転生者を騙す転生者の物語   作:立井須 カンナ

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後半は週一ペースを守る為にちょっと勢いで書き上げたところもあるので、変だなと感じた個所は遠慮なく指摘していただけると嬉しいです。

ちょっと長めですが、この回は下手に分割すると違和感を感じると思ったので……


騙す者、騙される者

12月16日 AM 10:15 海鳴市 某アパートの拡張空間

 

 

 

「はぁ……」

 

複数のモニターの並ぶ薄暗い部屋に、もう何度目とも知れないエイミィのため息が響く。

今俺達が居るのはリンディさんが借りたアパートの一室を使って作られた管理局の拠点だ。

今日は土曜日。学校が休日という事もあって、俺は朝からエイミィ達の仕事を助ける為にここに来ていたのだが……

 

「あの……エイミィさん、元気無さそうですけど大丈夫ですか?」

 

エイミィが何度もため息をついており、見るからに元気が無い。

あまり管理局の内情に首を突っ込むべきではないと思って聞かなかったのだが……ここに来てからずっとこんな様子を見せられていると、流石に何も聞かないのは薄情な気がしてついとばかりに聞いてしまった。

 

「なのは、あんまり深く関わらない方が良いよ? エイミィの事だからどうせ……」

「なのはちゃん! 聞いてくれるの!?」

 

アルフの言葉を遮るように、エイミィが“ぐりん!”と音を立てそうな勢いでなのはの方を振り向く。

……まるで聞いてくれるのを待っていたかのように。

 

「あーあ、遅かったかねぇ……」

「アルフ。しばらくは私達がモニターを見ておこう。」

「はいよ。」

 

既に何度か経験済みなのだろう。アルフとフェイトは慣れた様子で視線をモニターに移すと、刻々と移り変わる無人世界の光景を注視し始めた。

 

「えっと……フェイトちゃん、もしかして何か知って……?」

「聞いてよなのはちゃん!」

「あっ、はい……」

 

一方でこれが初体験のなのははエイミィに両肩をがっちりと掴まれ、その口から吐き出される愚痴の数々に呑まれる事となった。

 

 

 

「……つまり、クロノ君が居なくて寂しいと……?」

 

纏めるとどうやらそう言う事らしかった。

何でもクロノは整備の完了したアースラを取って来る為に昨日から管理局の本部に戻っているらしく、この拠点に一人残された事の寂しさが原因であのようなため息をついていたらしい。

……道理でアルフもフェイトも何も聞こうとしない筈だ。

 

「それもあるんだけどさぁ! 一番酷いのはリーゼロッテだよ!

 こんな状況だって言うのに『あたしはちょっとやる事があるから、この場はエイミィちゃんに任せるよ!』なぁんて言って、朝からどっかに出かけちゃうしさぁ!」

 

その言葉にそう言えばと思い出す。

今日ここに来た時にエイミィさんが出迎えてくれた事に始まり、他の管理局メンバーを誰一人見ていなかった事を。

 

てっきりもう無人世界の何処かに待機しているのだろうか等と軽い気持ちで考えていたけど、どうやら実情はもう少し違ったらしい。

 

「えっと、そう言えばリンディさんは……?」

「ちょっと前から本局に戻ってる。闇の書の情報を調べてるユーノ君が『情報規制されている書庫がある』って言って、そこを調べる許可を出す為にって……」

 

……情報規制? そんな描写あったっけ?

いや、まぁ情報規制自体は有ってもおかしくはないけど闇の書の情報を探す段階でそんな話は……もしかしてリーゼ姉妹が度々持って来てたあの本がそうだったのか?

 

「あれ? でもだったらアースラを取って来るのってリンディさんにお願いすれば良かったんじゃ……?」

「クロノ君が本局に用事があるからついでにだってさ……12時間以上って『ついで』の用事にかかる時間じゃないよねぇ……?」

 

……なんだろう、何か裏で色々動いている気がしてならない。

特にリーゼロッテがどっかに出かけていると言うのがきな臭い。今はクロノがおらず、エイミィがこの拠点を離れられず、監視の目も無人世界から離せない状況だ。

 

そう……闇の書の主であるはやてが居るこの地球が、今は完全にフリーとなっているのだ。

はやてが闇の書の主と知っているリーゼロッテにしてみれば、この状況は滅多に無い好機とも言える。

 

しかし、よりにもよってアースラの整備完了とクロノの用事が偶然重なるなんて……

いや待てよ、クロノの用事に関しては本当に単なる偶然なのか?

