転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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今回、一人の銀髪オッドアイの特典と実力が明らかになります。

基本的に銀髪オッドアイは普通に強いです。



これで元通り?

「先ずは、あの神社の鳥居を目指そう!」

 

ユーノの案内を受け、長い階段の上にある鳥居を目指して飛翔する。

3人の銀髪オッドアイ達も付いてくる。

 

原作通りに行けば、あそこのジュエルシードは翌日の夕方ごろ起動するはずだ。

その流れを今から変える。それも意図的に。

 

原作の流れが変われば、未来がどう変化するか分からない。

もしかしたらこの行動がきっかけで、更に不味い事になる可能性もある。

 

だとしても、今考えられる最悪の事態は避けないと!

 

考えている内に鳥居に着いた。

ユーノが俺の腕を抜け出し、駆けていく。

…階段を上り切ってすぐ、石畳の隙間に青い宝石が見えた。

 

「なのは、これがジュエルシードだよ。」

 

ユーノが教えてくれる。

これで、俺も直接探せるようになった訳だ。

 

「心を澄ませて念じれば、君の魔法が思い浮かぶはずだ。」

 

…俺は数秒目を閉じ、レイジングハートをジュエルシードに向ける。

 

「リリカル、マジカル!ジュエルシード、封印!」

シィリンモーゥ(Sealing Mode)セタップ(Set up)!≫

 

未だ起動していないジュエルシードに封印の光が炸裂する。

 

ステンバーィ、レディー(Stand by,ready)!≫

 

「リリカル、マジカル!ジュエルシード、シリアル『ⅩⅤⅠ(16)』、封印!」

シィリン(Sealing)!≫

 

そのまま吸い込まれるようにレイジングハートの中に納まった。

 

リスィー(Receipt:)ナンバーシクスティーン(No.ⅩⅤⅠ)』!≫

 

…正直レイジングハートの声に機械的なエフェクトがかかってないともう突っ込まれてる気がする。

 

今夜はこれをあと数回やる予定なんだよなぁ…不安だ。

 

とりあえずは16番の封印が完了と言う事で…

 

「ユーノ君、これで大丈夫なの?」

「うん、ひとまずこのジュエルシードはもう安全だ。

 この辺りにあの怪物が居ないか軽く探したら、次の候補地に行こう。」

 

そうだった。

この付近にあの怪物が近づいて来ている可能性があるんだった。

 

 

 

結論から言えば、この付近に怪物は居なかった。

例の動物病院からの距離もあるし、何よりこの神社自体がかなり高い位置に造られている。

あの怪物の移動方法ではこの場所に来るだけでも一苦労だろう。

 

怪物の捜索中にユーノと次の候補について念話で相談したが、

『海底』にあるジュエルシードに関してはやはり手が出せないという結論になった。

 

正確にどの地点にあるかが分からない以上、原作でフェイトがやったように強制的に暴走させるしかない。

この場に居る銀髪オッドアイ達全員の力を借りれば封印できるだろうが、

そうなればフェイトとなのはの協力戦が無くなる。

 

もう原作の流れにこだわる必要は殆ど無いが、

フェイトとなのはの協力戦だけは例外だ。

 

あの時のプレシアの介入が無ければ『時の庭園』の座標が見つけられない可能性がある以上、

あそこだけは変えるべきではない。

 

直ぐに銀髪オッドアイ達に念話で通達してもらった。

海のある方面担当の銀髪オッドアイ達も海底のジュエルシードの扱いには迷っていたらしく、

今回の連絡で放置が決まったようだ。

 

 

 

次はプールか…

当然こんな時間じゃ施設も空いていないが、魔法があれば侵入なんて容易い。

とは言え、一人で探すには広いので手分けして捜索。

特に何事もなく17番封印。

 

封印自体は結構順調に進んでいるが、この付近にも怪物は居なかった…

 

その後すずかの家にも行ったが妙な事にジュエルシードは見つからない。

もしかして怪物に回収されてしまったのか…?

もしもそうならこの周辺に例の怪物が居る可能性がある。

 

ユーノに説明してもらい、周辺の捜索に当たった。

 

 

 

怪物が見つからないまま数分後、そろそろ次の候補地へ向かおうと言う時に『方位チーム』から連絡があった。

 

近所の中学校に例の怪物が現れたらしい。

おそらく原作アニメで特に描写もなく封印された『20番』がある場所だ。

どの学校なのかが分からなかった為、後回しにしていたが先に調べに行った方が良かったか…!

