転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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リーゼ姉妹、(魔都と化した)父さまの故郷に立つ。


獅子身中の猫

『…すみません、先輩も闇の書の件で忙しいのに…』

「良いって良いって! 実はこっちもまだ環境が完全には整って無くてさ…まだあまり動けないんだよね。」

 

今私はクロノ君に頼まれた多次元の観測と転送の為の機材を調整する傍ら、後輩からの通信に応対していた。

後輩の名前はマリエル・アテンザ…私を含め、親しい人はマリーと愛称で呼んでいる。

マリーにはある仕事を任せている事もあり、この通信もそれに関する事だった。

 

「それでマリー、二人のデバイスの調整は順調?」

『…はい、一応明後日にはお二人共お渡しできるかと…思うんですが…』

 

…あれ、明後日? ベルカ式カートリッジシステムの発注を含めるともっとかかるかと思ってたんだけど…

それとも、レイジングハート達はカートリッジシステムを要求しなかったとかかな…?

 

「そうなの?それじゃあ…」

『あ、ただ…』

「うん?」

『…実は、ちょっと妙なエラーが出ていて…その確認なんですけど…』

 

あ、やっぱりそうなったんだ…

マリーが言うにはカートリッジシステムを組み込むようエラーが出ているが、それは本来二つのデバイスに無かった物だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、組み込んでしまっても問題無いのだろうか…との事だ。

 

「まぁ、難しい判断だよね…本来ミッド式のデバイスはカートリッジシステムを前提とした造りをしてないから、強度とかがどうしてもねー…」

 

フレームの強度も武器として使用する事を前提としたベルカ式のアームドデバイスにはどうしても劣るし、いくら()()()()()()()()()()()こればかりは………うん?

 

「えっ、ちょっと待ってマリー。在庫があるの? ベルカ式カートリッジシステムの?」

『え? あ、はい。

 実は少し前からうちの部隊の一部の局員から、カートリッジシステムを付けてくれって要望が上がってて…』

「あー…何と無く察した。」

 

マリーは『銀髪部隊』を抱えるレティ提督の部下だからなぁ…

多分いつもの人達だろうと簡単に予想できるや。

単純にカートリッジを付けたいだけなのか、純粋に強くなりたいのかは別れるかもしれないけど。

…まぁ、今回に限って言えばそれがプラスに働いたって言えるのかな。

 

『ちょっとしたブームなんですかね? それで在庫を予め多めに確保していたので、今回もその中から組み込もうかと考えているのですが…』

「うーん…マリーはもうカートリッジの組み込みってやった事ある?」

『はい。最初は少し梃子摺りましたけど、今はもう問題無く…』

 

…これもある意味彼等の功績なのかなぁ?

まぁ、そう言う事なら任せちゃっても良いかな。

 

「そっか…今回のデバイスは両方ともインテリジェントデバイスだからね。

 カートリッジシステムは多分二人が望んでるんだと思う。

 多分二人とも持ち主に似て頑固なところがあると思うし…うん、付けてあげて。

 持ち主の二人には私から注意点も含めて説明しておくから。」

 

まぁ、注意しても聞いてくれるかは微妙なところだけど…

 

『分かりました。

 では調整も併せて…そうですね、第97管理外世界の時間で明後日の夕方頃にはお渡しできるかと思います。』

「うん、了解。…それにしても、レティ提督の部隊では『カートリッジシステム』ってブームになってたんだね…」

『私は戦闘は専門外なので良く分からないんですけど…彼等が言うには、ロマン? があるんだとか。』

「…なるほどねー、確かに言いそうな事だなぁ…」

 

『回数制限付き』で『反動がある』『高火力』…その上『使うなって言われるモード』まで付いてるんだから確かにロマンの塊と言って良いかも知れない。

 

――ピンポーン

 

その時、微かにインターホンの音が来客を知らせる。

…あれ? 誰かが対応する気配が無いけど、今艦長達って外に出てるのかな?

 

「あー…マリーごめん、ちょっと来客みたい。」

『あっ、いえ! 私こそ先輩を長々と付き合わせてしまい…!』

「あはは、大丈夫大丈夫! 私も良い気分転換になったよ。それじゃまたね!」

『は、はい! また…』

 

マリーとの通信を切ってから拡張空間から出ると、やっぱり艦長もクロノ君も居ないみたいだ。

…買い物かな? 今はヴォルケンリッターとか色々物騒だし、念の為にクロノ君と一緒に出掛けるのもおかしな事じゃないか。

 

――ピンポーン!