 

「……なぁエイミィ、ちょっと聞きたいんだけどさ。」

「何さ。」

 

何やら難しい表情をしたアルフがエイミィに問いかけ、エイミィが拗ねたように投げやりな返答を返す。

 

「いや、そんな不貞腐れなくても良いじゃないか。さっきの事を気にしてるなら謝るからさ。

 ……それよりも、そのクロノの用事が何なのかエイミィは聞いて無いのかい?」

「今回の事件の事で話があるんだってさ。

 全く、今時通信装置で話せばいいのに『どうしても会って話がしたい』なんてさぁ……()()()()()()も困ったもんだよねー……」

「ッ!」

 

っ!!

 

思わずと言った様子でこちらを振り返ったフェイトと目が合う。どうやらフェイトもしっかり聞き耳は立てていたらしく、転生者としての知識からこの一件の裏側を大まかに把握したようだ。

 

しかし、拙いぞ……完全に真っ黒だ!

グレアム提督がクロノを引き離し、残されたエイミィが無人世界の監視に縛られ、その隙に自由に動けるリーゼロッテが朝から何処に行くかなんて……一か所しかないじゃないか!

 

どうする……? 俺だけでもはやての所に向かうか?

でもどうやって言って出て行けば良いんだ!?

『実はリーゼロッテとグレアム提督がグルで、闇の書を覚醒させようとしてるんです』なんて言ったところで、管理外世界の住人である俺じゃ説得力なんてありはしない。

フェイトも同じような物だ。出生の理由から管理世界の……それも管理局の事情なんて知る由も無い少女一人の言葉で信用を得られる程、簡単な情報じゃない。

そもそもフェイトはまだはやての家が何処にあるかも知らないのだ。

 

俺も何かしらの事情をでっちあげてはやての家に向かうか……? でも駆けつけるにしたって、正体を隠している俺としては何かしら正当な理由が欲しい!

はやての未来がかかっているこんな時にこんな考え方をするのは我ながら友達甲斐のない奴だとは思うけど、俺だってこのRPに未来がかかっているんだ! 簡単に踏み出せる一歩じゃない!

 

誰かにはやてを守って貰うしかない……! 信用できる誰かに!

銀髪オッドアイ達に伝えれば……駄目だ、アイツ等もはやての家を知らない筈だ!

寧ろ知っていると考えたくない! だって知ってたらそれはストーキングしたって事じゃないか!

 

誰かいないか……誰か……

 

脳裏にある記憶が過る。たった一日だけだが、はやてと一緒に遊んだあの日の記憶だ。

 

『今日は良え日や。アドレス帳の名前が二人も増えたで!』

『じゃあ次はこのゲームで勝負や! 今度は敗けへんで!』

『さ、33-4……やと……!?』

『今日は楽しかったで! また今度一緒に遊ぼうな!』

 

ダメだ……俺しかいない。魔法関係の事情を知っていて、八神はやてと関係がある人物。駆けつけられる魔導士は俺しか……!

 

……はやて、良い子だったよな。

最初は色々情報を引き出そうなんて打算込みで遊んでた俺も、いつの間にか普通に楽しくなって……

 

そうだ。俺はまだはやてと本当の意味で分かり合っていない。

 

打算込みの付き合いを最後にして別れるなんて事があれば、俺は多分一生引き摺る!

 

何かしら理由をでっちあげて、すぐに駆け付けよう。

……そうだ、クリスマスプレゼント! はやての家の近所にあるおもちゃ屋のトイざるすに、クリスマスパーティーで交換するプレゼントを買いに行くと言うのはどうだ!? まだちょっとクリスマスには早い気もするけど、来週の土曜日がクリスマスイブである事を考えれば、今から用意してもおかしくはない……と思う!