 

場所を教えてもらったので飛翔魔法で駆けつけてみると、

どうやら既にジュエルシードは取り込まれてしまったのか怪物の姿が変わっていた。

 

原作や夢では2本の触手が生えた毛玉のような外見だったが、

毛むくじゃらの体表はそのままに大型犬の様な四足歩行をしている。

 

背中から生えた触手は4本に増え、それぞれから細いレーザーの様な砲撃が放たれているのが分かる。

銀髪オッドアイ達は街や学校に被害が出ないよう、プロテクションやシールドで防戦に徹しているようだ。

 

「なのは、来てくれたか!」

 

銀髪オッドアイの一人がこちらに顔を向け安堵しているが…

 

「危ない!!」

「えっ、…しまっ…!」

 

その隙を突かれて被弾してしまう。

被弾した銀髪オッドアイの下に別の銀髪オッドアイが駆け付けて治癒魔法をかけているようだが、

4人で何とか抑えていた怪物がその隙に逃げようとしている!

 

あいつを逃がすのは流石にヤバい。

仕方ない、この距離から…!

 

「レイジングハート!」

シィリンモーゥ(Sealing Mode)セタップ(Set up)!≫

 

当たれっ!

 

「ジュエルシード、封印!」

 

しかし、放たれた光は素早い身のこなしで回避されてしまう。

 

「グルルル…」

 

狼の様なうなり声を出しながらこちらを振り向いた怪物の下へ、

付いてきた銀髪オッドアイが集まり再び包囲する。

 

「ふぅ、助かったぜなのは。

 こいつを逃がしたら流石に被害がデカすぎるだろうからな…」

「ううん、持ちこたえてくれた皆のおかげだよ!

 封印頑張ろう!」

「「「「「「おぉ!!」」」」」」

 

声をかけるだけで士気の上がり方が半端ない。

こういう時、なのはになった事がメリットになるなぁ…

 

ただ、4本の触手レーザーから街を守りながらではどうしても攻撃の手数が減ってしまう。

更に機敏な動きが加わる事で折角撃った攻撃も当たらない。

 

「うぉっ、危ねぇ!≪Protection!!≫おい、学校直撃コースだったぞ!撃つ方向も考えろ!」

「済まん、助かった!」

 

…良いなぁ、流暢な英語のデバイス…

…じゃなくて!

 

「私も、封印!」

シィリン(Sealing)!≫

 

また外した!

怪我をした銀髪オッドアイと治癒魔法を使用中の銀髪オッドアイが抜けているとは言え、

6対1だぞ…!?

ジュエルシードが1つか2つ増えるだけでここまで変わるのかよ!

 

「なのは!神谷がこっちに向かってるって!」

 

神谷…そうか、封時結界なら街の安全が確保できて封印に専念できる!

 

「みんな!神谷くんが向かってるからもう少し頑張って!」

 

そう呼びかけると…

 

「何ぃ!?また神谷か!」

「あいつ、封時結界が使えるだけで大活躍だからな…」

「確かにこの場に一番居て欲しい奴ではあるが、頼りっぱなしってのも気に食わないな…!」

「なんやかんやで神谷だけきっちり名前覚えちまったのが一番気に食わねぇんだよォ!!」

「だよなぁ!」

「神谷が来る前にやってやらぁ!!」

 

「「「「「「うおぉぉぉっ!!」」」」」」

 

わぉ、なのは()の呼びかけ以上に士気が上がってらぁ…

 

「おい、挟み撃ちだぁ!

 俺の切り札切ってやる!!

 怪物挟んで全力でプロテクション張れぇ!!」

「おっしゃぁ!!」

 

切り札…熱い響きだ。気になってきたな…

3人ほど校舎側に集まってプロテクションを発動したのを見計らって銀髪オッドアイが叫ぶ!

 

「食らえ!王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)!魔法バージョン!」

 

そして、銀髪オッドアイの背後の揺らぎから無数の魔力刃が射出され()()()

 

 

 


 

俺が転生時に願ったのは

『イケメンになる事』『王の財宝』『高い魔力』『ストレージデバイス』だった。

 

王の財宝は中身が無いことを予め注意されたが、俺には考えがあったのでそれで良かった。

神にいくつか能力の条件を伝えて、能力は俺の理想通りに付与された。

今となっては『イケメン』について詳しく指定していればよかったと言う後悔の方が強い。

 

転生後、俺は毎日のように人目のつかないところで王の財宝の中に魔力刃を魔力の続く限り撃ち続けた。

原作で中から酒を出す描写があった事から、中では時間の流れが止まっているはずだ。

俺は更に念のために神に直接『魔法も含めて中に入った物の時間を止めてくれ』と付け加えている。

 

