本来一昨日投稿されていた筈だった物です。すみません!
はやての家に向かうリムジンの中、アリサとすずかと談笑中に突然フェイトから念話が入った。
≪…5人目?≫
≪うん。クロノが言うには、ヴォルケンリッターを手助けしている女の人がいるみたい。≫
≪リインフォースじゃなくて?≫
≪特徴が一致しないから、変身魔法を使っていなければ多分違うと思う。
今から特徴を言うね。≫
≪うん。≫
フェイト曰く、その人物は黒髪を真っ直ぐ腰まで伸ばしており、前髪はきれいに眉の少し上で切り揃えているらしい。
目はやや釣り気味だけど目つきが悪い訳では無く、クールな印象を受けたそうだ。
≪…分かった。私の方でも何か分かる事が無いか調べてみる。≫
≪うん、お願い。≫
「…なのは? どうしたの?」
「あ、ううん。フェイトちゃんからちょっとね…」
「テレパシーってやつ? やっぱり魔法って凄いわね…携帯電話要らないじゃない。」
「あはは…たまにテスト中にアリシアちゃんからヘルプが飛んでくるけどね。」
「…一長一短ってやつね。」
勿論予めフェイトに言われているため、ヘルプに応じる事は無い。無いのだが…返却後のテストの成績があまり悪くない辺り、多分フェイトの方が押し負けてるのではと言う疑いがある。
本人に聞いた時は少し目が泳いでたし…
いや、それは今はどうでも良いんだ。問題は5人目の謎の女性だ。
まさかここに来て新しいイレギュラーが発生するとは、いよいよもって原作知識が当てにならなくなってきたな…
正直もうこの特典のメリットと言えば、『何時でもリリカルなのはシリーズのアニメを脳内再生できる』くらいのものだ。…案外ファンからすれば最高の特典かもな、これ。
「アリサちゃん、なのはちゃん、見えて来たよ!」
すずかの声に正面を見ると、確かに『原作知識』の通りの外観が見えてきた。
これから俺はフェイトよりも一足お先にはやてと会う訳か…
「すずかの友達かぁ…会うのが楽しみね!」
「うん!」
…ちょっと緊張もするけどな。
「すずかちゃん、いらっしゃい! はやてちゃんも皆さんが来るのを待ってましたよ!」
えっ、誰? と言うのが最初に抱いた感想だった。
八神はやての家のインターホンを押したら、突然知らない女性が出てくれば仕方ないだろう。
「お邪魔します美香さん。
なのはちゃん、アリサちゃん、この人ははやてちゃんのヘルパーさんの美香さん。」
「あ、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
なるほど、ヘルパーの人だったか。確かに車椅子の女の子に一人暮らしは難しいだろうし、こういう人が居てもおかしく無いな。
一瞬フェイトが言っていた5人目かとも思ったが、この女性の髪の色は赤みがかったオレンジ色だ。髪型も肩の辺りまでで切り揃えたふんわりとしたもので、顔立ちも優しい印象を受ける。
勿論変身魔法を使っている可能性があるので完全に白とは言えないが、この女性がこちらに居た事だけは記憶にとどめておこう。
「はい、なのはちゃんとアリサちゃんですよね。お話は聞いてます。
はやてちゃんもお部屋で待っていますので、どうぞ上がってください。」
「あ、はい。お邪魔します。」
…玄関の靴は恐らくはやての物だろうと思えるサイズしかない。という事は、ヴォルケンリッター達は蒐集に出ているのか。
だとするとフェイトは今頃戦っているのかもしれない…
それにしても、蒐集のタイミングに意図的な物を感じると言うのは気にし過ぎだろうか? それともやはり管理局の関係者である俺との接触を避けているのか…
フェイトが戦っている分、俺も5人目の女性について何かしらの情報を得られればいいんだけど…
「すずかちゃん、いらっしゃい!」
「来たよ、はやてちゃん!」
案内されたリビングに入ると、直ぐにソファに座っている八神はやてが見えた。
はやてとこうして直接会うのは初めてだけど、何と言うか今までで一番前世を思い起こさせる容姿だ。
声や雰囲気も相まって心が落ち着くと言うか…うん、癒し系だな。後にあれだけ腹芸が得意になるとは思えない。
「はやてちゃん、この子達が前に話した友達のアリサちゃんとなのはちゃん!」
「アリサ・バニングスよ。よろしくね。」
「高町なのはです。よろしく、はやてちゃん。」
「アリサちゃんに、なのはちゃんやな!
私は八神はやて言います。こちらこそよろしくお願いします。」
「本当はあと
「そうなんや…ちょっと残念やけど、また今度遊ぼうなって伝えてくれる?
…まだ直接
「ううん、全然! 二人共来たがってたから、喜んでくれると思う!」
自己紹介を通して感じた八神はやての第一印象は、『礼儀正しく、純粋そうな良い子』と言ったところか。
初対面だと言うのに心の壁や距離をあまり感じない…寧ろ、色々と受け入れてくれるような雰囲気もある。
何と言うか、
俺はこれからこの無防備そうな子から色々と情報を引き出そうとしているのだから。
そんな事を考えながらはやての事を観察していると、膝の上に置かれた携帯電話に目が留まった。
「あ、そうだ。はやてちゃん、メルアド交換しない?」
「良えんか!? する、する!」
「私も良いわよね?」
「勿論や!」
もしかしたら普段の生活について話す中で、5人目の情報が得られるかもしれない。…本当ならこんな打算無しの付き合いをしたいのだけど、それは事件が解決するまでお預けだ。
俺達が知らない人物が干渉して来ている以上、それを無視など出来はしない。
因みにすずかは元々交換済みだったので俺とアリサがはやてとメールアドレスを交換した。
「ふふ、今日は良え日や。アドレス帳の名前が二人も増えたで!」
心が痛い! 純粋に喜ぶ笑顔が、ナイフのように打算だらけの俺の心を切り刻んで来る!
