転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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「次回以降は通常時のペースに戻れるかなと思います」と言ってから3話目…
投稿が遅れてしまい申し訳ありません!

でも古戦場は終わったので! 今度こそいつものペースに…!


一難去って思う事

シグナムが姿を晦ましてから直ぐの事…俺を拘束していた炎の檻は掻き消え、再び自由が戻って来た。

 

「逃げられた、か…」

 

ヴォルケンリッター達が飛び去った空を仰ぎ、一人ごちる。

先程の戦いに疑問を感じる点は多々あるものの、今は先ずなのはを始めとした民間人の安全を確認する方が優先だ。

先程のビルに急いで駆けつけると先ず息を荒くして胸を抑えるなのはの姿が見えた。そしてそんななのはに治癒魔法をかけるユーノと、心配そうに見守るアリシアや銀髪オッドアイ…その表情はお世辞にも明るいとは言えなかった。

 

「! クロノ、なのはが…蒐集された…」

「ごめんね、クロノ君…私がもっとしっかりしていたら…」

 

正直この状況を一目見てなんとなく察してはいた。なるべく避けたい事態ではあったが、蒐集されてしまったのなら仕方がない。頭を切り替え、これからできる事に集中しよう。

 

「過ぎた事だ、気にするな…それよりも体の調子は大丈夫か?」

「うん…少し変な感じがするけど、大丈夫…」

 

『変な感じ』か…リンカーコアが蒐集された事で何かあってからでは遅い。早い所医者に見せた方が良いだろう。

 

「エイミィ、結界が消える前に皆の転送を!」

『うん、準備は出来てるよ!』

「待って! アルフは!? アルフが居ない!」

『アルフは…一足先にアースラに戻ってるよ。だから大丈夫。』

「エイミィ、アルフに何かあったの!?」

『それは転送した後で話すよ。ごめん、今は転送を優先するね。』

 

エイミィがそう言った直後に通信は切れ、代わりに転送の術式が体を包む。

 

アースラに戻ったら、一先ずはなのはの…場合によってはアルフもか。バイタルチェックをした後、船医に見せるか…

いや…どちらにしてもこの後は本局に用事があるし、レイジングハートとバルディッシュの破損の件もある。

本局の施設を借りて本格的な検査をしてもらった方が良いかも知れないな…

 

後は…ヴォルケンリッターと直接交戦した者には少し聞きたい事もある。皆、時間が取れると良いのだが…

 

 

 


 

 

 

「…ん、うぅ…」

 

…あれ、俺…寝ていたのか…?

寝起き特有のぼんやりとした意識のまま、何となく部屋を見回す。

この部屋の感じ…アースラか?

 

「あ、アルフ! 大丈夫!?」

「フェイト…? えっと、ここは…」

 

体を起こして声のした方…部屋の入り口を見ると、コップと水を持って来てくれたらしいフェイトが見えた。

 

「アースラの医務室。先生が言うには体には何の問題も無いって…」

「アースラ…? えっと、あたしは確か…!」

 

そこで俺の意識は覚醒し、気絶させられる前の事を思い出した。フェイトのサポートの為に市街を移動している途中にシャマルを見つけて交戦した事も、その結果も…

 

「…そう言えば、フェイトは大丈夫だったかい?

 あの剣士に、その…」

「うん…実は私もさっきまで気を失ってたんだ。

 私が意識を失ってる間は姉さんが頑張ってくれてたみたい。」

「アリシアが?