こうして俺は4年間もの時間を使って王の財宝に魔力刃を貯めてきた。

 

その努力の結晶が今、凄まじい勢いで撃ち出されている。

 

流石にジュエルシードの怪物も動きを止めて4つの触手からシールドを張って防いでいる。

一枚のシールドが砕ければその後ろから別の触手がシールドを張り、

そのシールドが砕ければまた別の触手が…

そして一周して最初の触手がまたシールドを張る。

 

そんなループを繰り返してかろうじて堪えているようだが、スパンが間に合わなくなってきている。

やがてループの合間を縫って被弾が増えて行き怪物が怯んだ瞬間、魔力刃が津波の様に怪物を飲み込んだ。

 

「なのは!今だ!」

 

すぐさま魔力刃の放出を止め、なのはに封印を促す。

 

「ありがとう!」

 

なのはの放った封印の光が傷だらけで倒れ伏した怪物に突き刺さるのを確認して、

ひとまず安堵のため息が出た。

 

…恐る恐る在庫を確認する。

そして、今ので2年と4ヶ月分の貯蔵が消し飛んだ事を理解し…思わず涙が流れた。

 

「おい、凄かったな神宮寺!あんな切り札があったなんて…どうした、泣いてんのか…?」

 

近くに飛んできた銀髪オッドアイ…確か、…そう、えっと…神原だったな。

 

「いや、時間の儚さを偲んでいたのさ…」

「なんだそりゃ…?」

 

ふっ…きっとこの思いが分かるものは居まい。

また貯めなおさなきゃな…

 

 

 


 

凄い光景だった。

 

何十秒経ったのだろうか?

何百万もの魔力刃が怪物に撃ち出され続ける光景は、

空から見れば魔力の色も相まってまるで銀色の運河の様だった。

 

プロテクションを張った銀髪オッドアイを見れば、いつの間にか人数が7人になっている。

どうやら治療が完了したらしく、総出でプロテクションを張っているようだ。

 

俺も眺めている場合じゃない。

直ぐに封印の準備を開始する。

 

「レイジングハート!」

シィリンモーゥ(Sealing Mode)セタップ(Set up)!≫

 

やがて怪物は魔力刃の河に呑まれ、土煙が晴れたそこにはボロボロになった怪物が地に伏していた。

 

「なのは!今だ!」

 

銀髪オッドアイの声に応えるようにレイジングハートを怪物に向け、

 

「封印!」

 

放たれた封印の光は今度こそ怪物に突き刺さった。

 

ステンバーィ、レディー(Stand by,ready)!≫

 

怪物の額にシリアルが2()()浮かび上がる。

 

「リリカル、マジカル!ジュエルシード、シリアル『ⅩⅩⅠ(21)』、『ⅩⅩ(20)』、封印!」

シィリン(Sealing)!≫

 

怪物の姿が光に包まれ、やがて2つのジュエルシードに戻ると

そのまま吸い込まれるようにレイジングハートの中に納まった。

 

リスィー(Receipt:)ナンバートゥエンティワン(No.ⅩⅩⅠ)エン(&)トゥエンティ(ⅩⅩ)』!≫

 

…ふぅ、なんとかなったな。

ただ、ジュエルシードは2つだった。

2つであれほどの脅威になる…と言う事も重要だが、

ここの20番と元々あの怪物を生み出した21番だけ…じゃあすずかの家の14番(?)は…?

 

既にフェイトが動いてる…?

それとも他の転生者が…そもそも猫がもともと呑み込んでしまっていた可能性もあるか…

 

いや、今はとにかくあの怪物を無事封印に出来たことを喜ぼう。

そろそろ家に帰らないといけないしな。

 

…なにはともあれ校舎を見た感じ、目立った損傷はないようだ。

グラウンドは…あの怪物の足跡とさっきの魔法でやや抉れているくらいか。

多分、誰かのいたずらとして処理されるだろう。

 

プロテクション部隊も肩で息しているが平気そうだ。

 

さて、問題はさっきの魔法を撃った…神崎くん(かな?)の様子だ。

なんだろう、随分と元気が無いように思える。

てっきりここぞとばかりにハイタッチでもしに来るかと思ったが…

 

…近づいてみるか。

 

「どうしたの?…かn」

 

「おい、凄かったな神宮寺!あんな切り札があったなんて…どうした、泣いてんのか…?」

「いや、時間の儚さを偲んでいたのさ…」

「なんだそりゃ…?」

 

他の銀髪オッドアイ…多分、神無月くんのおかげで間違えずに済んだ。

 

「神宮寺くん!凄かったね、あの魔法!」

 

そう、あの魔法は凄かった。

神様の特典を使っているとはいえ、あの光景を生み出したのは間違いなく神宮寺くんだ。

ここはきっと原作のなのはでもこう言うだろう。

 

…別に申し訳なさからくるリップサービスではないのだ。決して。

 

「なのは、あぁ…ありがとな。」

 

…本当にどうしたんだろうか?