 

フェイトにも直ぐに今の考えを念話して口裏を合わせて貰おうとして、フェイトの方を見た瞬間。

フェイトを挟んでその背後、ある一つのものが俺の目に映った。

 

「……ヴォルケンリッター!」

「えっ、嘘っ!?」

 

複数の無人世界を映す巨大なモニターの片隅……小さく映り込んだ燃え盛る無人世界の映像。

炎の赤に紛れるようにして、3()()()()()の姿がしっかりと映り込んでいた。

 

唐突に響き渡る警戒音。エイミィが手元のコンソールを叩き、緊急の指令を下したためだ。

 

「待機中の全局員に告ぐ! ヴォルケンリッター『ヴィータ』、『()()()()』、『5人目』を確認!

 目標次元世界は第48無人世界『フラムヴァル』! 座標を各班のリーダーのデバイスに送信するので、確認次第出撃せよ!」

 

状況が動く。裏で今も動いている計画を覆い隠さんばかりに。

この状況も今となっては『作られた展開』だと分かる。リーゼアリアが自分達に目を向ける為に、意図的に見つかる様な無人世界を選んで転移してきたのだろう。

 

もはやクリスマスプレゼントを言い訳に抜け出せる状況ではない。

だけど、これはチャンスだ。

 

ヴォルケンリッターはこの段階では敵でしかない……だけど『はやてを守る』と言う目的に限って言えば、これ以上信頼できる味方も居ない!

それに、いま唐突に思い出した事がある。

ヴィータにデバイスを壊された(壊させた)後のユーノとの会話……もしもあの時に俺が立てた推論が当たっていたとすれば、俺達はきっと協力し合える!

 

「エイミィさん! 私達も!」

「お願い! フェイトちゃん、転送ポートまで案内してあげて!」

「任せて!」

「あたしも行くよ!」

「うん!」

 

例え今は敵同士だとしても、会話は出来る。

伝えるんだ。はやてに迫る危機を! 共通の思いがあれば、戦いの中でだって協力は出来るはずだ!

 

 

 


 

同刻 無人世界『フラムヴァル』

 

 

 

「……蒐集完了。7ページか……久しぶりにそこそこいい獲物だったな。」

 

アホみたいにでかい燃えるナメクジを蒐集した結果、結構な稼ぎになった。

一体倒してこの成果と言うのも久しぶりだ。ここ最近は雑魚を何体も倒してやっと5~6ページなんて状態が続いていたからな……内心結構まんざらでもない気分だ。

 

「やはりヴィータさんの力はこう言う相手には強いですね。

 巨大な相手を一撃とは……」

「ったりめぇだ! てめぇ、昨日は随分とあたしに舐めた口聞いてくれたよなぁ!

 なぁ!」

「それに関しては謝罪させていただきます……やはり貴女の力は素晴らしい。」

 

……何か妙な感じなんだよな。今日のエール(こいつ)

こうして怒鳴って見せても、いつもと違って妙な自信に溢れてるって言うか。

それにこう言う顔した奴は昔も結構いたが、どいつもこいつも碌な奴じゃなかった……ように思える。

流石に昔の事過ぎて()()()()()()()()()()()が。

 

「……エール。本当にこの世界は管理局の眼が無いのか?

 先程の生物は元々我らが目を付けていたもの……管理局もそれは理解しているものだと思っていたが……」

「ふふ……大丈夫ですよ、シグナムさん。心配無用です。」

 

どうだかな……まぁ、あたし達が管理局に捕まればアイツの計画もおじゃんになる事を考えれば、ある程度は問題無いのかもしれないが……

 

そんな事を考えた瞬間、前方10m程の所に光が灯るのが見えた。

 

「これ、まさかッ!?」

 

見間違えるわけもない――時空管理局の使う『転送』の術式!

 

光は忽ち数人の人間を包み込めるくらいの大きさになったかと思うと、その中からなのは、フェイト、アルフが現れた。

 

「なっ……! やっぱりこの世界、マークされてたんじゃねぇか!」

「ヴィータ、今は目の前の相手に集中しろ! エール、転送の準備を!」

「ええ! ……ふふっ

 

アイツ、管理局が転送して来る事を教えるのも役目だったはずだろうが……!

くそっ……今はとにかくここを切り抜ける事が最優先か!

 

「アイゼン!」

了解。(Jawohl.)

 

アイゼンを構え、相手の出方を見る。

正直なのははともかく、()()()()()()()()()()()()()()()()()ってのが一番拙い。

出来る事と言ったら転送までの時間稼ぎがせいぜいだが、フェイト相手じゃそれも難しい……!

