フェイトさん達の転入回です。
「…ではフェイトさん、アリシアさん、皆に自己紹介を…」
私の背後の黒板に私達の名前を書いた後、これから担任となる先生は私にそう促す。
今私は私立聖祥大附属小学校の転入生としての自己紹介をする為、黒板の前に立っていた。
「フェイト・テスタロッサです…アリシア・テスタロッサだよ!
…姉さん共々、よろしくお願いします。」
「「「「「「「「「「よろっしゃーっす!!」」」」」」」」」」
<うわぁ…>
目の前には大勢の銀髪オッドアイと、それとほぼ同数の普通の外見の同級生達。
割れんばかりの大声に思わずと言った様子で姉さんがドン引きし、担任の先生が宥める様子を見ながら私は思う。
事前になのはから話は聞いていたけど、本当に凄いクラスに転入して来てしまったものだ…と。
「フェイトさん達の席は、あの後ろの方の一つだけ空いてる席よ。
もし授業中に黒板が見辛かったりしたら言って頂戴ね?」
「あ、はい。分かりました。」
先生に促されるまま指定の席に向かう途中、ちらりと周りの様子を見る。
確かに男子生徒の殆どは皆殆ど同じ顔に銀髪オッドアイだけど、女子は何と言うか…普通? かも知れない。
髪の色が前世に比べるとカラフルだけど、それはこっちでは普通みたいだし…
…
ホームルームが終わり先生が教室を出て行くと、私の席の周りにあっと言う間に人だかりが出来る。転入生への質問タイムは前世でもある種のお約束だったっけ。
ただ、その内容は少しお約束とは違ったけど…
Q.ようこそフェイト…魔都『海鳴』へ!
A.ま、魔都…?
Q.あれから俺も強くなったんだ、今度リベンジマッチ受けてくれないか?
A.あ、うん。
Q.これから毎日模擬戦しようぜ!
A.毎日はちょっと…
Q.趣味は?
A.…飛翔魔法かな。
Q.得意な距離は?
A.クロスレンジ。
Q.最大どこまで速くなれる?
A.音速は超えたけど、母さん達に禁止されて…今は秒速300mくらいに抑えてる。
Q.奥の手は?
A.秘密。
Q.アリシアは元気?
A.うん、ちょっと待ってね…元気だよー!
Q.フェイトは元気?
A.えっ!? …ちょっと待って! …うん、元気だけど。
Q.アリシアは元気?
A.…姉さんが『遊ぶな!』って言ってる。
Q.ごめんなさい。
A.『良いよ』だって。
何かいくつか質問じゃ無かった気がするけど、そんな感じで答えている内になのは達もやって来て会話に加わった。
「あはは、大変だね…フェイトちゃん。」
「なのは…アリサにすずかも…」
凄いや…なのは達が来た途端に人垣がモーセの海割りみたいに…
≪なのは…なんか、ボスキャラみたいな登場だね。≫
≪私もそう思ってたからあんまり触れないで…≫
なのはも結構苦労してるんだろうな…
そうか、これがこれから他人事じゃ無くなるんだ…
「ビデオメールでも思ってたけど、魔法関係の話って物騒な話題ばかりね…」
「あ、アリサ。…やっぱりそうなのかな?」
「少なくとも私達と同年代の子達が思う魔法って、もう少し平和だとは思うわ。」
私がリニスや母さんに教えて貰った魔法は戦闘に使うものばかりだけど、確かにもっと別の用途の魔法が有っても良いはずだ。
ユーノが無限書庫で使っていた検索魔法の様な日常に寄り添う魔法とか…すこし興味はあるかな。
「そうだよね…特にアリサちゃんは、なのはちゃんが戦いに行く度に心配してたもんね。」
「そうなの? アリサちゃん?」
「ちょっ、すずか!?」
…うん、何と無く3人のパワーバランスが見えて来た。意外な事にリーダーシップがありそうなアリサが弄られ役で、実質的なペースはすずかが握ってるみたいだ。
この3人の輪に入ったら、私達はどんなポジションになるんだろう?
「…あ、そうだ。」
「?」
なのはが戦いに行くって話題で思い出した。リンディさんから伝言があったんだ。
「なのはにリンディさんから伝言。
レイジングハートもバルディッシュも、明日の夕方には帰って来るって。」
「えっ? そうなの?」
「えっ、早くね? もう?」
銀髪オッドアイ達となのはが驚いているけど、私も最初に聞いた時は驚いた。
カートリッジシステムを付けて帰って来るにしては早過ぎると思ったからだ。リンディさんは「ちょっとしたサプライズもあるわよ。」みたいな事を言ってたし、多分カートリッジシステムも付いたんだとは思うけど…
「レイジングハートって、確かなのはの持ってるビー玉みたいな奴よね?」
「え、うん。魔法を使う時には杖になるの。」
「…前になのはの家に遊びに行った時、なんかレイジングハートがラジカセに繋がってたんだけどあれって…」
「へぇぁっ!?」
…レイジングハートがラジカセにって………どういう事だろう?
