっ!ぺっ! …あー、クソ。ちょっと口に入った…

 おい、シグナム! あいつ気絶してねぇじゃねぇか!」

「ああ…だが妙だな? 確かに意識を刈り取った筈だが…」

 

二人は気付いていないようだが…さっきのフォトンランサーと言い、飛翔魔法と言い…今のフェイトはもしかして…

 

≪≫

「…あれ、念話が…?」

 

確認の為にフェイト(仮)に念話をしようとしたのだが繋がらない…まさか…

 

「あ? 念話は無駄だぞ。あたしの仲間が妨害してるからな。」

 

シャマルか!

原作の知識から思わず自分(なのは)の胸元を気にしてしまうが、今『闇の書』を持っているのはヴィータだという事を思い出し安堵する。流石に自分の胸元から腕が生えるなんて体験はあまりしたくないしな。

…それはともかくとしてだ。格上の騎士二人(特にシグナム)を相手に作戦も立てられないと言うのは辛い物があるな。

 

「フェイトちゃん…()()()()()()()()()()()()

「私は平気…でも、()()()()()()()()()()()()()。」

 

意図が通じてくれたようで良かったけど、やっぱりフェイトは気を失ってしまっているらしい。

それによく見るとバルディッシュも随分ボロボロだ…と思ったが、バルディッシュが≪Recovery.≫と言った瞬間直ってしまった。

…そう言えばレイジングハートってあれは出来ないのかな? リニスお手製のギミックとかあるのだろうか?

そんな事を考えている間にフェイト(アリシア)はバルディッシュをサイズフォームに切り替え、魔力の刃を生み出す。

…フェイトのように雷が形を取ったような刃ではない。まるで水晶のように透き通った青い刃だ。こう言うところでも差が出るんだな…

 

「…で、どうすんだシグナム?」

「当然もう一度倒すとも。これだけの数の魔導士、逃す手もあるまい?」

「だよな…シグナム、金髪は任せるぞ。」

「あぁ、任された。」

 

どうする…これ結構ピンチじゃないか? …いや、ホントどうする?

こっちの戦力は俺もフェイトも全力を出せるとは言い難い状況だし、ユーノの得意分野は戦闘じゃない。

紅蓮はザフィーラの相手をしてくれているみたいだし、銀髪オッドアイ達は銀髪オッドアイだし…て言うかこいつら誰だ?

名前が分からないと使う魔法とかも分かんないんだけど…?

それにヴィータとシグナムはあとどれくらいカートリッジを持ってる? 何個使った?

 

 

…いっその事撃っちゃおうかな…スターライトブレイカー…

 

あまりの追い詰められっぷりにそんな危険思想に身を委ねようとした瞬間、俺達の前に魔法陣が展開され…

 

「そこまでだ、ヴォルケンリッター!」

 

時空管理局執務官クロノ・ハラオウンが到着した。

 

 




レティ提督も銀髪オッドアイ部隊を抱えていますが、銀髪オッドアイは色んな部署に居るのですべてではありません。

そしてアルフさんですが、現在シャマルさんと交戦中です。ヴィータを追ってフェイトが飛び出した際にアルフも外へ飛び出したのですが、援護の為に街中に身を潜めようとする過程でシャマルとエンカウントしました。
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