「……みんな、帰ってもうたなぁ……」
「そう、ですね……」
なのはちゃん達が帰った後のリビングで、美香さんと二人で話す。
シグナム達には思念通話で連絡をしたので、もうじき帰って来る事だろう。
「……はやてちゃん。」
「うん、なんや?」
「……
心配そうな……それでいて辛そうな表情で私を見る美香さんを見て、理解する。
やっぱり天使様の眼は誤魔化せなかったらしい。
「……バレとったんやな。」
「はい……」
「……なのはちゃん達にも、気付かれとったかな……?」
「いえ……気付かれてないかと。」
「そうか、それは良かった。」
……心臓が痛む。鼓動が煩い。
まだ気絶する程の痛みではないけど、今回のような発作が起こる度に症状はどんどん重くなっていく。
どうやらアニメで描写されてなかっただけで、こういう痛みは何度も経験することになるらしい。
はやてに生まれた時点で覚悟はしていたけど……全く、友達と楽しく遊んでいる時くらい静かにしてくれない物か。
とは言え、上手く誤魔化せていたようで安心した。折角の楽しい雰囲気に水を差したくは無かったし、救急車で運ばれて楽しい時間が早く終わる事も避けたかった。
「……なぁ、美香さん。私はちゃんと無知の八神はやてになれとったか?」
「はい、多分彼女達には気付かれてないかと。」
もしも蒐集の事を知っているとバレてたら……事件が無事に終わったとしても、皆と引き離されるかもしれない。それだけは嫌だ。
今の日常は前世も含めて一番幸せな時間なのに、それが取り上げられるなんて今の私には耐えられない。
「……あ、せや。出したお菓子、片づけんとな。」
「それなら私がやっておきます。はやてちゃんは安静にしていてください。」
「すまんな、美香さん。ありがとう。」
美香さんにお礼を言って、座っているソファーで横になる。
考えるのは何時だってこれからの事……私の最初の役割である、闇の書の制御についてだ。
何をすれば制御出来るようになるのか、どうすれば闇の書の中でリインフォースと話せるのか……なに一つ解ってない。解っているのは、多分何かしら幸せな夢を見るであろうという事だけ。
あの中で見る夢に惑わされなければ良いのか、それとも自力で目を覚まさないといけないのか……
それが出来ないと全て台無しなのに、ぶっつけ本番ノーヒントって酷い話だ。
……それでも絶対に生きて、絶対に闇の書を制御して、絶対にこの先にある幸福に辿り着く。
それが出来なきゃ、友達を騙した意味まで見失ってしまうから。
……でも、やっぱり不安だ。簡単に制御出来るなら、今までの主達だって何人か成功してるだろうし……何より、私は八神はやてじゃないんだから。
「大丈夫ですよ、はやてちゃん。」
「……美香さん?」
「いざと言う時は私が何とかしますから。」
「……うん。ありがとう、美香さん。」
「楽しかったねー。」
「うん! はやてちゃんも凄く良い子だったし、友達になれて本当に良かった!」
「今度はフェイト達も一緒に来れると良いんだけどね。」
はやての家でいっぱい遊んだ帰り道。
夕日が照らし出す街を走るリムジンの中で、俺はアリサ達と今日の事をあれこれと話していた。
「うん、その時ははやてちゃんの親戚の子達とも会ってみたいな。
私達と同年代の子も居るって言ってたし!」
「そ、そうね。」
因みに今俺が言った『親戚の子』と言うのは、ふとした拍子にはやてがこぼした話題だ。
……そう、
はやてが言うには何と、ヴォルケンリッターに友達がいるらしいのだ。それも比較的最近できた友達が。
怪しまれない程度に情報を引き出した結果、どうやらシグナムが連れてきたらしい。
そしてもう一つ……その『友達』とやらの外見的特徴が、フェイトが言っていた『5人目』とどうにも一致するっぽいのだ。
勿論写真を見せて貰ったわけではないし、『5人目』の映像も見た事がある訳では無いのだが、少なくとも『真っ直ぐ腰の辺りまで伸ばした黒髪』と言う特徴は一致しているので可能性はそれなりに高いと思う。
それに加えて実際に行動を共にしてる訳だから、ほぼ確定と見ても良いだろう。