「あっ、あぁ…あぉあの、あれは…」
何か凄い動揺してるし…視線が凄いキョロキョロしてるし…
と、なのはが何かを見て一瞬何かを閃いたような表情をした後、早口気味に口を開く。
「レイジングハートみたいなインテリジェントデバイスって自分の意思で言葉を話すんだけど、基本的には英語で、私のレイジングハートも凄い自然な英語で話してくれるんだけど、でもやっぱり同じ日本語で話したいなって思って、それで、木之元ちゃんのデバイスは日本語で喋れるんだけど、だったらレイジングハートも日本語で喋れるんじゃないかなって思って、それで『スピードラーニングの日本語版』の物をレイジングハートに聞かせて…ました…はぃ。」
「そ、そうなの…」
慌ただしいボディランゲージ、泳ぐ目線、首筋に伝う汗…どう考えても何か隠してるなのはだが、アリサは訝しがりながらも深く追求せずに退き下がった。元々そんなに深く考えて聞いた訳じゃ無く、素朴な疑問だったのだろう。
周りの銀髪オッドアイ達も訝しんでいるが、アリサが退いた為深く追求しないつもりのようだ。
<なのはちゃん、凄い慌ててるねー
フェイトの記憶にあるゲームだとあれは絶対に『異議あり!』ってシーンだよ。>
<姉さん…>
<いや、私も実際にはやらないからね!?>
<先ずは徹底的に『ゆさぶる』をしてからじゃ無いと…>
<そっち!?>
そりゃそうだよ。…まぁ、冗談はさておき…なのはの隠し事は多分転生者関係の事かな。
事情を知ってる私なら何か力になれるかもしれないし、ちょっと聞いてみようかな。
≪なのは、本当は何があったの?≫
≪ふぇ、フェイトちゃん…実は…≫
<…ふっ、くふっふ…>
<姉さん…>
訳を聞いた姉さんが堪え切れずに笑い始める。表に出ているのが私で良かったよ、ホント。
それにしても…なるほど、英語が苦手な
そう言えばあの時も≪ぷったう≫とか言ってたっけ。
≪なんて言うか…大変だね、なのはも。≫
≪うぐぅ…まさか見られていたとは…≫
≪…あれ? でも…≫
≪…なに?≫
いや、今の言い訳を上手く使えば…
≪さっきなのはが言ってたみたいに、レイジングハートが
≪…そ、それだ…!≫
「じ、実はレイジングハートもそのおかげか…」
「あー…なのは。夢を壊すようで悪いんだけど…」
なのはがさっきの私の提案を実行に移そうとしたその時、銀髪オッドアイの内の一人が申し訳無さそうに口を開いた。
「えっ?」
「木之元のデバイス…あれな…?
木之元自身が組んだデバイスだから日本語が話せてるだけで、普通のデバイスは日本語喋れないらしいんだ…
『日本語化パッチ』みたいなのが無くてさ。」
「えぇっ!?」
あ…そう言えば地球にデバイスを弄れる人がいるって言ってたっけ。なのはの同級生だったんだ。
木之元さんか…なのはが見てたあの子がそうなのかな? 名前が出た事に気付いたのか、少し遠くの方からこちらを窺っている女の子と目が合った。
「…じ、実は…やっぱり上手く行かないみたいで…!
まだ英語のままなの…!」
≪あー…なのは、ゴメンね。その木之元さんのデバイスを知らないのに変な事言ったせいで…≫
≪ううん、フェイトちゃんのせいじゃないよ! 私が知らなかったせいでもあるし…!≫
その後なのはが色々と言い訳?している間に先生がやってきて、一限目の授業が始まった。
一限目は国語か…懐かしいな。そう思って教科書を開くと、私が知らない作者の知らない小説が目に入った。
なるほど、世界が変われば作者も小説もガラリと変わるのも道理だ。読書は元々嫌いでは無かったし、これなら飽きる事も無さそうだ。
<思ってたよりも楽しい学校生活になりそうだね。姉さん。>
<…勉強はフェイトにパスして良い?>
<駄目だよ、偶には姉さんにも交代するからね。>
<えー…>
大丈夫だよ、多分このクラスは姉さんが考えてるよりも楽しいと思うから。
なのはさんが色々頑張ってましたが、それを聞いた当のレイハさんは≪えっ? いや、やっぱ英語の方がかっこいいから英語頑張るよ。≫と日本語で返す模様。
因みに転入手続きの際フェイトさん達の関係を知った学校関係者は最初こそ動揺しましたが、直ぐに銀髪オッドアイ達の顔を思い出し「まぁ、今更か…」と落ち着いたと言う裏設定があります。