 

どうするかと考えを巡らせていると、不意に頭の中に声が響いた。

 

≪シグナムさん! ヴィータちゃん! 聞こえる!?≫

 

この念話……なのはか?

 

≪てめぇ、こんな時に思念通話なんてどういうつもりだ!?

 戦いの最中に……≫

≪戦いながら聞いて! はやてちゃんが危ないの!≫

≪な、何でてめぇがはやての事を知ってやがる!?≫

≪待て、ヴィータ……どういう事だ? 詳しく聞かせろ。≫

 

はやてが危ない……どういうことだ!?

エール(リーゼアリア)はこっちに来てるし、向こう側にリーゼロッテがいるからこっちに情報が……

 

……待て、何でさっきこいつらが来る事をエールはあたし達に教えなかったんだ……?

まさか、()()()()()()()()()()……?

 

「どうしたんですか? シグナムさん。

 防戦一方のようですけど、そのレヴァンティンは飾りなのでしょうか?」

 

ふと耳に入ったエールの声。

 

なのはの魔力弾とあたしの鉄球が飛び交う戦闘を熟しながら、フェイトの魔力弾を障壁で防いでいるあちら側の戦いに目を走らせる。

 

今のところは何とか問題なさそうだが、このまま魔力を使わせるのは拙い……!

 

「エール……先程の我が問いに、お前は『心配無用』と答えたな。

 だがこれはどういう訳だ?」

「ふふ……言葉の通りですよ。

 だって例え見つかったとしても、ここにはシグナムさんとヴィータさん……ヴォルケンリッターで()()()()()()()()()が揃っているのですから。」

「……貴様……!」

 

エールのあのセリフ……()()()()バレていたのか、あたし達の状況が。

いよいよもって昨日のシグナムの予想が当たっていた事を実感する。

 

≪おい、高町なのは。≫

≪何!? 早く地球に戻ってはやてちゃんを……≫

≪そっちは大丈夫だ、心配は要らねぇ。≫

≪でもヴィータちゃんとシグナムさんが来てるって事は、向こうに居る二人は魔力が……≫

 

……ちっ、やっぱりバレてたのか。シャマルとザフィーラがもうそんなに長く戦えない事。

だが、それでも問題はない。

 

≪気にするな。はやては安全だ。≫

 

そう言いながら、転送の術式を構築しているエールを見遣る。

どうやら今も余裕たっぷりにのんびりと術式を組んでいるらしい……何も知らずに。

 

「ほら、フェイトさんが来ますよ? 私を守ってください。

 今もこうして転送の術式を構築しているのですから。」

「貴様は随分と余裕だな……術式の構築が昨日の時よりも目に見えて遅いぞ。」

「私には焦らなくても良い事情が……

 待ってください。『昨日』……?

 シグナムさん、貴女……昨日、私が転送の術式を構築したのを見たと……?」

「ふん、今頃気付いたか。

 これを見てものんびり転送の術式を組めるのか、見ものだな。」

 

その言葉が引き金になったかのように、シグナムの姿が光に包まれる。

そしてその光も直ぐに収まり、その正体を現した。

 

「なっ……あ、貴方は……」

「改めて名乗る必要は無いだろう。

 昨日も一昨日も、共に蒐集の為に無人世界を渡り歩いた仲なのだからな……!」

 

先程エールが嫌味たっぷりに言った『そのレヴァンティンは飾りなのでしょうか?』と言う言葉は正解だ。

事実何の機能も持たず、ただガワだけを寄せた棒っきれだからな。

 

「どうした、エールよ……術式の構築が止まっているぞ。

 急いで帰りたい気持ちは、()()()()()()()()()()()()()?」

「くっ……!」

 

エールの表情が苦渋に染まる。どうやら状況を理解したらしいな。

 

さて……今頃はやてにちょっかいを掛けようとした奴が相手するのは、一体誰なんだろうな? 少なくとも()()()()()()()なのは間違いないが……

 




第48無人世界『フラムヴァル』は何となく炎っぽい名前を想像して付けました。
一応wiki等で調べたので原作には『第48無人世界』も『フラムヴァル』も登場してない筈……!(出てたら名前変えます)
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