 そうかい…頑張ったねぇ、アリシア…」

「…ふふ、『子ども扱いするな』だって。」

「あはは、ごめんごめん…」

 

どうやらフェイトは蒐集されずに済んだようだ。それに見たところケガもそう大した物じゃなさそうだし、一安心ってところかねぇ…

 

「…元気、無いね。アルフ…」

「…あぁ…流石に今回のは堪えたよ。

 あたしも訓練サボってた訳じゃなかったんだけどね…手も足も出なかった。」

 

戦闘開始から数分間はこっちが攻撃していたが、それはシャマルが攻撃してこなかったからだ。そしてそれを『戦闘が得意ではない』と勘違いし、隙を晒した結果があのざまだ。

…なまじ原作知識を持っていた事で、『シャマルはサポート役』と言う先入観があった事は否めない。シャマルの動きを注意深く見れば近接戦闘が出来た事を見抜けたかもしれない。

もし見抜けていたら…それでも勝つ事は出来なかっただろうけど、せめて一撃くらい入れられたかもしれない。そう思うと悔しくて仕方がない…

負けた事以上に、シャマルを侮った自分があまりにも情けない…!

 

「フェイト…あたしも強くなるよ。

 いつまでフェイトのサポートが出来るかは分かんないけどさ、

 追いつけなくなるギリギリまで隣に居れるように強くなるよ。」

「…うん、私も強くなる。

 今まで以上に速く、鋭く…巧く戦えるようになって見せる。」

「えっ」

「姉さんも『もっと頑張る』って。一緒に強くなろうね…アルフ!」

「あ、うん…」

 

…どうしよう、置いて行かれるまでの時間が早まった気がする。

いや、諦めるな俺! フェイトが大人になった後も、背中を任される使い魔になるんだよ!

 

…とりあえず、リニスとクロノに鍛えて貰うとして…後他に鍛えてくれそうな人って誰が居たっけ…?

 

 

 


 

 

 

レイジングハートとバルディッシュの修理と蒐集後の俺のリンカーコアの精密検査を受ける為に管理局の本局に向かう事になった俺達は、それぞれ与えられた部屋で休息をとっていた。

…とって()()。過去形である。

 

≪…なのは、もう一度言って貰える?≫

 

今俺はユーノに両肩を掴まれ、詰問を受けていた。

と言うのも…

 

≪…はい、ヴィータちゃんにレイジングハートを破損させて貰う為に…その、少し手を抜きました…≫

ばっかじゃないの!?

 

頭に直接響く怒号に思わず身が竦む。

その間にもユーノはユーノらしからぬ荒々しい口調で俺を責め立てる。

 

アースラに保護され軽いバイタルチェックを受けた後、与えられた自室にてユーノと会話する中で「まさかなのはの守りを抜く程とはね」と言うユーノに対して念話で正直に答えたのが始まりだった。

 

…ユーノの怒りは尤もだ。

俺がボロボロにやられている(実際のダメージは大した事は無いが)様子を見て、大いに心配させてしまっただろうと言う事は容易に想像がつく。

駆けつけて来てくれた時の表情からも俺の無事を確認してホッとしたのが分かったし、それにユーノは今のように時々口が悪くなるものの根本的な所で優しいやつなのだ。

…要するに、罪悪感が半端ないです。

 

≪…ごめんなさい。≫

≪もうこんな事はしないって言える?≫

≪はい、もう絶対に手加減なんてしません。≫

≪…実戦以外は別に良いわよ?≫

≪あっ…そうだね、気を付ける。≫

≪…レイジングハート、あんたもよ。

 なんかあんたから提案したって話だけど、それについて言う事は無いの?≫

 

ユーノは俺の肩を掴んだ姿勢はそのままに視線を俺の胸元に移し、ヒビの入ったビー玉のようになっているレイジングハートを睨みつつ話を続ける。

 

≪すみませんでした。≫

≪何について?≫

≪…ヴィータに対して下手に手加減なんてしたら、なのはの身に何があってもおかしくなかったです。≫

≪それだけ?≫

≪いえ緊張感を欠いた提案でしたし、それに…ユーノ達にも心配をおかけしました。≫

≪なによ…分かってんじゃない。≫

 

肩を掴んでいる手の力が緩み、離れたかと思うと今度はユーノに抱きしめられた。

 

「…本当に心配したよ。無事で良かった…」

「…ごめん、ユーノ君。本当にごめんね…」

 

その後聞いた話ではあの時既にアースラにはヴォルケンリッター(シャマル以外)の詳細な情報が届いていたらしく、確認された全員が『原作以上に強化されていた』と言う事だった。