 

「はーい! 今行きまーす!」

 

えっと、念の為拡張空間に続く入口は隠して…これで大丈夫かな?

ホログラムの装置も切ったし…うん、前世でも良く見た普通の部屋になってるはず。

…最近ちょっと管理世界の技術に慣れ過ぎて自信ないけど。

 

――ピンポーン!

 

…なんか随分せっかちな来客だなぁ。この感じだと宅配とかじゃないよね…? 宗教の勧誘とかだったらどうしよう…

そう思いながらもドアの覗き窓に目を近づけて外を窺うと、つば付帽子の上からパーカーのフードを被った女の人の姿が見えた。…うわっ、怪しい。

流石に不用心に開けるのは憚られるし、ドアを開ける前に相手が誰かを確認したいんだけど…

むぅ、絶妙に帽子のつばが邪魔で顔が見えないな…

 

ただ、ちらりと見えたあの髪の色と形…どこかで見たような…? ………って、あぁ!

 

「リーゼロッテさん!? どうしてここに!?」

 

相手がリーゼロッテさんである事を確信し、慌ててドアを開ける。

 

「やっほー、エイミィちゃん。

 一先ず部屋に上がらせてもらっても良いかな? この服装だと色々窮屈でさ…」

 

リーゼロッテさんはそう言いながら、さりげなく頭とお尻を指差す。

私も転生者だからリーゼロッテさんがスパイである可能性がある事は重々承知の上だけど、こう言われては部屋に上げない訳にはいかない。

 

使い魔と言う概念も無い管理外世界では、猫耳と猫尻尾は目立つ。今のリーゼロッテさんは帽子とパーカーのフードで耳を、ややダボ付いたズボンで尻尾をそれぞれ誤魔化しているけど、よく見ればズボンのお尻の辺りの輪郭に違和感を覚える。なるべく人目につかない内に部屋に上げないと、また誰かに見られて騒ぎになるかもしれないのだ。

 

「はい、とりあえず上がってください!」

「ありがとー」

 

これってやっぱりこっちの動きを把握しに来たって事なのかな…?

アニメのリーゼロッテさん達を知っている身としては凄く怪しいんだけど、原作知識なんて案外あてにならない事はもう十分分かってるしなぁ…

 

どちらにしても取りあえず艦長とクロノ君には連絡しておかないといけないし…あぁ、やる事ばかりが増えて行く…

 

 

 


 

 

 

――ピンポーン

 

「ん、誰やろ? …はーい! 直ぐ行きますー!」

 

リビングで寛いでいると、唐突にインターホンが鳴った。

…誰だ? はやては心当たりが無いようだし、ここは私が出るべきだろう。

 

「あぁ、私が出ます。はやては料理の仕込みに専念してください。」

「そうか? ほんなら、お願いな。」

「はい。」

 

今ザフィーラ達は無人世界に蒐集に出ていて、この家には私とはやてしかいない。このタイミングを狙っての来訪者であるなら、管理局の魔導士の可能性もある。

はやてはチェスで言うところのキングだ。そんな場においそれと出す訳には行かない。

…尤も管理局の魔導士に住処がバレたとなれば、その時点でこちらの詰みと言っても過言ではないのだがな。

 

 

 

玄関まで行くと、そこに居たのは見知らぬ女性だった。

真っ直ぐ腰まで伸びた黒髪に、白いセーターと膝丈のスカート…

穏やかな表情も含め、一見ただの民間人だが…

 

「貴様、魔導士だな…何者だ。」

 

体の内側から漏れ出すその魔力が、目の前の女性が魔導士である事を雄弁に語っている。

 

「初めまして、私は『エール』と申します。

 貴女は『剣の騎士』ですね…他のお三方はどうしたのですか?」

「言うと思うか…?」

「いいえ、言う必要はありませんわ。想像は付きますもの。

 どこかの無人世界に蒐集に出向いているのでしょう?」

 

…妙に丁寧な口調だ。彼女の外見から抱くイメージに合っていると言えなくもないが、どこか微妙に使い慣れていないような違和感がある。

…恐らくは本来の口調では無いだろう。

 

口調を誤魔化す理由は自らの正体を隠したいからと言うのは想像に難くない。『エール』と言う名前も偽名と考えて良さそうだ。

 