彼女の素性についてはあまり知らないそうだ。俺としても掘り下げるような質問は怪しまれるかもしれないと思い、深く聞かなかった為それ以上の事はあまり分からなかったが、少なくとも『5人目のヴォルケンリッターになった転生者』とかではなさそうだ。
まぁ、転生者じゃないなら多分変身魔法で見た目を変えたリーゼアリアだろう。……一応大穴でグレアム提督自身って可能性も……無いな。多分役職柄忙しいだろうし、どう考えてもリーゼアリアの方が適任だ。
他に得られた情報があるとすれば、八神はやてはやっぱり蒐集に関しては知らなそうだと言う事くらいか。
部屋に普通に他の住人がいた痕跡とか残ってたし、話を聞けば普通に親戚の子(という事にしているヴォルケンリッター)について色々と教えてくれたし。
……シグナムが時代劇好きだとか比較的どうでも良い情報が殆どだったけど、まあ蒐集の事をはやてに話していなければそんなもんだろう。
なんとなくだけど、蒐集行為の事知ってたらヴォルケンリッターに関する情報って徹底的に隠そうとすると思うんだよな……少なくとも、俺なら誤魔化すだろう。
戸籍が無いとかの事情もあるから誤魔化す理由には事欠かないし、そう言った表向きの理由があれば違和感も抱きにくいからな。
≪……って感じだったんだけど、どう思う?≫
取りあえず、フェイトに例の『友達』について話してみる。俺の中では『5人目』と同一人物だろうと言う結論は出ているが、やっぱり直接『5人目』を見たフェイトの意見を聞いてみたいと思ったのだ。
≪うん、その『友達』と『5人目』は多分同一人物だと思う。今日はヴォルケンリッターが全員来てたし、その5人目も居たから。≫
≪やっぱり皆蒐集に出てたんだ。……フェイトちゃん、大丈夫だった?≫
≪……シグナムにまた負けた。……完敗だった。
なのはも戦う時は気を付けた方が良いよ。彼女達、多分私達が知っているよりもずっと強い。≫
≪え……≫
完敗? カートリッジシステムを手に入れたフェイトが?
≪詳しくは映像記録があるはずだから、それを見せて貰って。≫
≪う、うん。≫
≪……じゃあ、私はちょっと訓練があるから念話切るね。≫
≪その、明日からは私も居るから、頑張ろうね!≫
≪うん……ありがとう、なのは。≫
……フェイト、なんか余裕無さそうだったな。
何と言うか前回負けた時とは何か違う感じがした。……そんなにこっぴどく負けたのか?
映像記録を見に行きたい気持ちもあるけど、門限的に明日かな。
……明日か。
明日、医者の診察では俺のリンカーコアも完全復活する。
日頃から簡易的なトレーニングはしているからそこまで極端に腕が鈍ったりはしてい居ないと思うけど、相手はあのフェイトを二度も倒したヴォルケンリッターだ。
何か秘策を用意しておきたいな……いや、その前にレイジングハート・エクセリオンに慣れないといけないか。
「……なのは~?」
「わっ!? ……どうしたの、アリサちゃん?」
気付けば目の前で手をフリフリとさせて、アリサが声をかけて来ていた。
「どうしたのって……家、ついてるわよ。」
「えっ? ……あっ!」
アリサが指差す先を見れば、明かりのついた家の玄関が見えた。どうやら考え込んでいる間に結構時間が経っていたらしい。
「ありがとう! じゃあアリサちゃん、すずかちゃん、また明日ね!」
「うん、また明日!」
「……また学校でね!」
……取りあえず、明日学校でフェイトに色々聞いてみようかな。カートリッジシステムを使う感覚とか……フェイトが嫌がらなければ、ヴォルケンリッターと戦った時の事とか。
魔法の訓練は……交渉すれば管理局の結界を貸してもらえたりしないかな? ちょっとでも良いから使わせてくれるとありがたいんだけど……
取りあえず地球に残った二人の目的と結果について。
なのは:『5人目』の正体に関する情報+はやて周辺の諸々の情報。
→『5人目』は大体わかった。はやては蒐集関係の事を知らないと思った。
はやて:なのはに自分は蒐集の事を知らないと思わせる。
→概ね成功。