普段はこんなクールなキャラじゃなかったと思ったが…(別人と間違えてる可能性はあるけど)

 

「神宮寺くん?どうしたの?」

「なんか『時間の儚さを偲んでいる』らしい…」

「…?」

「いや…あの技はな、魔力刃を毎日貯めたものを一気に撃ち出す技なんだ。」

 

あっ(察し)

 

「…聞くべきか、分からんが…さっきのはどのくらい使ったんだ…?」

 

神無月くん(推定)が質問する。

 

「…2年と4ヶ月だ。」

 

ヒェッ…

 

「…そうか、強い力には代償があるもんなんだな…」

「その、なんて言ったら良いか分からないけど…」

 

…そうだ!

 

「ねぇ!さっきの魔法の魔力刃?って自分のじゃなきゃダメなの?」

「…!なのは、もしかして…」

 

これくらいしか出来ないしなぁ…

 

「うん!私の魔法もさっきの魔法に使って欲しいなって!」

「なのはがこう言ってんだ、俺も協力しなきゃ男が廃るな…!」

「なのは…神原…!」

 

…神原くんだったか。これからは名前を呼ぶ前に少し様子を見よう。

 

「おいおい、俺達を忘れんなよ!」

「あぁ、お前の根性…俺の胸に響いたぜ!」

「俺は今回あんまり活躍できなかったし、これくらいはな…」

「お前殆ど気絶してたからな。

 …治癒魔法にちょっと使っちまったが、俺の魔力もまだ余ってる。

 足しにしてくれ。」

「MVPにはなんかやるのが礼儀だよな!」

「といっても、結構プロテクションに持ってかれちまってるけどな。」

 

おぉ、皆の魔力があそこから撃ち出されるのか…

魔力の色は個性が出るからな…今度は銀一色じゃなくて虹色の河が見れるかも…!

 

「…お前ら…!」

 

≪ふふっ、結構良い友達持ってるじゃない≫

≪あぁ、本当にそうだな…≫

 

その後、神宮寺くんが開いた揺らぎに注がれる()()()の魔力刃を見て複雑な心境になりつつ

俺も教わったばかりの桃色の魔力弾を撃ち続けて一日が終わるのだった。

 

神谷くん達は到着し次第魔力刃を撃ち込み解散となった。…色はやっぱり銀色だった。

 

 

 


 

学校のグラウンドで銀髪オッドアイ達が魔力を注いでいる頃、

その光景を校舎の屋上から見下ろす影があった。

 

 

 

「見たよね?」

「あぁ、見たけど…随分と妙な事になってるんじゃないかい?」

「この世界は魔法なんてない世界だって母さんも言ってたのに…」

「…あんまりあのババアの事を信用しない方が良いと思うよ?」

「…大丈夫。『アルフ』が言うほど、母さんは悪い人じゃないよ。」

「フン、どうだかね。まぁ…どっちにしても、あいつ等は数が多い。

 今は一旦退こうか…『フェイト』」

 

なのはが何かを感じ取り、校舎を見た時には既に影は消えた後だった…




謎の影…いったい誰なんだ!?(棒

以下、神宮寺の王の財宝の設定です。

特典:王の財宝の様な物

容量無限の宝物庫。
特典付与時、中身は空っぽ。
自分を中心に約5m程の距離ならば任意に入り口(出口)を作り出せる。
中に入れたものを射出する事も可能なのは原作(原典?)通り。
普通に物を入れる事も出来、中でそれぞれの物や魔法が干渉することはない。

中に入れられた物は魔法も含めて全て時間が止まる。
生物は入れられず、魔法に関しても本人の同意が無ければ入れることは出来ない。
その為、盾のように展開してもSLBは防げない。
ただし協力して貰えばSLBも入れられる。
原作超えのSLB×10とかも理論上では可能。
魔法を射出する場合、撃ち出した後の軌道を操作できない事が弱みと言えば弱み。

‐12/30 追記‐
後書きの内容を微修正しました。

王の財宝の入り口(出口)を出せる範囲を2m→5mへ

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