「はやてちゃん…今日はいっぱい遊ぼうね! 今度は私の家にも遊びにおいでよ!」
「すずかちゃんのお家に? わぁ…めっちゃ楽しみや!」
…これは、何とも心苦しい戦いになりそうだ。
魔法戦やってる方が精神的に遥かに楽かもしれない。
「しつこいな! いい加減諦めろよ!」
ヴィータのその言葉を最後に、目の前からヴォルケンリッターが消える。どうやらまた別の次元世界に転移したようだ。
<あー、もーっ!! また逃げられた!>
<姉さん、気持ちは分かるけど落ち着いて。>
「エイミィさん、次の場所は!?」
『ちょっと待っててね! 直ぐに見つけるから!』
苛立つ姉さんの気持ちも分かる。何度ヴォルケンリッターの前に辿り着いても、その度に転送魔法で逃げられているのだからフラストレーションも溜まるだろう。明らかに向こうは私達との交戦を避けている。
何故かはわからないけど、もしも今戦闘を行う事自体が向こうにとって都合の悪い事なのかもしれない。そうだとすれば、今こそが最大の好機だ。
『見つけた! 直ぐに転送するね!』
「はい、お願いします!」
<今度こそ捕まえるよ、フェイト!>
<うん、頑張ろう。>
エイミィさんの言葉と同時に転送の術式が私を包む。
作戦に移る前にエイミィさんが話した内容によれば、前回の交戦では転送魔法に組み込まれたプロテクトで追跡が難しいとの事だった。
だが今回は前回の反省を踏まえて作戦を変えている。
複数の部隊を予め周辺の無人世界に配備していたのが功を奏した。同じ世界に転移してきたヴォルケンリッター達は、次の次元世界へ転移する際に術式にプロテクトをかける余裕が無かったのだ。
一度捕捉さえしてしまえば後はただの追いかけっこ。術式の痕跡から次の次元世界を予測し、直ぐに目標を見つけられる。
そしてこれは私が転生者だから分かる事だけど、今ヴォルケンリッターははやての家に帰れない。今この次元世界に来ていたヴォルケンリッターの人数は4人…全員だった。本来ははやての傍に一人は置いておくであろう騎士達が総出で蒐集行為をする理由は想像に難くない。なのはがはやての家にいるからだ。
これもある意味なのはのおかげと言えるかもしれない。
「追いついた…!」
<これで8回目だもん! 今度は逃がさないよ!>
<数えてたんだね、姉さん…>
転送の術式を潜って辿り着いたのは一面が砂漠の無人世界…目の前にはヴォルケンリッター。
そして、5人目の転送の術式はまだ発動していない…!
『フェイトちゃん、頑張って! 今あの人が組んでる術式の規模から考えて、まず間違いなく今度はプロテクトをかけて来る!』
「! …分かりました。」
こちらを確認したシグナムが、一人近付いてくる。転送の術式が完成するまで時間を稼ぐつもりだろう。
「…どうやら、私達の考えが甘かったらしいな。ここまでピッタリと付いて来るとは…
よほど腕の良いオペレーターが付いているらしい。」
「はい、私も頼もしく思います。」
『ふふーん。もっと頼ってくれても良いんだよ?』
モニターを見るまでもなく自慢気な表情が目に浮かぶエイミィさんの声だが、実際その技術は凄まじい物がある。転送の術式を即座に解析し、転送先の座標を割り出し、捕捉する…その技術が無ければ、この場所にはたどり着けなかっただろう。
「だが、私達も捕まる訳には行かない。せめて闇の書が完成するまでは…なッ!」
「ッ! 速い…!」
シグナムの踏み込み一つで砂が爆ぜ、他のヴォルケンリッターの姿を隠す。それと同時に目の前まで接近したシグナムが振るうレヴァンティンが、それを防いだ私を彼女達から遠ざけるように吹き飛ばした。
「安心しろ…前回同様、大怪我をさせるつもりは無い。だが腕の骨の一本、二本は覚悟しておくんだな!」
「それくらいの覚悟なら常にしています。そして、私達もあれから強くなっている…!」
「そのデバイス…カートリッジシステムを備えたか。
強度もやや上がっているな…良いだろう、どれほど強くなったか試してやろう!」
かかってこい! とシグナムがレヴァンティンを構える。
勿論最初からそのつもりだ。今回の戦いは恩赦を手にする為の物であると同時に、私のリベンジマッチでもある。
<勝つよ、姉さん!>
<勿論! サポートなら任せてよ!>
私と姉さん、そしてバルディッシュ・アサルト…皆あれから強くなった。
今度は勝つ! 絶対に!
「バルディッシュ・アサルト!」
≪sir, Load Cartridge.≫
「レヴァンティン!」
≪Explosion.≫
互いにカートリッジをロード、私のリベンジマッチが始まった。
本格的な戦闘は次回に持ち越しです。
なのはの特典である『原作知識』について少し補足。
1.特典取得時点で、過去にリリカルなのはシリーズを何度も見返したかのような感じで情報を得る。
2.特定の場面を思い出そうとすれば映像付きで再生される。
3.設定されて無かった物語の情報に関しての補足は入らない。(制作陣が考えていない場合のみ)
4.物語に関する記憶は完全な状態を保つ。
なので『2』と『4』の組み合わせにより、『リリカルなのはシリーズ』を脳内再生する事も出来ます。