それと『…』を偶数個使う様にしました。過去話分の修正はまだですが、話が一段落したらそっちの修正もしていこうかなと思います。
シグナムがフェイトとの戦闘に入ってから数分ほど経過しただろうか……
あたし達は……いや、あたしは随分と不平等な戦いを強いられていた。
周囲には大量の銀髪オッドアイ……シグナムがフェイトを引き付けた後に送られてきた、管理局の追加戦力だ。
一人一人は正直大した事無い連中だが、流石にこれだけの数を揃えられると対処が中々厄介だ。
シャマルとザフィーラが十全に戦えるならともかく、あたし一人じゃ流石に厳しい。
≪Ring Bind≫
「チッ!」
奴らの内の誰かが発動したのだろう、バインドの術式が左足に絡みつく。
どうしても死角が出来る以上、ある程度はくらってしまうのも仕方がない。仕方が無いが……
「鬱陶しい! アイゼン!」
≪Explosion! Schwalbe Fliegen.≫
自身の魔力消費を抑える為だけにカートリッジを消費し、無駄に増えた魔力を消費しきる様に鉄球を10個打ち出す。
そして奴らが鉄球の回避に必死になっている間にバインドの術式を破壊し、左足の自由を取り戻す。
「管理局の奴らに見つかった時点である程度は覚悟してたが……流石に数が多すぎるな。」
シグナムがフェイトを引き付けている間にエールが術式を完成させ、今度こそ管理局を完全に撒く……そう言う作戦を立てたまでは良かった。問題は想定以上の追手の多さだった。
少なくとも20人以上の管理局員から、術式の構築中で動けないエールを守り続けるのは流石に簡単じゃない。
当然こんな奴等、普段なら何の障害にもなりはしない。確かに管理局員として訓練は積んでいるようだが、それでもあたし等の費やした時間には到底届くはずもないからだ。
例えこの場にあたしが居なくても、ザフィーラとシャマルだけでも問題無く守りきれただろう。
だが、今のあたし等の状態がそれを許さない。
自分の魔力を消費し過ぎれば自意識が薄れやすくなる上に闇の書に体の主導権まで奪われる危険性がある以上、デバイスにカートリッジシステムを搭載していないシャマルを戦わせる訳にも行かない。デバイスを持たないザフィーラも同様だ。
要するにあたしが何とかするしかないのだが、今の状況はまさに多勢に無勢。
四方八方からの攻撃に一人で対応するしかない上に、護衛対象を守る為に深追いは出来ず敵の数を減らす事もままならない。
≪エール、まだか!?≫
≪あと少しです!≫
くっそぉ、あと少しってどれくらいだよ! 残りの時間が分からねぇとペース配分も出来ねぇぞ!
打ち出した10個の鉄球を操作して奴らをかく乱しつつ、鉄球を回避する際にこちらに迂闊に近付いてきた奴にアイゼンを振りかぶるが……
『リント! 後ろ!』
「ッ!? 危なッ……!?」
「……チィッ!」
やっぱり全体を把握して指示を出すエイミィのサポートが厄介だ。
流石に全員を常時サポート出来る程では無いようだが、それでもここぞと言うチャンスだけは的確に潰してくる……! って言うかエイミィの奴、こいつらの見分けがついているのか……? 指揮官として優秀なんてレベルじゃないぞ。
≪ヴィータさん、4時の方向に……!≫
「! させるかぁッ!」
エールの言葉に振り向くと、エールに向かって飛来する魔力弾が5つ。こちらも操作している10個の鉄球の内、距離的に近い物を5つ迎撃に差し向けるが……
「何……ッ!?」
恐らく操作性を重視した魔力弾だったのだろう……鉄球を回り込むように回避した魔力弾がエールへと一直線に向かう。
ダメだ……躱された鉄球を操作しても、追いつく前にエールに直撃する! 残りの鉄球も今からじゃ距離が遠すぎる! 最初に全部の鉄球を向かわせていればと思うが、そんな事を考えても今更だ。
「しまっ……」
「ハァッ!!」
エールに魔力弾が直撃する直前、聞きなれた雄叫びが砂漠に響き渡る。
魔力弾の爆発で立ち込めた砂煙が掻き消えると、障壁を展開してエールの前に立ちはだかるザフィーラが居た。
「ザフィーラ……! 済まねぇ、助かった!」
「……あぁ。」
≪ヴィータ、もう少し俺達を頼れ。≫
≪そうは言うけど……≫
≪あまり俺達を舐めるな。多少魔力を使った程度で闇の書にコントロールされる程、俺達は甘くない。≫
≪ザフィーラ……≫
≪私もよ、ヴィータちゃん。確かに激しい戦闘は避けたいけど、旅の鏡を開いて魔力弾を返す程度なら今の私にもできるわ。≫
≪シャマル……≫
そうだ……こいつ等は元々ちょっとやそっとのリスクで止まる程大人しい奴らじゃない。
この平和な時代に浸っている内にそんな事もいつの間にか忘れてしまっていた。
≪……サンキューな、二人共。それじゃあこっからは遠慮無く頼らせてもらうからな!≫
≪えぇ!≫
≪応!≫
……さぁ、反撃開始だ!