分かっているのは闇の書について、それなりに深い知識を持っている人物と言うくらいか…

その上で周囲に管理局員の魔力も感知できない事を考えると、目の前のこの女性は管理局側ではない事は分かるが…

 

「もう一度だけ聞く。…何者だ。」

「そう構えないでください。私は貴女達の味方です。闇の書の蒐集に協力してあげる為に来たのですわ。」

 

…味方? 闇の書側に『本当の意味で』味方する魔導士など居る筈もない。

そんな者が居るとすれば、転生者だろうが…それにしたってどこかおかしい。目の前の女性から感じる魔力はかなり洗練されており、その流れはスムーズで淀みがない。

これほどに洗練された魔力コントロールを身に着ける事は、師を仰げない地球ではほぼ不可能と言って良い。

 

「…味方だと? 『闇の書』の事を知っていて、味方すると言うのか?」

「ええ、きっとお役に立てますわよ? 私。」

 

故に管理世界の出身と考えるのが自然だが、そうなると闇の書側に付くと言う言葉に違和感が生まれる。

管理世界の住人で闇の書を知っているのであれば、猶更闇の書に味方をするとは考えにくい。

 

…だが、判断材料が足りないな。ある程度予想は付いているが…少し情報を引き出してみるか。

 

「『役に立つ』か…では、どう役に立つつもりなのか聞いても?」

「そうですわね…例えば、管理局の動きを事前に察知して教えてさしあげる等はどうでしょう。

 蒐集する時に管理局に邪魔されるなんてまっぴらでしょう?」

 

…予想はしていたが、やはり十中八九リーゼ姉妹のどちらかか。

 

永い時を生きた私達ヴォルケンリッターにとって『魔法少女リリカルなのは』に関する知識の大半はもはや忘却の彼方だが、それでも意図して忘れないようにしてきた情報がある。

 

リーゼ姉妹とギル・グレアム提督もその一つだ。彼女達姉妹は蒐集でこそヴォルケンリッターに協力する姿勢を見せる。だが最後はヴォルケンリッターを裏切り、ヴォルケンリッター達全員を蒐集して闇の書を完成させるのだ。…八神はやてごと闇の書を封印する為に。

 

今回のアプローチの方法が私の知って居るものとだいぶ違う点は、今は置いておこう。肝心なのは『彼女達の最終的な目的は変わらない』と言う点だ。

故にこの協力も一時的な物。闇の書の完成後は、やはりはやて諸共封印するつもりだろう。

 

≪…と言う事だが、先程伝えたプランで良いか? はやて。≫

≪うん。ええよ、シグナム。私も覚悟は決めとる。≫

 

だからこそ…

 

「…そうだな、貴殿を協力者と認めよう。」

 

彼女の協力の提案は受け入れるべきだ。

 

彼女達はやがて裏切る…それは間違いない。

だが、それは言い換えれば『闇の書が完成するまでは間違いなく協力者』と言う事でもある。

彼女達は彼女達の目的の為に闇の書を完成させてくれる…それこそ、私達が完全に()()()()()()()()としても。

はやて(家族)の死を回避する為に、闇の書は完成させなければならないのは事実なのだ。

 

「あら、思ったより素直に受け入れてくれるのですね?」

「今は人手が欲しいと言うだけだ。…それとも断って欲しかったのか?」

「いいえ、これからよろしくお願いしますね? 剣の騎士さん。」

「ああ、よろしく頼む。

 …それと、主は我らが蒐集を行っている事を知らない。

 話し合いは思念通話で頼む。」

≪ええ、これで良いのですわよね?≫

≪ああ。問題無い。≫

 

…相手を騙そうとしている人間程、自分が騙される可能性を警戒しない。

お前達がお前達の目的の為にはやてを利用するように、私達もお前達をせいぜい利用させてもらうとしよう。

 

さて…今の内にシャマル達にもこの情報を共有しておこうか。




リーゼ姉妹、スパイとして両陣営に潜り込む事に成功する。(なお全部バレている模様)

エイミィとリーゼロッテ間の名前の呼び方は憶測です。(もしかしたら公式でどう呼んでたかあったかもですけど覚えてない)

戦闘力でクロノに追い抜かれ、実際にシグナム達の戦闘を見て勝てないと察したリーゼ姉妹の導き出した方針は管理局の動きの情報を流す事でした。
使い魔のパスを利用し、ロッテ→アリアへと情報が伝わります。『仮面の男』? 多分出ません。
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