勿論『原作以上に云々』と言うのは情報を見せて貰ったユーノの主観だ。原作を知らないであろうリンディ提督やクロノにその判断は出来ない。

ただ、俺の想像していた以上に心配したという事は分かった。

 

「…心配させて本当にごめんね。」

「…ふぅ、過ぎた事はもう良いよ。≪カートリッジシステムが無いと不安って言うのも分からなくはないし、≫こうしてなのはも無事だった事だし…ん?」

 

話の途中で、ユーノが急に考え込む素振りを見せる。

 

「ユーノ君…?」

「…いや、ちょっと気になる事があってね。」

 

ユーノはそう言ってしばらく考え込んだ後…

 

≪なのはは障壁を張った時、かなり手加減したのよね?≫

≪えっ、うん…一応、他の皆が張る障壁くらいの強度は維持してたけど…≫

≪…なら、何でなのははそんなに()()()()()()のかしら…?

 今のヴォルケンリッターの戦闘能力を考えれば、手加減なんてしたらもっと酷い事になってもおかしくない筈なのに…≫

≪…もしかして…?≫

 

俺が手加減したように、ヴィータも手加減していた…? 何の為に…?

 

考えられる可能性は『なのは()を傷付けたくなかった』って事くらいだろうけど…

いや、確か原作知識でもヴィータが手加減して戦っている様なセリフがある。闇の書にリンカーコアを蒐集させる為だ。今回の状況にも当てはまる。

 

…もう一つの可能性としては、『ヴィータも俺達と同じ転生者だった』ってのも考えられるか。

少し突飛な考えだが…俺やユーノは勿論、フェイトも転生者だったことを考えれば可能性は無くはない。勿論プレシアやリニスが転生者じゃない事もあって『絶対』とはとても言えたもんじゃないが…

 

≪まぁ、まだ分からないわね。

 なのはの魔力を蒐集する為に全力を出さなかったって可能性も十分にあるし…≫

≪…うん、でももしもヴィータちゃんが転生者だったら…≫

≪協力できるって?

 …でもあからさまに『転生者です』って言ってるような銀髪オッドアイ達と普通に敵対してたわよ?

 彼等は人数も多いんだし、協力が必要なら真っ先にコンタクトを取ると思わない?≫

≪あ、確かにそうかも…?≫

 

協力するのは良い考えだと思ったのだが、そう言われると確かにそうだ。

アイツ等程分かりやすい転生者もいないし、考え違いだろうか?

…いや、待てよ…

 

≪フェイトちゃんの時みたいに何か事情があって協力出来ないとか…?≫

≪彼女達みたいな状態になる人が何人もいるのかしらね…?≫

≪…流石にちょっと考えにくいかな…≫

 

『クローンの元になった人物の魂と融合しかけて意思に干渉があった』なんて特異な例が複数人に起こるなんて流石に考えられない。

それにヴィータ達はクローン体でも無いしな。

 

「…ふふ。」

「ユーノ君?」

 

二人でうんうんと考え込んでいると、ユーノがふいに笑った。

 

≪ううん、何でも無いわ。

 ただ『こういう風に話し合いするのも久しぶりだな』って思っただけよ。≫

≪あ…うん、そうだね。≫

 

「…ただいま、なのは。」

「…うん。おかえり、ユーノ君。」

 

その後俺達はなんとなく今まで離れていた時の話をした。

こんな時だけど、今はお互いになんて事の無い話をするのも悪くない。

この後はヴォルケンリッターとの戦いに時間を割く事になるだろうし、今は再会と無事の喜びを分かち合おう。




アルフさん強化フラグが立ちました。
実はアルフさんって『特典による強化』が全くされてない状態なんですよね…このままじゃ確実にヤムチャ枠でした。
ただ修行パートはメインでは書かない予定です。これ以上ペースやテンポが悪くなるのは拙いので…(ここまででA's本編の2話って…)
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