≪術式の準備が出来ました! シグナムさんにも連絡を!≫
……
……
……あ、はい……
「! ザフィーラ達が動いた……!?」
「こっから本番って訳か!」
「ザフィーラとシャマルが動いたって事は、ヴィータからの攻撃が激しくなるのか……」
俺が放った魔力弾が巻き起こした砂煙を振り払うように現れたザフィーラ達の姿を見て、周囲の皆に動揺が走る。
これまでの戦闘で何故か一切行動を起こさなかったシャマルとザフィーラが、今は構えを取っているのだから当然だろう。
26vs1……これだけの数的有利を確保していながら攻め切れていなかったのに、そこに更に2人が増えるのだ。攻撃はより激化し、守りはより堅牢になり、連携も使って来るだろう。
正直厳しいなんてものじゃない……
『皆、そのまま聞け!』
唐突にクロノから通信が入る。
『作戦は中止だ! 直ぐにお前達を拠点に転送させる!』
「……は!? ここで撤退なんて……ッ!?」
流石に納得がいかないぞ!? ……そう続けようとしたその言葉は、突如感じた悪寒によって飲み込ませられた。
まるで極寒の無人世界に行った時の様に鳥肌が立つ。『砂漠の無人世界だから』と言う理由では説明がつかない程の高温の熱波が肌を焼く。
寒いのに熱い……そんな奇妙な感覚に戸惑っていると、近くで誰かが叫んだ。
「おい! 何だあれ!?」
近くで叫んだその局員が指差す方向を見ると、『巨大な炎のドーム』がその規模を拡大し続けていた。
なるほど……と、先程の感覚の理由に今更ながら思い至る。
まだ数年と言う程度でしかないが、管理局員として戦ってきた経験が『この場を離れろ』と叫んだのだ。
それほどに分かりやすい濃密な魔力と殺気の波だった。まず間違いなく、あの炎のドームはここも包み込むだろう。
『理解しただろう! 転送するぞ!』
クロノが即座に撤退指示を出した事には、もう納得しかない。あんなものを防ぐのは今の俺達には不可能だ。
……あれがシグナムの本気か。他のヴォルケンリッターもあれぐらいの規模の技は持ってるんだろうなぁ……
足元から広がる転送の光に包まれながら、そんな事を考えていた。
取りあえず今回の戦闘はこれで終わりです。
そして何気にプロットが少し壊れてます。本来はここで紅蓮君も来る予定だったんですが、話の流れ的にクロノ君辺りが絶対に遠ざけるから無理やなって……と言う訳で、活躍の場が減ります。と言うか、当初やって貰う筈だった活躍は多分出来ないので今から練り直しになります。(多分結末には影響は出ないです)
プロット作った時は「良し!」(現場猫感)ってなっても、いざ書いてみるとなかなか予定通りに動いてくれない不思議…